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汚部屋からのエクソダス:四十男 築50年の家を買う(1)
2020年8月26日 08:30
16年に渡って住んでいたワンルーム・アパートからの“脱出”(引っ越し)を決行した。仕事の仕方など、さまざまな環境が変わったり、40代を迎えたりしたことなど、自分の内外の環境変化もあるが、使っていないモノだらけの、いわゆる「汚部屋」と化していた自分の部屋、そしてその暮らし方そのものをリセットしたいという思いがかつてないほどに強まったからだ。自由にできる時間が増えていたこともあって、今しかないと思い立った。
汚部屋からの脱出
これまで住んでいた部屋は、生活ゴミで溢れているわけではなかったが、本や趣味の道具、製品の空箱、膨大な数の空のダンボール、着なくなった服、前の引っ越しで持ってきてそのまま開けていないダンボールなどで溢れかえり、晩年ともなると7畳のワンルームの部屋が概ね腰の高さまでモノで埋まっている状況だった。
物件には収納スペースが一切無いということも大きかったが、原因をたどっていくと、住み始めた当初から、持ってきた荷物を整理せず、一部はそのままにした状態で、新たに荷物を増やしていったためだ。
「汚部屋にしてしまう心理」を語り始めるとキリがないが、増えていく荷物をどう整理・収納するのか、グランドデザインが無いまま適当に過ごしてきたことが敗因だろう。
だが、いよいよ汚部屋による「精神面での悪影響」が無視できなくなってきた。
圧倒的なモノに溢れ、簡単には解決不可能な汚部屋というのは、ポジティブな気分になりにくいというか、一日を前向きに過ごすモチベーションが湧きにくい。休日は、ベッドから起きてごはんを食べ、PCの前で動画を見ているだけで1日が終わる……ということが続いていた。PCの前とベッドの上しか過ごす場所がないし、外に出るだけでも八艘飛びとアスレチックをこなさなければならない。買い物や映画など外出の予定を立てても、当日になるとやる気が出ず「また今度でいいか」とキャンセルしてしまうことが度々あった。
こういうことを何年にもわたって何度も繰り返していたが、昨今のさまざまな環境の変化により、自宅で過ごす時間が大幅に増えたことで、さすがに汚部屋の霊圧が精神的に悪影響を及ぼしていると感じ、抜本的な改革が必要と考えるようになった。
便利だが騒音が問題の物件
引っ越す先の物件については、人生も後半戦に入ったということもあり、分譲マンションを中古で探した。一人暮らしかつ自動車を持っておらず、今後も所有しそうにないことから、駅から歩ける距離が条件だ。結果的に、前の物件から直線距離で4km弱しか離れていない物件に決まった。価格は、決して高くはないが格安でもないといった塩梅で、地域の相場の範囲内だ。
新居は、鉄筋コンクリート造とはいえ築50年以上の古いマンション。間取りは、2DK(寝室4.7畳、仕事部屋5.2畳、ダイニング8.2畳)で、専有面積は38m2強。加えてバルコニーもある。
良い点は、駅にかなり近く電車の移動が楽なことや、駅前のコンビニやスーパー、飲食店、銀行などがそのまま徒歩圏内の施設として利用できる点。警察署、消防署、郵便局などもあり、およそほとんどが揃っている。また10分程度歩けば、別の大型の駅にもアクセスでき、その周辺の店舗や施設も生活圏内ということになる。
不動産屋いわく、物件の価値は、建物の築年数など以前に、不動産という字のようにまずは“立地”であるという。その意味で、最寄り駅の出入口から歩いて10秒ぐらい(!)という、駅前そのもののこの物件は、小規模なオフィスや高齢者向けとしても需要が高いとのことだった。実際、同じ階のいくつかの部屋は、事務所やスタジオとして利用されているようだ。
悪い点は、駅に近いというより駅前そのものであり、街の騒音や、20mぐらいしか離れていない大型幹線道路の騒音がかなり大きいことだ。
物件の向かいにはパチンコ屋があり、その隣から飲み屋が軒を連ねるなど、ぶっちゃけ近隣でも最も騒がしいエリアだ。幹線道路を爆音で走る車やバイクをはじめ、緊急車両が昼夜を問わず頻繁に通る。パチンコ屋の出入り口のドアが開くと盛大に漏れ出てくる店内アナウンス、深夜の飲み屋の客の大声・奇声もすべて、何を言っているのか分かるレベルで聞こえる。
駅の入口の前に立ち、通勤客に向け朝の7時半から政治家が街頭演説を始めたときも、ベッドの中で内容がすべて聞き取れてしまった。
なんというか、メリットとデメリットがものすごくハッキリした物件といえる。
もっとも、環境として騒音が大きく、それが盛大に部屋の中にも入ってくることは、物件の内見の時点で把握していた事だ。周囲の環境もそうなのだが、突き詰めると、問題は物件のサッシが古くガタガタのすき間だらけで、遮音性がかなり低いことに起因している。
住み始めてからもこの印象は変わらず、窓を閉め切っていても「あれ? 窓開けたっけ?」と錯覚するほど外の音が入ってくるのだ。サッシのすき間が大きいため、ちょっと強めの風が吹いただけでカーテンがフワっと揺れる始末だった。
しかし、この問題を解消してまともな環境にできれば、駅に近いというメリットだけが残ると考えた。そのため、この物件に決めた時点で、窓の防音対策もセットで考えた。
また、物件はどこであれ、音楽をスピーカーで楽しむ際の防音対策は気になっていたところ。一軒家の“オーディオルーム”とまではいかないが、物件は鉄筋コンクリート造で最上階の角部屋なので、窓の防音対策をしっかりすれば、まとなレベルで音楽・オーディオが楽しめ、嬉しいメリットになるのではないかと思った。
脱出、決行
7月に入ると新しい物件に入居できるようになったが、手続きの関係で、これまで住んでいた物件の退去日は7月末になった。そこでこの1カ月間を利用して、引っ越し専門業者は使わず、自分のペースで引っ越し作業を進めることにした。自分で運んだり宅配便の集荷サービスを利用したりして、地道に移動させるのだ。
もとより、新居に持ち越すモノの量はたいしたことがないとふんでいたこともある。新居までさほど距離が離れていないことからできる方法でもあった。新居で寝泊まりを始めてから2週間ほど、前の物件に毎日通い、必要な荷物の“発掘”や梱包・発送、バックパックにありったけ詰めて路線バスに乗って帰る、といった根性での移動を繰り返した。
次回は新居の様子や汚部屋の始末についてお伝えする。
・第1回:汚部屋からのエクソダス
・第2回:さらば捨てない生活。汚部屋消滅とルンバの革命
・第3回:最後の難関“騒音”。二重サッシと新しい生活