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スマートホームはもっと簡単・便利に。アレクサと“スキル”の進化

「Alexa Live 2022」。日本時間7月21日午前1時から配信

米Amazonは、7月20日(米国)から、音声アシスタント「Alexa」とAlexaを機能拡張できる「Skill(スキル)」に関する開発イベント「Alexa Live 2022」をオンラインで開催している。

Alexa Live 2022

Amazonが「アンビエント・インテリジェンス」と呼ぶビジョンやスマートホームの拡充には、周辺機器とAlexa Skill(スキル)の拡充が不可欠だ。Amazonは「Alexa Live」でSkill開発環境をアップデートしており、今年も新技術を発表している。米AmazonでAmazon Alexa Voice Service and Alexa Skills担当バイス・プレジデントを務める、アーロン・ルーベンソン氏に単独インタビューし、新たな技術やそれらがもたらす価値について聞いた。

米Amazon・Amazon Alexa Voice Service and Alexa Skills担当バイス・プレジデントのアーロン・ルーベンソン氏。取材はオンラインで行なった

なお、ここで説明される技術は基本的にアメリカ向けのものだが、日本を含む各国でも、今後順次対応・提供を予定しているという。

AmazonデバイスやAlexaを統括するDave Limp氏がAlexa Liveで講演

「ルーチン」活用の活発化でAlexaを便利に

AmazonがAlexaを発表してから8年が経過した。Amazonによれば、2014年に正式公開が始まって以降、Skillのアクティブユーザーは3倍に拡大したという。

8年で3倍、という数字を順調と見るかは、かなり議論が別れるところかとも思う。だが、Skillの活用がAlexaの進化のカギであるのは間違いない。

ルーベンソン氏は現状を次のように解説する。

ルーベンソン氏(以下敬称略):私たちはAlexaで「アンビエント・インテリジェンス」と呼ばれるビジョンに取り組んでいます。電話やヘッドフォンに根付くものですが、手元を見下ろして画面を見続けるのではなく、人々が交流する時間を増やせれば、と思います。それこそが、アンビエント・インテリジェントにとっての、北極星のような目印です。技術的なことは理解する必要なく、ただ話すだけでコンピュータとつながれれば、と考えているのです。

昨年は、ユーザーとAlexaとのインタラクションのうち20%以上が、開発者が作ったサードパーティスキルに関わるものでした。Alexaに接続しているスマートフォンは3億台を超えています。また、Alexaに接続されている、家電をはじめとしたスマートデバイスも3億台を超えました。大きな成長を遂げている、と言えるでしょう。

人々が技術を意識せずに使う上で重要な要素になるのが「ルーチン」という機能だ。Alexaから周辺機器などに与える命令をつなぎ、少ない命令で自動的にやってもらえるようにするものだ。

ルーベンソン:例えばジャガー・ランドローバーは、「おやすみなさい」と呼ばれるルーチンを構築、導入しています。車の状況を確認するものです。施錠を確認し、充電と燃料の残量を確認し、ガーディアン・モードをオンにして車内で不正な行動がないことを確認します。

これらのことを行なう際、ユーザーはただ「はい」と答えるだけで、機能をオンにすることができるのです。

Alexaのスマホ用アプリでは、自分で命令をくみあわせて好きな「ルーチン」を作れる。だが、開発側が最初から作って組み込んでおくこともできるわけだ。ランドローバーでの機能はその好例だ。

ルーベンソン:ユーザーがスキルを使用する際に、ルーチンを提示することもできます。

ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)の例がいいでしょう。NPRは、平日のある時間帯にNPRを再生するルーチンをあらかじめ設定してあります。スキル開発者は、「あなたはNPRのリスナーだから、毎日自動的にNPRを流してほしいですか? もしそうなら、『はい』と答えてください。そして、何時にスタートさせたいかを教えてください」と表示できます。そうやって、利用をもっと簡単なものにしていけるのです。

スマートホーム簡便化に「Matter」。新機能でサポートも

スマートホームの世界で大きなトピックとなっているのが「Matter」だ。Matterはスマートホーム機器に関する標準規格の1つで、多くの企業に加え、スマートホーム・プラットフォーマーであるAmazon・アップル・Googleがサポートしている。

Connectivity Standards Alliance(CSA)が策定するスマートホームの標準規格「Matter」。大手が一斉にスタートするため、スマートホームでは非常に大きな存在になる

Amazonは昨年サポートを表明したが、今後のAlexaでは「Alexa Connect Kit SDK for Matter」により、Matter対応機器へのサポートが強化される。

ルーベンソン:我々は選択肢を重視します。スマートホーム機器に関し、より多くの選択肢があることが、ユーザーを喜ばせ、ビジネス全体を成長させる方法だと考えています。

そのため、私たちは長い間、Matterをはじめとするスマートホームのプロトコルや標準規格の多くをサポートしてきました。昨年、私たちはEchoデバイスをMatter互換へとアップグレードすると発表しています。Matter対応デバイスがお客様の手元に届き始めると、どのEchoでもMatterデバイスが動作することがわかり、さらにデバイスを追加していくことも簡単になるでしょう。

Amazonの「Echo」シリーズも、Matter対応へのアップデートを公表している

ルーベンソン:これは、業界にとって非常に重要なことだと考えています。

現在は「どの規格の製品か」を知らなければ買えませんが、今後は、欲しい製品のページに「matter compatible」と書かれていれば大丈夫です。

Amazonも、ユーザーにとってMatterの体験ができるだけシンプルになるよう、注力しています。

スマートホームの最大の課題は、セットアップの複雑さだ。どの機器がどのスマートスピーカーと連携しているのかも分かりづらいし、便利に使うための「ルーチン」設定も大変だ。部屋ごとにある機器を適切に呼び出せるようにするにも、設定が必要だ。

そこで重要になるのが、今回発表される「Alexa Ambient Dev Home Kit」だという。

ルーベンソン:Ambient Dev Home Kitでは、スマートホームの開発者がシームレスなスマートホーム体験の実現を容易にするもので、今回新たに発表するものです。

このAPIを使うと、スマートデバイスの名前、キッチンの電球やスマートホームデバイスのグループなどを同期できます。

キッチンでスマートライトをセットアップするとします。その際はまず、メーカーが提供する携帯電話アプリで名前を付けてグループ化します。

その後、お客様がAlexaからそのスマートライトを使おうとしたとき、その名前とグループが自動的に転写されます。ユーザーは名前などを再入力する必要がありません。

これは一例ですが、スマートホームの設定を簡便化するには必要なことです。Ambient Dev Home Kitでは、Matter対応機器を簡単にセットアップできるよう、サポートを行ないます。

簡単に使うための方法としては、私たちが「シンプルセットアップ」と呼んでいる機能もあります。ユーザーがすでにAlexaを使ってスマートホームをコントロールしている場合、Alexaがお客様のWi-Fi認証を保存、セットアップできるようにするものです。

これらの組み合わせにより、新しいMatter互換デバイスなら、追加するのは、電球ならねじ込むだけと同じくらい簡単なはずです。

ヘッドフォンで「Alexaと他の音声コマンド」の同居が可能に

AmazonはMatterに関し、「シンプルさと選択肢の提供」が重要、と語る。

同様に「選択肢の提供」という意味で興味深いのが、「Multi-assistant voice experiences」と呼ばれるものだ。

音声アシスタントというとAmazonなどの大手が思い出されるが、ヘッドフォンメーカーなどには、独自のボイスコマンドを実装しているところもある。それらとAlexaを同居させよう、というのがこの機能である。

ルーベンソン:私たちは、顧客1つのデバイスで複数のアシスタントにアクセスでき、特定のタスクについて、どのアシスタントと対話するかを選択できることが非常に重要だと考えています。

ヘッドフォンメーカーのSkullcandyは、Alexaを自社のデバイスに追加することを発表しました。Skullcandyは自社のコマンドで、音楽やメディアのコントロール、ノイズキャンセリングの制御などに重点を置いています。しかし、Alexaを使えば、同じデバイスでニュースを聞いたり、スマートフォンを操作したり、これまでお話ししたようなスキルにアクセスしたりすることができます。

ユーザーは、自分がやろうとしている特定のことに最適だと思うアシスタントを使い分けることができるので、両方の長所を得ることができるのです。

「Sonos」のスピーカーではSonos独自の音声コマンドとAlexaを共存できる

SkillのプロモーションにAmazonが協力

Alexaは、他の音声アシスタント以上に「サードパーティーによる機能追加」、すなわち「Skill」を重視している。今回のように開発者イベントを開催するのはそのためだ。

一方で、Skillを開発しても、ユーザーからは見つけてもらいにくい、という課題もある。スマホのアプリストアと違い、人々はなかなかSkillストアを見たり、検索したりもしない。うまく周知を高めないと、Skill開発者のビジネスが回らない。

その点について、ルーベンソン氏は「非常に重要な課題だ」と話す。

ルーベンソン:私たちに、プロモーションを通じて、ユーザーが適切なSkillを見つける手助けをする責任があるのは間違いありません。

1つ目は、「プロモーテッド・スキル」と呼ばれるものです。プロモーテッド・スキルとは、開発者がお金を払ってAlexaデバイスにスキルを宣伝する方法です。Echo Showデバイスの画面は、Skillへのエンゲージメントとディスカバリーの強力なドライバーであることを知っています。

誰かが部屋に入ってきたときは認知を高めるチャンスです。デバイスが誰かが部屋にいることを認識すれば、Skillのビジュアルカードをアップして、お客様を引きつけることができます。

「Skill開発者アクセラレータープログラム」では、開発者が特定の行動をとれば金銭的な報酬を与えるだけでなく、将来的にはプロモーションクレジットという形でインセンティブを与える予定です。

このようなアクションを起こし、Skillの品質スコアが向上した開発者は、AlexaデバイスでのSkillに関する追加プロモーションを受けることができるようになります。

この2つは、非常に強力だと考えています。そして、スキルのプロモーションは、開発者が求めていたものであり、私たちはそれを開始することに興奮しています。