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「線状降水帯」って何? 大雨災害発生への備えを
2022年8月4日 08:20
気象庁は今年の6月より「線状降水帯」による大雨の予想について、「九州北部」など大まかな地域を対象に半日前からの情報提供を開始しました。この線状降水帯とはどういったものなのか、発表されたときには何をすれば良いのかを理解し、適切な行動につなげられるようにしましょう。
線状降水帯とは、次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域です。毎年のように線状降水帯による顕著な大雨が発生し、数多くの甚大な災害が生じています。
こういったことから気象庁では産学官連携で、線状降水帯による大雨について早めの避難につなげるため、スーパーコンピュータ「富岳」も活用し、線状降水帯予測を開始しました。
線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけは、「顕著な大雨に関する気象情報」の発表基準を満たすような線状降水帯による大雨の可能性がある程度高いことが予想された場合に、警戒レベル相当情報を補足する解説情報として発表されます。
呼びかけでは、大雨予想の際に発表される全般気象情報、地方気象情報、府県気象情報に、線状降水帯発生の可能性について言及します。対象となる区域は、地方予報区(全国を11ブロックに分けた地域)単位等、「○○地方」といった表現で記述します。見出しのみの発表の場合もあります。
線状降水帯による大雨の正確な予測は難しいこともあり、呼びかけが発表されても必ずしも線状降水帯が発生するわけではないものの、発生しなくても大雨となる可能性が高い状況とされています。
呼びかけが発表された際、私たちは何をすればよいのでしょうか。
呼びかけは「大雨災害発生の危険度が急激に高まることがあるため、心構えを一段高めていただくこと」を目的としています。呼びかけだけで避難行動をとるのではなく、大雨災害に対する危機感を早めにもつことが大切です。気象庁は例として、ハザードマップや避難所・避難経路の確認等などの行動を挙げています。
また、自治体が発令する避難情報や、大雨警報やキキクル(危険度分布)等の防災気象情報と併せて活用し、自ら避難の判断をすることが重要です。
警戒レベル4相当以上で発表される「顕著な大雨に関する気象情報」
さて、呼びかけは「顕著な大雨に関する気象情報の発表基準を満たすような線状降水帯」の可能性に関して発表されるとありました。それでは「顕著な大雨に関する気象情報」とはどういった基準なのでしょうか。
顕著な大雨に関する気象情報の発表基準は、以下の条件をすべて満たした場合に発表されます。
1. 解析雨量(5kmメッシュ)において前3時間積算降水量が100mm以上の分布域の面積が500km2以上
2. 1.の形状が線状(長軸・短軸比2.5以上)
3. 1.の領域内の前3時間積算降水量最大値が150mm以上
4. 1.の領域内の土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)において土砂災害警戒情報の基準を実況で超過(かつ大雨特別警報の土壌雨量指数基準値への到達割合8割以上)または洪水キキクル(洪水警報の危険度分布)において警報基準を大きく超過した基準を実況で超過
こちらは大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている中で、線状の降水帯により非常に激しい雨が同じ場所で実際に降り続いている状況を「線状降水帯」というキーワードを使って解説する情報です。警戒レベル相当情報を補足する情報で、警戒レベル4相当以上の状況で発表されます。
半日程度前からの呼びかけでは「呼びかけだけで避難行動をとるものではない」とされていました。対して顕著な大雨に関する気象情報については、「崖や川の近くなど、危険な場所にいる方(土砂災害警戒区域や浸水想定区域など、災害が想定される区域にいる方)は、地元市町村から発令されている避難情報に従い、直ちに適切な避難行動をとってください」とされています。
顕著な大雨に関する気象情報は、全般気象情報、地方気象情報、府県気象情報を同時的に発表します。対象となる区域は、一次細分区域(府県天気予報を定常的に細分して行う区域)毎に、「○○地方」といった表現で記述されます。
発表の際には、「雨雲の動き」、「今後の雨」(1時間雨量または3時間雨量)において、大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている線状降水帯の雨域が赤い楕円で表示されます。
大河川の上流部で線状降水帯により非常に激しい雨が降っている場合、下流部では危険度が高まるまでに時間差があることにも留意するよう呼び掛けています。最新の洪水危険度は洪水キキクル(洪水警報の危険度分布)で確認するようにしましょう。
また、線状降水帯が発生していない場合や顕著な大雨に関する気象情報が発表されていない場合も、広範囲で激しい雨が長時間継続することによる災害が発生するケースもあります。大雨に関する情報は、雨量の見込みも含めた一連の情報を確認・活用することが重要です。
気象庁では引き続き、線状降水帯の予測精度向上等に取り組むとともに、対象地域を狭め、予測時間を伸ばしていく予定です。具体的には、現在の「広域で半日前から予測」が、'23年に30分前を目標として「直前に予測」、'24年に「県単位で半日前から予測」、'26年に2~3時間前を目標として「さらに前から予測」、'29年「市町村単位で危険度の把握が可能な危険度分布形式の情報を半日前から提供」とする計画が発表されています。