最近のAVマルチモニター製品ラッシュで目立つのは「フルHDパネル採用」と銘打った1920×1080ドットパネル採用製品。
フルHD映像しか映さないのであれば、それでもいいが、AVマルチモニター製品において最上の使い勝手を追求した場合、接続する機器に対して"ひいき"というか妥協があってはならないと筆者は思う。
筆者個人の意見だが、1920×1080ドットパネルでは、PCを接続したときに満足度がやや低いのだ。
PCコンテンツはゲームを除けば、メールにしろ表計算にしてもWebサイトにしても、縦方向に伸びる表示が伸びていくデータ構造だ。横解像度も重要だが、それと同じくらい縦解像度も重要なのだ。1920×1080ドットでは、多くのユーザーが使っていると思われる1280×1024ドット(SXGA)程度の解像度からちょっと広くなっただけ。これまた多くの人が活用していると思われる1600×1200ドット(UXGA)の解像度と比較した場合にいたっては、1920×1080ドットでは縦解像度が減ることになる。
PCモニターの使い勝手は、画面サイズと同じくらい解像度の広さに影響を受けるので、PCモニターの買い換え時には、それまで使っていた解像度と同じか、できれば大きく超えたいところ。1920×1080ドットでは、この要求を「満たしていない」とまではいわないが、「いま一つ」という感じなのだ。
ハイレゾでPCゲームを楽しむユーザーにはWUXGAはスタンダードな解像度となっており、タイトルによっては1920×1080ドットには未対応で1920×1200ドットにのみ対応というものもある。PC Watchでもお馴染みなPCベンチマークソフトの「3DMark Vantage」もテストモード「Extreme」(ハイレゾ高負荷モード)は、1920×1080ドットではなく、1920×1200ドットの方にのみ対応している。PCゲーマー、PCベンチマーカーならばWUXGA解像度以外は考えられない。
先代FlexScan HD2452W、先々代HD2451Wともに1920×1200ドット(WUXGA)というパネルを採用し続けてきたのは、EIZOが、ここにこだわっていたからだと筆者は思っている。テレビからチューナーを取り去って接続端子を付けただけの安直なフルHD解像度のモニター製品ではなく、PCまでを含めた、あらゆる映像メディア、映像機器を妥協なく表示できるモニター製品を考えた場合1920×1200ドット(WUXGA)パネルは最良解なのだ。
前置きが長くなったがFORIS FX2431はちゃんと1920×1200ドット(WXUGA)パネルを採用してくれている。ほんとにありがとう、といいたい。
筆者はプライベートで先代のFlexScan HD2452Wを所有しているのだが、その先代オーナーの目からみて、今回のFORIS FX2431との画質の差は、すぐ分かる。
まず、色の鋭さ。赤、緑、青の純色の発色がとても鋭いのだ。そして、カラーグラデーションが美しく、さらにかなり黒に近い暗部においても色味が残っており、暗部の描写力が凄いのだ。このため、暗い映像でも知覚上、とても情報量が多く感じる。
たとえば木陰の木の皮の凹凸、黒髪の一本一本の陰影、人の顔の陰の部分の肌の肌理などの表現で結構な差が感じられる。こうした普通のディスプレイでバックライトの迷光でグレーに落ちてしまっているような暗部表現はFlexScan HD2452Wでもかなり的確に描画できていたが、FORIS FX2431ではさらにこの上を行く描写力となっているのだ。あまり詳細な情報が出てきていなかった評価期間最初期、この差に驚いた筆者はEIZOに「なにかした?」と質問状を提出してしまったほどである。
その違いの秘密は凄く単純なものであった。
実は、FORIS FX2431は、解像度は先代と同じWUXGAだが、採用液晶パネルのグレードを先代から引き上げ、広色域パネルを採用しているのである。FORIS FX2431の採用パネルはAdobe RGBカバー率96%、NTSC比92%を実現しており、先代のFlexScan HD2452Wを上回るのだ。ちなみに、この広色域スペックは、EIZOのプロ・デザイナー向けの高画質モニターシリーズ「FlexScan SX」シリーズと同等である。FORIS FX2431は色ダイナミックレンジを拡大することで、先代よりも色ディテールの描写力を上げているのだ。この部分の性能向上は、先代までの「ハイエンドホビーユーザー向け製品」という位置づけから一段上がった「プロ用途にも耐えうる製品」という訴求力までを身につけたことになる。今後は、映像制作、デザインワークス、ゲーム開発…など、様々な開発現場への導入検討も始まることだろう。
なお、採用液晶パネルの液晶モードは、先代と同じ、コントラスト性能に優れる垂直配向(VA)型を採用している。最近多く見かける超安価なフルHD液晶ディスプレイはTN型液晶パネルが多いが、画質を重んじるEIZOでは、ここに妥協するはずもなし。FORIS FX2431では、ネイティブコントラストは1000:1、ダイナミックコントラストは2000:1を誇り、一般的な薄型専用テレビ製品と比較しても遜色のないメリハリ感のある画質を達成している。
FlexScan HD2452Wの最大輝度は450cd/m2でFORIS FX2431は360cd/m2。スペック上では20%ほどFORIS FX2431の輝度が抑えられていることになる。大型液晶テレビと同等輝度のFlexScan HD2452Wはやや明るすぎたくらいなので、視認距離が50cm前後となるAVマルチモニターとしてはむしろ20%輝度低減くらいでちょうどいいのだが、ただ、FORIS FX2431の映像を見ると暗くなったという印象がない。
実は、これもどうやら前述した広色域パネル採用の副次的な恩恵のようだ。
広色域パネルにより、暗部方向の色ダイナミックレンジが拡張され、さらに明部の色伸びもよくなったことから、知覚上のコントラスト感が増大されているようなのだ。人間の色覚には、純度が上がった色を見ると、視覚上の輝度が増大するという「ヘルムホルツ=コールラウシュ効果」があることが知られているが、どうやら、FORIS FX2431はこれによって視覚上、必要十分以上の輝度感が得られているのだと思われる。
とにかく、この色の良さは、機能面でほとんど不満がない先代FlexScan HD2452Wのオーナーであっても、魅力に感じることだろう。
EIZOのゲーム映像表示の最適化に対する真剣な取り組みが評価され、FlexScan HD2452Wはゲームモニターとしても評価が高かった。FORIS FX2431にもこの思想は受け継がれており、ゲームモニターとしても著しい進化を遂げている。
まず、ゲームモニターとして最も重視されるのは「表示遅延の少なさ」だ。
最近の高画質テレビは、ゲームモニターとして活用した場合、映像入力端子に入力された映像が実際に画面に表示されるまでわずかの遅延を生じることが常となっている。これは入力された映像が、バケツリレー的に、テレビ内部の高画質ロジックで処理されることが原因だ。過去には多いもので10フレーム近い遅れを生じるものも存在し、とてもゲームモニターとしての活用ができなかったといわれる。ゲームは画面表示に反応してプレイ操作をすることで成り立っているので、ゲーム機の処理内容とその画面表示に時間的なずれが大きいと、最速でプレイヤーが反応してもゲーム上は操作が遅れたと判断されてしまう。いわば常にプレイヤーが不利な状況に置かれることになる。音楽ゲーム、アクションゲーム、格闘ゲームなど、リアルタイム性の高いゲームの種類によってはゲームとして成立しない場合も出てくるのだ。
FORIS FX2431にも高画質化ロジックが内蔵されており、公称最大3フレームの表示遅延があることを認めているが(ここもEIZOの潔さ)、ゲームモニターとして活用する場合は内蔵される高画質化ロジックをバイパスし、さらに遅延を低減させるモードを用意している。
それが「スルーモード」だ。FORIS FX2431は、スルーモード時には、表示遅延を約1フレームに抑えることを達成している。
大手テレビメーカーのテレビ製品でも表示遅延に対策した画調モードとして「ゲームモード」を持つものが増えてきているが、筆者調べでは、そういった製品でも表示遅延は2~3フレーム程度はある。FORIS FX2431の表示遅延約1フレームは業界最速レベルといってよいと思う。
そして、さらにFORIS FX2431には、他にもゲームモニター用途向けのユニークな機能が搭載されている。
それはレトロゲーム機ユーザーに嬉しい豊富な画面アスペクト(画面サイズ)モードの数々だ。
FORIS FX2431には通常の液晶パネルの解像度基準のアスペクト比調整の他に、入力映像の解像度を基準とした様々な画面拡大機能が搭載されているのだ。
設定 | 状態 |
---|---|
ノーマル | 入力信号の解像度のままの大きさで表示。 |
2 ×ノーマル | 「ノーマル」時の表示サイズを縦横比2 倍に拡大して表示。 |
設定 | 状態 |
---|---|
ポータブル(VIDEO 入力時のみ) | プレイステーション・ポータブルの画像を表示するときに選択。 |
リアル | 入力信号の解像度のままの大きさで表示。 |
アスペクト4:3 | 入力信号の垂直解像度を基準にして、4:3 の画面で表示。 |
アスペクト16:9 | 入力信号の垂直解像度を基準にして、16:9 の画面で表示。 |
2 ×リアル | 「リアル」時の表示サイズを縦横比2 倍に拡大して表示。 |
2 ×アスペクト4:3 | 「アスペクト4:3」時の表示サイズを縦横比2 倍に拡大して表示。 |
2 ×アスペクト16:9 | 「アスペクト16:9」時の表示サイズを縦横比2 倍に拡大して表示。 |
FORIS FX2431のリモコンには[画面サイズ]ボタンとゲーム-[サイズ]ボタンの2つがあるが、前者が通常のアスペクト比切り換えのボタン、後者がその入力解像度基準の画面拡大機能の切換用だ。
「リアル」は入力映像を一切解像度変換しないで表示するモードだが、これ以外のモードでは縦解像度あるいは横解像度を基準として等倍、ないしは2倍の拡大表示/アスペクト補正表示を行ってくれる。
できるだけゲーム機からの原信号を忠実に表示したい用途のためのモードなのだが、「リアル」モード以外は、表示ドットが拡大されることになるため、その際にスケーリング回路(スケーラー)のジャギー低減フィルターが介入することになる。
これはFORIS FX2431側がよかれと思ってやってくれている機能なのだが、ドットドットした絵柄が好きなレトロゲームファンにとってはこれが「余計なお世話」と取られることもある。そこで、FORIS FX2431では、画像の輪郭をはっきりさせ、ドット感を崩さずに表示する「リアルイメージ」を搭載している。これはFlexScan HD2452Wにもなかったし、他社同種製品でもあまり搭載例のない珍しい機能だ。
「リアルイメージ」機能は、通常のアスペクトモード選択時には効果が得られず、ゲーム-[サイズ]の表示モードでのみ機能を果たす。ファミコン、スーパーファミコン、ネオジオ、3DO、PS1、PS2、セガ・サターンなどのレトロゲーム機でのゲームプレイ時にはあえて活用してドットドットした味わいを楽しんでみよう。ちなみにレトロゲーム機ではないがWiiは非ハイビジョンゲームなので、現行機ながら、この機能を効果的に活用できるはず。
それと、FlexScan HD2452Wに世界初搭載されて話題となったプレイステーションポータブル(PSP)対応の画面モードも、引き続き搭載されている。PSPは最新のPSP-2000以降でテレビに接続できる機能が搭載されたが、ゲームの映像だけは若干小さく表示されてしまうという特性がある(最新のPSP-3000になっても同様)。しかし、FORIS FX2431では、PSPのゲーム画面を16:9のアスペクト比を維持しながら最大表示できる特別な表示モードが搭載されているため、PSPのメニュー画面もゲーム画面も変わらず全て最大サイズで表示が行えるのだ。
それが「ポータブル」モードである。
これは通常のアスペクトモードではなく、ゲーム-[サイズ]の表示モードで「ポータブル」を選ぶことで有効になる。
当初はメディアプレイヤーと揶揄されたPSPも、最近ではゲーム機としての盛り上がりを見せており、「機動戦士ガンダム・戦場の絆」を初めとして、今ではPSPでしかプレイできない新作大ヒットゲームも多くなってきている。「自室にいるときくらいは大きな画面で楽しみたい」…と考えるPSPのハードコアユーザーは増えてきているはずで、この機能はそうしたユーザーを強く引きつけることだろう。ちなみに、このPSPゲームの大画面モードは、未だに他社のテレビにも搭載されていないユニークなモードであり、EIZO製品だけの独占的機能になっている。
先代FlexScan HD2452Wのオーナーが羨む要素としては、もう一つ、FORIS FX2431へのスピーカー搭載を忘れることはできない。
FlexScan HD2452Wでは、入力された音声は外部スピーカーかヘッドホンで聴くしかなかったが、FORIS FX2431では内蔵スピーカーで直接入力音声を聞くことができるのだ。
接続端子についての詳細は後述するが、各入力系統にステレオ音声入力端子が設けられており、ここに各機器からの音声を入力しておけば、表示映像を切り換えた瞬間から、その映像の音声を鳴らすことができる。具体的に言うと、2台のPC、2台のHDMI機器、2系統のアナログビデオ機器からの音声入力を全てFORIS FX2431側で集約接続できて、表示映像の切換にシンクロしてその入力の音声も再生できるのだ。
スピーカーはフルレンジタイプのステレオ(2W+2W)で、画面下部に配されている。一般的なテレビで言うところのアンダースピーカーデザインということになる。
24V型という中画面サイズのテレビのアンダースピーカーレイアウトながら、再生サウンドのステレオ感は良好だ。音楽よりも高速に左右パンするゲーム効果音を再生していてもかなり的確に定位してくれていた。
また、小径スピーカーでありながら、音量を大きくしてもビビリ音がしないのも特筆すべき点だ。これはスピーカー部を円柱形状エンクロージャにして音声出力周りの剛性を高めたことで実現できたとのこと。これならば、MP3をカジュアルに聴くためのPCスピーカーとしても十分役割を果たせると思う。
なお、背面にはFlexScan HD2452Wと同じように、外部スピーカー出力用のステレオミニジャックは用意されているので、手持ちにお気に入りのスピーカーがあればこれまで通り、そちらで再生することも可能だ。
とはいえ、このスピーカー内蔵によってFORIS FX2431はAVマルチモニターとしての価値とポテンシャルがさらに高まったように思う。
AVマルチモニターは、画質だけでなく、接続性も優秀でなければならない。
先代のFlexScan HD2452Wが、AVマルチモニターとしてはもちろん、ゲームモニターとしても高評価を得た理由の一つに、全ての現行ゲーム機に対して、最も高画質な接続手段を提供できていたこと…というのがあると思う。「接続性の高さ」は先代FlexScan HD2452Wの遺伝子の中でも重きを置かれるところであり、実際、FORIS FX2431は、この遺伝子を引き継いでいる。
デジタルビデオ系端としては実装されるのは、いまや必要不可欠な存在となったHDMI端子。FORIS FX2431ではこれを2系統配備している。
HDMI端子は映像だけでなく音声もデジタル伝送できるデジタル端子であり、AV機器やゲーム機のHDMI端子と、FORIS FX2431のHDMI端子とを一本のHDMIケーブルで接続するだけで、簡単に映像も音声もFORIS FX2431に伝送ができる。
HDMI経由で接続するのが最も高画質となるのはゲーム機ではソニー・プレイステーション3(PS3)とマイクロソフト・Xbox360(後期モデル)など。これらとFORIS FX2431とを1本のHDMIケーブルで接続すれば映像も音声もFORIS FX2431でちゃんと出力できる。PS3やXbox360の電源とFORIS FX2431の電源を入れればすぐに映像と音声付きでゲームがプレイできるのだ。
なお、FORIS FX2431のHDMI端子は、最新のHDMI関連機能の一つであるHDMI CEC(Consumer Electronics Control)への対応がなされ、これも進化ポイントとして訴求されている。これはFORIS FX2431と接続された、HDMI CEC対応のAV機器を連動動作させる機能だ。この機能を活用することで、たとえばDVD/ブルーレイ機器の電源を入れることでFORIS FX2431の電源が入ったり、FORIS FX2431のリモコンでDVD/ブルーレイ機器の再生制御が行えるようになる。接続に難しい手順は不要、ただAV機器とFORIS FX2431を普通にHDMIで接続しておくだけでこの機能が利用できる。ちなみに、PS3、Xbox360はHDMI CECには対応していないので、この機能は活用できない。現状はFORIS FX2431をAVモニターとして活用するためのもの…という捉え方でいいだろう。HDMI CEC機能のためにAV機材を買い換える必要まではないだろうが、すでに手持ちのAV関連機器がHDMI CEC対応製品ならば是非活用したい。
HDMI CEC機能を搭載 |
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この機能の搭載により、HDMI接続下のAV機器の再生制御を付属のリモコンで行えるようになった |
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HDMI CEC機能を活用してパナソニックのビデオレコーダDIGAを制御している様子 |
アナログビデオ入力端子はVIDEO1としてコンポジットビデオ入力/Sビデオ入力(排他仕様)を、VIDEO2としてコンポーネントビデオ入力の端子を持つ。
ちなみに、任天堂・Wii、ゲームキューブ、ソニー・プレイステーション2、マイクロソフト・初代Xboxなどを最も高画質に接続できるのが、このコンポーネントビデオ入力端子になる。これまでSビデオ端子やコンポジットビデオ端子に接続していた人は今すぐ乗り換えよう。
ところで、先代FlexScan HD2452Wではコンポーネントビデオ系の接続端子としてはD端子を備えていた。しかし、今回のモデルチェンジでFORIS FX2431はY,Pb/Cb,Pr/CrのRCAピンプラグ3端子式を採用し、D端子を実装していない。ゲーム機との接続ケーブルを購入する際には注意したい。なお、コンポーネントビデオの映像信号自体はD端子と同じであるため、変換ケーブルなどを用いれば相互接続は可能だ。
PC入力はデジタルRGB接続に対応したDVI-D端子のPC1入力と、アナログRGB入力に対応したミニD-Sub 15ピンのPC2入力の2系統を装備する。2台のPCをそれぞれの端子に接続することで、1台のFORIS FX2431を2台のPCで共用することもできる。ゲーム機では、セガ・ドリームキャストやHDMI非実装の初期型Xbox360などはミニD-Sub 15ピン端子を用いたアナログRGB接続することで最も美しい映像が得られる。2台のPCで活用しない場合は、ミニD-SUB15ピン端子を余らせておくのはもったいないので、そうしたゲーム機を接続するのもいいかもしれない。
FORIS FX2431には親子画面(ピクチャー・イン・ピクチャー;PinP)の2画面機能も搭載されているので、複数のAV機器やゲーム機を集約的にFORIS FX2431に接続した場合にはこの機能を活用すると便利だ。
FORIS FX2431の2画面機能は「PC画面が必ず親画面となる」という制約はあるが、子画面の方は任意のビデオ入力、HDMI入力が選択できる。ゲームロビーにプレイヤーが集まるまでの待ち時間などは子画面でゲーム画面の方をモニタリングしつつ、親画面のPC画面で仕事をしたりWebやメールをする…といった「ながら」作業にはとても便利な機能だ。なお、「いざゲーム開始!」となったときはリモコンの[全画面]ボタンを押せば瞬間的に子画面のゲーム画面の方を全画面表示に切り換えられる。
再生音声は親画面のものだけでなく子画面の方の音声に切り換えることもできるので、子画面の方にDVD/ブルーレイ機器を接続してあるのであれば、ミュージックビデオなどを子画面で流しながらPC作業をする…なんていう贅沢な活用も可能だ。
豊富な接続性を2画面機能に結びつけて活用すれば、いろいろと便利に使えそうだ。
FlexScan HD2452Wで好評だった充実のUSBハブ機能はそのままFORIS FX2431へ継承されている。
FORIS FX2431にはPC1、PC2の2系統のUSBアップストリーム入力端子を装備しているので、あの便利なUSBハブ機能が引き続き利用できるのだ。PC液晶モニターにUSBハブ機能を搭載した製品はいまや珍しくはないが、FORIS FX2431のように、表示しているPC映像に連動したPC切換機能を有しているのは少数派。
具体的に言うと、FORIS FX2431側のUSB端子(ダウンストリーム)をPC1表示時はPC1のUSBハブとして、PC2表示時にはPC2のUSBハブとしてスイッチングしての利用ができるのだ。だからたとえば、FORIS FX2431側のUSB端子(ダウンストリーム)にキーボードとマウスを接続しておけば、PC1、PC2への画面表示切り換えと同期して1セットのキーボード&マウスの接続をPC1、PC2へと切り換えられる。つまり、FORIS FX2431がPC切換機の役割を果たしてしまうのである。
なお、FlexScan HD2452Wに搭載されていたUSBオーディオ機能はFORIS FX2431のスピーカー内蔵に伴って廃止されている。ただし、前述したように2台の各PCからFORIS FX2431に入力したそれぞれの音声は、PC映像の切換にシンクロしてFORIS FX2431内蔵スピーカーから再生されるので、むしろ利便性としてはFORIS FX2431の方が向上している。
実際に、今回の評価ではいくつかのゲームをプレイしてみた。
まず、チェックしたのは表示遅延がゲーム性に強く響いてしまう格闘ゲーム。プレイに用いたのは最近作の「ストリートファイターIV」だ。業界最速の表示レスポンスは伊達ではなく、操作感に違和感はなし。
使用したのはもちろん「スルーモード」だ。「スルーモード」では高画質ロジックをバイパスされるが、ゲーム機からの映像はベースバンドの生フレームが伝送されてきているので、そもそもからして、高画質化ロジックの介入はいらないのだ。むしろ、このスルーモードの表示の方が自然なのである。スルーモードでも、パネル元来の高速応答性とオーバードライブ回路との組み合わせは活かされるので、ゲームプレイに支障の出るような残像はない。
表示画質を検証するために、その映像美が話題となっている「バイオハザード5」もプレイしてみた。
このゲームの映像は日中のアフリカの屋外と、ダンジョンのような暗い屋内を冒険していくシチュエーションから構成されており、ステージによって明暗の落差が激しい。FORIS FX2431では映像の平均輝度に応じてバックライト輝度を増減するダイナミックコントラスト機能が搭載されているため、この明暗の激しいシーンをダイナミックに描き分けてくれる。暗いシーンでは、暗部階調が正確に、しかも、漆黒に近い領域まで正確に色味を残して描き出してくれているため、暗いシーンでも立体感がある。
お勧めのプリセット画調モードはVIDEO入力系ならば「カスタム」がいい。画調「カスタム」は、本来は、調整のためのベース画調なのだが、このモードのデフォルト状態の具合がいい。コントラスト感と階調表現のバランスの落としどころがうまく、それでいて、FORIS FX2431の色ダイナミックレンジの広さも体感できるよくできた画調となっている。お勧めだ。
今回紹介したFORIS FX2431には兄弟モデルが存在する。それはテレビ機能を搭載したFORIS FX2431TVだ。
FORIS FX2431TVの方は、すでにAV Watchの方で紹介しているので詳細はそちらを参照して欲しいが、基本的に、両者はTV機能の有無とそれに対応したリモコンの違いだけで、基本的な画質性能、接続性において両者に差はない。
価格差は3万円となっており、これが、かなり悩ましい。
もし、ちょうど今、パーソナルユースの地デジ対応テレビの購入を検討し、なおかつAVマルチモニター、ゲームモニターの購入を検討しているならばFORIS FX2431TVの方がお勧めだ。
PCモニターの買い換えなどを検討していて、しかもPS3、Xbox360などのハイビジョンゲーミング環境も整えたいというのであれば、FORIS FX2431がいいだろう。
なお、発売を記念して、EIZOでは、お買い得なセットキャンペーンを展開している。特に筆者が気になっているのはPSP-3000とPSP映像ケーブル、PSPゲームソフトが本体価格+15,000円で買えるというメニュー。ゲームファンは要チェックだ。
FORIS FX2431とFORIS FX2431TV。FlexScan HD2452Wユーザーである筆者が通してチェックしてきて、特に気に入ったのはその発色のよさ。ここは正直、FORIS FX2431/FORIS FX2431TVの方がさらによくなっていて、かなりうらやましい…。