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東日本大震災から13年 スマホでできる災害への備え

2011年3月11日に発生した東日本大震災から今年で13年です。

13年の間に2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震といった大規模地震が発生、今年は元日に最大震度7を記録した能登半島地震が起きるなど、日本で地震災害を避けて通ることはできません。

一方で地震のたびに防災対策も進化を遂げています。特にスマートフォンは災害の備えから災害情報の収集、家族や友だちに無事を伝える情報の共有や発信、自分の命を守る機能まで利用できるなど、最も頼りになるツールになりました。ここでは災害に備えるスマホの設定などをまとめました。

スマホでできる災害への備え

災害時に最も重要なのが情報収集です。スマホアプリを利用することで信頼できる正確な情報をいち早く収集することができます。

エリアメールと緊急速報メール

スマホや携帯電話には、気象庁、各省庁、地方公共団体が配信する災害・避難情報を被災の恐れがある特定エリアに、一斉配信する緊急速報機能が備わっていて、ドコモは「エリアメール」、その他のキャリアは「緊急速報メール」として提供しています。

「ブイッ、ブイッ、ブイッ、地震です!」といった警報をスマホで受け取ったことがある人も多いと思いますが、これも緊急速報機能によって実現されています。


    【エリアメール、緊急速報メールで配信される情報】
  • 緊急地震速報
  • 津波警報
  • 気象等に関する特別警報
  • 災害・避難情報

メールといってもメールアドレス宛ではなく、国内4キャリアの基地局からスマホなどの端末宛に送られ(MVNO含む)、通勤時や旅行時に被災した場合でも災害情報を受け取ることができます。

エリアメールと緊急速報メールを利用するには以下の受信設定が必要です。

iPhoneでは設定画面>通知(1番下までスクロール)>緊急速報をオンにします

Androidについては機種や契約しているキャリアによって設定方法が異なるため、以下のページから確認してください。利用している機種が緊急速報メールに対応していない場合は、防災アプリの緊急地震速報を利用しましょう。

ドコモ:https://www.docomo.ne.jp/service/areamail/usage/index.html
au:https://www.au.com/mobile/anti-disaster/kinkyu-sokuho/jishin-sokuho/
ソフトバンク:https://www.softbank.jp/mobile/service/urgent_news/
楽天モバイル:https://network.mobile.rakuten.co.jp/service/emergency-alert-mail/
ワイモバイル:https://www.ymobile.jp/service/urgent_mail/
UQ mobile:https://www.uqwimax.jp/mobile/support/faq/pages/000009286/
LINEMO:https://www.linemo.jp/support/faq/view/27305

なお、受信設定をオンにしていても、機内モードがオンになっているとき、圏外のとき、電源オフのとき、通話中/データ通信中のとき、Wi-Fiのみオンになっているときなど、基地局に接続できない場合は、緊急地震速報を受け取ることはできません。

Yahoo!防災速報

エリアメールと緊急速報メールは、圏外など基地局の電波を受信できない状態では、緊急地震速報を受信できません。

しかし、「Yahoo!防災速報」のようなスマホアプリであれば、Wi-Fiなどに接続してインターネットを利用できる状態なら緊急地震速報を受信することができます。

また、エリアメールと緊急速報メールの緊急地震速報は震度4以上の地域だけに配信されますが、Yahoo!防災速報アプリでは、震度3以上/震度4以上/震度5以上と、通知の条件を好みに合わせて変更することも可能です。

地域設定を行なえば、自宅や職場、実家など現在地以外の通知も受け取ることができます。

地震が多発している時に「緊急地震速報の音が怖い」という声もよく聞かれますが、Yahoo!防災速報アプリでは、優しい音に変更したり、音を鳴らす/鳴らさない時間を指定するなど細かく調整もできます。

さらに、災害時の備えに役立つ機能も豊富です。

住所を入力するだけで水没の恐れがあるか(水害)・地盤の硬さに応じて揺れやすいか(地震)・浸水の恐れがあるか(津波)による自宅周辺の危険度チェックや、自治体のハザードマップ確認、自宅周辺の避難先確認・保存機能を備えています。

災害に応じた住宅周辺の危険度チェック

筆者が特に便利だと感じたのは備蓄品リストの作成機能で、何をどれだけの量、そろえればいいのかわからない状態でも家族構成(性別・年齢・人数)を入力するだけで、必要な備蓄品リストが作成されます。

災害の備えに欠かせない備蓄品リスト

特務機関NERV防災アプリ

特務機関NERV防災アプリ」もYahoo!防災速報アプリと同じようにWi-Fiなどネットが使える状態であれば緊急地震速報を受信することができます。

アプリの名前はエヴァンゲリオンに登場する特務機関NERVに由来していますが、怪しいアプリではなく、ロゴマークと共にエヴァンゲリオンシリーズの著作権者および権利管理会社の許諾に基づいて使用されています。

防災気象情報と地図を統合したデザイン

防災アプリとは思えないほど洗練されたデザインや、地震の主要動が来るまでのカウントダウン機能が好評です。特に気象庁が指定する気象業務支援センターと接続した専用線からダイレクトで受け取る防災気象情報の信頼性は高く、情報の速さはアプリストアのレビューでも高く評価されています。

現在地以外の通知を受け取れる地域設定にも対応しており、Yahoo!防災速報アプリと同じ3地点までですが、月額課金で6地点に増やすこともできます。

NHKニュース・防災アプリ

NHKニュース・防災アプリ」では、各地の災害情報や避難情報に加えて、災害によって被災地で何が起きているのかを知ることができるニュースや速報を確認することができます。

災害時に重宝するのはNHKのニュース番組をネットで同時配信する「放送同時提供」で、テレビが周りにない時や地震でテレビが見れなくなった時でもスマホがあれば災害情報をチェックできます。

モバイルバッテリーの準備・見直し

災害時に欠かせないモバイルバッテリーも準備や見直しましょう。

特に最近のスマートフォンは5000mAh前後の大容量バッテリーを搭載している機種が多く、数年前に購入したモバイルバッテリーの場合は、スマホを1回分すら充電できないことがあります。

家族分のスマホを充電する必要がある場合は、買い増しや10,000mAhや20,000mAhといった大容量製品への買い替えを検討してもいいかもしれません。

最近では「Anker Nano Power Bank (30W, Built-In USB-C Cable)」のように、充電ケーブルや端子を一体にすることで避難時に充電ケーブルを忘れても充電できるモバイルバッテリーも販売されています。

被災した時に役立つ機能

被災して万が一、怪我を負ったり、意識を失って命が危機に瀕した時に役立つ機能をまとめておきます。

救助者に重要な医療情報を伝える「メディカルID」

応急手当を受ける際に重要な医療情報を救助者に伝えることができない場合、救助者がスマホを操作することで、氏名や血液型、アレルギー、妊娠の有無、服用している薬、臓器提供、緊急連絡先など確認できる機能が備わっています。

以下の手順を参考に情報を設定しておきましょう。

iPhoneでは、設定画面>ヘルスケア>メディカルIDにて、画面右上の「編集」をタップして設定が可能です
Androidでは、設定画面>安全性と緊急情報>医療に関する情報にて設定できます。

ボタンを押すだけで救助を呼べる「緊急SOS」

怪我などを負って自力で救助を呼ぶのが困難になった時に役立つ機能「緊急SOS」もiPhoneとAndroidの両方で利用できます。

iPhoneでは、サイドボタンを素早く5回押すか、サイドボタンと音量ボタンを同時に長押しすると、カウントダウンが開始。助けを呼ぶ警報が鳴り、カウントダウンが終了すると、自動的に緊急通報する「緊急SOS」機能が利用できます。

iPhoneは設定画面>緊急SOSから機能をオンに

Androidでは、電源ボタンを素早く5回以上押すと、5秒のカウントダウン後に緊急時のアクションが開始します。

緊急時のアクションには、110番など通報用の電話番号に発信したり、家族など緊急連絡先に電池残量やリアルタイムの位置情報を共有したり、緊急時の様子を動画で記録する機能が含まれます。

Google Pixelは設定画面>安全性と緊急情報>緊急SOSからアクションの設定が可能

なお、カバンの中に入れたスマホのボタンが意図せず連続で押されて緊急SOSが起動することもあることから、機能オフを呼びかける声も時々見かけますが、災害に関わらず自分の命が危機に瀕した時に役立つ機能のため、十分に注意した上で利用することをオススメします。

安否情報の発信と情報共有

災害情報の収集と同じぐらい大切なのが安否情報の発信と、避難所や連絡先を家族や友だちと共有することです。

家族で避難所や連絡先を共有する

災害時、家族が一緒にいるとは限りません。異なる場所で被災することも想定して、自宅近くの避難所はもちろん、それぞれの職場や学校近くの避難場所、電話番号などの連絡先について情報を事前に共有しておきましょう。

近くの避難所を調べる際は、Yahoo!防災アプリで利用できる避難場所マップが便利です。現在地情報や登録した地域付近の避難場所を地図上で確認できます。

地図上で避難場所を確認できる「避難場所マップ」

災害用伝言板

地震などの大規模災害が発生すると、被災地への発信が大量に発生するため、回線が混雑して特に音声通話がつながりにくくなることがあります。

そこで登場するのが各キャリアが提供している災害用伝言板と、NTT東西が提供している災害用伝言版(web171)です。

被災した人が「無事です。」「被害があります。」「自宅に居ます。」「避難所に居ます。」といった状況に加えて、全角100文字以内のコメントを書き残すと、当人と連絡を取り合えなくても災害用伝言板にアクセスして安否を確認できます。

災害用伝言板の伝言登録画面

各キャリアが提供している災害用伝言板にメッセージを登録するには、各キャリアの回線契約が必要ですが、NTT東西が提供している災害用伝言板(web171)はキャリアの回線契約がなくても登録が可能。

各伝言板は相互検索できるため、例えば、ドコモの災害用伝言板に登録されたメッセージもNTT東西の災害用伝言板(web171)から確認できます。

災害用伝言ダイヤル

NTT東西は30秒の声で伝言を残せる災害用伝言ダイヤル(171)も提供しています。

全国に分散されたシステムで運用されていて、被災地の回線が混雑している場合は、被災地以外で伝言を預かるため、災害時でもつながりやすく、文字よりも相手に安心してもらいやすい声で伝言を残すことができます。

LINEの安否確認機能

災害用伝言板はメッセージを登録する人、確認する人がサービスの存在を知らないと利用できません。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によると認知度は49%で約半数が災害用伝言板の存在を知らず、災害時に利用した経験がある人はわずか4%と報告されています。

筆者も存在こそ知っていましたが、実際に利用したことはなく、今年1月に発生した能登半島地震で活用したのはLINEの安否確認機能でした。

LINEの安否確認機能は、大規模な災害が発生すると、ホームタブ上部に赤色のバナーが表示されて、安否を報告したり、家族や友達が登録した安否情報を確認できます。

震度6以上の地震が発生するとLINEに安否確認機能が表示される

LINEは認知度、利用率ともに高いため、能登半島地震の際には、被災地に住む友達数人も利用していました。災害用伝言板と違って電話番号を知らない相手の安否情報を確認できることも大きなメリットです。

なお、運用期間については災害が落ち着いたタイミングで表示されなくなると案内されており、災害用伝言板よりも短く、能登半島地震の際に確認できた安否情報はすでに確認できなくなっています。

人探しができるパーソンファインダー

災害用伝言板やLINEの安否確認機能で連絡が取れない場合は、Googleが提供する「パーソンファインダー」で人探しができます。

災害用伝言板は相手の電話番号を知っている必要があり、LINEの安否確認機能はLINEで友だちとして繋がっている必要があるなど、近い間柄の安否確認ができますが、パーソンファインダーは電話番号に加えて、名前検索(漢字はもちろん、かな検索も)で安否を確認できます。

安否情報の登録では、名前や住所などテキスト情報に加えて、写真やSNSのアカウントなどネット上に公開されているプロフィールページ、最後に見かけた場所を位置情報として追加することで人探しに役立てることができます。

24時間が経過すると記録が削除される体験版

本人はもちろん、他人が情報を登録・訂正することも可能。安否情報が更新された時にはメールで通知を受け取ることもできます。

重要な災害時のスマホの電池節約術

災害時は停電が発生したり、コンセントの口数が限られている避難所では、好きなタイミングでスマホを充電できないこともあります。

スマホを充電できるまで電池を節約しなければいけない時間が増えますが、手当たり次第に機能をオフにすると、必要な情報が受け取れなくなる(機内モードでは緊急速報メールを受け取れないなど)こともあります。

まずは省電力設定から

スマホの省電力設定はやりすぎると利便性が大きく損なわれるため、まずはスマホに標準で備わっている省電力設定から始めましょう。

iPhoneで利用できる「低電力モード」では、5Gや画面の明るさ、画面のなめらかな動作(ProMotionディスプレイ)、アプリのバックグラウンドなどを制限したり、自動ロックの時間を短くすることで電池消費を節約します。

設定画面>バッテリー>低電力モードをオンにする

Androidでも同じように機能を制限することで電池消費を節約できる「バッテリーセーバー」や各メーカー独自の省電力機能が用意されています。

設定画面>バッテリー>バッテリーセーバー>バッテリーセーバーを使用をオンにする

通信障害時は機内モードを利用する

通常時の通信障害と異なり、災害時は数週間や数カ月など長期に及ぶことがあります。圏外ではスマホが電波を頻繁に探すことで電池が急速に減少するため、障害復旧の見通しがたたないうちは、機内モードを積極的に利用して電池を節約することをオススメします。

機内モードの状態ではエリアメールや緊急速報メールが受け取れないといった支障もあるため、通信が復旧次第、機内モードはオフにしておきましょう。

なお、最新版のiOS/Androidでは、機内モードをオンにした状態でもWi-Fiをオンにすることができます。

ついに衛星とスマホの直接通信がやって来る

東日本大震災の発生から13年が経つ今、災害への備えから情報収集・発信・共有までスマホ1つで可能になりました。いつ来るかわからない災害に備えて、しっかり準備しておきましょう。

なお、大規模災害時に通信手段が失われ、復旧に時間がかかるのは現在も同じですが、ついにKDDIがスペースXとの提携によって2024年内をめどにスマホと衛星の直接通信サービスを開始する予定です。また、楽天モバイルも2026年内のサービス開始を目指しています。

サービスが正式提供されれば、災害によって地上の基地局が利用できなくなっても、空が見える場所であれば、通信環境を維持できるなど、ますますスマホは災害時の重要なツールになりそうです。

Yusuke Sakakura

スマートフォンやタブレット、アプリ、サービス、アクセサリを総合的に取り扱うブログメディア「携帯総合研究所」を運営しています。高校生のころに立ち上げて今年で18年目に突入しました。趣味はNBA観戦。