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荷物発送が便利でお得に? 「ヤマトビジネスメンバーズ」に登録してみた
2022年4月13日 08:20
業務上の荷物のやり取りはもちろん、ECサイトやフリマアプリの利用が増えたこともあって、筆者も日々お世話になっている宅配便。しかし荷物を受け渡しする機会が多くなると、その作業をできるだけ効率化したくなるものだ。特に荷物を発送するときは、伝票の記入や荷物の持ち込み、あるいは集荷の依頼など、前準備にいろいろと手間がかかってしまう。
ヤマト運輸では、こうした荷物の発送(または受け取り)にかかわる手続を電子化して省力化できる個人ユーザー向けの「クロネコメンバーズ」というWebサービス(スマートフォンアプリ)を提供している。アドレス帳を使った手続の簡略化、集荷依頼や送り状の作成など機能は充実しており、普段から利用している人は多いだろう。
ところで、ヤマト運輸には法人向けの「ヤマトビジネスメンバーズ」というサービスもあることをご存じだろうか。筆者も一応会社として活動しているので、せっかくなら試してみたいと思い、ユーザー登録して3カ月間ほど利用してみた。個人向けと法人向けとでどんな風にサービス内容や使い方が異なるのか、紹介しよう。
料金が後払い可に。割引もアリ
個人向けの「クロネコメンバーズ」と法人向けの「ヤマトビジネスメンバーズ」のサービス内容には多くの違いがあるが、法人向けで特にメリットとなるところは2つ。
1つは支払い方法が発送の都度ではなく、掛売り契約、つまり月1回まとめての後払いが可能になること。
それと、発送する荷物の数に応じて運賃が割引される場合があることもメリットだ。多くの荷物を取り扱う事業者にとっては、支払いの手間が少なく済むし、割引もされるしで、利用しない手はない。
「ヤマトビジネスメンバーズ」に登録するには、法人もしくは個人事業主であることが前提となる。申し込みはWebサイトから可能だ。最初に法人や個人事業主であることの証明を求められることはないが、申し込み後にヤマト運輸側で審査されることになるため、場合によっては追加で確認作業が発生することも考えられる。筆者の場合は特に問題なく手続が進んだようだ。
ただ、審査が終わればすぐに利用できるようになる、というわけではない。筆者のときは、申し込みから1週間ほどたって、いつも宅配していただいているエリア担当者が紙の契約書(申込書)を直接持ってきた。その紙に社印を押印し、代表者(社長)名を記入して、支払い方法、締め日などを選択する。後日再びやってきた担当者に記入済みの紙を手渡し、ようやく正式な申し込みとなった。
年末年始にかけて申し込んだため時間がかかってしまったのかもしれないが、さらに1週間ほどすると、今度は、担当者が運賃料金表(見積書)を手にやってきた。ここで提示される料金表は、申込時に記入した1カ月あたりの荷物の予想個数(あるいは過去の実績かもしれない)を元に決められた事業者ごとの見積もりとなる。当然ながら荷物の取扱数量が多いと見込まれれば、その分割引率は上がるのだろう。
提示された見積額には是非もないので(筆者が発送する荷物はそこまで数量が多いわけではないが、通常料金よりは幾分割引されていた)、正式に契約。数日で「ヤマトビジネスメンバーズ」にログインするためのID、パスワードがメールで届き、めでたくサービスを利用できるようになった。ちなみに、さらに数日ほど後に会員であることを証明する「クロネコカード」というものも届く。ただ、このカードがなくてもサービスは利用できるようだ。
「ちゃんとした業者感」のある専用ラベルで発送できる
発行されたID、パスワードでログインすると、個人向けの「クロネコメンバーズ」とは似ても似つかない画面が現れる。インターフェースに若干古くささを感じなくもない。が、ここでできることはかなり多そうだ。
「ヤマトビジネスメンバーズ」は単なる荷物の受け取り・発送手続きのためのものではなく、どちらかというと企業のビジネス支援を主眼にしたサービスという位置付け。請求業務を電子化するサービス(マネーフォワードが提供しているものと思われる)や、通販事業者向けの決済サービス、プロモーション動画制作サービス、といった機能もある。これらは筆者は利用しないので、今回はあくまでも筆者がメインで使う荷物の発送や支払いに関わる部分に絞って紹介したい。
さて、「ヤマトビジネスメンバーズ」の使い方だが、少し独特なところがある。まず最初に、自分の使いたい機能を「サービス一覧」から選び、「メニューに追加する」という操作を行なう。筆者のように、荷物の発送をメインにするのであれば、「送り状・資材のご注文」「送り状発行システムB2クラウド」「集荷依頼」「Web請求書提供サービス」の4つが必須となりそうだ。というわけで、これら4つの機能を順番に解説していきたい。
「送り状・資材のご注文」
「送り状・資材のご注文」は、荷物に貼り付ける送り状(伝票)の用紙や梱包資材などを注文する機能だ。「ヤマトビジネスメンバーズ」では、発送手続きを電子化する場合、専用ラベル用紙を使うことになる。なので、その白紙の専用ラベル用紙をあらかじめ注文しておき、実際に荷物を発送するときに後述する「送り状発行システムB2クラウド」で宛先などを用紙にプリントして荷物に貼り付けるのだ。
専用ラベル用紙は、あらかじめ切れ目の入ったシール用紙となっていて、インクジェットやレーザーなど、プリンターの印刷方式ごとに適切なものが用意されている。なので、自分の所有しているプリンターに合ったものを選ぶようにする。
ラベル用紙は無料。当面必要になりそうな分を注文すればいいが、筆者はひとまずA4サイズを30枚ほど注文した。梱包資材も必要であれば、同じように注文できる。ただし、梱包資材の方は有料であることに注意したい。
「送り状発行システムB2クラウド」
個人向けの「クロネコメンバーズ」には「送り状発行システムC2」というものがあるが、それを多機能化したのが「送り状発行システムB2クラウド」だ。宛先、依頼主(自社)、荷物の内容など、発送に必要な情報を登録し、先ほど注文した専用ラベル用紙にそれらの情報を印刷するための機能となる。ただ、おそらくは大量の荷物発送も効率的にできるようにする仕組みのために、反対に少量の荷物を扱う事業者(筆者)にとっては機能が複雑に感じるかもしれない。
手順としては、まず「各種マスタの登録・編集」で依頼主(自社)の情報や宛先の情報を登録する。次に「かんたん発行」や「1件ずつ発行」から荷物に関する情報を入力していく。「お届け先」や「ご依頼主」のところは直接入力することも可能だが、先ほどマスタに登録した情報から取得して一括入力することもできる。キーボード入力がその分減るので、手間が省けることになる。
入力が完了すれば専用ラベル用紙への印刷処理に進むが、ここからが個人向けの「送り状発行システムC2」と大きく異なってくるところ。そもそも「送り状発行システムC2」では特に専用の用紙というものはなく、出力されたPDFデータを普通の紙にカラー印刷し、切り取り線のところをハサミなどでカットするなどの作業が必要だ(荷物にのり付けする必要はなく、ヤマトのセールスドライバーに手渡しする)。
対して「送り状発行システムB2クラウド」では、出力データとしては同じPDFではあるが、先述の通り切れ目が入ったシール用紙を使うことになるので、プリンターに用紙をセットして印刷した後、剥離紙から剥がしてそのまま荷物に貼るだけ。簡単かつ見栄え良く仕上がるので、「ちゃんとした業者感」が出てなんとなく気持ちがいい。
とはいえ、あらかじめ切れ目が入っているということは、印刷がちょっとでもずれてしまうと伝票として役に立たなくなるということでもある。このあたりのレイアウトはわりとシビアな印象で、印刷画面にある「印字位置調整」ボタンから余白調整の設定を試行錯誤しなければならなかったりする。実際、macOS環境だと何度か印刷しながら調整する必要があった。
しかしWindows環境であれば、この調整は省ける場合もある。Windowsのみに用意されている専用の「印刷ツール」を別途インストールして常駐させておく、というひと手間が必要だが、それさえしておけば印刷画面で「発行」ボタン押下時に即プリンター選択ダイアログが表示され、素早く印刷できる。レイアウトも正確に調整されるのか、この印刷ツール経由では(用紙をプリンターにセットしたときに大きくずれていない限り)切れ目をはみ出して印字されるような失敗は少ないようだ。
もう1点、便利だけれど注意しておきたい点が、A4サイズの専用ラベル用紙を利用している場合、1枚につき荷物2件分を一度に印字できるようになっていること。2個の荷物を同時に発送したいときにはまとめて印字できるメリットがあるが、先ほどの「1件ずつ発行」の手順で印刷すると上半分にしか印字されない。用紙の下半分を簡単に切り離せるので無駄にはならないが、そもそも荷物を1個ずつ送ることが多いなら、最初から1件分のみ印字できるA5サイズの専用ラベル用紙にしておくのが無難だろう。
ちなみに2件分をまとめて1枚に出力するには、宛先などを記入する画面でいったん2件分を「保存(後で発行)」した後、「保存分の発行」画面から2件選んで印刷するという手順を踏む。または、所定のフォーマットで保存されているCSVなどの外部ファイルから情報を流し込んで印刷可能な「外部データから発行」機能を利用する方法もある。いずれにしろ1個ずつ送ることがメインの筆者のような使い方だと、A4サイズの用紙を選ぶ理由はあまりなさそうだ。
「集荷依頼」と「Web請求書提供サービス」
ラベルの印刷が完了して発送準備が整ったら、最後に「集荷依頼」の手続きをする。ここでは単純に、「いつ、どこに集荷に来てもらい、何をどれだけ送るのか」という情報を登録するだけなので、慣れればおそらく数十秒もかからずに完了するだろう。当日集荷に来たドライバーに、ラベルを貼った荷物を渡せば全ての手続きは完了だ。
着払いはもちろん、発払いのときも、このタイミングで料金を支払う必要はないので、受け渡しに時間はかからない(ちなみに、毎日のように荷物を発送する事業者であれば、集荷依頼することなく定期的な巡回を依頼することもできる)。
こうして「ヤマトビジネスメンバーズ」経由で発送した荷物の運賃は、最終的にサービス申込時に決めた方法、タイミングでまとめて支払うことになる。筆者は支払い方法を「集金」とし、当月の分を翌月末に支払う形にした。他に口座振替や銀行振込などの支払い方法も用意されているので、事業者として一番都合の良い方法を選ぶといいだろう。ちなみに「集金」の場合、使えるのは現金か小切手のみ。電子マネーやクレジットカードなどは使えないので注意しよう。
ところで、まとめて支払いになると困るかもしれないのが、発送した荷物ごとの運賃が後で確認できないのではないか、という点。たとえば、筆者の場合はメーカーなどからお借りした機材を直接返却する際、その送料を立て替えて支払い、編集部に後で請求させてもらうことがある。そのためには送料がいくらかかったのかを証明する必要があり、1カ月分の合計料金しかわからないとなると問題なわけだ。
しかし、この点も一応フォローされている。「ヤマトビジネスメンバーズ」では個別の運賃をWebサイト上で確認できる「Web請求書提供サービス」があるのだ。この機能では、1カ月ごとの請求金額はもちろんのこと、翌月1日になると前月分の荷物ごとの運賃明細も表示できる。この明細があればどこ宛の荷物の発送にいくらかかったのかを証明できるだろう。
ただ、明細には伝票番号とざっくりとした住所、金額しか記載されないため、企業によっては「証明にならない」と判断される可能性もゼロではない。その場合は、荷物発送時に渡されることがある領収書に近い「未収計算書」と組み合わせる方法も考えられるだろう。何をもって証明書とするかは、取引先企業と事前に確認しておいた方が安全だ。
少量の荷物であればメリット薄。業務効率化の1ツールに
発送数量の少ない事業者の視点では、「ヤマトビジネスメンバーズ」を利用するメリットはそこまで大きくないかもしれない。使い勝手がやや独特で慣れるまで時間がかかるし、ある程度決まった宛先に荷物を送る割合が多いのだとすると、個人向けの「クロネコメンバーズ」の方が少ない手数でシンプルに手続できる。専用ラベル用紙を使ってきれいな見栄えで送れることと、場合によっては送料が割引されることがある、というところに、モチベーションが湧くかどうかが鍵だろうか。
しかしながら割引については、個人でもヤマト運輸の事業所などに持ち込んで発送すれば割引されるし(クロネコメンバーズは150円引き)、複数個の荷物を同一の宛先に送る場合にも割引(100円)がある。また、ヤマト運輸独自の電子マネーを使った場合に10~15%割引される「クロネコメンバー割」も利用できる。こうした割引サービスをうまく活用すれば、「ヤマトビジネスメンバーズ」の割引率を上回る可能性もある。
もちろん、これは筆者のような荷物の多くない事業者の話であって、大量の荷物をやりとりする事業者であれば、さまざまな面で「ヤマトビジネスメンバーズ」を利用する意義は大きいはずだ。荷物量の急増による宅配事業者の過重労働などが問題になっている昨今だが、「ヤマトビジネスメンバーズ」のような発送手続きなどを電子化するシステムを利用することで、宅配事業者と自社の双方が業務を効率化できることになる。手書きの紙伝票からの脱却でデジタル化の第一歩を踏み出したい、という企業にとっても「ヤマトビジネスメンバーズ」はちょうどいいサービス。ぜひ多くの事業者が試してほしいと思う。