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新宿が再開発で大きく変わる 今の景色と10年後

新宿駅西口の現在の様子。新宿西口ハルク(写真左)の後ろに見える白い頂の建物は東急歌舞伎町タワー('22年12月撮影)

新宿駅周辺では、西口において地上48階の大型施設開発に向けて小田急百貨店新宿店本館が'22年10月に営業終了したほか、京王百貨店周辺の再開発計画も発表されています。歌舞伎町では4月に「東急歌舞伎町タワー」が開業します。また東京都と新宿区は「新宿グランドターミナル」構想を公表し、駅周辺のまちづくりを推進しています。このように大きく変わる新宿の、今の風景を見ながら、10年後、20年後にはどんな景色になっているのかを見ていきましょう。

小田急本館跡地に48階・高さ260mの複合施設 '29年度竣工

新宿駅西口で最も大きな規模となる再開発事業は、小田急百貨店 新宿本館(以下、小田急本館)跡地に建設される地上48階・地下5階、高さ約260mの複合施設です。敷地面積は約15,720m2、延床面積は約281,700m2。小田急電鉄、東京メトロが事業主体となり、'22年度着工、'29年度竣工の予定で進められます。

計画建物イメージパース

高層部にはオフィス機能、中低層部には商業機能を備え、またオフィス機能と商業機能の中間フロアには、来街者と企業等の交流を促すビジネス創発機能を導入する計画です。低層部にはビジネス創発の情報や新宿をはじめとした小田急沿線、東京メトロ沿線等の情報を発信する機能を設けるとしています。

小田急本館が'22年10月2日に営業を終了したほか、新宿ミロードは3月25日にモザイク通りとモール2階の営業終了を予定しています。新宿ミロード 本館部分は'25年4月以降に解体着工予定です。

新宿ミロード 本館('22年8月撮影)

小田急本館が閉館した現在は、すでに仮囲いが設置されており、そこには新宿グランドターミナルの計画について記されています。

仮囲い。足を止めて読み込む人も見受けられた

小田急百貨店のあゆみ」によれば、1962年の小田急百貨店(現在のハルク)開店後、1966年に新館(現在の新宿店本館の一部)開店、1967年に新宿店全館(本館・ハルク)が営業開始しました。リニューアルを経ながら、長年新宿西口のランドマークの1つであった小田急本館ですから、新宿駅利用者にとってはいつも見ていた存在、「新宿に行ったことがある」程度の人であっても、見覚えのある光景でしょう。

小田急本館(左)と京王百貨店(右)('22年12月撮影)

この光景が、複合施設開発により大きく変わるわけですが、その前に見ておきたい光景もあります。それは、小田急本館が解体され、施設建設が始まる前に見られる光景です。

小田急本館がない新宿駅は、解体後、建設前にしか見ることができません。実現するかどうかは工事現場の“目隠し”具合にもよりますが、現時点では想像すらできないJR新宿駅西側の様子を見られることも期待しましょう。

開発過程で小田急本館の向こう側を見ることができるかもしれない('22年12月撮影)

新宿駅西口には、小田急本館に先立ち“ビルがない光景”が広がっている場所があります。小田急本館や京王百貨店の向かいに位置する明治安田生命新宿ビル新築工事現場です。

明治安田生命保険は、1961年に旧安田生命の本社ビルとして竣工したビルの、隣接するビルとあわせた建替えを進めており、'21年8月1日に「(仮称)明治安田生命新宿ビル」の新築工事に着手しました。

新たに開発されるビルは、新宿駅直結で、地上23階・地下4階、高さ約126m、敷地面積6,294.72m2、延床面積96,901.94m2の規模です。低層階に店舗やホール、4階以上が事務所、そのほか子育て支援施設、駐車場等で構成されます。竣工は'25年11月予定。

外観イメージパース
位置図

現在はかつてあったビルが解体され、ビルの向こう側の景色が見える状態になっています。

'20年7月
'22年12月
「(仮称)新宿一丁目地区プロジェクト」として進められている

京王側には37階・225m複合施設 甲州街道を跨ぐ歩行者動線も

新宿西口のもう1つの百貨店である京王百貨店についても、再開発が京王電鉄とJR東日本から発表されています。対象は京王百貨店がある場所からルミネ新宿ルミネ1、甲州街道をまたいだ渋谷区代々木2丁目を含むエリア。最高地上37階、225mと、高さの面では小田急跡地に及びませんが、敷地面積は約16,300m2と、小田急よりも広い範囲となります。

イメージパース(西口駅前広場より)
現在の様子('22年12月撮影)
ルミネ1('22年8月撮影)
計画地

京王百貨店の場所を含む北街区と、甲州街道をはさんで渋谷区側の南街区に分けられ、北街区の工期は'40年代まで、南街区は'28年度までを予定しています。敷地面積は、北街区が約10,000m2、南街区が約6,300m2。規模は、北街区が地上19階・地下3階、最高高さ110m、延床面積約141,500m2、南街区が地上37階・地下6階、最高高さ225m、延床面積約150,000m2の計画です。

開発において1棟目となる南街区は新宿サザンテラスに面した場所、2棟目は京王百貨店とルミネ1がある場所で、ビルにはオフィス、商業、ホテルなどの複合機能を備えます。

この開発についての発表では、新宿グランドターミナルで掲げられている「駅とまちの連携を強化する重層的な歩行者ネットワークの形成」等に基づき、歩行者中心のネットワークを構築するとしています。

現在の京王百貨店のヨドバシカメラ新宿西口本店側に南北デッキを整備し、さらにヨドバシカメラ方面へ向けた都道横断デッキを整備。また、南北デッキと連携し、甲州街道を横断する国道デッキを整備するとともに、南街区建物内を貫通して新宿サザンテラス、バスタ新宿方面に往来できる歩行者ネットワークを整備する計画です。そのほか、乗換動線の整備や西南口地下駅広場の拡張整備、バリアフリールートの確保なども進められます。

北・南街区ターミナルシャフト
西新宿一丁目交差点から見た国道デッキのイメージ
2階 南北デッキイメージ

西口開発と連携した「スカイコリドー」や駅前広場

新宿グランドターミナル構想では、新宿は交通利便性に優れる一方で歩行者のための空間が不足しているという課題に対して、駅ビル内の低層部や中層部などに誰でも利用できる広場を整備するとしています。

また、現状西口駅前広場は自動車中心の空間構成となっていますが、複合施設開発とあわせて、人中心の駅前広場に再編。地上の広場は線路上空への設置を計画している東西デッキと、地下広場は東西自由通路と接続するなど、歩行者の回遊性向上を図ります。

西口駅前広場 イメージ
土地区画整理事業 整備概要図

西口にはそのほか、新宿スバルビルがありました。解体された後はイベント等のスペースとして活用されていましたが、現在は閉鎖され、駐車場出入口の整備が進められています。

スバルビル跡地の建築計画

さらに、新宿駅西口地区開発計画と新宿駅西南口地区開発計画の連携により、建物中層部に観光情報発信や体験ができる施設やにぎわい施設と一体となった、南北400mに渡る滞留・回遊空間「スカイコリドー」が整備されます。屋内外の空間が2つの開発計画で複層的に連続して生み出される広場空間で、新宿のまちを眺望できることも特徴の1つとしています。

東西デッキは、歩行者の利便性、回遊性向上に向けた取り組みです。長らく課題となっていた東西の移動については、'20年7月に地下の東西自由通路が開通したことで解消されたものの、さらなる向上を図り、線路上空に東西デッキが新設されます。広場とあわせ、'35年度の概成を経て、'46年の完成を目指すとしています。

東西デッキ イメージ
出典:新宿グランドターミナル・デザインポリシー 2021

4月開業の東急歌舞伎町タワーは48階・225m エンタメやホテル

JR新宿駅からは少し離れますが、4月14日に、東急と東急レクリエーションが新宿歌舞伎町で開発を進めている「東急歌舞伎町タワー」が開業します。

東急歌舞伎町タワー('22年12月撮影)

映画館・劇場・ライブホールなどのエンターテインメント施設およびホテルからなる複合施設で、地上48階・地下5階、高さ約225m、敷地面積4,603.74m2、建築面積約3,600m2、延床面積約87,400m2の規模です。

場所は'14年12月に閉館した「新宿TOKYU MILANO」跡地で、新宿東宝ビルのすぐ近く。かつての新宿TOKYU MILANOと新宿コマ劇場が、ともに生まれ変わったことになります。

新宿東宝ビル(右手前)と東急歌舞伎町タワー(左奥)('22年12月撮影)

地下1階から地下4階がライブホール、6階から8階が劇場、9階から10階が映画館、17階から47階がホテル&レストランという構成。「好きを極める」を施設コンセプトに、劇場「THEATER MILANO-Za」、ライフスタイルホテル「HOTEL GROOVE SHINJUKU」、映画館「109シネマズプレミアム新宿」、ライブホール「Zepp Shinjuku(TOKYO)」を中心として展開されます。

また、Zepp Shinjuku(TOKYO)の夜間時間帯における新たな空間活用として、ナイトエンターテインメント施設「ZEROTOKYO」を展開。あらゆるエンターテインメントコンテンツを集め、新たなエンターテインメント体験を生み出すこと、新宿歌舞伎町の地で培われてきたナイトエンターテインメント文化を礎としながら、世界に向けて新たな発信をすることを目指すとしています。

1階から5階では、飲食店などを展開。2階にエンターテインメントフードホール「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」、3階にアミューズメントコンプレックス「namco TOKYO」、4階にダンジョン攻略体験施設「THE TOKYO MATRIX」、5階にウェルネスエンターテインメント施設「EXSTION(エクジション)」が出店します。

竣工は1月11日予定と間近に迫っていることから、エントランスの様子を見ると、'22年12月時点でだいぶ完成に近づいていました。

エントランス('22年12月撮影)

また、約225mという高さがあるため、新宿周辺の様々な場所から確認でき、その特徴的なデザインから圧倒的な存在感を感じます。

新宿駅東口より('22年8月撮影)
西武新宿駅前より('22年12月撮影)
線路を挟んだ西側より。背面側('22年11月撮影)

東口には広場や西武新宿への地下通路・西新宿には都庁へのグランドモール

東口は西口に比べて、現在のところ大きな動きはありませんが、東京都は東口駅前広場を歩行者優先の空間とする計画を発表しています。歩行者が滞留できる空間が不足しているという課題に対し、車道の一部と駐車場出入口を線路側に移設し、歩行者空間を拡大する計画です。

あわせて、東西自由通路や線路上空の東西デッキの受入空間など、分かりやすい位置にバリアフリーの縦動線を確保するとしています。西口広場と同様に、'35年度一部完成、'46年度の事業完了を目指して進められます。

現在の新宿駅東口('22年12月撮影)
東口駅前広場 イメージ
出典:新宿グランドターミナル・デザインポリシー 2021

また、西武新宿駅周辺についても整備計画を検討しています。新宿駅東口から歌舞伎町までをわかりやすくつなぎ、まちの回遊性を向上させる歩行者ネットワークや、新宿グランドターミナルの人の活動、賑わい、情報と連携できる空間の整備を目指すとしています。

歩行者ネットワークについて西武鉄道が、西武新宿駅と東京メトロ丸ノ内線新宿駅をつなぐ地下通路の整備に向けた検討・協議を進めることを'21年4月に発表しました。地下通路については新宿区により都市計画決定されています。

西新宿エリアについても、東京都と新宿区は、超高層ビル街の機能更新、道路や公開空地等の一体的な再編に向けたまちづくりの方向性を示す「西新宿地区再整備方針(素案)」を取りまとめました。

「新しい西新宿地区」を先導する象徴的な空間

新宿駅から新宿中央公園に至る4号街路や沿道空間を一体的に再編したパブリック空間「西新宿グランドモール」を形成するほか、道路・公園・街区が一体となった歩行空間を形成する計画です。そのほか滞在空間や交流空間、シティホールの創出を目指し、検討が進められます。

西新宿グランドモールと回遊軸
西新宿グランドモールのイメージ
新宿中央公園から見た西新宿地区('21年9月撮影)

都民からの意見を募集し、3月を目途に再整備方針を策定する予定。その後、個別事業の具体化を進め、2020年代後半から民間街区、都庁周辺、道路空間の再整備、2040年代に新宿のまち全体の再整備を進める計画となっています。

現在、駅周辺から見える景色で目立つ存在は、高さ約225mの東急歌舞伎町タワーです。'30年までには、小田急本館跡地に高さ約260mの複合施設や、新宿駅西南口開発における高さ約225mの南街区が完成していることでしょう。この時、新宿駅周辺はどのような景色が広がっているのでしょうか。

出典:新宿グランドターミナル・デザインポリシー 2021

徒歩での移動について直近ではJR新宿駅の東西自由通路により、利便性が大きく向上しました。さらに遡ると、南口の新宿跨線橋の架け替えで、甲州街道沿いの歩道が拡張されて歩きやすくなりました。歩行者ネットワークの整備では「回遊性向上」が謳われることが多いですが、シンプルに「歩き疲れ」が軽減されます。

買い物、観光、エンターテインメントなど、大型開発により新宿がさらに楽しい街になることに期待するとともに、開発にあわせて進められる歩行者空間整備により、各施設を快適に歩き回れる街並みになることを期待しましょう。

出典:新宿の新たなまちづくり ~2040年代の新宿の拠点づくり~