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【オタク家を買う】独断と偏見によるハウスメーカー選び

まもなく引き渡しとなり、いよいよ完成に近づいている筆者新居。玄関ポーチ以外の外構工事は引き渡し後に別業者にお願いする予定

白根雅彦(45)が注文住宅を作るための苦闘を記録していく連載です。まもなく引き渡し予定

注文住宅を建てるにあたっては、「誰に家を建ててもらうか」を決める必要がある。つまりハウスメーカー選びだ。そして「ハウスメーカー選び」とは書くが、選択肢としてはハウスメーカー以外にも工務店や設計事務所などもある。選択肢は果てしなく多い。

注文住宅を建てるときは、自分の希望する家を建てられそうなハウスメーカーや工務店、設計事務所の候補を数社チョイスし、そこに声をかけてプランと見積もりを出してもらって、それを比較してベストと思ったところと契約することになる。

今回はこのハウスメーカー選びについて解説する。解説するが、そもそもどんな家を建てたいかは人によって異なり、とくに筆者が建てたい家はいろいろ偏っているので、筆者の語る「ハウスメーカー選び」にも偏りがあることにはご注意いただきたい。

ハウスメーカーと工務店と設計事務所

住宅を建てる企業にはいろいろある。定義も分類もいろいろだが、筆者は大雑把に、「ハウスメーカー」「工務店」「設計事務所」と分類している。これらの中間的な存在やどれにも分類できない存在もいるので、あくまで筆者個人の見解による分類だ。

筆者新居を建ててくれたのはトヨタホーム。筆者契約時点では東京と千葉は別の販社担当だったが、直後に合併したのでなんとかなった。まぁ管轄地域外でも工事できたりするんだけど

ハウスメーカーは、広域(ただし全国とは限らない)で展開していて、各地に営業窓口を持つ建築業者だ。大手のハウスメーカーは独自の工法を持ち、その工法のための工場と「型式適合認定」という制度を使うことで効率化している。工法に縛られるため、特殊な建物や特殊な土地への対応力が低いケースがあるが、その一方で大量生産しているので品質は安定しやすい。

ちなみに大手ハウスメーカーも施工部門を自社内で持たず、工法や設計、部材は提供するが、施工するのは地域ごとの提携工務店、というパターンは多い。あとは地域ごとの販社とメーカーが分かれているパターンや同じブランド名でも中身は地域ごとに別会社、なんていうパターンもある。現住所と建設地が離れているときは注意が必要だ。

工務店は営業地域を「○○県東部のみ」のように限定している中小規模の建築業者だ。基本的には自社で施工するが、自社でどこまでやれるかとか事業規模とかは工務店ごとに差がある。多くの工務店は木造軸組という一般的な工法で住宅を建てているが、それ以外の工法を得意とする工務店もある。

また、「○○建設」や「○○組」みたいな名称で、ダムや道路などの土木工事まで請け負う、建設会社やゼネコンと呼ばれるような企業でも、一般住宅を個人施主から直接請け負うケースがある。工務店ではないが、工務店を探すならそういった企業もあると覚えておくと良い。

設計事務所は、文字通り建物の設計を担当する事務所だ。凝ったデザインやRC造などをやりたいときは、そうした建物を得意としている設計事務所にお願いすると、最適な施工会社を手配して建ててくれる。一般的に高コストになりやすいが、それは設計事務所が得意とする凝ったデザインやRC造建築が高コストということもあるので、ハウスメーカーや工務店に比べてコスパが悪いとは一概には言えない。

どうやって探す?

ハウスメーカーを探す方法は難しくない。「大手ハウスメーカー」でググれば主要な20社くらいはリストで出てくる。公式サイトに行けば、そのハウスメーカーの特徴なども書かれているし、問い合わせ方法やモデルハウスの所在地なども案内されている。

一方、工務店や設計事務所は、モデルハウスや広告、媒体でのプロモーションがハウスメーカーほど多くないので、情報収集はカンタンではない。Webでの検索、住宅関連の媒体やSNS、YouTube、知人などの口コミなどなど、いろいろなチャンネルにアンテナを張って辛抱強く探すしかない。

Web広告で工務店や設計事務所に出会うケースもある。筆者もFacebook広告で何社か見つけ、そのうち1社には話を聞きに行ったりもした。広く情報収集したいなら、(Webブラウザの設定で)トラッキング拒否とかはしない方が良い。

筆者個人的には、広告を打ったり自社Webページが充実しているなど、プロモーションに積極的な企業の方が良いと思っている。工務店や設計事務所にはB2Bメインの企業も少なくないので、一般消費者に力を入れてくれている方がやりとりがしやすい。公式プロモーションを額面通り受け取る必要はないが、しかしそこから読み取れる情報は重要だ。

あとは一つ、注意点がある。良さげなハウスメーカーや工務店、設計事務所を見つけても、安易に資料請求などの連絡は取らない方が良い。連絡を取ると営業担当が付いて、頻繁に連絡が来ることになる。モデルハウス見学時も、何かしら理由を付けて連絡先を書かされ、営業担当が付く。連絡が来る以上のことはないが、あまりにたくさんの連絡が来ると対応が大変なので、事前にしっかり情報収集して有望なメーカーを絞ってからアクセスした方が良い。

メーカー探しの流れ

注文住宅の計画が具体的になってきたら、数社のハウスメーカーや工務店、設計事務所をピックアップし、プランと見積もりの作成をお願いすることになる。注文する人=施主は、各社が出してきたプランと見積もりを比較し、もっとも自分の理想に近い家を建ててくれそうな企業と契約を結ぶことになる。

土地購入前に「この土地に家を建てられますん?」と相談することも重要なので、土地探しと並行してメーカーも探し、有望なメーカーにはアクセスしておくと良い。

プランと見積もりの作成は、大手ハウスメーカーや工務店では無料でやってくれるケースが多いが、有料となるケースもある。メーカー側がプランニングと見積もり作成に費やす工数やコストを考えると、タダでやってもらえる方がラッキーくらいに思った方が良い。

メーカーの選びのチェックポイント

ハウスメーカーや工務店、設計事務所を選ぶ基準は、「施主が建てたい家にどれだけ近い家を建てられるか」であり、それは人それぞれ、ということになる。

なるべく具体的に「建てたい家」のイメージを固めておいて、各メーカーに問い合わせする際、それが可能か、慣れているか、余分なコストがかからないか、といったことを確認する。その確認結果をメーカー選びの判断材料とする。

筆者が考えるハウスメーカーに確認するべき基本ポイントは、主に「間取り」「住宅設備」「性能」「価格」の4つだ。

まず「間取り」、これは工法やメーカーによって希望する間取りが得意・不得意、あるいは不可能、なんてこともあるので、間取りを重視する筆者のような人は最初にチェックするべきポイントだ。

たとえば大開口・大空間は、木造より鉄骨の方が得意だし、ツーバイフォーなどの枠組壁構法は不得意だ。また、同じような工法でもメーカーごとに天井高が違ったり、吹き抜け・勾配天井ができたりできなかったりもする。階数に縛りがある場合もある。

あらかじめ建築について勉強しておくと、声をかけるべきハウスメーカーを工法などをベースに絞りやすいなど、ちょっと有利になる。ハウスメーカーに問い合わせる際にも、専門用語や家の構造についてある程度の知識があると効率が良い。たとえば「勾配天井はできるか」「登り梁は何メートルまでとれるか」「柱のスパンは何メートルまでか」などの若干マニアックな質問も、ある程度の知識が必要だろう。

そうした知識がない場合、複数メーカーにプランと見積もりを出してもらったあと、「ここの壁をなくせないか」とか「もうちょっと広げられないか」と聞いたりして確認することになる。そうなると手間もかかるし精度も下がるし、「そのメーカーで可能なこと」についてしか聞けない。自分で勉強することはかなり重要だ。

筆者新居のキッチンはタカラスタンダード。トヨタホームでは標準仕様外だけど、あまり高くならずに導入できた。ほこりだらけなのは内装作業直後のクリーニング前だからである

「住宅設備」とは、キッチンなどの水回り、フローリングなどの内装材、窓や玄関などなどのことだ。これはハウスメーカーごとに使える製品に縛りがあったり、標準仕様外の住宅設備を入れるのに追加のコストや納期がかかる、というパターンがある。あとは薪ストーブなどの特殊な住宅設備は、メーカーごとに得意・不得意が極端だったりする。

特定の住宅設備にこだわりがあるならば、使いたい住宅設備を導入できるか、導入するのにコストや納期がどのくらいかかるものなのか、これもメーカー選びの際に必ず確認するようにしよう。

「性能」とは、断熱性能や耐震性能、防音性能、経年劣化への強さなどのことだ。これは工法によって変わってくるが、同じメーカーの同じ工法でも設計やグレードによって変わったりもする。

たとえば、断熱性能は一般的に木造の方が高く、とくに枠組壁構法は強い。そして断熱性能は大開口と相反して両立はできず、窓が大きければ断熱性能は必ず落ちる。しかし同じ工法でも壁や窓の断熱仕様を変更できるメーカーもある。結局のところケースバイケースなので、これもメーカーに確認してみるしかない。

耐震性能など災害に対する性能は、普通の工法であれば木造も鉄骨も大差はない。どの工法でも、必要な性能を満たすまで柱や構造壁を作るからだ。逆に言うと木造より鉄骨の方が少ない柱で必要な性能を達成できるので、結果的に大開口・大空間が得意、という話でもある。

ただ、例外はある。鉄筋コンクリート(RC造)は低スペック・軽量に作れないので、耐震性能も防音性能も耐久性もオーバースペックになりがちだ。その一方で断熱性能は設計次第では最悪になるので、RC造だけは、その特性を正しく理解しておくべきでもある。

あとは「価格」だが、これはメーカー間で比較するというより、まずは自分が思い描く理想の家にかかるコストを確認するのが重要なポイントだ。メーカーにもよるが、契約前に詳細な間取りプランや見積もりを出してもらえるので、それを見ながら、どういった要素にコストがかかり、何を妥協すれば何が実現できるか、みたいなことを判断する。

メーカーごとに平均坪単価を比較とかするケースもあるが、筆者個人としてはあまり気にしないでも良いと思っている。これは「A社はハイグレード志向の施主が多い」とか「B社は予算が厳しい施主が多い」という話でもあるので、どんな家を建てるかによるとしか言いようがない。

ただ、メーカーごとに得意とする価格帯というのもある。平均坪単価が安いメーカーは、安い仕様の安い部材を安く仕入れて使うことに慣れている。しかし逆に平均坪単価が安いメーカーでハイグレードな仕様にしたら、標準仕様がハイグレードなメーカーより高コストになる、というケースもあり得る。自分が建てたいグレードのハウスメーカーを選ぶことに意味がないわけではない。

ハウスメーカー選びでは幅広い情報収集を

ハウスメーカー選びに限らず、注文住宅全般に言えることだが、「注文住宅に完璧な答えなんかはない」と筆者は思っている。実際に注文住宅を建てたところで、それがベストな選択肢だったのか、判断のしようもない。同じ条件で2つのメーカーを建て比べる、なんてことは不可能だ。

しかしそれでも、ベターな注文住宅にするために、情報収集や勉強は必要だ。そしてそこで重要なことは、「家に求める要件は人それぞれなので、ネットやハウスメーカーの意見を丸呑みにする必要はない」ということでもある。貴方が理想とする家は、貴方しか知らないのだから、見解が他人と完全一致することの方が少ない。「こういう事例がある」「こういう意見がある」というように受け止め、自分の家づくりの参考とすれば良い。

筆者新居のリビング。窓だらけに見えるが、右を向くともっと窓だらけ。トリプルガラス仕様を採用したが、断熱性能は二の次と割り切ってる

とくに当連載については、「これ書いてるやつ、窓ばっかのド変態な注文住宅を建てたんだぜ」と斜に構えて読んでいただきたい。筆者が建てたような家を普通の住宅地で建てたら、絶対に後悔する。

一方で方向性が異なる意見や情報にも目を通すべきだ。例えば筆者は大開口窓に強いこだわりを持っているが、大開口窓を「不得意」とするメーカーや工法についても、ある程度は情報収集している。そうすると、ネットや口コミ、知人から自分と異なる意見をもらったとき、「ああ、この人は断熱性重視で都市部の住宅を念頭に置いているんだ」と判断できる。

狭い範囲でしか情報収集できていないと、契約後や建築後に想定外の魅力的な選択肢を知って後悔することにもなりかねない。無駄な情報もあるかも知れないが、別に知って損することはない。注文住宅に手を出そうと思ったなら、後悔を少なくするためにも(なくせるなんて思わない方が良い)、情報収集と勉強には時間と労力をかけるようにしよう。

白根 雅彦