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最大200万円の中小企業向け「持続化給付金」を申請した

必要な書類を揃えて持続化給付金の申請をしてみる

個人世帯向けの「特別定額給付金」の申請受付が開始するのとほぼ同じタイミングで、中小企業と個人事業主を対象とした「持続化給付金」の申請受付も開始された。5月8日には実際の支給も開始されており、すでに申請し給付を受けている企業・個人事業主の方もいるかもしれない。

中小企業には最大200万円、個人事業主には最大100万円が支給されるこの持続化給付金は、貸付とは違って返済の必要がなく、用途も限定されていない。新型コロナウイルスによる影響が著しい企業だと「焼け石に水」のような額かもしれないが、筆者のような社長1人、あるいは社員数名程度の小さな会社にとっては十分に「持続化」の助けになるものだ。

給付には一定の要件があるものの、新型コロナウイルスによって少なからず影響を受けた筆者の会社もその要件に当てはまったため、申請してみることにした。今回はその手順をご紹介したい。なお、業種、業態によって申請時に用意できるものは変わってくる可能性があるため、ここで説明している内容は筆者が経営する「執筆業」を営む会社の一例として見ていただきたい。必ず税理士と相談したうえで手続きすることをおすすめする。

まずは給付対象者の要件をチェック

持続化給付金のWebサイト

持続化給付金の申請は、Webサイト上からの電子申請のみとなる。個人向けの特別定額給付金では電子申請の他に郵送による申請も受け付けているが、持続化給付金ではマイナンバーカードによる電子署名のような作業は求められないこと、事業者向けであることなどから、電子申請のみでもハードルは高くないとの判断なのだろう。

といっても、パソコンを持っていない、操作の仕方がわからない、といった事業者(の代表者)も少なくないと考えられるため、必要書類を持参してその場で担当者のアドバイスのもと電子申請ができる「申請サポート会場」も用意されている。

申請サポートは、5月14日時点で全国59カ所での開催が予定されているが、訪れる前に予約も必要。新型コロナウイルスの感染者数は全国的に減少傾向にあるとはいえ、可能な限り自宅・自社から電子申請するのが得策と考えられる。

冒頭で触れたように持続化給付金の申請にあたってはいくつかの要件があり、中小企業や個人事業主であれば誰でも給付されるというわけではない。中小企業においてポイントとなる主な要件は以下の通りだ。

給付対象者の要件

1. 資本金の額が10億円未満、従業員数2,000人以下の中小企業
2. 2019年以前から売上があり、今後も事業継続の意思がある
3. 2020年1月以降、新型コロナウイルスの影響等で事業収入が50%以上減少した月がある

*この要件に沿っていない合併した企業や法人成りした個人事業主などに対するさまざまな特例も規定されているので、詳しくは持続化給付金のWebサイトで確認していただきたい

要するに、新型コロナウイルスが直接・間接の原因となり、昨年度の結果から想定される売上が得られず、1カ月間の売上が昨年同月比半分以下になった企業が対象になる、ということ(中小企業庁が定義する「中小企業者」は資本金3億円以下、従業員数300人以下なので、それよりは対象を広げていると言える)。

しかし文字通りに捉えると、自分の会社が微妙に当てはまるのか当てはまらないのかわからないところもある。たとえば、売上減少の原因が本当に新型コロナウイルスかどうかが自分では判断しにくい、などだ。

ただ、申請の際にはこの「新型コロナウイルスの影響など」を証明する資料は一切求められないため、シンプルに「事業収入が昨年同月比半分以下になった月」があれば給付の対象になると考えておけばよい。結果として広範な事業者が対象になると思われるが、このあたりはスピード感を考えてのことだろう。業種・業態によって新型コロナウイルスの影響の範囲や程度はそれこそ千差万別で、証明する資料があったとしても適切に、かつ本来の目的である事業の「持続化」のためのスピーディーな判定をすることは難しいに違いない。

これ以外にも政治団体や宗教団体、性風俗関連特殊営業を行なう事業者など、給付の対象外となる「不給付要件」も規定されているのでチェックしておきたい。給付要件に問題なく当てはまっているようであればWebサイトから電子申請することになるが、その前に必要な書類を揃えておこう。

申請の前にあらかじめ用意すべき「書類」と「情報」

結論から言えば電子申請そのものにはさほど時間はかからない。が、あらかじめ必要な書類と情報を用意するのに手間がかかる可能性はある。

それでも持続化給金の申請のために用意しなければならない資料は多くなく、大まかには以下の3つの書類と4つの情報を用意すればOKだ(持続化給付金のWebサイト上での文言はややわかりにくいので、あえて表現を変えている)。

必要なものは、減った月の収入がわかる書類と確定申告書類、口座情報など

申請前に準備するもの

給付金申請に必要な「書類」

・事業収入が減った月の事業収入がわかる書類(売上台帳など)
・その直前の年度の確定申告書類等(計3枚、e-Tax利用の場合は計4枚)
・その法人の口座情報(通帳表面と最初のページの見開きの画像など、またはインターネットバンキングの画像)

給付金申請に必要な「情報」

・事業収入が減った月の月間事業収入
・事業収入が減った月の前年度同月の月間事業収入
・前年度の年間事業収入
・決算月

このうち最も迷いやすいのが事業収入がわかる書類と、事業収入に関わる情報だろう。筆者の会社の場合もこの書類・情報を何にすべきか判断するのに最も時間がかかった。というのも、何をもって当該月の「事業収入」とみなすかが、持続化給付金のあらゆる説明資料を読んでも明確になっていないからだ。

たとえば現金のみを扱う飲食店や商店の場合、「当月の売上」=「当月の事業収入(入金)」ということになり、シンプルにその月の売上額と、その前年度の同月の売上額を比較すればいいことになる。

ところが筆者のような執筆業だと(他の多くの企業もそうだと思うが)、「当月の売上」=「当月の事業収入(入金)」とはまずならない。

なぜなら、売上があった(納品した)月に請求書を発行し、請求先の企業に後日(たいていは30日後以降に)その額を振り込んでもらう形になるからだ。「当月の売上」=「翌月以降の事業収入(入金)」で、つまるところ「売掛金」である。だから、必要書類として「事業収入が減った月の事業収入がわかる書類」と言われても、当月の売上額(売掛金)がわかる書類なのか、実際の入金額がわかる書類なのか、判断がつかないのだ。

ここはお世話になっている税理士の方に相談してもはっきりしなかったので、念のため経済産業省が開いている「持続化給付金事業コールセンター」に電話して確認した。回線が混雑しているため何度かかけ直すことになるかもしれないが、5~6月は平日・休日にかかわらず毎日(8時30分~19時)受け付けているので、申請にあたり不安なところがあるなら相談してみると良いだろう。

「持続化給付金」のお問い合わせ先について (METI/経済産業省)

電話窓口以外にLINEアカウントも用意されている

電話で確認した結果、そもそも「事業収入」と表現されているところは「売上」や「売掛金」と同じ意味で捉えて問題ないようだ。つまり、筆者の会社の場合、2020年4月中に発生した売上(売掛金)が減ったのであれば、2019年4月中に発生した売上(売掛金)と比較する形になる。

ただ、ここでもう1つ「実際に提出する書類を何にするか」という問題が出てきた。

今回必要とされる「事業収入がわかる書類(売上台帳など)」は、具体的にどういう体裁の書類にすべき、という決まりはない。とにかくその月の事業収入であることがわかるように記載されている書類であれば良く、手書きの帳面の写しでも問題ない。だから、とりあえずそういう感じの書類を作ればいいのだが、都合の良くないことに2020年4月は弊社の決算月。売掛金が年度をまたぐ形になるうえ、税理士事務所のほうで決算の処理をしてもらう関係から、利用している「MFクラウド会計」上で、このタイミングで売掛金を勝手にこちらで登録してしまうと混乱する可能性もある。

なので、書類としてはあまり格好よくはないが、最も売掛金を表現していることがわかりやすい「MFクラウド請求書」のスクリーンショットを提出することにした。これであれば請求日(月)も金額も表記されており、(合計額の形では見えないが)月間の事業収入がいくらなのかを説明する資料としては十分だろう。

「MFクラウド請求書」のスクリーンショット

いずれにしろ、電子申請した後、書類に不備があった場合は通知があり、不足している資料や訂正情報などを持続化給付金のWebサイト上で再登録できるとのこと。明らかに問題のある書類を提出するのは論外だが、自分の会社で今提出できる最良の資料を用意しておけば、そう簡単に「不給付」と切り捨てられることにはならないはずだ(と思いたい)。

確定申告書類

さて、必要書類のうちもう1つ解説しておきたいのが「確定申告書類等」だ。これは、「確定申告書別表一の控え(1ページ分)」および「法人事業概況説明書の控え(2ページ分)」という計3ページからなるもので、前年度の確定申告が完了しているのであれば、おそらく税理士の方にお願いすればすんなり出てくるはずのもの。

ただし、「確定申告書別表一の控えには収受日付印が押されていること」という但し書きがある。紙の書類で提出しているのであれば日付印があるはずだが、たとえば筆者がお世話になっている税理士事務所ではe-Taxを利用して確定申告しており、紙書類をやりとりしていないので日付印がない。この場合はもう1つ、確定申告のデータ送信後に税務署から送られてくる受信通知書に類するものを用意しておく必要があることを覚えておきたい。

e-Taxで申告している場合は確定申告書のデータ送信後に送られてくる受信通知書も必要

いよいよ電子申請。口座名義の文字入力に注意!?

以上のように必要な書類と情報を手元に揃えたら、持続化給付金のWebサイトから「申請する」ボタンを押して申請を進めていく。最初に、法人か個人事業者のどちらかを選び、法人の場合は「法人番号」を入力するだけで法人名や所在地などが自動入力される。

ページ下部にある「申請する」ボタンをクリック
企業なので法人を選択。法人番号を入力すると法人名と所在時が自動入力される

次にメールアドレスを入力して同Webサイトにアカウント登録するような形で進めていく。任意の文字列によるログインIDとパスワードの登録を促されるので、ここで入力した内容は必ず覚えておこう。申請後にこのID・パスワードを使って同Webサイトにログインすることで、申請内容を確認できるほか、書類に不備があった場合に訂正などの対応ができるようになる。

メールアドレスを入力して「仮登録」
入力したメールアドレス宛に確認のメールが届くので、リンクをクリックする
次に任意のログインIDとパスワードを入力して本登録する

以降の入力内容としては、会社の住所、業種、設立年月日、決算月、資本金の額、代表者や担当者の名前・連絡先といったもの。用意しておいた事業収入などの必要情報も手入力し、口座情報も手入力する。のだが、ここで1点筆者がハマってしまったのが、口座情報の名義の部分。なぜか「半角カナ」か「大文字英数字」で入力しなければならないのだが、筆者の会社名である「フットプリントテクノロジーズ」を半角変換したところ、エラーとなった。

「宣誓」画面で1項目ずつ確認しながらチェックボックスをオンに
改めてここで給付・不給付の要件などを確認できる
続いて住所、資本金額、代表者名や連絡先などを手入力
通常は一番上のチェックボックス「一般的な申請方法」のみをオンに。特例の適用がある場合はそれに合うものを選ぶ
各種資料内の名義が一致しているかどうかをチェック。一致していない場合は追加の資料などが求められる場合がある
あらかじめ用意しておいた事業収入などの情報を入力する。給付予定額もここで表示される

具体的にどういう文字が使えるのかという注釈はあるのだが、すべて問題なく半角カナにしているので何がエラーの原因なのかがつかめない。濁点・半濁点の表現に問題があるのかとも思ったのだが、何度か入力し直してエラーを繰り返すうち、なんと「音引き」(テクノロジーのジ“ー”)がNGであることがわかった。日本語入力ソフト(ATOK)で普通に音引きを半角変換して出てくる文字は受け付けず、代わりに「ハイフン(-)」にしなければならないようだ。

振込先となる法人もしくは代表者の口座情報を手入力
口座名義は正しく半角カナで入力したのだが……
「次へ」で確認画面に進もうとするとエラーに
原因は半角カナの「音引き」だった。正しくはハイフンにしなければならない。左が音引きで右がハイフン。並べると違いがわかるが、そもそもハイフン入りの名称で口座を作っていないので戸惑う

これは持続化給付金のWebサイトだけでなく、銀行のシステムもネックになっているのかもしれないが、口座名義に音引きが含まれているときは注意しておきたいところ。

この「音引き問題」の検証で数十分を無駄に費やしてしまったが、あとはあらかじめ用意しておいた通帳の画像と確定申告の書類、減った事業収入がわかる資料をアップロードして完了。もちろんアップロードするファイルに電子署名などは必要ない。筆者の場合はスクリーンショットを撮りながらだったこともあり1時間弱かかってしまったが、スムーズにいけば30分もかからないだろう。

あとは口座の通帳画像や確定申告書類等の用意しておいた資料をアップロードするだけ
これにて申請完了となる
申請後も申請した内容を確認できる。「申請・受取について」メニュー内の「申請内容の確認」からID・パスワードでログインすればいつでもチェック可能

まだ要件に届かない影響が軽微な事業者も、念のため準備を

提出書類に問題がなければ2週間ほどで給付金が振り込まれ、あるいは書類に不備があったときは通知があるはず。必要書類の準備を含めた手間は企業によるので一概には言えないが、最大200万円の給付にかかる手間として考えれば、(これから訂正や追加書類が必要になる可能性もないとは言えないが)かなり手軽ではあると思う。

なお、中小企業に対する持続化給付金は「最大200万円」としているとおり、給付金の額は年間事業収入の額や減少幅によって異なる。計算式は以下の通りで、たとえば減少した月の事業収入が75万円で、前年同月が150万円、前年の年間事業収入が1,000万円だった場合、給付金の額は100万円となる。

【給付額の算定方法】
前年の総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上×12カ月)

10万円未満の端数が出た場合は、申請画面上では切り捨てて表示され、いったんその額で給付されるが、後日改めてその端数部分についても振り込まれるとのこと。

企業や個人事業主によってはすでに新型コロナウイルスの影響がはっきり出ているところもあれば、まだ影響が軽微だったり、これから本格的に影響してくるところもあるだろう。まだ給付金が必要ない(給付要件に合っていない)状況であっても、売上が大きく減ったときにはすぐに申請できるよう、必要書類や手続きの方法をぜひ一度チェックしておいてほしい。