株価が動くと、必ずそのウラには仕掛け人がいるとみるのが兜町の常識である。かつては買い本尊が影に隠れて、株を買い占めたり売りを誘って締め上げたりと株価吊り上げ工作の糸を引くケースも多かった。そうした猛者たちも、バブル相場崩壊で一敗地にまみれあるいは塀の中に落ち、いまや昔日の面影はない。かわってクローズアップされているのが外国人投資家でありカリスマ・ファンドマネジャーであり、証券会社のディーラーであり、証券アナリストのレーティング(格付け)リポートである。
●品切れの“バイブル”
ところが、ここにきてIT関連株のダークホースとして注目を集め始めた有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)関連株の場合は、趣きをやや異にしている。バックに強力サポーターとして控えているのは誰あろう、特許庁なのである。同庁が、有機ELの特許公報、特許情報などを解説つきで特許マップシリーズとして刊行した冊子が、関連企業や兜町の注目筋のバイブルともなり、品切れ状態が続いているのだ。
コダックが保有している基本特許が切れる2003年に向けこれから開発競争が本格化する事情もからみ、有機EL関連株相場は、特許庁ご推奨の息の長い展開が予想されている。
有機ELは、電流を流すと自己発光する有機物(発光材料)のことで、これを使ったディスプレイ(表示装置)は液晶を大きく上回る次世代のディスプレイと目されている。自己発光のため、液晶のようにバックライトが不要で省電力となり、応答速度は液晶の1,000倍も速いため動画像の表示に最適で、輝度が高いため画面はクッキリ、視野角も広いとモバイル系のディスプレイとしては至れり尽くせりの性能を兼ね備えている。
●新日鉄化学、東洋インキ・・・
しかし、現在のところカーナビや一部携帯電話のモノクロやマルチカラーの表示装置として実用化されている段階でしかなく、フルカラー化や長寿命化、さらに生産技術の確立などに関して世界的な開発競争が演じられている。
特許庁の冊子は、こうした各社が取得した特許を網羅、そこに名前の上がった関連株の株価が相次いで人気化しつつある。発光材料の新日鉄化学(4363)、東洋インキ製造(4634)、タイホー工業(4953)、製造装置生産のトッキ(9813)、ディスプレイメーカーの東北パイオニア(6827)、三洋電機(6764)などがこの代表である。市場関係者がこの冊子を取り寄せて1社1社を潰し、仕掛ける展開になるとしたら関連株は盛り沢山となり、特許庁が影の黒幕となる大相場に発展するわけだ。
[相馬 太郎]
※このコラムは随時掲載します。
2001/2/1
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