トピック
携帯料金値下げの功罪とカードの復権 2021年を振り返る(1)
2021年12月24日 08:20
2021年も残すところわずか。連載「西田宗千佳のイマトミライ」の西田氏と「鈴木淳也のPay Attention」の鈴木J氏を迎え、携帯電話や決済、ビッグテックなど、2021年にホットだった話題を振り返りながら、2022年に起こることを前・後編に分けて考察します。
前編は携帯電話業界や決済関連についての話題をお伝えします(聞き手:Impress Watch 臼田勤哉 執筆:甲斐祐樹)。
対談は12月14日に実施。24日時点の情報に基づき追記しています。
携帯電話料金が低価格化した一方で失われる業界の多様性
--去年(2020年)一番のトピックとしては携帯電話料金の話題がありました。NTTドコモのahamoが出て、3キャリアが20GBプランで横並びで今春スタートしましたが、年末になって振り返ると、ドコモ「ahamo」、KDDI「povo 2.0」、ソフトバンク「LINEMO」3キャリアとも全然違うサービスになりました。楽天モバイルも含め、料金プランに個性が出てきた年だったように思いますが……
西田:料金プランは面白くなったのですが、蓋を開けてみると鳴り物入りだったはずのオンライン契約者数が伸びていなくて、結局伸びたのはキャリアのサブブランド(UQモバイルやワイモバイル)という結果は、それでよかったのかな? という気がします。
12月10日に発表されたMMD研究所の消費者調査でも、同じ携帯電話会社で回線を乗り換えた人がほとんどで、携帯電話会社を変えた人は少ないそうです。さらにはサブ回線でMVNOを利用していた人が、楽天モバイルに切り替えている。
料金が変わったことは面白いけれど、一方で事業者の多様性という意味では厳しい結果になって、総務省の「3社のメインブランドでやりなさい」という指示がまずいよね、という話をしていたらその通りになってしまった、という感じですね。
「20GB縛り」から自由に。iPhone 13発売と「端末購入料金」の今
鈴木:総務省がどこにゴールを置いていたのかがわからなかったですね。料金を下げたかったのだろうけれど、その先にあるインフラや多様性が放置されている。
西田:さらに言えば、料金プランにバリエーションが生まれたのも、横並びでは仕方が無いからとサブブランドを含めて全体の構成を変え始めた、というキャリア側の事情です。総務省の指導で変わったというわけでもない。
料金が下がったことは国民にはプラスであって、それは否定すべきではないです。ただ、結果として携帯電話の価格が高くなって、2万円の端末しか売れなくなっているのは、日本という国の全体の体力としてどうなのかとは思います。
世の中には(西田氏が購入したGalaxy Z Fold 3のような)24万円もするスマホを買う人ばかりじゃないんですよ(笑)。スマートフォン購入時の割引が昔ほどでは無くても多少あれば、もう少し5Gを含めたいろんな端末を買う人もいたでしょうが、ギリギリの端末しか売れなくなってしまった。それも結局は、総務省が公正競争の結果どうしたいのかというプランが無かったからだと思います。
--新規参入を促す競争政策がなくなったというよりも、もともと強い3キャリアに加えて、楽天のように資本力のある会社がさらに力を持つ施策になっている感はありますね。
鈴木:さらにいうと大手キャリアの体力が削られるだけになってしまった。NTTドコモもahamoへの流出が思った以上に多くて利益が削られており、インフラ整備に影響が出るかもしれないという話も当然出てきます。
西田:同じ携帯電話事業者の中で高いプランから安いプランに移って利益が減っただけ。利用者の負担を下げるなら、料金を下げるだけでなくて控除つけるとかやりようはあったと思いますが、そのあたりがふんわりしていて、言葉でわかりやすいことしかしていない結果でしょう。
アラカルトの料金プランはマニア向け? 厳しいMVNO
--その一方で、料金値下げについては国民の支持は高いようです。
鈴木:料金下がって喜ばない人はいないですよね。ただ、この値下げが5年先、10年先にどのように自分たちに返ってくるかがわかっている人は限られるでしょう。
西田:どうなるかがある程度わかっていても、値段が下がることの方が多様性を産む、という人もいましたが、少なくとも通信業界を知っている人の中では評判はよくないですね。特に料金値下げのしわ寄せを食ったMVNOには。
--一般のユーザーには伝わらない、スパンの長い話かもしれません。一方、年始に横並びだった各キャリアのプランが柔軟な価格体系になって、楽天の0円プランやpovo 2.0など多様性も出てきました。政策的な判断はさておき、選択肢としてポジティブではないかと思いますが、実際に出てきたプランはどう評価しますか。
西田:最初に出てきた20GB/2,980円横並びプランは評価できないけれど、今のプランは悪くないと思います。ただ、povo 2.0とかRakuten UN-LIMIT VIとか基本0円のプランがサブ回線向けになっていて、それを喜ぶのは全ユーザーのうちどのくらいなのかな、というのは気になりますね。
povo 2.0のようなアラカルトがもうちょっと受けるのかなと思っていたけれど、蓋を開けたらアラカルトで喜んでいるのは一般を外れた人で、普通の人は面倒くささが先に立っているようです。
鈴木:ユーザー層をどこに見るかでしょうね。我々はオンラインやサブブランドを選べて楽しいけれど、世間一般の、キャリアショップでいたれりつくせりのサポートが嬉しいという人には、下手に移ると思った通りのサポートが受けられなくて困る人もいるでしょうし、そのあたりのギャップがあるのかなと思います。
--UQ mobileとワイモバイルが伸びたのを見ると、結果としてサポートを望まれる方がマジョリティのようですね。
西田:NTTドコモが企業の構造的にサブブランドを作れなかったんですよね。結果的にMVNOのOCNモバイルを自分のショップで売るというやり方にしたわけですが、そうするとahamoにいくか(同じNTTグループではあるもののOCNという)他社に行くかしかなくて、一番かわいそうだった気もします。
--楽天モバイルも面白い存在です。1GB未満無料で、上限が3,278円。povo 2.0も楽天モバイルをベンチマークにしているようですが。
楽天モバイル、1GB未満は無料、20GB未満1980円に。新料金プラン
鈴木:最近街を歩いていると楽天ショップが増えていて、楽天モバイルを知っている人も増えています。特に若い人に人気のようですし、30代や40代も楽天というブランドが認知されているので、ブランディングとしては成功しているのではないでしょうか。
西田:携帯電話事業はもっと短期的にうまみがある、と三木谷さんは思っていたのかもしれませんが、短期的に美味しい事業ではない、ということが見えてきたのでしょう。ただ、なんだかんだと楽天は長期間耐えられると思いますし、耐えてくれれば極端に安いキャリアという、他の3キャリアとは違う位置づけとブランディングを維持できるのではないでしょうか。
結局のところ楽天モバイルはソフトバンクの通った道で、リソースをつぎ込んで営業力を活かして、さらには孫さんが国と戦いながら条件を変えていかなければ、ソフトバンクは携帯電話事業者として戦える状況にならなかった。いま楽天はそのフェーズだと思います。実際、もう1個周波数は欲しいでしょうね。
--この政策の影響を一番受けたのはMVNOだと思いますが、この先MVNOはどうすればいいのでしょう。
西田:世界的に見てもMVNOは辛いんですよね。MVNOは本当は安いだけではだめで、うまくはいかなかったけどノキアがハイブランド向けに展開していた「Vertu」とか、クレジットカードのゴールドカードやブラックカード向けのようなプレミア向けに携帯電話サービスを提供するとか、携帯電話と違う役割から生まれてきたサービスができるのが理想。そうしないと価格競争になってしまうけれど、世界的にそうはなっていない。
鈴木:サムスンが自分の端末を売るために回線付きで販売していたり、アメリカだとVirgin Mobileみたいな例がありますが、最後は価格競争に飲み込まれて、他のキャリアに収斂して終わっていきました。
西田:多様性がベストだけど結局は価格なのかという問題があって、その流れからいうと日本のMVNOはさらに辛いですね。
ライフ系事業に向かう携帯キャリア。今後は法人と自動車?
--携帯電話事業者は総じて辛い、ということですね。一方で決済やライフ系、保険、金融など、携帯電話事業者が新たな収益先を目指す動きも活発になっています。
西田:ライフデザイン・スマートライフといった事業につっこんでいくのは必然だとは思いますが、それが投下した資本ほどの収益を得られるかというと若干の疑問があります。事業者目線では1つにまとめたいが、消費者からすると携帯電話事業者にまとめる必要は無くて、海外なら銀行にまとめたいし、クレジットカードにまとめたいというニーズもある。
日本ではカードを持っている楽天がうまくいっていますが、決済が強くなくて携帯電話に強い会社がライフ系事業を手がけても、一定の成功以上は見込めないのでは、という気がしています。
鈴木:囲い込むほど有利になるかというと、ユーザーからすると1つの携帯電話会社のサービスを全部使いたいわけではない。使う側からしても囲い込みに対してリターンがあるのか、という点では、囲い込み戦略がどこまでプラスになるのか、という疑問もありますね。
--携帯電話事業者における法人事業の強化も注目したいですね。ドコモの事業構造改革でも法人強化が打ち出されていますし、KDDIやソフトバンクも法人向け強化を次のフロンティアのように決算で説明しています。そのあたりはいかがでしょうか。
西田:やらざるを得ない、というのが現状だと思いますが、その理由としては4Gと5Gの違いは何なのか、という点にあるのでしょう。5Gの本質は低遅延やネットワークスライシングによる端末管理、帯域管理なのですが、一般の消費者からすると5Gの価値はスピードくらいしかなく、わざわざ5Gに乗り換えて高い料金を払うとは思えない。であれば新しい顧客を見つけるしかない、というのが法人事業でしょう。ただ、いまは5Gで新しい法人向けの企画ができる段階で、法人のニーズに合致しているわけではない、というのが問題でしょうか。
ドコモ、NTT Com子会社化。法人事業は「ドコモビジネス」に
一方で、自動車連携は確実にあると思います。自動車がEVになると各種コンポーネントの管理が必要になり、自動車に通信モジュールを搭載して自動車会社とディーラーに情報を伝達する、という流れが必要になりますし、その場合は4Gレベルではなく、管理がしっかりしている5Gが絶対に必要になります。
鈴木:自動車ではeSIMの話もありますね。法人の回線契約は数年単位で見直しがかかるのですが、物理SIMの差し替えだとモジュール交換になるところが、eSIMだとオンラインで契約を変えるだけで済む。
西田:ユーザーからしても通信モジュールの携帯電話番号は必要なくて、回線は自動車会社が切り替えてもいいし、オーナーが変わっても同じことが起きる。その点ではeSIMがあったほうがいいですし、5Gが理想的なシステムですね。
鈴木:自動車だけでなく建機もそうですが、決して日本だけで使われるとは限らなくて、年代ものになると海外に売られることもある。そのときは海外との契約に切り替える必要がありますが、オンラインプロビジョニングで書き換えれば手間もかかりません。
西田:いま建機は防犯とリース管理のために稼働管理が必要で、そのためにも絶対にモジュールが必要になる、という話です。
不具合も相次いだ携帯電話業界は値下げの影響も!?
--携帯電話関連で他に何か思い浮かぶ話題はありますか。
鈴木:システムダウンでしょうか。
西田:各社相次ぎましたね。「テストです」問題とか。
--先日のドコモの大きな障害はIoT向けからでした。
西田:この範囲なら問題ないと思っていたことが事前の想定と違っていて、止めようと思ったらさらに大きくなってしまった、という。
ドコモ通信障害でユーザーに大きな影響。音声通話は前週比15%減少
--新プランで収益が下がったのと直接の影響はないのでしょうが、どうしてもその影響があるのでは……、と考えたくなってしまいます。
西田:消費者としては当然の感想ですよね。
鈴木:従来では考えられないエラーですし
西田:ただ、他社も明日は我が身、といっていて、どの会社もギリギリの危ないところにいるようなので、新プランが影響したのかしていないのかでいうと、心理的にはしているのかも。
鈴木:コストを削るというのはメンテナンスを含めたコストでもあるので、今後も絶対ある話でしょうね。
決済はクレジットカードが主戦場に
--決済関連ではPayPayの手数料有料化も大きなトピックでした。鈴木さんは今年を振り返っていかがですか。
鈴木:2点あって、1つはクレジットカードですね。LINEがZホールディングスの中に入り、LINE PayもPayPayに吸収されることになりましたが、それ以外はどうだったのかというと、ウォレット関連はクレジットカードに集約されつつあります。
PayPayもYahoo!カードからPayPayカードに切り替わりましたし、KDDIやNTTドコモもクレジットカードを持っていて、キャリアがクレジットカードを軸に展開していますね。
PayPayカード発行。番号レスカードでPayPayボーナスが貯まる
もう1つはPayPay手数料の話で、有料化で離脱すると言われていましたが、データで見ると離脱率は1%にも達していないんですね。PayPayがきちんと使われていた店では、PayPayを止めることでお客が離れる可能性もあって、手数料の有料化はある程度受け入れられたのではと思います。
西田:PayPayを導入したことで、今までは現金で管理していたのをある程度自動化して、freeeのようなサービスと連携して経理の働き方を楽にしようとか、店舗のDXと紐付いているという点もあります。そこまで考えて導入して店舗はもう戻れないでしょうし、今後税がどんどん透明化していく方向性を考えると、いままでのように現金管理でどんぶり勘定、という訳にもいかなくなるでしょう。
PayPayを置いたけど、ほとんど使われなかったという店舗は止めるのも躊躇はありませんが、PayPayの小規模店舗の中で、使う人が極端に少ない例というのはそこまでないんだ、と理解しています。(手数料の有料化で離脱した店舗があっても)ある程度の規模が残っていれば、PayPay利用者としてのユーザビリティはそこまで変わりませんし、もう「加盟店が何店舗あります」というのをアピールする段階ではない、ということでしょう。
鈴木:PayPayによると店舗はまだまだ開拓の段階のようです。当初、加盟店数は550万店舗という目標が掲げられていて、最近では店舗数だけ見ると400万近くまで達したようです。ただ、実際にはオンラインを含めたものであって、まだまだ全然加盟店の開拓は足りていないと。
おそらく中小企業、いわゆるSMB(Small and Medium Business)がまだ獲得できていないのだと思いますが、その獲得には膨大なコストが必要になる。いまここで有料化にビジネスを転換することで、営業部隊とDXを展開する部隊の2つに分けて、結局はDXをメインにして収益化に舵を取った、ということだと思います。
なぜ収益化をしなければいけないかというと、PayPayと他社クレジットカードの問題です。PayPayの手数料自体は1.6%とか1.98%程度ですが、他社のクレジットカードを連携している人だとその手数料が3%近くかかっているので、PayPayとしては損していることになる。結局、PayPayはQR決済といいつつクレジットカードの窓口になっているので、自社で負担している部分は店舗にも負担してもらうために手数料を有料化するしかなかった。
西田:自分もPayPayはクレジットカードで支払っていますね。よほど還元率が高くなければチャージして使うことはない。
鈴木:チャージして使うのは面倒ですからね。一方でNTTドコモの場合、d払いはキャリア決済で課金するか、ドコモのクレジットカードであるdカードで支払う人が大部分のようです。コード決済に何でチャージするかはとても重要で、PayPayカードを作ったのはそのあたりをなんとかしたいということでしょう。
--次の手としてPayPayカード以外のクレジットカードは利用停止、というのはあり得る?
鈴木:それはありえないでしょう。使う人が減ってしまうので。結局、他社のカードを使っている人が多いんですよね。ポイントの二重取りとかいろいろ理由はあるんですけど。
クレジットカードビジネスの「次」とは?
--PayPayの話題が多いですが、一方でペイメントの特徴も出てきたのかなと思います。KDDIもPonta連携が本格的になって金融が好調な一方、変わらず楽天が強いという印象もありますが、キャリアだけでなく経済圏ごとで今年を象徴するようなトピックはありますか。
鈴木:(3キャリアと楽天で)ほぼカラーができたと思いますが、このまま拡大できるかというとある程度限界も見えてきたと思います。加盟店を増やすのも限界が見えていて、この先低空飛行のビジネスを延々続ける形になってしまう。今年解決できなかったその問題を来年以降どうにかしなければいけない、というのがいまのフェーズなのかなと。
西田:キャンペーンは減るんじゃないでしょうか。PayPayは引き続きやると思いますが、キャリア系はキャンペーンを減らして、現行のユーザーがうまく回るよう軸足を置くのでは。
鈴木:でもキャンペーンがないと利用されないんですよね。平澤さんの連載でも書かれていましたが、d払いとau PAYはキャンペーンをしないと利用率がだだ下がりになる。
コード決済一強のPayPay。Suicaなど交通電子マネーに迫る
PayPayがうまいのは自治体とキャンペーンして、他からお金を引っ張ってくるところですね。コンビニがキャンペーン商品をメーカーから引っ張ってきて、自分たちの懐があまり痛まないようにしているのと同じで、PayPayはそういうサイクルができている。他のキャリアがそのサイクルをどれだけ実現できるか。キャンペーン予算は削られるでしょうけれど、来年のお楽しみですね。
--実際にうまくいっている事業者はごく限られているということでしょうか。
鈴木:ビジネスの次を示せていなくて、カードビジネスに帰結している、ということですね。カードビジネスは成長しているけれどそれでいいのか、この先何を考えているのかが見えてこない。
西田:日本のカードビジネスは消費者が依存しているので使い続けてくれてはいるけれど、必ずしも利益利が高いわけではなく、ガンガン成長するビジネスではないという根本的な問題があります。
鈴木:なぜカードの手数料を下げられないかというと利幅が小さくて、そこが袋小路になっている。
西田:クレジットカードと銀行の仕組みが日本と海外では違うんですよね。アメリカはほとんどリボ払いだけど、日本ではその構造を取れないから収益を上げる方法がない。
--クレジットカードではApple PayがVisaに対応したり、クレジットカードのナンバーレスが進んだりということもありました。
鈴木:Apple PayのVisa対応は象徴的ですね。日本ではVisaのシェアが5割を超えていて、それがオンライン決済に入ってくるのは大きい。
あとはコンタクトレスですね。もともとVisaはコンタクトレスですが、JCBもついにコンタクトレス(JCBのタッチ決済)に対応した。
「JCB ORIGINAL SERIES」が12年ぶり刷新。漢数字の[一]とタッチ決済
西田:キャッシュレスというと店舗で利用するイメージが強いですが、Apple PayもPayPayも、オフラインよりオンラインで使われているのが馬鹿にならない。ここにVisaが対応したのは大きいですね。
鈴木:モバイルオーダーもオンライン決済ですしね。
--実際オンラインのApple Payを使うシーンは多いですね。なぜこれができなかったのか、というくらいApple PayのVisa対応は当たり前になっていますね。
鈴木:なぜできなかったのか、は長くなるので私の連載で読んでもらって(笑)。
Apple PayのVisa対応、なぜここまで時間がかかったのか
--鈴木さんの連載では「Suicaの苦境」というトピックもありましたね。
鈴木:コロナ禍の影響で人流が変わってオートチャージが減った上に、他にも様々な決済手段が増えてきたのでSuicaの優位性が変化した。ただ、交通系が全く使われていないわけではないので、今後人流が復活してくればSuica使う機会も増えるでしょう。
西田:さまざまなキャンペーンやコロナ禍の補填など、キャッシュレスを使うモチベーションが増えたこの2年でしたが、来年もそれは続くでしょう。現金を使わない経験を増やすことで、キャッシュレス化のブースターにはなるでしょうね。
--鈴木さんの話だと2021年はクレジットカードが盛り返した印象ですが、一方で「BNPL(Buy Now Pay Later)」と呼ばれる後払いサービスも話題になりました。海外では若年層に浸透してクレジットカードのシェアを奪っているという話もありますし、日本にも大きなサービスが登場しています。PayPalによるPaidy(ペイディ)の買収という話もありました。
鈴木:海外はあくまで与信枠内のリボ払いですが、与信が与えられない層に刺さりました。ただ成長率はまだ小さくて、オーストラリアやアメリカでも全体の1%とか2%という程度です。
日本は通販文化で、決済の手段として代引きやコンビニ払いもあります。それらを取り込んでいくのがおそらくBNPLになるのでしょう。
西田:まあ、平たくいうとそれらも後払いですよね。
鈴木:そう、それを言い方を変えただけ。そもそも外国とは商習慣が違うので、Stripeも日本にあわせてコンビニ払いや銀行振込も実装する予定です。日本ではPaidyを買収したPayPalなどもそうですが、ワールドワイドの会社でもローカルの決済手段を取り込む必要があって、BNPLはその延長にあるものですね。
話題のBNPLと日本の事情。“第2世代”は隠れたニーズを掘り起こす
対談をほとんどそのまま収録したポッドキャスト(β版)も配信中。記事の元になった対談の模様をほぼフルバージョンでお届けします。
製品・サービス名や時系列の説明などが間違えている箇所もありますが、ご容赦ください。