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「たら・れば」で構築される
“銀行株暴騰説”
[市場より3歩先を一覧へ]

 株価シナリオは「・・・たら」「・・・れば」をまことしやかに組み合わせることによってそれらしくなる。希望的観測や仮説を積み重ねていけば、楽観論も悲観論も思いのままなのである。そして、とても実現しそうもない「・・・たら」「・・・れば」でも、株価がシナリオ通りに動けば、まるで紛れもない既定事実のようにみえてくるから不思議だ。単なる携帯電話の販売会社に過ぎなかった光通信(9435)が、IT革命や時価総額極大化経営のシンボル株のように装えたのも、この株価シナリオと株高に巻き込まれたためであった。

●ペイオフが解禁されたら・・・
 日経平均株価がバブル崩壊後の最安値に沈んでいる現在の危機的状況のなかで囁かれる「銀行株暴騰説」も、そうした株価シナリオのひとつである。定石通りに2つの「・・・たら」「・・・れば」が前提だ。ひとつは、ペイオフの解禁だ。ペイオフとは、銀行が破綻した場合、預金保険法により1,000万円までの預金と利子しか保護しない制度で、2002年の4月に解禁される。解禁でどういう結果が起こるかといえば、危ない銀行から安全な銀行へ預金が大流出し、預金を引き揚げられた銀行の倒産が続出するおそれがある。

 実はペイオフは、当初は2001年4月に解禁されることになっていた。ところが、金融システム危機の余燼がまだくすぶる1999年末に銀行倒産の連鎖懸念から1年先延ばしされた経緯がある。その解禁が1年後に迫り、既に水面下で預金の流出が始まっているともいわれている。そして臆病で安全第1の預金が最後に逃げ込む先は、国営事業の郵便貯金であり、預金獲得競争では郵便貯金のひとり勝ちになるとみられているのである。

●小泉氏が首相になったら・・・
 そこで第2の「・・・たら」「・・・れば」が登場する。退陣する森首相の後継に小泉純一郎森派会長が就任するという仮説である。小泉会長は、いうまでもなく郵貯民営化論の確信犯である。だから、特定郵便局をバックにした自民党内の強力な反民営化勢力の政治圧力から小泉会長は下馬評からまず外されている。しかし、参院選挙への人気取りで自民党が背に腹を変えられず、小泉会長をトップに据える可能性も捨て切れない。となれば、危ない銀行も安全な銀行も、等しく郵貯民営化の恩恵を受ける。銀行株には好材料となるわけだ。

 「銀行株暴騰説」は多分、深い谷のうえにかかる細い1本の木橋のようなものであろう。しかし、実際に銀行株の株価が力強く上昇してくれば、太い強固なコンクリート橋にみえなくもないのである。自民党のポスト森の後継争いとともに、この仮説にも、もう直ぐ結論が出そうだ。

[相馬 太郎]

※このコラムは随時掲載します。

2001/3/5

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