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さらば捨てない生活。汚部屋消滅とルンバの革命:四十男 築50年の家を買う(2)
2020年9月2日 08:30
16年に渡って住んでいたワンルーム・アパートからの“脱出”(引っ越し)を決行した(前回)。前回は、いわゆる「汚部屋」と化していた部屋から新たな住まいを決めるまでを紹介したが、いよいよ引っ越しを決行。しかし、20年来の「捨てない生活」のツケが自分に帰ってくる……
・第1回:汚部屋からのエクソダス
・第2回:さらば捨てない生活。汚部屋消滅とルンバの革命
・第3回:最後の難関“騒音”。二重サッシと新しい生活
汚部屋からの脱出、実行
新居には7月に入居可能で、これまで住んでいた物件の退去は7月末になった。そこで引っ越し作業は専門業者を使わず、重複期間を利用して、自分で運んだり宅配便の集荷サービスを利用したりと、ひとりで地道に移動させることにした。
しかし、部屋にあるモノをほとんど移動させてしまったのでは、これまでと同じことの繰り返しだ(ひとりでできる量ではないが)。引っ越しの機会にモノを整理せず、すべて持ち越してきたことが、汚部屋の始まる原因のひとつだったと思っている。また、16年も同じ部屋に住んでいると、頻繁に使うもの、まったく触れていないものは自ずと分かっている。
まず持ち越したものは、PCやゲーム機など確実に使うもの。
持ち越すもの
現役のPCとノートPCがそれぞれ1台、ルーターなどネットワーク機器一式、NAS、スピーカー、サブウーファー、DACと電源、ヘッドホン7台、Bluetoothスピーカー、カメラ一式、ライブ配信機材一式、ゲーム機(PS4、Switch、スーパーファミコン、ファミコン、PSP、GB、GBA、3DS系)一式、アーケードゲーム基板とコントロールボックス、6インチのブラウン管テレビ、シンセサイザー、キャンバス地の印刷されたイラスト、映画のポスター2枚、壁掛け時計、温湿度気圧計、工具(一般用、模型用、電子工作用)一式、自転車一式、釣り道具一式、アウトドア道具一式、バックパックやかばん、“一軍”の服、ふとん掃除機、小型掃除機、ヘアドライヤー、衣類スチーマー、電動歯ブラシ、電気カミソリ、プリントした写真とフィルム、高校の卒業アルバムなど。
小説2タイトル、コミック1タイトル、友人が出したCDや同人誌も持ち越した。
なお、6インチのブラウン管テレビは、新居に持ってきた後に動かそうとしたら壊れてしまい、いきなりオブジェになってしまった。
持ち越さないものは、ベッドやふとん一式など新たに購入するもの。食器や調理器具も最近使っているものなど最低限に絞り、すでに使っていなかった多くのものを廃棄した。
持ち越さないもの
ベッド、ふとん一式、暖房器具、PCを置いていた机、書棚2つ、カウンターデスクとハイチェア2脚、冷蔵庫(冷凍庫がない)、電子レンジ(非常に古い)、PCディスプレイ2つ(買い替えで捨てるなら今)、洗濯機(すでに故障)、ソファ(使っていたが半壊していた)、部屋着として使っていたよれたTシャツや下着など。
すでに使っていなかった物:オーブントースター、古いPC3台、17インチのブラウン管PCモニター、STAXのシステム、壊れたAVアンプ2台、古いDACとアンプ、VHSビデオデッキ、グラフィックイコライザー、レコードプレーヤー、古いスピーカー4つ、塗装関連一式、数多くのコンシューマゲーム機、200~300枚のCD、1,000冊以上のコミック・ライトノベルや雑誌、アニメのDVD、PS2のゲームなど
積み上がっていた未組み立てのプラモやガレージキット、アニメ映画のパンフレット、値が付きそうなゲームソフト(初代プレイステーションやドリームキャスト、セガサターン、PCエンジン、ファミコン、スーパーファミコン)は、段ボールに詰めてオタク系に強い中古店に買取に出した。
新居では新たに、玄関ドアのシリンダー錠2つ、エアコン2台、PC用のデスク、PCディスプレイ、デスクライト、オーディオ用電源コンディショナー、上等なオフィスチェア、フットレスト、液晶テレビ、テレビ用壁寄せスタンド、システムキッチンの浄水スパウト(蛇口)、冷蔵庫、洗濯機、オーブンレンジ、レンジ台、ロボット掃除機、ダイニング用の机と椅子、ベッド、上等なマットレス、まくらやふとんとシーツ一式、ポスターフレームと仮縁、卓上電波時計、各部屋のカーテン・ロールスクリーン、ゴミ箱、トレーニングマット、浴室用のイス、珪藻土マット、大量の引き出しや収納ボックス、衣装ボックス、スラックスハンガー、脚立、消化器、物干し竿などを購入した。
巣ごもり需要で納期が遅めに
引っ越し時期が在宅勤務や巣ごもり需要の高まりと重なっていたせいか、新たに買ったものは、全般的に納期が遅れる傾向になった。
エアコンは夏の需要が本格化する前に注文できたので比較的すぐに取り付けられたが、冷蔵庫や洗濯機、テレビなどの大型家電は、販売店に在庫があっても配送業者のスケジュールがいっぱいで、納期が注文から2週間後など、遅れることになった。また家具も、大手通販サイトでは概ね納品まで2週間前後かかり、すべてが揃うまで1カ月間をまるまる使うことになった。
想定外の事態は、この冷蔵庫と洗濯機だ。
設置スペースの寸法は問題なかったものの、冷蔵庫は、古いマンションであるこの物件の、180cm弱しかない低い玄関ドアをくぐりきれない(くぐっても狭い玄関スペースの中で起こせない)事が判明。洗濯機は、設置場所である洗面室の入口が狭く、設置するための方向転換ができないという判断になり、どちらもトラックから降ろすことなく搬入を断念して、一旦注文をキャンセルした。
配送業者が「このサイズなら搬入できます」とメモを残してくれたので、それを参考に一回り小型のモデルを注文し直すことになった。注文し直しても配送業者のスケジュールはいっぱいのため、結局は住み始めてから3週間以上たって冷蔵庫と洗濯機が到着することになった。
オフィスチェアはオカムラの「フィノラ」を注文したが、各部の色を指定できるなど注文生産に近いためか、こちらも納品まで1カ月程度を要した。届くまではダイニング用の椅子で代用していたため、腰が痛くなり、樹脂製の硬い座面のせいか切れ痔気味になってしまった。フローリングで使うのでウレタンキャスターを別途注文した。
引っ越し期間中で幸いだったのは、今年は梅雨が長引き、7月中はあまり暑くない日が続いたことだ。特に引っ越し期間の前半は、重い荷物をハンドキャリーで運ぶなどしていたため、暑い日照りが少なかったことは助かった。
最終手段「業者」。汚部屋、消滅
「新居に持っていかない」として汚部屋に置いたままのモノは、汚部屋の掃除や、(孤独死などによる)遺品廃棄を専門とする業者に依頼することにした。中身がちょっと入っている冷蔵庫とか、壊れた洗濯機なども問題なく引き取るという。要するに部屋に残った一切合切を1日で片付けてくれる、最終手段といえる依頼だ。また、作業予定日は、この物件の不動産屋への引き渡しの直前だったため、電気・ガス・水道が止まった後だが、こちらも問題ないということだった。
汚部屋に残されたブツの量は膨大で、スタッフの訪問見積もりの段階で「2トントラックには収まりきらない。2.5トン分くらい」(※トラックの積載スペースの話)と言われ、また時間もかかることから、スタッフ数人を1日拘束するというスケジュールになった。
作業日は2トントラックが2台手配され、先に0.5トン分を積んだトラックは、ほかの現場に向かった。残ったトラック1台もブツが満載になった。作業人数は3~5人、作業時間は朝の9時から始めてて夕方の4時までかかった。作業当日は、筆者は最後の立ち会いに出向くだけだったが、がらんどうになった部屋を見て、16年前のこの部屋に内見に来た時を思い出した。
終わってみればあっけないと言えるが、とにかく「ホッとした」というのが偽らざる感想だ。新居で寝泊まりを始めても、荷物の移動などで汚部屋を訪れる度に「一体どうすれば片付くのか……」と途方に暮れていたし、そのことが大きな負担となって、新居での新しい生活も楽しめないでいた。
捨てたモノの量も膨大だが、費用も通常の「一軒家まるごと中身を廃棄」ぐらいかかった。20数年前に一人暮らしを始めてからの荷物をほぼすべて持ち越していたことを考えると、20年来の「捨てない生活」の大きなツケを払ったといえる。また、使っていなかったとはいえ、自分で買ったモノの数々を捨てるのは、理屈を超えて心が傷ついたし、予想外の費用の多さもショックだった。
汚部屋とはつまるところ、肥え太って病気になった自分の内臓のようなものなのだ。こんなはずじゃなかった、こんなの本当の自分じゃないと心のどこかで思い込んでいても、患部を切除すれば、痛みを感じてしまう。どうしようもないほどに恥ずかしくて無様でも、自分の内なる姿そのものなのだ。
大手術のような今回のイベントを機に、心を入れ替え……られるかどうかは分からないが、新居ではモノを貯めない生活を始めるつもりだ。本についてはほぼ電子書籍に移行していたため、この数年は増えていなかったが、場所をとる、箱が積み上がるといった物理のコレクター的な趣味は控えていこうと心に誓ったのと、ちゃんと収納場所を確保してから買おうと心に決めた次第である。
手始めに新居では、ニトリで引き出し、無印良品で収納ボックス、イケアで収納ボックスや衣装ボックスを大量に買い、モノをそこらに積み上げるのではなく、すべてのモノをどこかに収納できる状態にして生活をスタートしている。それが普通、という指摘もあるだろうが、まず普通の実現から始めなければならないのである。
住宅浦島太郎、最新の住宅設備に触れる
新居は鉄筋コンクリート造とはいえ築50年以上の古いマンション。ただ、フルリフォーム済みのため、サッシと玄関ドア以外はすべて新品で、中にいる限りは新築のような雰囲気だ。
設備としては、アイホンのモニター付きドアホンが付いているし、トイレはLIXIL(INAX)のシャワートイレ(≒ウォシュレット)、システムキッチンはLIXIL、2口のガスコンロはリンナイ、給湯器はノーリツ、浴室はTOTOだ。すべての部屋の照明はLEDで、浴室以外は天井埋め込みタイプになっていた。高級物件ではないため、どれも各メーカーのラインナップの中では普及クラスの製品だが、最新の住宅設備としての機能は最低限備えているようだ。
暮らし始めてすぐに便利だなと感じたのは、アイホンのテレビドアホン。ネットにつながると言った機能はないが、不在中にドアホンのボタンを押した人の画像が保存されているため、帰宅後にどのような風貌の人が何時頃訪ねてきたのか確認できて便利だ。
細かなところではLIXILの建材の引き戸も浦島太郎として驚いた。上側のレールにオートクローズ、オートブレーキという機構が付いており、バネやシリンダーの動作により最後がゆっくり動くようになっている。これにより、オートブレーキでは勢い余って壁にドンっとぶつからないようになっている。
オートクローズはブレーキの機能もあるが、「吸い込み」のような動作になるので、軽い力で動かしておけば、最後までピッタリと閉めてくれる。ちなみに開ける時は、オートクローズ機構により閉まった状態が維持されているので、少しだけ力を入れる必要がある。
ここ数年はキッチンの水道の蛇口に浄水器を取り付けて、普段の飲料水はそれを利用していた。新居のシステムキッチンの蛇口(スパウト)は浄水器を取り付けられない形状だったが、浄水機能の付いたスパウトに交換できるというチラシが付いていたので、それを注文した。
メッキ塗装が綺麗なので最初は気がついていなかったが、スパウトは新旧どちらも金属製ではなく樹脂製で、根本にあるストッパーを外せば簡単に必要な部分だけを交換できるようになっていた。浄水スパウトは、交換可能な浄水フィルターを内部に装着できるもので、先端のレバーで浄水、シャワー、原水を切り替えられる。見た目は少し太くなったものの、浄水機能を備えつつスッキリとした外見のままで、なかなか満足だ。
風呂は、ワンルームのアパートと最も差が大きい部分だろう。これまでの風呂は追い焚きができず、風呂釜は体育座りで入るしかない小さなサイズだった。一方、新居では長辺1mのまっとうな風呂釜になったうえ、追い焚きどころか湯温と湯量のどちらも設定通りに調整・維持してくれる自動湯沸かし機能が付いた。キッチンの端末から操作もできる。風呂の床は水はけがよい最新の建材で、壁は実家の風呂のタイル張りのように冷たくない。これまで自宅の風呂にお湯をはることなどなかったが、新居ではほぼ毎日、首まで熱いお湯に浸かってリラックスしている。
しかしながら住宅設備で最も驚いたのは、恥ずかしながらそれまで存在を知らなかった「浴室乾燥」機能だ。これは風呂の換気扇部分に組み込まれている機能で、電気を使って熱風を出し、湿気を排気して洗濯物を乾かすという機能だ。このため風呂の壁には短い物干し竿をセットできる部分が2カ所あり、1本は付属していた。
驚いた理由は、内見時に浴室の操作パネルでこの機能を発見しても、おまけ程度の性能だろうとナメていたから。実際には、一人暮らしの洗濯物の量ではドラム式洗濯機とさほど変わらない時間で乾かせるほか、熱風と湿気、動作音もすべて浴室内で収めてしまうため、使い勝手がいい。ドラム式洗濯機の乾燥機能よりも温度は低いので、衣服が縮むといったダメージも少ない。
新居ではドラム式洗濯機を初めて購入したが、乾燥機能を使った際の音の大きさ、そしてなにより熱と湿気の排出の多さに驚いた。音が大きいのでドアを閉めておくと、近くの洗面台の鏡が結露だらけになり、洗濯機の透明な窓も結露だらけになるなど、取説に「窓を開けてください」と書いてあるのが納得の暴れん坊(?)ぶり。
新居の洗面室の窓には網戸がないので、窓を開けたくなければ洗面室のドアを開け放ち隣の部屋のエアコンを除湿にしてフル回転させるしかない。天日干しの偉大さを改めて認識するとともに、ドラム式洗濯機での乾燥は、雨の日にシーツを洗ってしまったとかの特別な場合に限ろうと思った次第だ。
浦島、ロボット掃除機に感動
住宅設備ではないものの、引っ越しに伴い新たに購入した家電製品で革命的だったのは、ロボット掃除機だ。ロボット掃除機がいかに革命的な製品かは今更語るまでもないのだが、触れたことがない筆者には、どれほど革命的なのか実感がわかなかったのも事実。
新居を内見した際、主要なドアはすべて引き戸であることや、引き戸のレールの突出も最小限で、1畳程度の洗面室以外はすべて同じフロアとしてつながっていることを確認していた。そこで、これはロボット掃除機が運用しやすいと考え、引っ越しと同時にルンバ「i7」の導入に踏み切った。新たに買った家具なども、なるべくロボット掃除機の運用を妨げない方針でそろえ、棚は一番の下の床に接するスペースにモノを置かないようにして、可能な限りロボット掃除機が入れるようにした。
これまでの汚部屋では、そもそも掃除機をかけるほど床が露出していなかった。そのため掃除は散発的で、定期的に掃除機をかける、部屋の掃除をするといったルーチンが存在していなかった。恥ずべきこと、驚くべきことだが……。
このため、突然“床だらけ”の部屋になっても、掃除を怠ってしまうのではないか、そしてそれが常態化してしまうのではないか、という自分自身に対する不安があった。ロボット掃除機は、一般には忙しい共働き世帯でも便利などと謳われているが、はたして掃除を怠り続けた未熟な大人にも、福音となりうるのだろうか?
答えはイエスだ。
ロボット掃除機は、多くの先達が舐めた辛酸により、今では機構やAIなどがかなり進化しているようだ。筆者にとって初めてのロボット掃除機が「i7」で、成果の上澄みを掠め取るようで申し訳ないが、当初からほぼ不満なく使えている。設置して、スマートフォンアプリで清掃のボタンを押すだけで、地続きの部屋のすべてを綺麗に掃除してくれている。
もちろん、ロボット掃除機を運用する上で少しの工夫は必要になる。例えばダイニングに置いているイスは足の幅がせまく、ロボット掃除機が間を通過できない。そのままだと、イスの下がまるまる掃除できないエリアになってしまうため、掃除を開始する前に、段差が高く掃除の対象エリアではない洗面室に移動しておく。ほかにも、軽くて立て掛けてあるだけのものは、ロボット掃除機が“頭突き”をして倒してしまう可能性が高いため、退避しておく。あとは、各部屋の引き戸をすべて開ければ準備は完了。筆者の物件では30分程度ですべての掃除が終わるため、途中で充電が切れることもない。
やはり、自分以外の誰か(この場合はロボット)が掃除してくれるというのは、非常に気が楽だ。物件的に大した部屋数や面積ではないとはいえ、自分で掃除機をかけるのと、勝手にやってくれるのとでは雲泥の差だ。
また、運用してみて便利さを実感したのは、出かける直前にロボット掃除機を稼働させて、帰ってきたら綺麗になっているという使い方だ(外出先から掃除を開始させることも可能)。帰宅すると床が綺麗に掃除されているのは、「知らない間にキレイになっている」と錯覚して、なんとも言えない感動がある。夏は裸足でいることが多いため、床のホコリや汚れは足の裏の感触としても体感しやすい。ボタンを押すだけで床がツルツルになるのは、モノの山の上をたけし城の竜神池のように移動していた汚部屋とのギャップが凄すぎてめまいがしそうだが、革命的で感動した、と言わざるを得ない。
掃除をする習慣が身につくどころか、スキップしてしまった感はあるが、例えば廊下から一段下がった玄関のタイル張りのエリアや、ダイニングから一段上がっている洗面室の床は、ロボット掃除機が掃除できないエリア。また5つのキャスターが付いた重いオフィスチェアの下(PCデスクの下)もロボット掃除機が進入できないし、そのオフィスチェアは重くて大きいので退避先がない。とはいえ、これらの場所は、バッテリーで動作する小型の掃除機をサッとかける程度で終了する。あとは卓上用のモップでPCデスクや棚の中のホコリをとれば、掃除は完了。ロボット掃除機が自動で床を綺麗にしてくれるため、「床が綺麗になったんだから、ほかもちゃんとしたい」と、釣られて残りの手作業の部分も掃除するようになっている。
次回は新居の環境構築の総仕上げ、防音対策の施工についてお伝えする。(第3回に続く)