トピック

ポータブル電源を日常使いする 災害の備え“だけ”にしない使い方

「防災の日」というのがあるのをご存じだろうか。毎年9月1日なのだが、この日は1923年に関東大震災が起きた日ということで制定されたそうである。そして現代を生きる我々にとっては、3月11日も同様の意味を持つ日になっている。

天災の中でも、台風や豪雨など天候に関わる事は事前予報が出る事である程度の準備はできる。一方地震や火事、昨今ではインフラの老朽化による事故などは突然やってくるので、日頃からの備えが必要になる。

我が家では災害に備えて1日2日耐えられる程度の水や食料は備蓄しているが、「電気」の準備まではなかなか手が回らなかった。せいぜいモバイルバッテリーが使えるようにしておくとか、手回し充電式のラジオを防災リュックに入れておく程度のことである。

だが昨年の台風で8時間の停電を経験したことで、早急に対応が必要だと感じた。そこで昨年末のBlack Fridayセールの際、思いきってポータブル電源とソーラーパネルをセットで購入したのだが、最近はこれが正解だと悟った。防災に対する備えが強化できるのはもちろん、日常的に使えることがわかったからだ。

電力があれば、防災への備えも次のレベルに

購入したのは、EcoFlow Technology Japan(エコフロー)のポータブル電源「RIVER 2」と、110Wソーラーパネルである。合計で4.5万円程度であった。

「RIVER 2」は昨年10月に発売されたばかりの新モデルで、容量は256Wh。ポータブル電源としては最小レベルだ。とはいえ、大型モバイルバッテリーに比べれば数倍の容量があり、300WのAC出力もついている。コンセントさえあれば動かせる家電のバリエーションが増えるので、災害への備えとしては重要なポイントだ。

昨年12月に購入したポータブル電源EcoFlow「RIVER 2」

内蔵電池には、「リン酸鉄リチウムイオン電池」を採用している。これは昨年あたりからトレンドになり始めた電池なので、今から購入するならこのタイプがいいだろう。ポイントは、充放電サイクルが2,000~3,000回もあることだ。従来のリチウムイオンの500~800回と比べれば、破格に寿命が長い。

またAC電源からの充電も、ゼロから100%まで1時間程度で完了する。台風接近の前にパッとフル充電して備えられるというのがポイントである。加えてシガーソケットやUSB TypeC端子、ソーラーパネルからも充電できる。

300WのAC出力でどんなものが動かせるのか。電子レンジや電気ケトル、ホットカーペット、エアコンなど、「火力」の代わりに電気を使うものは、ほぼ動かせない。これらを動かすには1,000Wクラスの出力が必要になるため、中型以上のポータブル電源が必要だ。

一方で電気毛布やテレビ、パソコン、扇風機、LEDライトなどは十分動かせる。テレビは輝度を下げるだけで10Wぐらい変わるので、災害時には低輝度で使用することを覚えておくといいだろう。スマホやタブレットの充電はモバイルバッテリーで十分対応できるので、ポータブル電源とは使い分けていきたいところだ。

災害時の電力は、情報収集と体温維持に役に立つ。暑くて/寒くて寝られないというのが、一番心身共にダメージを食らう。電力があれば、防災への備えも次のレベルに行ける。

ポータブル電源を日常サイクルで回す

災害時に電力のあるなしは大きいとははいえ、いつ使うのか分からないものに数万円出すのも気が引ける。だがソーラーパネルと組み合わせれば、昼間に発電して電力を貯めていけるため、日常的に活用できる。

ソーラーパネルは近年劇的な進化はしておらず、折り畳みできる可搬型パネルのほとんどは単結晶型で変換効率23%ぐらいである。カタログスペックでは差が見出しにくいが、良品と粗悪品は耐久性や経年劣化などで違いが出てくる。こればかりは、長期間使ってみないと結果がわからない。

筆者が購入したEcoFlowの110Wパネルは、購入直後は冬場の日差しでも最高100W程度発電していたが、3カ月ほど経過した現在は最高75W程度である。夏にはもっと効率が上がる事を期待したいが、だいたいカタログスペックの7割程度出れば御の字と考えておくべきだろう。

農業用パイプで架台を組んでベランダに設置したEcoFlow 110Wソーラーパネル

筆者は仕事中に16インチMacBook Proを使っているが、合わせて足もとの暖を取るために小型パネルヒーターと、手元の明かりとしてLEDライト、音楽再生のためにEcho Studioを2台使用している。これを全部合わせると、消費電力は55Wぐらいである。

電力の入出力はスマホアプリでモニターできる

ソーラーパネルからの発電は、午前10時ごろから徐々に出力が出始め、お昼過ぎに75Wぐらいでピークに達する。そこから徐々に落ちていき、4時半ぐらいでゼロになる。平均すると使用電力と発電量がだいたい均衡しているので、昼間に仕事で使う電力はタダである。ソーラー発電は、太陽に雲がかかったりしただけで出力が変動するので、間にポータブル電源をはさんでバッファにするわけである。

もう少し暖かくなったらビーチに椅子を持ち出して仕事できると思うので、その際にはソーラーパネルとポータブル電源を持ち出して充電しようと思っている。その電力で夜のうちにMacBook Proを充電すれば、地球環境に優しい仕事スタイルにもなる。

車の中で仕事する場合も、ポータブル電源を積んでおけば事情が変わる。ガソリン車でも走行中にシガーソケットから充電しておけば、エンジン停止中でもAC電源が使えるのは何かと助かる。

ポータブル電源やソーラーパネルの費用を、系統電力の電気代換算で元を取ろうとすれば、8~10年ぐらいかかる計算になる。そこまでこの機材が持つのかは、まだわからない。「償却しなければ損」という考え方なら何もしない方がマシだが、こうして日常的に使っているだけで災害への備えとなるし、何もしなくても勝手になんらかの収穫があるというのは、庭の木に実がなるような素朴な喜びがある。

バッテリーもソーラーパネルも毎年倍々で能力が上がるものではないので、セールやクーポンがある時、旧モデルが安くで出ているタイミングを狙って購入するのがいいだろう。筆者は最小限の設備で効果はだいたい見えてきたので、次の機会にはもう1段階大型のものを買ってみようと思っている。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。