文具知新

第6回

メモはコピー用紙派! という人におすすめ「PAPERJACKET flex」

パソコンにスマホ、とデジタルツールが仕事の中心になっても、まだまだ紙がゼロにはなりません。私自身も、頭の中にあるアイデアをどんどん書き出したり、じっくり思考を整理したりする時には、やはり紙に手で書く方が良いと感じています。

ただ、どんな“形”の紙を使うのか? という点においては少し変化の兆しがあるようです。従来であれば、糊や糸、リングで綴じられた“ノート”を使う方がほとんどだったと思います。それが最近では、コピー用紙のような、綴じられておらず1枚ずつバラバラに使える紙、いわゆる“バラ紙”をノート代わりに使う人がじわじわと増えているんだとか。実は、かくいう私もその一人です。

紙がバラバラであることのメリットとは?

ノートは情報を1冊にまとめて蓄積できるのが特徴ですが、バラ紙のように「まとまっていない」ことがメリットになる場合もあります。

例えば、同時進行的に複数の案件やプロジェクトを抱えていて、それぞれに手書きのメモが必要なとき。1冊のノートに複数案件のメモを時系列に書くと、「この案件についてはどこに書いたっけ?」と都度探すことになります。かといって、ノートを案件ごとに分けるほど書くことがあるわけではないし、分けたとしても何冊も持ち歩くのは大変……。そのような場合に、バラ紙なら必要な時に必要なだけ書いて、案件ごとに他の紙資料などと合わせてファイリングすることができるので便利です。

綴じられていない紙は、電子化しやすいのもメリットです。バラ紙であればフィーダーのついたスキャナーで連続して取り込むことができますので、「書くときは紙が良いけど保管はデジタルで」という人とも相性ピッタリ。フラットベッドのスキャナーや、スマホのカメラなどを使って取り込む場合であっても、ノートと違って綴じ部分の膨らみや段差がないためキレイにデジタル化できます。

バラ紙ならではのメリット

また、好きなフォーマットを自由に組み合わせられることも大きな魅力です。文章を書くときは横罫や方眼罫で、スケッチなどを描くときは無地で、と異なる罫線の紙を気軽に使い分けられます。自分専用のフォーマットをパソコンで作成して印刷する、といった使い方ができるのもバラ紙ならではです。

バラ紙ユーザーのかゆいところに手が届く「PAPERJACKET flex」

そんなわけで、コピー用紙などをノート代わりにする機会が増えているのですが、その際に紙をまとめて持ち運びつつ、書き込みもしたいという時にちょうどいいファイルやカバーがないのが悩みでした。

リングファイルなどは毎回パンチで穴を開けるのが面倒ですし、綴じた状態だとリングが手に当たって書きにくいのが難点です。クリップボードの場合、書き心地は良いのですが、綴じ具がかさばるため持ち運びや保管の際にやや気になります。また、表紙がやわらかいファイルは、持ち運んだり見返したりするには良いものの、書き心地という点では表紙が浮いてしまって違和感があるなど、それぞれに一長一短あるという状況だったのです。

「ノート代わり」の観点から見るとそれぞれ一長一短

そんな中でも、バラ紙をノート代わりにするという使い方に一番マッチしているな、と感じているのが今回紹介するバタフライボードの「PAPERJACKET flex」(A4サイズ:4,400円、A5サイズ:3,850円)です。

フラットでミニマルなデザインがバラ紙の良さを引き立てる

まず特筆すべきは、全体的にフラットなデザインです。大きなでっぱりなどがないので、パソコンなどの仕事道具と重ねて持ち運んだり、ブックスタンドや棚に立てて保管したりするシーンでもすっきりスマートです。

全体的にフラットでミニマルな外観

書くときは表紙部分を完全に折り返せるので、紙の大きさより一回り大きいくらいのスペースでおさまります。しっかりとした硬さがあり、筆記面も完全に平らになるため、書き心地も大変良好です。

書く時もフラットかつ省スペース

ヒミツは強力マグネットとヒンジ構造

これを実現しているのが、強力マグネットとヒンジを組み合わせたクリップ部分の構造です。通常、紙おさえに磁石を使用する場合、磁力が強くなればなるほど引きはがすのにも大きな力が必要になります。PAPERJACKET flexは、綴じ部分の後ろ側にヒンジを設けることで、てこの原理を応用しています。これにより、クリップを軽く後ろ側に向かって押すだけで、マグネットを浮かせることが可能になっているのです。

てこの原理の応用により軽い力でクリップ部分が開く

この構造のおかげで、コピー用紙であれば30枚まで綴じられるという紙おさえの強力さがありながら、軽い力で簡単に用紙の抜き差しができるという相反する要素が無理なく両立しています。

カバー部分にもワザあり!

さらによくできているな〜と思うのが、閉じたときの表紙にあたるカバーの部分です。こちらもめくる側の端にヒンジがついています。この構造おかげで端を持ち上げてカバーを開きやすいというだけでなく、厚みの変化への柔軟性が加わっているというのがポイント。つまり、中の用紙が多くても少なくても、カバーが浮かずにピタッ閉じるのです。

カバー部分のヒンジにより厚みの変化にも柔軟に対応

そのため、A5サイズのPAPERJACKET flexにA4の紙を二つ折りにして挟む、といった使い方も可能になっています(A4サイズなら、A3の紙を二つ折りにして挟めます)。紙に折り目がついてしまうことは避けられませんが、大きな紙をなるべくコンパクトに持ち運びたいという方には嬉しい機能といえるでしょう。

A5サイズにはA4用紙を2つ折りで挟むことができる
カバーもぴたっと閉じる

さらに、ある程度の厚みにまで対応していますので、ペン1本程度であれば紙と一緒に挟み込んでおくこともできます。あまり太いペンだと安定しませんが、とりあえず黒ペン1本あればOK!な方であれば紙と筆記具をミニマルにまとめられます。

ペン1本を紙と一緒に挟み込むことも可能
ちょっとやそっとでは落ちないくらい安定します

好きな紙を入れてカスタマイズできる

PAPERJACKET flexは使うときのタテヨコ、左右の向きを問いませんので、サイズさえ合えば好きな罫線の用紙を自由に入れられるのも気に入っている点です。

無地のコピー用紙でも良いですし、レポートパッドのページを切り離したものや、ルーズリーフも使えます。もちろん、プリントアウトした資料も筆記用紙と一緒に挟めますし、その組み合わせや順番も自由自在です。

使い方も用紙も自由自在!

書き終わった用紙の保管には別のアイテムで

硬さがあるおかげで机がないところで立って書いたり、膝の上にのせて書いたりもできるとあって何かと出番が多く、サイズ違いでそろえるほど個人的にも愛用しています。

ただ難点を挙げるとすれば、価格が4,000円前後と決して安くはないことと、一般的な文具店では手に入りにくいことでしょうか。また、書いたものをまとまった量で保管する用途にも向きません。書き終わった用紙は別のファイル類に移すか、あるいはスキャンしてデジタル化するか、いずれにしろ保管方法は別に考える必要があります。

とはいえ、筆記用のバラ紙をはさんで持ち運ぶ、そしてそのまま書く、という用途において、私にとってはなかなか代わりになるものがないほど気に入っているツールです。最近はコピー用紙がノート代わりなんだよね、という方であれば、試してみる価値はあるのではないでしょうか。

ヨシムラマリ

ライター/イラストレーター。神奈川県横浜市出身。文房具マニア。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。元大手文具メーカー社員。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。