化学株の株価イメージは、あまり芳しいものではない。株価自体が、3ケタ台の中位に位置するのがほとんどだ。コンビナートを形成し基礎化学品から中間製品、最終製品まで連産する装置産業で、巨大な投資負担、世界的な原材料・製品市況に左右される収益性など、従来型のオールドエコノミー株として人気の乏しさにつながっている。またかつての大気汚染や最近のダイオキシン・環境ホルモンの環境問題などのマイナスイメージもダメージとなっている。
●ナノテクの分子半導体にも
ところが、その化学株のイメージが変わるかもしれないのである。兜町流にシナリオを描けば「化学株大相場説」の台頭である。きっかけは、筑波大学の白川英樹名誉教授のノーベル化学賞の受賞といわれている。この受賞内容を精査すると、新素材革命の最先端に位置する化学株の新ビジョンが浮かび上がってくるからだ。白川関連銘柄をリード役に化学株全般に幅広いウォッチは怠れない。
白川教授のノーベル賞の受賞対象は、導電性高分子・ポリアセチレンの開発である。絶縁体と思われていたポリアセチレンをフィルム状にし、そこに不純物(ドーパント)の臭素をつけ加えると、電気伝導性が10億倍も高まることを発見した。白川教授が「合成金属」というコンセプトを提起したように、有機化合物でありながら金属と同じ性質・機能を持ったことになる。現在のシリコンの半導体が不純物をつけ加えることにより、さまざまな半導体となるように、導電性高分子も同様のの機能開発が可能となった。しかも、分子量が大きいため分子ごとの制御ができ、ナノテクノロジー(超微細技術)の分子半導体開発への道を開拓することにもなる。
●アキレス、カネボウなど軸に
これだけ画期的な発見にもかかわらずノーベル賞受賞があまり大騒ぎされないのは、教授自身の謙虚な人柄が要因とされている。論文発表はあるが著作は少なく、これまで日本人受賞者8人で恒例だった大手書店での特設コーナーの開設なども皆無だ。だからこそ、化学株にとっては意外性十分な大テーマにもなるとみられている。
教授の発見以来、導電性高分子にさまざまな不純物をドーピングした新機能開発が世界的に進められている。このうち、静電気防止のSTポリマーを開発したアキレス(5142)、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)から有機半導体への道を探る新日鉄化学(4363)、2次電池用電極を開発したカネボウ(3102)、ブリヂストン(5108)などの白川関連銘柄を軸に、新たな化学株相場の胎動が予想される。
[相馬 太郎]
2001/3/27
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