変われば変わるものである。
いま、「ITバブル」と決めつけた新聞記事や雑誌記事が溢れ、テレビの証券番組でもキャスターがそうはっきり、リポートしている。半年前の2000年夏までは、ITは、国の経済構造を変革し、景気循環さえなくすニューエコノミー化の旗手として熱気をもって大歓迎されていたのにである。兜町でも「IT株に非ずば株に非ず」のブーム状態を呈した。そのブームが、潮が引くように消えたら、今度は「バブル」の宣告である。IT株の株価が、軒並みピーク時の高値から半値以下、3分の1以下へと下落するに至っては、致し方のないところではある。
●好バリュエーション銘柄が・・・
このIT株の株価下落の被害は甚大である。現在の東証平均株価は、1998年のバブル経済崩壊後の最安値1万2879円をうかがい、「3月危機説」が吹き荒れているが、IT株がその重罪人のひとりであることは間違いない。平均株価の採用銘柄が昨年4月に大量に入れ替えられ、IT株の株価指標として純化されたことも効いた。善玉が変じて悪玉になった。
しかし、「ITバブル」がはじけたことは必ずしもマイナスばかりではない。兜町に新たな相場展開の余地を与える兆しが見えてきたのである。昨年夏までの“IT呪縛”から解き放たれ、回りを見回してみると、低PER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)でバリュエーション(投資価値)に富んでいる銘柄がゴロゴロころがっているのに気がついたのだ。
その多くはオールドエコノミー株だが、この不況下でITで武装し、あるいは企業提携を実現し、さらに新技術・新製品を開発するなど経営革新の進むべき方向を確定した会社も目立つのである。しかも、株価はITブームのカゲで手つかずだっただけに、極く低位に放置されているのだ。
●動き始めたアナリストたち
こうした好ポジション株を次々と発掘してさえいけば、相場はバリュエーションによる再構築が可能となりそうなのだ。実際にそうした割安株への証券アナリストの会社訪問も始まっている。彼らはこれまで、所属する会社の方針や自身の人気取りでIT株しかリサーチしなかったのが、商売の食い上げで、全方位の調査活動を再開することにしたのだ。訪問を受ける会社側も、この時とばかり積極的な材料提供に手ぐすねを引いている。
2月28日午前の平均株価は1万3000円を割り込んでいる。株式市場の全上場銘柄は、下ブレ不安のある逆境下だが、いま等しく株高競争のスタートラインに立ったのである。そこでどの銘柄が先行しどこが追撃するか、投資家の嗅覚と勘がモノをいう面白い相場になる可能性もあるのである。
[相馬 太郎]
※このコラムは随時掲載します。
2001/2/28
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