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いろいろあきらめて身軽になる ソニー耳穴イヤフォン「LinkBuds」【私の2022】

ソニー「LinkBuds」

【私の2022】編集部員が2022年に使って気に入ったモノ・サービスなどを紹介します。

すっかりリモートワークも定着して、2022年は大きな買い物は少なかったのですが、その中でも最も気に入っている製品がソニーのイヤフォン「LinkBuds(WF-L900)」です。いろいろなものに対応するのを「あきらめ」て、この製品ならではの使いやすさや魅力を追求しているという点が、使っていてもとても気持ちがいいのです。

“反”集中が画期的?

LinkBudsは、耳に装着するタイプの完全ワイヤレスイヤフォンですが、中央に穴が開いていて、「耳に装着しながら外の音が聞こえる」という点が大きな特徴です。つまり、音楽を聞いていてもビデオ会議に入っていても、「外の音が聞こえる」ということ。

穴が開いているイヤフォン

一般的なイヤフォンやヘッドフォンは、外の音を遮断し、音楽や通話などに“集中”させるために作られています。一方、LinkBudsは今いる環境に溶け込みながら、音楽を聞いたり会議に入ったり、というために作られています。

これの何がいいのか? 以前も記事にしましたが、外部を遮断しないため、会社などで話しかけられても反応しやすく、会話を妨げないこと。また、さほど集中する必要がない作業などは、外の音が適度に聞こえたほうがリラックスして仕事が進むような気がします。

イヤフォン自体が小さく目立たないため「話しかけられやすい」という点もメリットです。一方、Web会議や記者会見などで集中したい場合は、そもそもテレカンブースなどに入るため、「話しかけられやすい」ことはマイナスにはなりません。

「穴」が開いているにも関わらず、音漏れは少なく音質も十分です。また、仕事のシーンだけでなく、通勤や散歩などのシーンでの使いやすさも魅力です。外の音と一緒に聞こえると、いつも聞いている音楽の違った表情が感じられるような気がします。なによりサウンドが開放的で、ちょっとしたフェスに来ているような気分になります。

オーディオ的には低域の量感は足りないものの、外で聞くとそういった欠点はあまり感じられません。音楽とともに街歩きも楽しくなるという、散歩がはかどるイヤフォンです。そもそも通常のイヤフォンは遮音してしまうため、歩きながらの利用は危険です。

写真に特に意味はありません

オールマイティを諦める

一方、LinkBudsではバッサリ対応を諦めている利用シーンもあります。

例えば、地下鉄など外音がうるさいところではほぼ使い物になりません。特に音楽を聴くのは諦めた方がいいと思います。様々な利用シーンに対応すべく、ノイズキャンセルなどの機能を各社のイヤフォンで競っているわけですが、LinkBudsはそうした競争からは完全に脱落しています。

ただし、捨てる代わりに、LinkBudsでしか追求できない開放感や開放的な音質を磨いて、「このイヤフォンだけ」という体験を実現できていると思います。

飛行機での移動や電車のなかで音楽に集中するといった用途であれば、まずLinkBudsはオススメはできません。でも、イヤフォンを1台で完結する必要はなく、複数のイヤフォンを使ってもいいはず。個人的にも様々なイヤフォンを試してきたのですが、結局地下鉄に乗る10分強は音楽は諦め(ポッドキャストは聞けなくもない)れば、普段使いではLinkBudsで概ねカバーできるという結論に至りつつあります。

音楽をじっくり聞くのであれば、ほかのヘッドフォンやスピーカーを使う、飛行機移動であればノイズキャンセル付きのヘッドフォンを使うなど、「全てに対応したヘッドフォン選び」を諦めるとわりとシンプルに行動できるような気がします。

この割り切りというか諦めを促すような作りも、LinkBudsの楽しさにつながっているような気がします。少し不自由でも「自分の選択だ」と納得すれば、ちょっと使えないシーンが多いことは問題ではありません。

ただし、ちょっとした不満の声も聞こえてきます。それは「マイクの性能」です。

個人的には問題ないのですが、会社など外の音がうるさい環境からの会議参加時などで、会議の参加者から“ほかの人の声”を拾いやすいと指摘されます。またマイクの音声もやや圧縮感が強く、ほかのイヤフォンのほうが良いように感じます。

使う側(私)はさほど問題ないのですが、LinkBudsの先にいるひとの体験がほかのイヤフォンのほうがいいとのこと。この点はLinkBuds 2で改善してくれるとより助かります。

最後にもうひとつLinkBudsで嬉しかったことを。それは、スマートフォンとPCでさっと切り替えて使える「マルチポイント」にソフトウェアアップデートで対応したこと。おかけで、デバイスの切り替えがものすごく楽になりました。「買った後に進化した」点も購入者として満足度を高めてくれました。

いろいろな選択肢から自分にあったものをチョイスする、というイヤフォン選びは楽しいのですが、「あえて捨ててみる」もなかなか楽しい作業だなと感じています。