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大雨時は気象庁「キキクル」で避難判断を。土砂災害/浸水/洪水の危険を知る

気象庁では、大雨による災害発生の危険度の高まりを地図上で確認できる「キキクル」を公開しています。いざという時に活用できるよう、キキクルではどのような情報を確認できるかを知っておきましょう。

キキクルでは、土砂災害、浸水害、洪水の危険度分布をそれぞれ、「土砂キキクル」「浸水キキクル」「洪水キキクル」として公開しています。

キキクル

危険度分布は雨による災害の危険度を5段階で色分けして地図上にリアルタイム表示するもので、自主的な避難の判断に活用できるよう、気象庁ホームページで公開されています。色分けは、「極めて危険」(濃い紫色)、「非常に危険」(うす紫色)、「警戒」(赤色)、「注意」(黄色)、「今後の情報等に留意」(無色)の5段階です。また、テレビの気象情報コーナーや、各社が提供するスマホアプリの「危険度通知」にも使われている情報です。

土砂キキクル表示時

大雨時は「雨量」が注目されがちですが、気象庁では例えば大雨警報(浸水害)の発表判断であれば、「雨量」そのものではなく、雨の地表面での溜まりやすさを考慮した「表面雨量指数」を用いる方法を採っています。これは、大雨時には、雨が地中に浸み込んで土砂災害を発生させたり、地表面に溜まって浸水害をもたらしたり、川に集まって増水することで洪水災害を引き起こしたりするためです。

気象庁では、このような雨水の挙動を模式化し、それぞれの災害リスクの高まりを表す指標として表現した指数を開発。土壌雨量指数、表面雨量指数、流域雨量指数の3つを用いることで、災害リスクの高まりを「雨量」そのものよりも適切に評価・判断でき、より的確な警報発表につながるとしています。

出典:気象庁ホームページ

そして、警報・注意報が発表されたときに、実際にどこで「指数」の予測値が警報・注意報の基準に到達すると予想されているのかを一目で確認できるよう提供されているのが「キキクル」です。アプリではありませんが、スマホのホーム画面に追加しておくと、いざという時に素早くアクセスできます。

それでは、土砂キキクル、浸水キキクル、洪水キキクルのそれぞれの詳細を見ていきましょう。

土砂キキクル

土砂キキクルは、大雨警報(土砂災害)や土砂災害警戒情報を補足する情報です。大雨による土砂災害発生の危険度の高まりを、地図上で1kmメッシュで5段階に色分けして表示するもので、常時10分毎に更新されています。「極めて危険」(濃い紫色)が出現した時には、命に危険が及ぶような土砂災害がすでに発生していてもおかしくない状況としています。

出典:気象庁ホームページ

そのため、「極めて危険」の1つ下の段階である「非常に危険」(うす紫色)が出現した時点で避難が必要となります。さらに、高齢者等は遅くとも「警戒」(赤色)が出現した時点で避難を開始するよう呼び掛けています。

出典:気象庁ホームページ

なお、「非常に危険」(うす紫色)が出現した時には土砂災害警戒情報が発表されます。土砂災害警戒情報は、「過去の重大な土砂災害の発生時に匹敵する極めて危険な状況となり、この段階では命に危険が及ぶような土砂災害がすでに発生していてもおかしくない」という基準を設定し、2時間先までにその基準に到達すると予測されたときに出されます。2時間先としているのは、避難にかかる時間を考慮してのものです。

出典:気象庁ホームページ

気象庁では、土砂災害から命を守るために知っておきたいポイントとして「普段から土砂災害の危険性が認められる場所を把握すること」「雨が降り出したら警報等に留意すること」「早めの避難」の3つを挙げています。危険性が認められる場所は都道府県が土砂災害警戒区域等に指定しており、ハザードマップ等で確認できます。

道路冠水や暴風等で指定緊急避難場所への移動に危険を感じる場合には、近隣の頑丈な建物の2階以上の、崖や渓流からなるべく離れた部屋に退避するなどの行動が推奨されています。また土砂キキクルに関わらず、自治体から避難指示等が発令された場合には速やかに避難行動をとることが重要です。

浸水キキクル

浸水キキクルは、大雨警報(浸水害)を補足する情報です。下水道等で排水しきれないほどの大雨が短時間で降ったことが原因で、河川とは関わりなく発生する浸水害(内水氾濫)発生の危険度を5段階に判定した結果を表示します。

気象庁では短時間強雨による浸水害リスクの高まりを把握するため、「表面雨量指数」を活用しています。表面雨量指数は、水はけがよく雨水が地表面に溜まりにくい土地か、地表面の多くがアスファルトで覆われているなど雨水が地表面に溜まりやすい土地か、といったその土地がもつ雨水の溜まりやすさの特徴を考慮して、降った雨が地表面にどれだけ溜まっているかを、タンクモデルを用いて数値化したものです。

さらに、過去の浸水害発生時の表面雨量指数を20年分以上にわたって網羅的に調査し、「表面雨量指数がこの数値を超えると重大な浸水害がいつ発生してもおかしくない」という数値を、危険度を段階的に判断するための基準を設定しています。浸水キキクルでは、この表面雨量指数の1時間先までの予測値を5段階で示します。

出典:気象庁ホームページ

「注意」(黄色)が出現した場合には、周囲より低い場所で側溝や下水が溢れて道路が冠水し、住宅の地下室や道路のアンダーパスに水が流れ込むおそれがあるとされています。道路のアンダーパスには近づかないようにして、また住宅の地下室にいる人は地上に移動するにしましょう。

出典:気象庁ホームページ

「警戒」(赤色)が出現した際には、側溝や下水が溢れて道路がいつ冠水してもおかしくない状況とされています。周囲より低い場所にある家屋などでは、屋内の浸水が及ばない階にいつでも移動できるよう準備するなど、早めの安全確保行動が重要になります。

「非常に危険」(うす紫色)は、重大な浸水害がいつ発生してもおかしくない状況。周囲の状況を確認し、すでに浸水が発生している場合には、屋内の浸水が及ばない階に移動しなければなりません。

「極めて危険」(濃い紫色)は、表面雨量指数の実況値が過去の重大な浸水害発生時に匹敵する値に到達したことを示し、すでに重大な浸水害が発生しているおそれが高い極めて危険な状況です。

気象庁によれば、住宅の地下室や道路のアンダーパスでは雨水の溜まりうる体積が小さく、浸水や冠水の深さが周囲より早い段階から短時間のうちに急激に上昇する危険性があるため、大雨の時にはこれらの場所に近づかないことが大切としています。また、周囲より低い場所にある家屋などでは短時間強雨による床上浸水や床下浸水などの浸水害の危険性があるとし、早めの安全確保行動を呼び掛けています。

出典:気象庁ホームページ

洪水キキクル

洪水キキクルは、洪水警報を補足する情報です。指定河川洪水予報の発表対象でない中小河川における、河川流域に降った雨による洪水災害発生の危険度を、概ね1kmごとに5段階に判定した結果を表示します。常時10分毎に更新されます。危険度の判定には3時間先までの流域雨量指数の予測値を用いています。また洪水キキクルには、大河川を対象とした指定河川洪水予想の発表状況も重ねて表示されます。

出典:気象庁ホームページ

洪水キキクルでは、流域雨量指数そのものは重大な洪水災害のおそれがあるかどうか等を判断するには十分ではないため、過去の洪水災害発生時の流域雨量指数の値をもとに基準を設定し、この基準と比較することで、災害リスクの高まりを把握しています。貯留施設等の影響といった流域雨量指数そのものの計算には考慮されていない要素を、一定程度反映させるためです。

出典:気象庁ホームページ

「注意」(黄色)が出現した場合には、ハザードマップ等により避難行動を確認し、情報や周囲の状況、雨の降り方に注意しましょう。

「警戒」(赤色)が出現し、かつ「川の防災情報」の河川の水位情報において水位が一定の水位を超えている場合には、避難の準備が整い次第、避難を開始するよう呼び掛けています。高齢者は速やかに避難を開始する必要があります。水位を観測していない河川では、避難の準備をして早めの避難を心がけましょう。

「非常に危険」(うす紫色)の時には、中小河川(水位周知河川、その他河川)がさらに増水し、今後氾濫し、重大な洪水災害が発生する可能性が高いとされています。水位が一定の水位を超えている場合には速やかに避難を開始する必要があります。

「極めて危険」(濃い紫色)の段階では、すでに氾濫した水により道路冠水等が発生し、避難が困難となっているおそれがあるとされています。遅くとも「非常に危険」(うす紫色)が出現した時点で、水位計や監視カメラ等で河川の現況も確認した上で、速やかに避難開始について自ら判断するよう呼び掛けています。

出典:気象庁ホームページ

なお洪水警報は、河川の増水に起因する災害を対象としており、河川の水位が上昇し堤防を越えたり破堤するなどして堤防から水があふれる「外水氾濫」と、河川の水位が高くなることで周辺の支川や下水道から水があふれる「湛水型の内水氾濫」とがあります。

出典:気象庁ホームページ

洪水予報河川においては、湛水型内水氾濫の危険度が河川の流路に沿って「ハッチ」で表示されます。ハッチ表示が出現した際には、当該河川の増水による湛水型内水氾濫のおそれがあります。現時点では、湛水型内水氾濫のうち、雨の全く降っていない場合に発生するものまでは考慮されないため、雨がやんで「湛水型内水氾濫の危険度」の表示が消えた場合も、氾濫危険情報等が発表されている場合には周辺の支川や下水道の氾濫への警戒が必要です。

出典:気象庁ホームページ

洪水予報河川の外水氾濫については、洪水キキクルではなく、河川管理者と気象台が共同で発表している指定河川洪水予報等を踏まえて避難情報が発令されるので、それらに留意し、適切な避難行動を心掛ける必要があります。

指定河川洪水予報で発表する情報は、「氾濫注意情報」「氾濫警戒情報」「氾濫危険情報」「氾濫発生情報」の4つがあり、河川名を付して「○○川氾濫注意情報」「△△川氾濫警戒情報」のように発表されます。特に「氾濫危険情報」(警戒レベル4相当)が発表された場合には、河川がいつ氾濫してもおかしくない非常に危険な状況とされ、避難の開始を呼び掛けています。

指定河川洪水予報 出典:気象庁ホームページ

場所によって利用する気象情報やキキクルの種類は異なる

同じ大雨でも、川のそば、急傾斜地のそばなど、場所により確認すべき情報は異なることを、気象庁では注意点として呼び掛けています。

出典:気象庁ホームページ

命が脅かされる危険性が認められる場所について、土砂災害警戒区域や浸水想定区域が指定されている場合は、市町村等のハザードマップで確認できます。あらかじめ、居住地域でどのような災害が発生しやすいのかを認識し、いざというときに利用すべき情報の種類を確認しましょう。また、実際に避難する際は周囲の気象状況に十分注意して行動するようにしましょう。