突然のIPO(新規株式公開)ブームである。2月13日にナスダック・ジャパンに上場したクリード(8888)が、わずか4日間で公開価格の5倍に大化けしたのに続き、14日に東証マザーズ上場のインターアクション(7725)が、今度は3日で5倍以上の急騰となった。IPOに買い物が殺到しているのである。途端に証券会社の店内でも、証券マン同士が顧客にハメ込むIPOの争奪戦を繰り広げる様相さえ呈している。
しかし、このブームが相場の強さの反映でなく、弱さと背中合わせに起こったことに問題がひそんでいる。昨年と今年とでは「地獄から天国へ」と形容していいほどの急変だからである。昨年末までは、IPOの人気は惨憺たる有様であった。
●消去法での買い
店頭市場、東証マザーズ、ナスダック・ジャパンの新興企業向け3市場に昨年上場されたIPOは、157社を数えた。しかし、そのなかには上場日の初値が公開価格を60%も下回る企業が続出したのはまだいい方で、11月以降はドリーム・アーツ、タニコーなど上場延期が相次いだ。株式市場が、リスクマネーを供給する本来の機能を発揮できない「地獄」だったのである。
にもかかわらず、今年に入りブーム状態の「天国」に舞い上がったのだ。景気実態も株式需給もこの間、何ら変化が起こっていない。これは、IPOが「消去法」で買われたことを表している。3月期末に向け懸念される持ち合い解消売りの心配がないのが手掛かりなのだ。となると株価は当然、実態価値をカイ離しバブル的色彩も帯びやすくなる。
●歴史は繰り返す・・・
実は、こうしたブームは1995年に一度経験済みである。当時、IPOは183社を数えベンチャー・リンク(9609)のように6倍にも急騰した銘柄も出た。相場環境は、「自社さ」連立政権の村山内閣から橋本内閣への禅譲という政治混迷や阪神大震災の後遺症、住専処理の金融システム懸念が底流する景気の先行き不透明化など、現在とウリふたつであった。
そうした悪環境下で、相場は仕手集団が腕力と手練手管でカチ上げた兼松日産などの仕手株とIPOへ人気が2極化したのであった。いわば、逆境下に咲くアダ花であり、橋本内閣の消費税率引き上げという失政により、相場が急落し信用不安が拡大する序曲でしかなかった。
ここは「歴史は2度繰り返す」と、ほどほどのところでIPOから手を引くか、学習効果から「2度と同じ轍は踏まない」とさらにIPOに突っ込むか、思案のしどころとなる。
[相馬 太郎]
※このコラムは随時掲載します。
2001/2/21
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