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ペーパードライバーがクルマ必須エリアに引越して日産リーフを買った件【オタク家を買う】
2023年11月2日 08:20
新居に引っ越してから、中古車の日産リーフを買った。免許取得からずっとペーパードライバーだった筆者にとって初めてのマイカーだ。
以前は渋谷駅徒歩圏という公共交通の充実したエリアに住んでいたので、クルマを所有していなかった。都内の移動はクルマやバイクよりも公共交通の方が便利なことがほとんどだし、徒歩圏内にシェアカーが山ほどあるし、近所の駐車場を借りると月5万円以上かかる。クルマを持つメリットが少なすぎる。
しかし新居のある千葉県木更津市は、都内ほど公共交通が充実しておらず、クルマが必須なエリアだ。これは想定内のことでもある。というかそもそも逆の話で、「クルマのある生活をしたい」というのも、郊外に新居を建てようと思った理由の一つでもある。
筆者が購入した日産のリーフは、バッテリEV(BEV)で、ガソリンを使わず、充電して走行する。初代リーフは2010年発売なので、BEVとしては歴史があり、BEVとしての実績がある車種でもある。筆者が買った車両は、2018年登録の中古車としては状態が良く、いまのところ問題もなく満足している。
新居はトヨタホームで建てたので、トヨタのディーラーとかも紹介いただいたが(ちょっとだけ優遇があるらしい)、あえての日産、そして中古車だ。だってトヨタってBEVをあんまり売ってないんだもん。
なぜBEVを選んだかというと、筆者がIT系ライターで電気で動く新しいモノが好きというのもあるし、太陽光発電搭載のオール電化住宅との相性が良かったというのもあるが、それよりも使い勝手を検討したところ、新居周辺ではBEVが使いやすいと予想できたからだ。そしてその予想はだいたい当たっていて、木更津市はBEV運用しやすい地域だった。
クルマは住宅設備でも家電でもないが、住む場所や家の電力事情との関連性も深いので、今回のテーマとさせていただきたい。
注文住宅を作るための苦闘を記録していく連載でした。家そのものは完成したものの、住まいの完成に終わりはない(かもしれない)
走行コストはガソリン車の1/3くらい?
筆者のリーフは基本的に自宅の普通充電器で充電している。それも自宅の太陽光発電の電力で充電するべく、リーフ側の充電タイマーを9〜15時に設定している。カーボンニュートラルとかそういったことにこだわっているわけではなく、主にコスト的な理由だ。
筆者宅の太陽光発電の売電単価は17円/kWhなので、発電中の余剰電力を自己消費したときの実質コストは17円/kWhと言える。筆者のリーフの電費は大雑把に7km/kWhくらいなので、そこから計算する走行コストは2.4円/kmくらいだ。
ちなみに筆者が契約しているオール電化向け電力プランで買電したとしても、昼間料金(27.89円/kWh)なら4.0円/km、深夜料金(19.99円/kWh)なら2.9円/kmなので、深夜に充電するなら太陽光と大きな差があるわけではない。
ガソリン車と比較すると、たとえば燃費が20km/Lでガソリン価格が170円/Lなら、走行コストは8.5円/kmとなる。リーフくらいのサイズ、いわゆるコンパクトカーのハイブリッド車にはもっと燃費が良い車種もあるが、それでも今のガソリン価格だと、筆者が運用するリーフの方が半分以下の走行コストになるはずだ。
充電スタンドはなるべく使いたくない!
街中の充電スタンドを使う場合のコストは、どの充電サービスや料金プランを使うかによって違うし、そもそも時間課金なので計算しづらい。大雑把な傾向として、低頻度利用者向けの料金プランで充電すると、走行コストは低燃費なガソリン車より高くなる。
たとえば先日、筆者がドライブ中に急速充電をビジター料金で利用したときは、106円/kWhくらいかかった。高速道路で電費が8km/kWhだったとしても走行コストは13.3円/km。これは燃費13km/Lのガソリン車と同じくらいだ。
街中の充電スタンドを使うことには、コスト以外にもさまざまな不便が伴う。
そもそも、充電スタンドに行く手間がかかる。行ったところで先客がいたりスタンドが故障してたりで使えないこともある。充電には時間がかかるので、買い物や食事といった用事のついででないと、時間的に大きなロスになる。
さらにリチウムバッテリの特性上、充電残量が半分以上だと充電出力が落ちていくので、急速充電で満充電近くまで充電するのは、時間効率もコスト効率も悪い。かといって80%くらいにとどめると、BEVにとって命とも言えるバッテリ容量を80%しか活用しないことになってしまう。
このように普段から充電スタンドを使う前提だと、BEVは不便でメリットの少ない乗り物になってしまうのだ。そもそも自宅で充電できる人のための乗り物なのである。
リーフの魅力は走行コストだけにあらず
BEVは車両価格が高い。補助金を考慮しても、大雑把にガソリン車+100万円くらいにはなる。自宅充電の走行コストは安いが、ガソリン車との差は6円/kmくらいだ。10万キロ走ってようやく60万円とかである。毎日数十キロ乗ったとしても、車両価格の差を埋めるには10年とかかかる。
しかしBEVの魅力は走行コストだけではない。
もっともシンプルな魅力は、ガソリンスタンドに行かないで済むことだ。ガソリン残量を気にしたり、安いガソリンスタンドまで数km余分に走ったり、給油の手間と時間をかけないで良いのは、かなり快適だ。自宅で充電できるので、基本的にはいつでも満タンで家を出発できる。
エンジンオイルなどの一部の消耗品がなく、ブレーキの消耗も少ない。ノーメンテとはいかないが、メンテのコストや手間が減るのは、小さくない恩恵だ。
加速力はあるし、減速時は回生発電し、さらにアクセルペダルだけで加減速をコントロールする「e-Pedal」もあるので、街中も山道も快適かつ電費で走れる。
あとはBEV独自の魅力ではないが、筆者のリーフは日産の運転支援システム「プロパイロット」を搭載している。高速道路ではアクセルもハンドルもリーフがアシストするので、人間は手を添えつつ周囲を警戒するだけで良い。ペーパードライバーに優しいアラウンドビューモニターも搭載している。
こうした運転支援は、ガソリン車でも当たり前になっているが、ここ20年ほどしっかりクルマに乗っていなかった筆者としては、「いまのクルマはこんな乗りやすいんか!」と感動するレベルだった。
環境性能については、正直言って良く分からない。巨大バッテリの製造に大きな環境負荷が伴うので、リユース・リサイクルがちゃんとできていないと、環境負荷が低いと言い切れないという指摘もある。その通りとも思うが、そういえば筆者のリーフを中古であり、すでにリユースしている。さらに充電のほとんどは太陽光発電だ。そこそこ環境負荷を抑えられているのでは、という気もしている。
安全性についても、正直言って良く分からない。日産リーフは走行用バッテリの火災事故が起きていないとされているので、それが本当ならガソリン車やハイブリッド車よりは安全と言えるのかもしれない。リチウムイオンバッテリは燃えやすいが、ガソリンはもっと燃えやすい。
最大走行距離は問題なし
BEVではしばしば無充電での最大走行距離=バッテリ容量が弱点と指摘される。筆者のリーフが搭載するバッテリ容量は40kWh(中古車なので劣化して減ってるハズ)と、いまどきのミドルクラスのBEVに比べると小さめだが、しかし不満を感じることはめったにない。
たとえばエアコンの季節に買い物などで近所の市街地を走行すると、電費は7km/kWhを下回るが、ちょっと遠くの商業施設に行っても往復30kmくらいなので、リーフのバッテリの10%も使うかどうか、というレベルだ。毎回満充電で自宅を出発するのでまったく問題にならない。
最大走行距離が問題となるのは中長距離のドライブだが、筆者の場合、自宅の立地のおかげもあって、不満を感じることが少ない。
都内などの公共交通が充実しているエリアからの出発だと、自宅から1時間くらいは渋滞しがちで電費の落ちやすい都市部の市街地や高速道路を走るので、BEVだとドライブルートに入るまでにバカにならない量のバッテリを消費する。
一方、千葉県の房総半島には山も海もあり、道の駅や温泉などドライブスポットが多数ある。筆者の住む木更津市はその房総半島の中ほどにあり、住宅街から田舎的国道を15分も走れば、海や山のドライブルートに入る。そして半径60kmに房総半島のほとんどのエリアが含まれるので、自宅から無充電で房総半島を回遊できる。
たとえば先日、勝浦や温泉などを周遊ドライブしたときは、走行距離127.1km、走行時間3.7時間、消費電力15.6kWh、平均電費8.1km/kWhだった。高速道路は使っていないが、街中より平均時速が速いせいか電費が良好で、リーフのバッテリの半分も使っていない。
単純に考えるなら、このペースだと7時間以上、走り続けないと、リーフの搭載する40kWhのバッテリを使いきれないことになる。普通の房総半島ドライブであれば、リーフのバッテリ容量は十二分なのだ。
房総半島を出るとちょっと大変
一方で房総半島を脱出するとなると、アクアラインなどを使うことになり、走行距離が一気に長くなる。東京や横浜あたりまでなら往復120kmくらいなので、無充電でも余裕だが、それよりも遠く、たとえば箱根や伊豆、富士五湖、秩父、銚子あたりまで行くとなると、どこかで充電が必要になる。
BEVはこの「外出先での充電」が面倒なのだが、充電計画がうまくいけば、けっこう長距離ドライブをこなせる。
筆者は先日、山梨県の富士急ハイランドで開催された、位置情報ゲーム「ドラゴンクエストウォーク」のオフラインイベントに参加するべく、木更津の自宅から往復310kmのドライブに行ってきた。リーフでは無充電で往復できない距離だ。が、これが本当に微妙なところで、どこかで10kWh(リーフの25%相当、約80km分)でも充電できれば往復できる。
まず往路、パーキングエリアでの休憩時に急速充電器を利用した。トイレと軽食だけでほとんど休憩はしなかったが、充電時間は21分58秒、1,155円で10.9kWhを充電できた。最新のBEV車種に比べるとリーフは急速充電が遅めだが、充電残量が30%くらいまで減った状態で30分の休憩充電をすれば、15kWh=120kmくらいは充電できるだろう。
うちのリーフがバッテリ劣化や予備マージンを含め、満充電で280km走れるとすると、1回充電で400km、2回充電で520kmまで行ける計算になる。木更津から片道だけなら400kmは名古屋、520kmは大阪あたりの距離だ。筆者としては十分すぎる走行距離である。
目的地の富士急ハイランドでは、近辺にある一般開放の普通充電スタンドを利用し、充電時間130分、715円で12.35kWhを充電できた。このときはイベントだけこなしてクルマに戻ったが、普通ならもっと滞在するだろう。6時間も滞在すれば8割くらいは充電できるし、宿泊施設で1晩充電すればバッテリ切れ寸前からでも満充電まで戻る。
このくらい充電計画がスムーズに行けば文句はないが、これは目的地や日程に恵まれたと思う。目的地や曜日、時間帯によっては、充電スタンドが空いてないということもあるだろう。そうして充電計画が破綻すると、けっこう悲惨だ。
充電スタンドの設置場所はネットやアプリで検索できる。ドライブに行く際は、事前に経路充電・目的地充電に使えそうな充電スタンドを複数チェックし、充電計画によっては目的地や経由地を変更する必要がある。このあたりは面倒なので、充電スタンド、とくに目的地充電に使える普通充電スタンドにはもっともっと増えていって欲しいところだ。
ペーパードライバーの都会民がクルマ必須のエリアに引っ越した感想は
筆者は若いころにバイクに乗っていたことはあるが、ほとんどクルマの運転をしていなかった。ペーパードライバー歴は20年以上だ。しかし家の建設が始まってからペーパードライバー講習やシェアカーで運転を再開したが、自分でも驚くくらい運転感覚が手に残っていて、すぐに慣れることができた。
結果として、リーフの走行コストの安さも相まって、毎日とは言わないが、週に2回くらいはクルマに乗っている。たぶん都市部住宅街における自転車くらいの感覚だ。たいていの用事がクルマ必須になってしまったわけだが、不便を感じることは少なく、むしろ便利になったと感じることが少なくない。
たとえば旧居では近所のスーパーまで徒歩15分とかかかり、店舗の選択肢もなかったが、新居はクルマで15分も走れば多数のスーパーから安いところ、品揃えのよいところを選べる。クルマなら天気や荷物の重さを気にしないで良いので、木更津の誇るコストコでまとめ買いも捗るし、ホームセンターでデカいものも買いやすい。
従来は公共交通機関を駆使するしかなかった中長距離移動も、クルマという選択肢が加わったのは大きなメリットだ。前述の富士急ハイランドも、実のところ高速バス乗り継ぎの方が安くてラクだったが、混雑回避や時間の柔軟さを優先してクルマを選択した。
一方で不便さがないわけではない。もっとも不便を感じるのはお酒だ。クルマでお酒を呑みに行くわけにいかないが、徒歩圏に飲食店は皆無だ。ただ、筆者はCOVID-19以降、お酒を飲み歩くことがほぼなくなったので、ストレスは感じない。あと良いか悪いか微妙だが家呑み環境は整ってきている。
あとは新居周辺の環境が良かったとも感じている。筆者が住んでいるのは自家用車前提で開発された新しめの住宅街なので、交通量に比べて道が広く、道路の線形もシンプルで視界も良く、交通量皆無の自宅前道路から数十秒で2車線道路に入るなど、とにかく走りやすい。
また、駅周辺でもない限り小さなお店でも無料の駐車場があるので、都市部と違って余計なコストもかからない。とにかくクルマが運転しやすいエリアなので、クルマが必須になっていてもストレスを感じないのは良いと思っている。
BEVは万人向けではないけど、郊外の戸建てならオススメ
BEVは万人向けではない。運動性能や先進性といった魅力があるが、基本的には都市部の集合住宅居住者など、自宅で充電できない人は選ぶべきではない(個人の感想です)。
しかし日常的にクルマが必要になる郊外の戸建てでは、この記事で書いたように、BEVには色々なメリットがある。とくに複数台のクルマを所有する家庭なら、普段使い用の1台はBEVにするのもオススメだ。
長距離ドライブで充電スタンドに頼りたくないなら、PHEVもオススメだ。自宅充電で近場の移動コストを下げつつ、週末の長距離ドライブはガソリンでこなせる。しかしPHEVはBEV並みに選択肢が少ないのが難点でもある。筆者も悩んだが、手頃なコンパクトカーのPHEVがなくてBEVにした。アウトランダーあたりは憧れるけど、ペーパードライバーが最初のマイカーに選ぶには勇気の要る車種だ。
これから家を建てる人・家を買う人は、EVを購入する予定がなくても、とりあえず駐車場に面した壁面などに200Vコンセントを設置しておくことを強くオススメする。
200Vコンセント、あとから追加するとコストもかかるし配線が露出したりするが、建てるときに設置するなら、安く、収まりも良い。ちなみに筆者宅の場合、200Vコンセントと室内スイッチを設置して7,000円くらいだった。
200Vコンセントを設置しておけば、クルマを買い換えるとき、BEV/PHEVも選択肢に入れることができる。来年以降、国内メーカーからも魅力的なBEVが登場すると予想されるので、あとで後悔しないためにも200Vコンセント設置、オススメだ。