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乱立する“○○ペイ”まとめ。QR決済はキャッシュレス社会の起爆剤となるか

スマートフォンを使ったキャッシュレス決済が盛り上がつている。LINEや楽天、AmazonといったITサービス大手に加え、NTTドコモなどの通信キャリア、銀行、コンビニ・流通など、様々な業界の大手企業が続々参入。ソフトバンク・ヤフー系のPayPayが、昨年12月の「100億円キャンペーン」で話題を集めたことも記憶に新しい。

'18年4月公表の「キャッシュレス・ビジョン」(経済産業省)において、「2025年までにキャッシュレス決済率40%」という高い普及目標が示されていること、さらには今秋の消費増税に関連した景気対策として、キャッシュレス決済によるポイント還元などが検討されていることもあり、2019年もこの流れは止まりそうもない。

一方で、「○○Pay」といった似たような名称のサービスが乱立し、わかりにくくなってきたことも事実。そして、この後もコンビニ各社や銀行系の“Pay”サービスは、まだまだ増えていく見込みだ。

今回は、個人ユーザーからみた“○○Pay”サービスの特徴などを一覧でまとめた。

主に「QR決済」(QRコード/バーコード等)を中心に取り上げ、iDやQUICPayなど、スマホにも対応した非接触決済、およびSuicaやWAON、nanacoといった電子マネーなどについての説明は省略する。それらについては、「キャッシュレス決済の基本:電子マネーと国内外の非接触決済事情」等の記事を参考にしてほしい。

QR決済とは

QR決済が注目を集めた理由は別記事に詳しいが、基本的にはスマホだけで利用可能で、導入店舗における初期投資も少なくて済むことが特徴。

店舗側が負担する手数料等も低めに抑えられている場合が多いため、これまでクレジットカードや電子マネーを導入できなかった店での拡大も期待されている。

キャッシュレス決済の基本 「QR決済」

ユーザーは、専用マネーを購入し、アプリ内にチャージ、代金を支払う。銀行口座やクレジットカードからチャージが行なえる(決済サービスによって入金手段は異なる)。

決済の際には、客がスマートフォンの画面にコードを表示して、レジのリーダーやスマートフォン・タブレットで読み込むか、客が店のコードを読み込んで支払いを行なう。前者はストアスキャン、後者はユーザースキャンとも呼ばれる。

楽天Payのコード表示(ストアスキャン)
楽天PayのQR読み取り(ユーザースキャン)
楽天Payのセルフ(ユーザーが金額を入力

LINE Pay

LINE上で展開するモバイル送金・決済サービスが「LINE Pay」。コンビニや飲食店のほか対応のオンラインショッピングサイトでも利用できる。

店舗では、QR/バーコード支払いのほか、LINE Payカードでの支払いが可能。また、Androidスマートフォン限定だがJCBによる非接触決済「QUICPay」にも対応。LINE Payにチャージした残高を使って、アプリを立ち上げずに、スマホをQUICPay+端末にかざすだけで支払い可能になる。

また、コード決済、オンライン決済に加え、電気料金などの「請求書支払い」対応も特徴といえる。

入金方法は、銀行口座に加え、コンビニでのチャージにも対応。ただし、クレジットカードとの紐づけには対応していない。

利用金額が高いほど、LINEポイントの還元率が上がる「カラー」制度も導入。通常のポイント付与は0.5%~2%だが、7月末までは3%プラスするキャンペーンを実施している。

さらに、LINEユーザー同士での「割り勘」など、個人間送金機能の充実も大きな特徴となっている。

LINE Pay
・ポイント付与:通常0.5%~2%(7月31日までは3.5%~5%)
・個人間送金:対応

LINE Payが目指す「決済革命」(ケータイWatch)

PayPay

ソフトバンクとヤフーによるPayPayが運営。'18年10月のサービス開始と後発ながら、12月4日からの100億円キャンペーンのような資本力とソフトバンクによる加盟店開拓力を背景にQR/バーコード決済の主要プレーヤーに踊り出た。

決済手法は、店舗が掲示したQRコードをユーザーがアプリで読み取る「ユーザースキャン」か、ユーザーがアプリに表示したバーコード(1次元バーコード、QRコード)を事業者側がレジなどで読み取る「ストアスキャン」などに対応する。

PayPay残高の個人間送金にも対応するなど、機能も充実。さらに、2月以降は店舗だけでなく、オンライン決済にも対応予定。「Yahoo!ショッピング」と「ヤフオク!」が2019年2月から、アスクルの「LOHACO」では4月から、PayPayを決済手段として利用可能となるなど、ソフトバンクやヤフー関連を中心にオンラインでの導入も進みそうだ。

ただし、クレジットカード不正利用問題に関連し、1月10日現在は、クレジットカード経由の決済上限が24時間で2万円、1カ月5万円に制限されている。銀行口座経由のPayPay残高チャージには制限はない。

PayPay
・ポイント付与:通常0.5%
・個人間送金:対応

「PayPay」で支払うと20%還元、「100億円キャンペーン」
PayPay、オンライン決済に対応

楽天Pay(アプリ決済)

楽天ペイ(アプリ決済)は、クレジットカードを登録し、対応店舗でバーコード/QRコード決済が行なえるサービス。決済額に応じて楽天スーパーポイントが貯まり、使える点が特徴。ローソン等の実店舗だけでなくオンラインでも利用可能。楽天IDにより楽天の各種サービスと連携する。

入金方法はクレジットカードで、楽天カードと、その他のVisa、Mastercardが対象。銀行口座連携には対応していない。

支払方法は、コード表示、QR読み取り、セルフの3種類

店舗での支払は、200円で1ポイント(0.5%)の楽天スーパーポイントを付与。楽天カードの場合は100円で1ポイント(1%)付与となるなど、楽天カード利用者向け特典を用意。またキャンペーンも多数行なわれている。

なお、楽天は電子マネーの楽天Edyも展開しているが、将来的な展開として、楽天PayアプリにEdyを取り込む方針。また、将来的には個人間送金機能も追加予定としている。

2018年度第2四半期決算資料から

楽天Pay(アプリ)
・ポイント付与:通常0.5%(200円につき1ポイントの楽天スーパーポイント)
・個人間送金:対応予定

d払い

NTTドコモによるQRコード/バーコード決済が「d払い」。オンライン決済にも対応し、ネットショッピングや実店舗の支払いを月々のケータイ料金と合算して支払える。クレジットカードも選択可能で、ドコモ加入者でなくても利用できる。

利用額200円ごとにdポイントが1ポイント付与。d払い限定のポイントアップやキャッシュバックキャンペーンなども多数用意されている。また、ドコモによるクレジットカード「dカード」の利用で、ポイント還元率がアップする。

d払い
・ポイント付与:0.5%(dポイント:200円につき1ポイント)
・個人間送金:なし

QRコード決済「d払い」スタート(ケータイWatch)

au Pay(2019年4月開始)

KDDIが2019年4月より提供予定の決済サービス。auユーザー向けでのQR/バーコード決済として展開するが、楽天と協力。楽天Payの120万加盟店でau Payも利用可能となる見込み。

・ポイント付与:未定
・個人間送金:未定

au Payとは(ケータイWatch)
KDDIと楽天が提携。au Pay 2019年4月開始

Origami Pay

Origami Payアプリは、バーコード/QR決済に対応。ローソンなどコンビニやタクシー、インテリア雑貨店、ファストフードチェーンなどで導入されており、吉野家も対応。クーポンを使った割引も充実している。

加盟店は10万店舗(2018年末)。また、福岡市や自治体と協力した実証実験の展開や、加盟店ネットワークや決済方法をオープン化した「提携Pay」などの独自の展開も見せている

Origami Pay
・ポイント付与:なし。店舗によって割引あり
・個人間送金:なし

QRコード決済の先駆者「Origami Pay」が目指す世界(ケータイWatch)

Amazon Pay

Amazon.co.jpのアカウントと連携する決済サービス。Amazonのアカウントに登録した配送先やクレジットカード情報を利用して、Amazon以外のECサイトなどでの支払いにも利用できる。

当初はオンライン決済のみだったが、'18年8月からは店舗でのQRコード決済に対応した。

Amazon Pay
・ポイント付与:なし
・個人間送金:なし

QRコード決済「Amazon Pay」、実店舗で利用可能に(ケータイWatch)

メルペイ

フリマアプリのメルカリの100%子会社で、金融関連の新規事業を行なう会社が「メルペイ」。「新たな決済手段に加え、メルカリで培った技術力と顧客・情報基盤をもとに、金融サービスを提供していく」としているが、サービスの詳細はまだ明かされていない。

ただし、'18年7月には加盟店の拡大を目的とした子会社「メルペイコネクト」を設立するなど、サービス開始に向けた準備は着々と進められているようだ。

メルペイ
・ポイント付与:未定
・個人間送金:未定

コンビニ系のスマホ決済

ローソンスマホペイ

ローソン店舗におけるセルフレジ決済サービス。上記の決済サービスとは異なり、利用者自身が商品バーコードをスマホのカメラで読み取り、「店内のどこでも決済できる」という点が特徴。1月現在、都心近郊の11店舗で実証実験が行なわれている。

決済サービスというよりは、レジでの待ち行列を無くす、セルフレジアプリのような位置づけのアプリ。そのため、Apple Pay、クレジットカード、LINE Pay、楽天ペイなどの支払い手段が用意されている。

退店時にスマホに表示されたQRコードを店頭の専用読み取り機にかざすことで、決済済みであることを確認。電子レシートを表示する。

ローソンスマホペイ

ローソンのセルフ決済に「LINE Pay」追加。楽天も強化

セブンペイ

セブンイレブンをはじめとした、セブン&アイグループによるスマホ決済サービスで、2019年サービス開始予定。

セブンペイ

顔パスで入店・決済できるセブンイレブン

ファミペイ

ファミリーマートが、2019年7月を目処に導入予定のスマホ決済サービス。ファミペイアプリは、バーコード決済に対応したスマホ用電子マネーとして、全国のファミリーマート店舗で対応する。

買い物額に応じたキャッシュバックも予定。すでに、d払いやLINE Pay、PayPayなどを導入しているファミリーマートだが、ファミペイのビッグデータを活用した新規事業創出などを目指す。また、ドン・キホーテ(ユニー)でのファミペイ導入についても協議していくとしている。

【ファミペイ】
・ポイント付与:なし(買い物額に応じてキャッシュバック予定)
・個人間送金:未定

ファミリーマート、独自のスマホ決済「ファミペイ」、7月導入

銀行系のスマホ決済

IT系や流通系だけでなく、銀行のスマホ決済参入も注目され、2019年は大きな動きが予想される。

銀行Pay

銀行の強みを活かした銀行口座連動型の決済手段として、GMOペイメントゲートウェイ(GMO-PG)が提供するのが「銀行Pay」。GMO-PGがサービス提供者ではなく、横浜銀行、福岡銀行や、りそな銀行などにシステムをOEM提供し、各銀行がサービス主体となり、自行の利用者に提供する。

利用者は銀行口座を登録。支払先のお店で、暗証番号入力もしくはQRコードを読み取るだけで決済が完了する。銀行口座に加え、Alipay決済にも対応。また、クレジットカード決済にも対応予定としている。

銀行Payの仕組みは、ゆうちょ銀行でも導入。「ゆうちょPay」が2月にスタート予定となっている。

銀行Pay

また、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGのメガバンク3行が、2019年度に「BankPay」(バンクペイ:仮称)の実用化を目指すとも報道されている。'19年は銀行のスマホ決済参入により、プレーヤーの変化が出てくる可能性も大いにありそうだ。

個人間送金アプリ

また、個人間の送金に軸を置きながらも店舗での決済に対応したアプリも複数存在する。

「pring(プリン)」は、「お金のコミュニケーションアプリ」を標榜し、個人間の送金をアピールしているが、店舗での利用も可能。店舗側の決済手数料が低い(0.95%)ことも特徴としている。

pring
・ポイント付与:なし
・個人間送金:対応

pring、QRコード決済加盟店の募集を開始(INTERNET)

同様に個人間送金を中心としたウォレットアプリが「Kyash」。

こちらは、QR決済には対応しないが、アプリ利用者同士で簡単に手数料なしに送金できる点が特徴。'18年6月からは「Kyash Visa カード(リアルカード)」を発行し、実店舗を含む全国のVisa加盟店での決済に対応。さらに、10月にはGoogle Payに対応し、対応のAndroidスマートフォンであれば、QUICPay対応店舗でスマホ決済が利用可能となるなど、店舗での利用も拡大している。

また、2%という還元率(1月10日時点)も特徴となっている。

Kyash
・ポイント付与:2%
・個人間送金:対応

手数料無料で個人間送金、高いポイント還元も魅力な「Kyash」

QR決済はキャッシュレス社会の起爆剤となるか

様々な業種からの参入が相次ぐQR決済だが、ネットサービスや銀行、キャリアなどの各社から見ればユーザーとの接点として決済を抑えたいという狙いがある。また、マーケティングのための購買・行動データ取得を狙う事業者も多い。

導入店舗においても、特に小規模事業者は、クレジットカードより安価な決済手数料や、初期投資の少なさなどはメリットといえる。

一方、ユーザー側は、決済方法を指示してアプリを立ち上げ、スキャンするなど、タッチするだけの電子マネー等に比べて、操作が増えるという指摘もある。メリットとしては、キャンペーンによるポイント還元などはその一つといえるが、サービスの乱立もあり、QR決済がだれにとってもわかりやすい、使いやすいサービスになるには時間がかかりそうだ。

とはいえ、キャッシュレス推進協議会において、コード共通化への取り組みなども進んでおり、また、消費増税にあわせたポイント還元施策など、キャッシュレス化を後押しする環境ができあがりつつある。

各QR決済事業者も「ライバルは現金」と口を揃える。

政府を挙げて取り組む中、今後さらにキャッシュレス化が加速していくと見込まれる。自分の生活スタイルにあった手法を選んでほしい。