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レシート読み取りアプリ5番勝負。マネフォ・Zaim・LINEレシートなど
2021年6月24日 09:10
AI(人工知能)を活用した製品やサービスが、あらゆる分野において当たり前のように登場してきている。仕事でも、プライベートでも、画像認識や音声認識を行なうAIに助けられている場面が今や少なくない。
ただ、一口にAIと言っても、開発者が異なればその処理結果も異なってくる。同種の製品・サービスだとしても、より高精度に処理してくれるものもあれば、そうでないものもあるはずだ。たとえば画像認識と、場合によっては自然言語処理も必要になってくる「紙文書のテキスト化」を行なうAIだとどうだろうか。
そのわかりやすいサービスの1例として挙げられるのは、家計簿アプリかもしれない。最近は多くのスマートフォン向け家計簿アプリが「レシートのAI読み取り」機能を実装しており、レシートを撮影するだけで自動で内容を読み取ってデータ化し、少ない手間で家計を記録できる点をアピールしている。が、実際のところ「AI読み取り」は今どれだけ実用的な段階にあるのだろう。
そこで、「レシートのAI読み取り」機能を持つアプリのうち、無料または安価に始められる5つのアプリについて、どれほどの精度で画像・文字認識を実現しているのか確かめてみることにした。
5つの家計簿・レシート読み取りアプリの特徴
今回試したのは「マネーフォワード ME」「Zaim」「おカネレコ」「家計簿レシーピ!」「LINEレシート」という5つのアプリ。
いずれもスマートフォンのカメラでレシートや領収証を撮影すると、その場で即座に中身を読み取ってデータ化する機能をもっている。
各アプリを簡単に紹介すると、「マネーフォワード ME」は、後述の「Zaim」と並ぶ家計簿アプリの代表格。入出金履歴の自動取り込みが可能な金融機関が特に充実しており、多数の銀行口座やクレジットカード、電子マネーなどに対応する。「MFクラウド会計」などの個人事業主・法人向けサービスを展開していることもあり、分析機能の豊富さも特徴。支出額や費目別の割合などをウィークリーレポートやマンスリーレポートで確認でき、収入額が近い他ユーザーの状況から、毎月の適切な予算を自動算出する機能もある。
「Zaim」は、サービス開始がライバルの「マネーフォワード ME」と同時期の2012年ということもあり、機能的なところでも似ている部分が多い。金融機関などとの連携による入出金履歴の自動取り込み機能はもちろん、費目別の支出額をグラフ表示してくれる分析機能もある。月ごとの支出についてはPDFファイル化して紙に印刷できるようにし、いつでも過去の支出を振り返れるのも面白い。
「おカネレコ」は、細かなユーザー情報の登録なしで気軽に利用を始められるのが特徴。費目と金額を入力するボタンが並んだシンプルな画面で、支出入の手入力に特化している。月ごとの支出を費目別に表示し、円グラフで表現する分析機能も用意。レシートのAI読み取りについては月額400円の会員向けプレミアム機能となっているが、無料ユーザーでも一部情報を認識できる場合があるようだ。
ポップな配色とかわいらしいキャライラストで楽しく家計簿をつけられるのが「家計簿レシーピ!」。入力した支出入の記録をもとに、費目別の内訳グラフやお店ごとの買い物金額・回数など、視点を変えた分析が簡単に行なえるのも特徴となっている。金融機関との連携による自動取り込み機能はないものの、定期的な支出を登録しておける「自動入力レシート」の機能である程度代用することも可能だ。
「LINEレシート」は、LINEアプリのなかで利用できるレシート読み取り(支出の記録)に特化した機能。一度レシートを読み込んだ後にデータを編集することはできるが、ゼロから金額などを手入力する機能はない。読み取ってデータ化した項目は履歴として一覧できるほか、1カ月間の費目ごとの支出をグラフ表示する「レポート」機能もある。レシートを1枚読み取るごとにLINEポイントを1ポイントゲットできるキャンペーン(1日10件まで)が実施中だ。
レシート読み取り5番勝負。最も正確にデータ化したのは!?
では、5つのアプリのレシート読み取り機能を試していこう。今回の検証にあたっては、体裁の異なる5種類のレシート・領収証を用意した。5つのアプリでその5枚を読み取り、それぞれどのように認識されるかを確認する。撮影時のわずかな写りの違いによって認識率に差が出てくる可能性もあるため、1枚につき3回ずつ撮影したうえで、最もうまく認識したパターンをベースに比較した。
商品を1つだけ購入した一般的なレシート
1つ目のレシートは、ごく一般的な体裁のもの。購入商品は1個のみの短い内容ながら、割引額が含まれていることや、個性的なフォントの店名も合わせて認識できるかがポイントとなる。
このパターンでは、「おカネレコ」以外の4つのアプリが店名、日付、品名、金額のすべてを正しく読み取ることができた。購入時刻まで読み取れたのは「LINEレシート」のみ。「Zaim」と「家計簿レシーピ!」は店舗の電話番号(画像ではぼかしている)を取り込めている。ユニークなフォントの店名ながら正しく認識できているのは、電話番号など他の情報から検索して特定している可能性もある。
「おカネレコ」は日付と割引額は認識しているようだが、この状態だと登録するにしても修正の手間は多そうだ。また、「おカネレコ」のみ端末のライトをオンにする機能がないため、撮影時に影ができやすい点に注意したい(こういったレシートの読み取りではどのアプリでも正しく認識させるために10cm前後まで近づいて撮影するため、なおのこと影ができやすい)。
レイアウトが独特な郵便局のレシート
2つ目は郵便局のレシート。一般的な店舗のものとは体裁が異なり、店名(郵便局名)や日付のレイアウトが独特なため、認識は難しそうだがどうだろうか。
微妙な差ではあるが、最も正確に読み取ったのは「第一種定形外(規格内)39.5g」を正しく認識した「マネーフォワード ME」と「Zaim」だろうか。品目や支払い先の郵便局名も正しい(画像ではぼかしている)。ただ、どちらも日付の認識は困難だったようだ。
縦に長い多品目のレシート
続いて3つ目は長尺のレシート。品目も複数あり、これこそが手入力を省いて楽にデータ化したいレシートの最たる例と言えるかもしれない。
これをほぼ完璧にデータ化したのは「LINEレシート」だ。店名こそ省略されているとはいえ、2行に渡る品名を正確に読み取っているところに注目したい。他のアプリは金額は読み取れているものの、品名が2行のものは金額と同じ行にある1行分しか取得できていない。
なお、「LINEレシート」を除く4つのアプリが長尺に対応しており、だいたいは複数回の撮影を繰り返して全体を写す手順になっている。ただし、「家計簿レシーピ!」は長尺対応ながら1回限りの撮影となっており、通常との違いが不明だった。今回は認識率に影響がなかったようだが、より長いレシートになったときには離れたところから撮影する必要があるため、「LINEレシート」と「家計簿レシーピ!」は他より不利になる可能性がある。
文字がかすれた宅配便の領収証
4つ目は、金額がかすれ気味に印字されている宅配便の領収証。支払い先(ヤマト運輸)や日付も、ぱっと見ではわかりにくい。これを読み取れればかなり優秀と言えそうだが……。
結果は、「LINEレシート」の圧勝。日付は無理だったが、「1404円」の金額を読み取れたのは「LINEレシート」のみで、他は見当違いの部分を金額として認識しようとしている雰囲気が伺える。ちなみに「家計簿レシーピ!」については、撮影の仕方によっては「ヤマト運輸」であることを認識し、正しいサービスセンターの地域選択が要求される場面もあった。少しでも入力を楽にするという意味ではありがたい仕様だ。
精度は「LINEレシート」。家計簿アプリとしては「マネフォ」「Zaim」がおすすめ
AI読み取りの認識率という点では、今回の検証の範囲では「LINEレシート」の強さが際立った。読み取ったデータはあくまでも「LINEレシート」のなかでの履歴記録と支出分析のみ、という限定された使い道になってしまうのが残念なところではある。けれども、この結果から考えるに、会社の会計業務での活用を検討している人にとっては、同じLINEが開発している企業向けサービスの「CLOVA OCR」には期待しても良さそうだ。
アプリとしての総合的な使い勝手となると、手入力のしやすさや分析機能の充実、金融機関との連携機能、ユーザー1人1人の使い道などさまざまな要素が絡んでくるため、レシート読み取りの正確さだけでは判断できない。
とはいえ、ある程度正確なレシート読み取りが可能な家計簿アプリを選ぶとすれば、今回の場合は「マネーフォワード ME」か「Zaim」のどちらかが有力なおすすめ候補になるだろう。