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PayPay証券は“ネット証券”ではない? はじめての資産運用ナンバーワンへ
2023年12月13日 08:20
1月に新NISAがスタートすることもあり、投資や資産運用に興味を持つ人が増えている。政府も「貯蓄から投資へ」と後押ししているが、将来への不安に備えるという観点でも、資産運用への注目は高まっているようだ。
一方、資産運用に触れてこなかった人にとっては、開始までのハードルが高いのも事実だろう。証券各社などは新NISAを大きなチャンスと見て、積極的にアピールしているが、その中でもユーザー数を大きく伸ばしているのが「PayPay証券」だ。
キャッシュレスサービス「PayPay」との連携が最大の特徴だが、10月からスタートしたばかりのNISA口座は10万口座を突破。また、2023年3月時点では52.2万だった口座数も、11月末には80.5万口座と急拡大している。人気の背景はどこにあるのだろうか? PayPay証券の番所健児社長に聞いた。
PayPayだけで証券サービス
ネット証券では、1,000万口座突破を発表している楽天証券とSBI証券が「2強」。メディアの記事などでは、マネックス証券、auカブコム証券、松井証券を加えた「5大ネット証券」という表現もよく見られる。
PayPay証券の番所社長は、この表現に「ちょっと違和感がある」と語る。2強以外の各社の証券口座数は100万~200万で、まだ差はあるが「毎月の流入には手応えを感じている」、そこに迫る勢いが、いまのPayPay証券にあるという自信の現れのようだ。
4月以降の8カ月で1.5倍以上の80万口座まで拡大し、新NISA対応に向けて、2カ月で10万のNISA口座が開設されるなど急拡大している。同社の強みはどこにあるのだろうか? 番所社長は、「我々の提案はシンプル。『はじめての資産運用はPayPay証券』と訴えていく」という。
最大の特徴は「PayPayから使えること」にある。
PayPay証券は、6,000万ユーザーを超えるPayPayのミニアプリ「資産運用」からすぐに始められ、PayPayで本人確認が済んでいれば、簡単な手続きですぐに口座開設できる。最短4分で始められ、証券口座開設のハードルが低いこと、なにより、多くの人が使い慣れたPayPayアプリですぐに資産運用が始められるという点が最大の特徴で、番所社長も「PayPayとのシナジーをとにかく追求していく」と語る。
またPayPayポイント付与による「お得」も支持されている。ユーザー数が圧倒的に多いPayPayの“経済圏”を活かせるほか、ポイント運用(PayPayミニアプリ)ではすでに1,300万ユーザーが利用している。こうしたユーザーが本格的に投資に取り組む「次のステップ」としてPayPay証券が選ばれているという。
最も重要と語るのが「使いやすさ」。PayPayでは、頻繁なアップデートにより、機能向上やUI/UXを行なっているが、同様にPayPay証券もとにかく使いやすさを重視しているという。
「『投資は初めて』というユーザーが多いこともあり、不便、わからない、むずかしいというポイントをとにかく削っていく。結果ユーザーの皆さんの支持を得ており、ここが我々の勝ち筋だ」と番所社長は語る。
実際、口座開設者の半数以上が30代以下と比較的若い層の支持を得ており、現役世代は9割(日本証券業協会の調査では現役世代は67%)。新NISAで拡大が見込まれる新規ユーザーを積極的に獲得していく狙いだ。
戦略「はじめての資産運用はPayPay証券」
PayPay証券では、PayPayミニアプリの「PayPay資産運用」とミニアプリの「ポイント運用」、ネイティブアプリの「PayPay証券」が用意されている。
この中でも軸になり、一番多くのユーザーが使うと見ているのがミニアプリの「PayPay資産運用」だ。とにかくPayPayから使えるという強みを積極的に活かしていく。
PayPay資産運用では、PayPayマネーとPayPayポイントを使って100円から米国株・日本株・ETF・投資信託 全173銘柄で資産運用できるほか、 投資信託は、毎日/毎週/毎月などから選んで積立可能。また、PayPayカードによる「クレジットつみたて」では最大5万円/月の積立までポイント付与の対象とする。
新たには始める人は、ミニアプリの「PayPay資産運用」だけで完結できるようにする方針で、新NISAの主要な機能もカバーする。
専用の「PayPay証券」アプリは、銀行預金やPayPayマネーから多くの商品を取引する人向けで、日本株(REIT、ETF含む)、米国株(ETF含む)、投資信託などを最低1,000円から購入できいる。日米の有名企業約380銘柄を厳選し、PayPay証券の「フル機能」を使いたい人や、より取引頻度が高い人向けに機能追加していく。取引銘柄についての拡大も予定しているとのこと。
なお、PayPay証券ではPCからの利用も可能だが、スマホ紛失時など一時的な対応を重視してのもの。当面はスマホを軸に強化していく方針だ。今は「はじめての資産運用はPayPay証券」が基本戦略となる。
新NISAで「証券口座」が変わる?
一方、初心者ユーザーは取引が少なく、またNISAを始めとするつみたて投資では、証券会社に入ってくる収益は大きなものにはならない。顧客基盤が拡大し、顧客の運用資産が大きくならないと事業としては利益を産みづらいビジネスでもある。
番所社長もその点は認めた上で、顧客基盤の拡大に自信を見せる。また、「手数料」を前提とした「ブローカレッジ」型のビジネスは、SBI証券らが「手数料ゼロ」を打ち出していることもあり、ますます困難になっている。顧客の預かり資産を増やしつつ、そこから収益を得る「ストック型」のビジネスへの移行を各社が模索している段階だ。
PayPay証券においてもユーザーを増やして、預かり資産を拡大していく方針だ。一方番所氏は、新NISAなど証券口座の「使われ方」も変わるのでは? と予測する。
「新NISA制度の開始前で読めない部分もありますが、積立投資額の月10万円と成長投資枠が月20万まで、30万円もありますから、そうするとほとんどの方がこの枠で足りる。そうなると、今は銀行口座を皆さんが持って、毎月のように活用しているのと同じように、証券口座も使われていく。この数年でようやく積立投資、NISA、インデックスでこつこつ積み上げるということが市民権を得て、将来に備える意識ができてきた。皆がポートフォリオを意識しだすと、証券口座の使われ方も多様になるでしょう。証券口座あたりの収益性も変わってくる。変化が、半年とか1年で起こるかはわからないですが、これまでの5年間よりは大きな変化があると見ています」
「わかりやすさ」を重視するPayPay証券としては、「機能」として他の証券会社を積極的に追いかけることはしない。
「投資信託が4,000銘柄、米株が5,000銘柄、国内株式が3,000銘柄で、1.2万銘柄。新NISAのためにこれだけ必要かといわれるとそうではない。新NISAにあわせて、我々も銘柄数を投資信託が200、株式が300以上と、500数十銘柄に増やすつもりですが、これで投資信託の取扱高の6割、個別株の6割以上をカバーできる。初めて資産運用する人にとっては必要十分だと思います。選択肢を増やして迷うよりは、厳選した形で数百銘柄で新NISAは十分に活用できる。PayPayから身近な資産運用として使ってほしい」
「ネット証券」とは違うがPayPay証券の強み
番所社長は、初めて使う人にとって「2つの新しいこと」があるという。一つは、投資という体験、そしてもう一つ、決済アプリで金融サービスを使うということも新しい体験で、「本格的な投資が、普段使っているPayPayできることを知ってもらいたい」と語る。
30代以下が多く加入しているPayPay証券だが、特に10月のNISA対応以降は全世代で加入者が増えており、それもPayPayというわかりやすさ、親しみやすさが起因しているようだ。
なお、iDeCo対応については「制度が複雑で、リテラシーの高い人向けになってしまっている部分はある。ただし、iDeCOも今後広がると見ていますので、時期は明言できないですが、当社として取り組む考えはあります」とした。
番所社長は、「PayPayの上で便利でお得にわかりやすい。そこをしっかりやっていきたい。フルラインナップの総合証券的な方向性は志向していない。新NISAで広がる投資未経験者に選ばれるプロダクトを提供して、PayPayと組んで、投資の裾野人口を増やす金融スーパーアプリをやっていく」と語る。
目標口座数などは公表していない。ただし、「これから新NISAをきっかけに資産形成をやろうとしている方々のなかでナンバーワンを取ろうと考えています。政府は、いまのNISA口座数(1,700万)の倍増を掲げていますが、もう少し増えるかもしれない。新しく増える人の中でナンバーワン。そうなると100万は早期に達成します」。
冒頭で「5大ネット証券ではなく、6大ネット証券」と話題にしたが、番所社長はPayPay証券とネット証券の“違い”も訴えていきたいという。
「ネット証券各社のアプリや画面を見ると、ある意味すでに出来上がったケースモデルがある。ここに対して、ネット証券だけでは応えられない、ネット証券では自分のペインが解消されないという人がいらっしゃる。そこに対して、わかりやすさ、使いやすさを織り込んでいくことが重要で、PayPay証券が最も評価されていること。ここに集中していきます」