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VRChatは日本展開が加速中 ビジネス部門トップに聞く

VRChatのWebサイト

現在、VRメタバースやVR SNS界隈で中心的な存在になっているのが「VRChat」だ。3DCGで作られた“ワールド”に好みのアバターで集合して、ワールドの世界観を楽しんだり雑談したりできるというサービスで、居心地が良いと感じる人には利用が定着している。

本誌では、VRChatにハマった人に最適なデバイスを開発しているShiftallをはじめ、G-SHOCKにまつわるVRワールドを制作したカシオ計算機、3Dアバターの販売プラットフォームとして定番の「BOOTH」にそれぞれインタビュー取材を行なうなど、VRメタバース関連の情報をお届けしている。

今回、米VRChatのビジネス部門でトップを務めるJason Camillo(ジェイソン・カミロ)氏が来日するにあたり、短い時間ながらインタビュー取材をする機会を得た。カシオとVRChatが提携していることもあり、カシオの展示会の会場にて話を聞くことができ、カシオのVRメタバースの取り組みなどについても同氏に聞いている。

米VRChatのビジネス部門でトップを務めるJason Camillo(ジェイソン・カミロ)氏

ワールドはさらに多彩に

VRChatの歴史は思いの外古く、PC向けとして2014年からスタートしている。その歴史を振り返ると、対応するデバイスが増えることで、ユーザーが拡大してきた特徴があるとのこと。ユーザー数が大きく拡大したのは、VRヘッドセットの「Quest」シリーズなどへの対応や、Androidデバイスに対応したことがきっかけで、それまではマニア/オタク向けだったところが、カジュアルユーザーにも拡大したという。

VRChatはグローバルで提供されているプラットフォームだが、ユーザー側で自由にワールドを制作でき、好みのワールドをVRChatのプラットフォームからダウンロードして、友人らとアバターで集まるという構造。ワールドの内容次第でさまざまな楽しみ方ができるようになっている。

最近では、VRChatのワールドの制作においてギミックなどのプログラミングに使われる「Udon」システムが「Udon 2」にバージョンアップすると案内されている。Udon 2はパフォーマンスが向上、幅広いギミックが可能でゲーム世界のようなワールドを制作できるようになる、クリエイターの収益化に対応するなど、広範なアップデートになる見込みで、大きな期待が寄せられている。

日本語話者は最大人口グループのひとつ

カミロ氏は、VRChatにおいて日本のユーザーは「非常に重要な存在」と指摘している。これはお世辞というわけではなく、VRChat内において日本語話者は最大の人口グループの1つになっているという。

こうした人気を受けて、ここ数カ月はユーザーインターフェースのローカライズが急ピッチで進行中。カミロ氏は「今年一番興奮する出来事だ」として、フル・ローカライズに全力で取り掛かっている様子を語っている。日本語版UIは2024年中に提供される見込みになっている。

ほかにもVRChatでは、日本語の公式SNSアカウントを開設したり、日本にサーバーを設置してスムーズにサービスを提供できるようにしたりといった対応を進め、日本市場の拡大を推進している。

企業の参入、欧米からも注目

日本市場は新技術や先端技術への関心が高く、ユーザーのみならず、企業や公的機関からの関心が高いのも特徴とのこと。カシオのように、今後も日本企業の参入が続く可能性が高いという。

企業がワールドを制作するといった形でVRChatのメタバースに参入する背景については、現実世界でできないことを提供できるという点が重要であり、エンドユーザーにエキサイティングな体感や環境を提供しながら、企業・ブランドとユーザーをつなげる役目が期待されているという。

また、前述の日本語話者の人口が多いことと合わせて、「日本のユーザーはVRChatの文化に多大な影響を与えている」とも指摘しており、プロモーションにVRChatを活用する日本の企業に対しても欧米市場から注目が集まるという。過去数年間に渡って、日本の企業のみならず政府関連や大学といった機関から問い合わせがあるとのことで、ビジネス的観点でみれば、アメリカを含むほかのどの国よりもVRChatへの期待が高まっている国であるとしている。

カミロ氏は、G-SHOCKの耐久試験をライド型コンテンツに落とし込んだカシオ製作のVRChatワールド「G-SHOCK THE RIDE in VRChat」について「ファンタスティックだ」と太鼓判を押しているほか、アバター用アクセサリーとして、(時刻を確認できる)G-SHOCKのデータを販売している点もユニークと評している。

G-SHOCK THE RIDE in VRChat

カミロ氏のお気に入りは?

前述のように、VRChatのワールドはユーザーのアイデア次第ということもあり、その内容・種類は非常に多岐にわたる。ビジネス部門を統括するカミロ氏のお気に入りのワールドや、印象に残っているワールドはどんなものだろうか。

カミロ氏はまず、ラウンジやバーを含めて豪華でおしゃれなホテルに滞在している体験ができる「Hotel MorningStar」が特に気に入っているとのこと。これを制作したLucifer MStar氏のワールドはどれもお気に入りという。

また、高品質な水族館コンテンツ「Aquarius」もオススメとのこと。こちらは、現在はVRChatの社員というFins氏が制作するワールドで、非常にクオリティが高い。

ほかにも、新宿のゴールデン街を模した日本の制作者による「ポピー横丁-Poppy Street-」や、鴨の行進と遊ぶ「Udon Bird Sanctuary」、パターゴルフのワールド「Putt Putt Pond」などがお気に入りとのことだった。

太田 亮三