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【オタク家を買う】注文住宅進行中。コスパが悪い「コの字型の平屋」採用の理由

据付工事中の筆者建物。玄関のある南から見ると幅は9.5mだが南北には17.5mある

筆者の注文住宅計画、9月の変更契約までいろいろあったものの、そこからは順調に発注、地鎮祭と進み、先日は据付・建方工事も完了して、家の形ができてきた。これから内装と外装の工事などがあり、順調にいけば、2023年1月末には引き渡しとなる予定である。

今回はハウスメーカー選びの話を書こうと思ったのだが、その前に筆者の計画図面や工事現場写真を見せつつ、具体的にどんな家を建てるのかを自慢……もとい解説し、それを実例として、次回以降のハウスメーカーの話などの土台としていきたい。

ただし注意ポイントがある。今回の計画の詳細は、あくまで2022年2月に契約した筆者のケースだ。同じハウスメーカーで同じ設計の家を建てようとしても、契約や発注のタイミングによって、価格や使える住宅設備のラインナップ、オプション仕様、住宅性能などは変わってくる。仕様や設備の性能・ラインナップが増えることもあれば、選択肢が減ったり価格が上がることもある。

とくに注意が必要なのは価格だ。コロナ禍以降、住宅に使われる資材や住宅設備は値上がりが続いていて、ハウスメーカーの建設コストも上昇している。筆者の計画と同じ価格というのは、いまからでは不可能だ。記事内で金額はあえて大雑把に表記するが、その大雑把な金額ですらアテにならないと考えておいて欲しい。

白根雅彦(45)が注文住宅を作るための苦闘を記録していく連載です。結構出来上がってきたようです。

筆者のハウスの概要

ユニット工法では、トレーラーで運べるギリギリサイズのユニットを工場で作って持ってくる

筆者の家を建てるのはトヨタホームだ。トヨタホームはトヨタ自動車からスピンオフした注文住宅メーカーで、現在はトヨタ自動車とパナソニックが2020年に設立した合弁会社プライム ライフ テクノロジーズの子会社である。兄弟会社にはパナソニック ホームズやミサワホームもいる。

トヨタホームの特徴は、鉄骨製の構造体ユニットをレゴブロックやマインクラフトのごとく積み上げて家を作る「ユニット工法」だ。この構造体ユニットは生産効率・強度・耐久性が高く、構造壁が不要で大空間と大開口に強い。一方で建物形状の自由度が低く、そのほか色々な制約があって住宅密集地には向かない。そのため、トヨタホームはユニット工法よりも制約の少ない、通常の軽量鉄骨造も手がけていて、都内ではそちらの方も多い。

ユニットを現地で大型クレーンで積み上げるので、基礎ができていれば1日で屋根まで完成する(屋根より下は午前中で終わった)

筆者の計画した建物は、コの字型の平屋だ。総床面積は119㎡=36坪で、建物本体と本体外の費用を合わせると約5,100万円(税金や割引、外構は別)。内訳としては建物本体が約3900万円、本体外が約1,200万円といったところだ。豪邸というような広さや仕様ではないが、同じ床面積の普通の家に比べると、かなり高コストになっている。

ローコストメーカーや工務店で木造2階建てにすれば、同じ広さで半額以下の金額で建つだろう。トヨタホームでも、安く抑えればこの半分くらいの金額から建てることができると思う。どうして筆者の計画が高コストになっているかというと、いろいろな金のかかる仕様を大量に盛り込んでいるからである。そのあたりをこの記事で解説したい。

コスパが悪い「コの字型の平屋」を採用した理由

平面図。平屋なのでこのフロアだけである

そもそもの話として筆者の計画の建物形状、「コの字型」と「平屋」はいずれもコスパが悪い。同じ総床面積で比較すると、「四角の家」より「コの字型の家」の方が構造体(柱や梁、構造壁)と外壁が増える。「総2階建て」に比べ、「平屋」は基礎と屋根が2倍必要だ。筆者の計画の費用内訳を見ると、構造体、外壁、基礎、屋根を合わせて2,000万円を超えているので、あくまで推定だが、同じ面積の「正方形の総2階建て」に比べると、「コの字型の平屋」にしたことで数百万円は高くなっている可能性がある。

なぜコスパの悪い「コの字型の平屋」にしたかというと、トヨタホームの担当営業氏に提案された「コの字型平屋」のプランが、筆者の想定以上に、筆者の求めるコンセプト、「大きな窓からの風景を壁紙として暮らす開放感のある家」を実現していたからだ。やはりプロの提案力って凄い。

LDK周辺の緑に塗ってる部分が窓

例えばLDKには北・西・南の3面に大きな窓がある。窓ばかりで、コンセントやスイッチの配置に困るレベルで壁が少ない。

計画地は北と西が法面となっている高台なので、北と西は眺望とプライバシーが確保しやすい。東と南の隣地は同じ高さなので、そちらに向く外壁に窓は一切なく、LDK南側の窓は内庭テラスに向けることで、プライバシーを確保している。いずれの窓もカーテンを掛ける必要性が低く、外構を工夫すれば、フルオープンで暮らせる。

内装工事初期段階のLDK。キッチン予定位置から西の写真。窓が多いので昼間は照明不要なくらい明るい

一般的な家とはちょっと異なるデザインとなるので、これが快適な家になるかどうか、それは完成して住んでみないとわからないとも思っている。しかしこうした開放感のある家が欲しくて注文住宅計画に着手したので、この間取りを採用した。

コの字型の内庭は、ウッドデッキを敷いて室内と一体的に使うことを想定している。この内庭は4.75×7.5mで22畳ほど。LDKの広さは23畳ほどなので、この2つの空間を連続して使えば、狭いと感じることはないのでは、と期待している。

建設中の内庭テラス部。窓が多いおかげで、左側のLDK越しに向こうの山が見える

この内庭テラスをそこそこ広くできたのは、平屋で建物が細長いおかげだ。2階建てだと内庭テラスや北側の庭への日照も悪くなってしまう。このあたりも平屋を採用した理由でもある。また、建物完成時に筆者は46歳、このあと30年くらい住めば、もう後期高齢者だ。ならば、階段のない平屋の方が良い。

平屋にすることでコストも上がったし、庭や駐車場は小さくなってしまった。しかしこうしたコスト効率が悪く、建売住宅ではまず存在しないような仕様にできるのは、注文住宅の醍醐味なのである。

間取りは2LDKだけど、柔軟に運用できるように

青の部分は可動間仕切りで、フルオープンにすれば緑の部分を広くLDKとして使える

建物中央にある10.7畳の洋室には「セフィット」という間仕切りとして使える可動収納棚を設置し、南北の2つに区切れるようにしている。

洋室の北西部分には可動式の間仕切り折れ戸があり、これをフルオープンにすると、廊下とLDKとつながった空間として使える。普段は収納付き畳ユニットを置いて、ごろ寝スペース兼客間として使おうと思っている。

筆者が結婚して子どもができたら、間仕切りを閉めて子ども部屋にできるように、と考えた間取りだが、46歳独身オッサンの筆者が結婚して子どもができる可能性は、災害などで家に住めなくなる可能性よりも低いよな、と考えて悲しい気持ちになった。どうしてくれるんだよこの気持ち。

洋室の南半分が筆者の寝床である。寝るだけの部屋なので、4畳弱あれば十分だ。セフィットは移動が簡単らしいので、ギリギリまで寝室を小さくしてやろうかと考えている。老後、寝たきりになって開放感ある寝室が必要になったら、セフィットを移動して洋室を1つにすればよい。

マルチルームの大きさは大雑把に4.5m四方。資材が置いてあってごちゃごちゃしてるけど、住み始めてもごちゃごちゃする予定

テラスの南側にある13.2畳の「マルチルーム」は、筆者の昼間の居場所だ。書斎であり、撮影スタジオであり、筋トレルームであり、VRゲームルームでもある。ほかの部屋から離れているので、生活音が伝わりにくいのもポイントだ。筆者は一人暮らしだから関係ないけど。

このあたりの間取りは、トヨタホームの初期提案から大きくは弄っていないが、可動式の間仕切り折れ戸は、筆者が各住宅設備メーカーのカタログを読みあさり、「袖壁不要でL字配置でも一方に寄せられる」という珍しい仕様の製品を見つけ、それを指定して入れてもらった。こういったことができるのも、注文住宅の醍醐味だ。

イマドキな家事を意識したウォークイン収納

緑に塗ってる部分が3つのウォークイン収納

収納としては、LDKの東側にウォークインパントリー、浴室の東側にウォークインクローゼット、玄関の東側にウォークインシューズクロークを作っている。

この中でも特徴的なのは、浴室の隣にあるウォークインクローゼットだ。ここは脱衣室とランドリールームを兼ねている。つまり、風呂に入るときは脱いだ服をそのまま洗濯機に放り込めるし、風呂から出れば着替えはすぐに取り出せるし、洗濯機から取り出したものはそのまま干して畳んで収納できる。

洗面台は脱衣室の中ではなく、廊下側に配置することで、筆者が風呂に入っているときも娘が歯を磨いたりできる仕様としている。筆者には嫁も子どももいないけど。まぁお客さんが洗面台を使うときにランドリールームを見られないための仕様であり、帰宅時に手を洗いやすい仕様でもある。この辺りはイマドキな家事動線を意識した間取り仕様だ。

水回りの配置については、トヨタホームの初期提案から筆者の要望で大きく変更した。寝室はやや狭くなったのだが、利便性や快適性は向上したと思う。

別注だらけの水回り

トヨタホームのアイテムカタログ(筆者が契約した2021年9月バージョン)。標準品として選べる住宅設備がひたすら載ってて永遠に見てられる

水回りのうち、洗面台だけがハウスメーカーのアイテムカタログ内の製品で、キッチンと浴室とトイレは別注品となっている。

別注品は通常、高くなる。正確に言うと、ハウスメーカーのアイテムカタログに掲載されている標準品は、ハウスメーカーが住宅設備メーカーと大口契約を結んでいて安くなるので、通常の取引となる別注だとそれより高い、となる。

水回りなどの住宅設備の選定は、デザインや機能でこだわりも見せられるし、選んでいて楽しいポイントだ。ここでは本計画での概要を紹介したい。

キッチンはタカラスタンダードの中級グレード「トレーシア」のアイランド配置タイプを別注した。価格は大雑把に150万円くらい。標準品からアイランド配置に対応する仕様(上級グレードしかなかった)を選んでも、これに近い金額になったので、実はそんなに高いわけでもない。そもそもIHやセンサ水栓などの豪華仕様ではある。

浴室はLIXILの上級グレード「スパージュ」の1616サイズ。スパージュは標準品にもあるが、室内窓が追加できる上級グレードの別注となった。価格は大雑把に140万円くらい。標準品の低級グレードの浴室なら50万円くらいから導入できるので、室内窓のためにかなりコストをかけたことになる。

トイレはLIXILの「パブリック向けクイックタンク式床置便器」だ。家庭用ですらないイロモノ別注品で、価格は28万円くらい。LIXILの上級グレード「サティスS」を標準品で導入する場合より10万円くらい高いが、便座交換がラクそうなのでパブリック向け製品を選んでいる。

仮置きされていた洗面台(鏡は未設置)。コイツだけ標準品なのでトヨタホームの工場から出荷され、ユニットと一緒に現場搬入されていた

洗面台だけはアイテムカタログ標準品から選んでいて、パナソニックの「ウツクシーズ」を採用する。変な名前なのはパナソニックの水回り製品の特徴である。幅1,200mmで、自動水栓やツインライン照明を付けているので、価格は25万円くらいかかっている。ちょっと高いが、洗面台が面する廊下がやや長大なので、負けないように大きなものを採用している。

繰り返しになるが、これらの価格は筆者のケースだ。グーグルで適当な住宅設備メーカー名と「価格改定」で検索していただければわかるが、住宅設備メーカーはここ1年ほど、ハイペースで値上げをしている。筆者のケースでの価格を「高いな」と感じる方もいらっしゃるかもしれないが、これから計画を開始すると、多分もっと高いぞ。

悩みに悩んでコストがかかった空調や電気関連仕様

細かい仕様が載ってる図面。素人には全てを把握するのは不可能……と思いきや意外と把握できる

家自体の性能仕様、例えば断熱材だとか気密性能だとか強度構造だとかは、メーカーごとに基本仕様が決まっていて、あまり選べない。しかし完全に選べないわけでもない。筆者の計画では、目立つところでは基礎断熱仕様とマルチルームの床面強化仕様などの特殊仕様をオプション追加している。

今回の計画では全館空調を採用している。119㎡の3LDKという間取りに2機が設置され、コストは140万円くらい。この広さだと、一定グレード以上のルームエアコンを家電量販店などで買ってもそれなりの金額になるので、全館空調が法外に高いわけではない。ちなみに24時間換気は別系統で、標準仕様である熱交換器付き第3種換気システムが2系統入っている。

このほかの電気関連の仕様としては、オール電化とすることにした。都市ガスのあるエリアで、ガス管も引き込み済みだったが、使っていない。

太陽光パネルは合計8kWほど搭載している。ZEH仕様とするために、太陽光パネルはちょっと多めとなり、200万円近くかかっている。年間10万円くらいの発電が期待できる容量だ。ただしZEHの補助金が出るかはスケジュール的にギリギリで微妙な状況だ。

V2H導入を検討していたが、スケジュール的にBEV含めて補助金や納期が難しかったため断念した。代わりに特定負荷型の小規模な蓄電池(4.2kWh)を採用する。こちらは大雑把に60万円くらいだ。固定買い取り(FIT)が終わる10年後あたりを目標にV2Hや全負荷型の蓄電池を導入するかも、と思っている。

このあたり、詳しくない人は何を言ってるかわからないかも知れないが、細かい解説は長くなるので別の機会とさせていただきたい。

もっとも高価な特殊仕様は「窓」

キッチン予定位置からのパノラマ写真。開放感があるよう大量の窓を配置している

最後に解説したいのは、本計画でもっとも特徴的で、もっともコストがかかっている「窓」だ。総延長は27m、合計コストは400万円以上かかっている。サイズが大きく、量も多く、仕様も豪華なので、一般的な住宅の倍以上の金額になっていると思うが、一応、全てトヨタホームの標準品を採用している。

トヨタホームのユニット工法が標準品とする窓は、明記はされていないが、おそらく三協アルミ製の「アルジオ」シリーズのトヨタホーム向けカスタム品だ。

窓の下部レールはフラット仕様。フローリングを敷けばほぼ段差がなくなる

筆者の計画では、トヨタホーム標準品では最大サイズとなる幅4mの4枚建て引き違い窓を4セット、採用している。あとは2mの2枚建て引き違い窓が3セット。以上の窓は全て高さ2.3mで、フラットレール仕様だ。

このほかにも幅1.5m、高さ2.3mのFIX窓(開かない窓)が2つ、幅2m、高さ1.5mのFIX窓が1つある。トヨタホーム標準品のFIX窓としては、この2つがほぼ最大サイズだ。

4mの4枚建て引き違い窓。2枚開ければ2m近い開口となる

すべての窓は裏メニューでトリプルガラスに変更している。なんで裏メニューかというと、標準品のアイテムカタログには載っていないけど、問い合わせたら特殊仕様として変更できたからだ。

裏メニューでトリプルガラスにしたことで、ペアガラスに比べて140万円くらいの追加費用がかかっている。かなりのコスト増だが、これにより、家全体の断熱性能を示すUA値の暫定計算値が0.62[W/㎡K]から0.43[W/㎡K]に改善している(UA値は低い方が良い)。関東地方なら断熱等級5を超え、10月に新設された断熱等級6(0.46未満)に相当する。最高の断熱等級7(0.26未満)には遠いが、これだけ窓の多い鉄骨造としてはかなり高性能だ。

建物の東側には一切窓がない。こっちは隣地と1mしか離れてないので、窓があっても眺望は期待できない

そもそもこの家、コの字型なので外壁面積が通常よりも大きく、1㎡あたりの熱の通しやすさを示すUA値が低くても、家全体の熱の出入りはしやすくなる。だから冷暖房コストや快適性を考えると、UA値は通常よりも低い値を目指さないとお話にならない。トリプルガラスの140万円は、必須コスト、と考えている。

住宅の窓にはいろいろな制約があり、窓にこだわるなら、ハウスメーカー選びの段階から検討しないといけないポイントでもある。この「窓」を中心とした家づくり、かなり奥が深いので、ここも別の機会に書ければと思う。

ハウスメーカーの特徴を活かした家づくり

以上が筆者が建てている注文住宅の概要だ。

筆者は最初に「開放感のある暮らし」というコンセプトを掲げ、眺望が良い高台の角地を探し出した。さらにコンセプトと土地条件を複数のハウスメーカーと共有し、プランを出してもらった。複数社のプランを比較し、もっともコンセプトを実現できそうなトヨタホームを選び、プランを詰めていまに至っている。

その結果、ちょっと珍しい間取りや仕様の多い、自分のコンセプトにかなり近い家をデザインできたと思っている。

この家、トヨタホームならでは、というポイントが多い。まずトヨタホームのユニット工法は大開口・大空間を作りやすく、標準で選べる窓も比較的大きい。また、ユニット工法は柱が面積に対して増えていくので(通常は「辺」の数で増える)、コの字型の家でもコスト増が少なかったハズだ。

逆にトヨタホームだとできない、あるいは高コストになるから諦めたことも多々ある。いま建てている家は、トヨタホームだからこそ建てられた家だが、他社にお願いしていたなら、その会社の特長を活かした家になっていたはずだ。筆者が検討した範囲でトヨタホームはベストチョイスだったと判断したわけだが、もっと細かく検討していれば、あるいは実際に建て比べてみれば(そんなこと不可能だが)、他社の家の方が気に入るという可能性だってある。

ハウスメーカーごとに住宅建築に使える技術・部材・コストが異なるので、作れる家はかなり違ってくる。とくに筆者くらい、極端なコンセプトを目指すとなると、ハウスメーカーの違いは顕著に出てくる。そうした極端なコンセプトの家を建てるとなると、ハウスメーカー選びは、土地探し同様にかなり難しい。

筆者はそれなりに勉強したとはいえ住宅業界の素人ではあるので、素人なりの知識しか持っていないが、次回以降はハウスメーカー選びにあたって知っておくべき会社ごとの違いについて解説していきたい。

白根 雅彦