トピック

第2回

重大な“見守り”問題 見守りサービスをいろいろ試す【ITを介護の味方にする】

見守りをどうするか問題。写真はNTTドコモの「イマドコサーチ」

前回は、母の介護を開始した直後に行なった、マイナンバーカードの作成と活用について紹介しました。

今回は、認知症の介護のうえで重要な要素となる”見守り”について、筆者がどういう対策を行なってきたのか紹介しようと思います。

位置を確認できる携帯電話に機種変更

前回紹介したように、認知症を発症した母の面倒を見ていた父が他界したことで、それからは筆者が実家で生活しながら母の面倒を見ることになりました。

筆者自身はフリーライターなので、ほとんどの仕事は自宅で行なっています。ちょうど実家に移り住んだ当時は、コロナ禍が開けてそろそろ日常が戻ってくるというタイミングでしたが、筆者が参加する発表会などはまだ多くがオンライン、またはハイブリッドで開催されていましたので、実家でも空いている時間に仕事ができていました。

ただ、仕事をしている間は母から目が離れてしまいます。

実際に、仕事をしている間に母がどこかに出掛けてしまう、ということも頻繁に発生していました。それでも、長くて1時間程度で問題なく家に戻ってきていましたので、当初はそれほど心配していませんでした。

とはいえ、1人での外出は心配ですし、だからといって筆者が母を四六時中監視するのも無理です。そこで、もし母が出掛けたとしても、どこにいるのかリアルタイムでわかるようにしておくべきだろう、と考えました。

そういった用途に活用するデバイスとしては、スマートフォン、スマートウォッチ、GPSトラッカー、スマートウォッチ、スマートトラッカーなどがあります。もちろんそういった機器の利用を真っ先に考えましたが、まずは別の手段を利用することにしました。

母は認知症ではありますが、以前から使っている物については、それが何か、そしてなぜ持っているのかを判断できています。それに対して、それまで使っていない新しい物は、自分の物じゃないと言って一切持ちたがりません。また、バックの中身をテーブルに出して確認し、納得したらバッグに戻す、といったことを毎日必ず行なっています。ですから、その中に自分の知らない物があったら、間違いなくどこかに追いやられてしまうのです。

実際に、ダミーのグッズをこっそりバッグの奥底に忍ばせてみたのですが、翌日にはテーブルの上に出されていました。そのため、以前から慣れ親しんでいる物でなんとかできないか、と考えたわけです。

まず、母が出掛ける時に持ち出す物を精査してみたところ、携帯電話をほぼ必ず持って出掛けていることがわかりました。そして、母の携帯電話のキャリアであるNTTドコモは、携帯電話やスマートフォンの位置を検索できる見守りサービス「イマドコサーチ」を提供しています。これはいけると思ったのですが、調べたところ、その時点で母が使っていた機種「らくらくホン ベーシック3 F-08C」は残念ながらイマドコサーチ非対応機種で、イマドコサーチを利用するには対応機種に機種変しなければならないと判明しました。

NTTドコモが提供している見守りサービス「イマドコサーチ」

機種変して携帯電話が変わってしまうと、見慣れない物として母が持ってくれない可能性がありますので、これもだめかと諦めかけたのですが、もう少し調べてみると、イマドコサーチ対応の最新機種(とはいっても2019年発売のモデルですが)「らくらくホン F-01M」は、母が使っているF-08Cと外観やカラー、ボタン配置など見分けがつかないほど同じだとわかったのです。

これなら機種変しても自分の物と認識してくれるはず。そう考えて、思い切って機種変することにしました。

母が使っていた携帯電話「らくらくホン ベーシック3 F-08C」
F-08Cは残念ながらイマドコサーチに対応していなかったため、対応機種に機種変することにした

実際に機種変してわかったのですが、F-01MとF-08Cは、見た目はもちろんですが、機能や操作性もほとんど同じでした。母も、これまでと変わらない携帯電話として問題なく認識してくれたので、ひと安心でした。あとは、筆者が見守る側としてイマドコサーチを契約(月額利用料は220円)、母の携帯電話を見守る相手として登録して準備完了です。

機種変した「らくらくホン F-01M」。外観やカラーはF-08Cとほとんど同じだった
ボタン配置や操作性、機能もほぼ同じで、母も機種が変わったとは思わず、それまで通り使えている

F-01Mは、イマドコサーチで提供されている機能のうち、移動経路を追える「移動みまもり検索」や、少し前の居場所がわかる「ちょい前かくにん」といった機能には非対応で、現在位置の検索のみが可能と、機能的には弱いのは少々残念です。

とはいえ、今いる場所がわかるだけでも十分活用できています。その精度もなかなか正確で、条件が良ければほぼピンポイントで、条件が悪くても数十m程度の誤差で位置がわかりますので、どこにいるかを判断するには十分です。

それ以降、筆者が目を離している隙に母が外出しても、イマドコサーチで現在の居場所がわかるだけで安心できますし、機種変して正解でした。

筆者のスマホでイマドコサーチのサイトを開いて、携帯電話の現在位置を検索できる
測位精度は条件によって多少変わるものの、概ね申し分ない制度で位置がわかるので、便利に活用できている

イマドコサーチでは対処できない事態が発生 GPSトラッカーを導入

携帯電話をF-01Mに機種変してからは、母が外出してもそこそこ安心できていたのですが、しばらくすると別の問題が発生するようになりました。

母が出掛ける時は徒歩が多いのですが、たまに自転車で出掛けることもあります。そして、自転車で出掛けたときに、出掛けた先で自転車で来たことを忘れてしまい、自転車を置いたまま徒歩で帰宅することが何度か発生するようになったのです。

母はたまに自転車で外出するが、外出先に自転車を置き忘れて帰宅することが増えてきたため、GPSトラッカーの導入を決意

母が出掛ける時に、見つからないように後ろからこっそり付いていったり、イマドコサーチで居場所を検索することで、出掛ける先やルートがほぼ同じとわかっていましたので、そのルートに沿って探すことで自転車は見つけられていましたが、かなり手間はかかってしまいます。しかも、その間は家から離れますので、母の見守りもできなくなります。

さすがにこれはまずいな、と考えて、GPSトラッカーの導入を真剣に考えるようになりました。

最初に考えたのは、「AirTag」のような忘れ物トラッカーです。忘れ物トラッカーは現在位置を検索できますので、自転車に取り付けておけば簡単に位置を割り出せます。ただ、東京や大阪といった大都会ならともかく、筆者の実家のような地方都市では場所によっては近くにiPhoneなどスマートフォンを持つ人がほとんどいない可能性も十分考えられますから、その点でちょっと不安がありました。

また、どうせなら移動経路も追えるといいな、と考えました。イマドコサーチで利用できない機能を補いたいという考えがあってのことですが、忘れ物トラッカーでは移動経路は追えません。

となると、GPSトラッカーしかないという結論に至り、最終的に選んだのが、mixiのGPSトラッカー「みてねみまもりGPS」の第2世代モデルです。忘れ物トラッカーとは違い、GPS衛星や携帯電話基地局、Wi-Fiアクセスポイントなどを利用して測位しますので、高精度に位置がわかりますし、90秒から3分間隔で測位するので移動経路も追えます。自転車なら隠して装着することも簡単ですから、取り出される心配もありません。

というわけでこちらを導入。購入価格が5,280円で、月額利用料が528円かかりますが、見守りの安心料と考えるとそこまで高くはないという印象です。

選んだGPSトラッカーは、mixiの「みてねみまもりGPS」の第2世代モデルだった

みてねみまもりGPSを自転車に取り付けて以降も、何度か自転車を外出先に置き去りにして徒歩で帰ってくることがありましたが、こんどは置き場所を簡単に見つけ出せますし、外出時の移動経路もわかるようになりました。データは残念ながら残っていませんが、測位精度もイマドコサーチと変わらずかなり高精度で、移動経路もバッチリ確認できるようになったことで、イマドコサーチだけの時よりも安心度は大きく向上したと感じました。

自転車の前カゴの中に、わからないようにみてねみまもりGPSを入れておくことで、自転車の場所や移動経路がわかるようになって安心度が向上

2代目GPSトラッカーの導入と、持たせる工夫

みてねみまもりGPSを導入して半年ほどは問題なく運用できていました。しかしある日、母が帰宅後に自転車にカギをかけたまま、そのカギが紛失してしまったのです。それ以降、母は自転車で出掛けることはなくなりました。

そもそも母は80歳を超える高齢ということもあって、以前から自転車で出掛けることは危険と考えていましたので、これ幸いではありました。

ただ、逆にせっかく用意したみてねみまもりGPSを活用する場面がなくなってしまいました。

とはいえ、移動経路が追えるという点はとても便利なので、こんどは母が出掛ける時に常に持って行くバッグに入れてみることにしました。そこは、取り出されること前提ではありましたが、なるべく取り出されないような工夫を考えてみました。

その工夫として試したのは、お守り袋に入れる、というものでした。お守りならバッグに入れたままにしておいてくれるんじゃないか、といった期待があったからです。

みてねみまもりGPSをお守り袋に入れて母のバッグに入れてみたが、ある日バッグから取り出され、自宅内で見失ってしまった

すると、怪訝そうな印象ながらも、バッグに入れたままにしてくれたのです。お守り効果はなかなかなものでした。それ以降は、徒歩で出掛けても移動経路が追えるようになりましたし、自宅などあらかじめ設定した場所から離れたり戻るとスマホに通知も届きますので、筆者が自宅から離れた場所にいても母が出掛けたり家に戻ったことを把握できて、より安心できるようになりました。

しかしある日、母が出掛けたのに、位置が自宅から移動しなくなったのです。どうやら、母がGPSの入ったお守り袋をバッグから取り出して、家の中のどこかに置いたようなのです。位置情報から自宅に存在することはわかるのですが、結局見つけ出せませんでした。

というわけで、新たなGPSトラッカーを導入することに。これまでと同じ、みてねみまもりGPSでも良かったのですが、別のも試してみようかと、次は+StyleのGPSトラッカー「まもサーチ3」にしました。機能的にもみてねみまもりGPSとほぼ変わりませんから、その点も安心です。購入価格は、割引きがあったことで3,680円でした。月額利用料は528円と、みてねみまもりGPSと同じです。

みてねみまもりGPSを見失ったため、新たに+Styleの「まもサーチ3」を購入

あとは、どうやってバッグから出されないようにするか、です。前回と同じようにお守りカモフラージュ作戦もいいのですが、こんどはストレートに、まもサーチ3本体に「カバンに入れておくこと」と書いてみることにしました。すると、この作戦が見事にはまり、それ以降バッグから出されることがなくなって、現在も活用できています。

あとから考えると、はじめからこの方法でやればよかったのは反省点ですが、とにかくうまくGPSトラッカーを活用できるようになってひと安心です。

今度はお守り袋に入れず、本体に「カバンに入れておくこと」と書いてみると、それ以降バッグから取り出されることはなくなった
まもサーチ3で確認した移動経路や場所はかなり正確で、見守りという点で大いに活躍している。なお、みてねみまもりGPSもこれと同等の精度で位置や経路を確認できていた

今回は、母が外出するときの見守りについて紹介しましたが、次回は自宅内の見守りについて紹介しようと思います。

平澤 寿康