中小店舗のキャッシュレス対応
やはりタッチ決済は便利で早い! AirペイでカードのNFC決済をさっそく導入
2020年9月30日 08:30
リクルートは、キャッシュレス決済代行サービス「Airペイ」において今秋からクレジットカードのNFCタッチ決済に対応すると発表していましたが、このたび9月28日よりNFCタッチ決済対応が開始となりました。筆者の家族が経営する店、「紀の善」でもさっそくNFCタッチ決済の利用を開始しましたので、今回はその様子について紹介します。
決済端末とAirペイアプリをアップデート
AirペイでのクレジットカードのNFCタッチ決済対応は、この連載でも過去に取り上げているように、既存の環境をベースに利用できるようになります。具体的には、Airペイで利用している決済端末のファームウェアアップデートと、iPad側で利用するAirペイアプリのアップデートが必要となります。
決済端末のファームウェアアップデートは、事前準備として8月18日から先行して行なわれていました。紀の善でも、こちらは8月中に実施しておきました。決済端末のファームウェアアップデートには数分かかりましたが、時間がかかること以外には面倒なことはありませんでした。
続いてAirペイアプリのアップデートです。こちらは、Airペイを利用しているiPadからApp Store経由でアップデートします。実際に9月28日にApp Storeでアップデートを確認すると、NFCタッチ決済対応の最新版Airペイが見つかり、アップデートを行ないました。
以上でNFCタッチ決済への対応は完了です。アップデートに関しては面倒なことは何もなく、ちょっと拍子抜けするぐらいでした。この他に、クレジットカードのタッチ決済対応がわかるように、店で掲示するアクセプタンスマークを手直ししました。
ところで、通常新たな決済ブランドに対応する場合には、ブランドごとの審査が必要となります。しかしNFCタッチ決済への対応についてはクレジットカード決済の延長線上ですから、追加の審査は不要です。すでに利用可能となっているクレジットカードブランドがNFCタッチ決済に対応していれば、9月28日以降はNFCタッチ決済も即座に利用可能となる形です。
これについては、決済時のクレジットカード情報へのアクセス方法が異なるだけですから、当然でしょう。
このように、決済端末を変更したり、新たな審査を必要とせずにNFCタッチ決済が利用可能になるという点は、店舗側にとって余計な手間やコストがかからず大いに歓迎できる部分です。ちなみに紀の善では、従来よりVisa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、Discoverと6種類のクレジットカードに対応していますが、このうちNFCタッチ決済対応ブランドはVisa、Mastercard、JCB、American Expressの4種類ですので、9月28日以降はそれら4ブランドでNFCタッチ決済が利用可能になりました。
決済手順も従来までとほとんど変わらない
続いて、AirペイでのNFCタッチ決済の利用手順ですが、こちらも全く難しいことはありませんでした。
紀の善ではAirレジとAirペイを連携させていますので、まずはAirレジから商品を登録して、決済手段として「クレジットカード」を選択します。これまでと全く同じ手順ですが、AirペイのNFCタッチ決済対応は、決済端末がクレジットカード決済時にICと磁気ストライプ、NFCの全てを同時待受、いわゆる「3面待ち」となるために実現できています。仮にここで、決済手段としてNFCタッチ決済が独立していたとしたら、レジ対応の店員に余計な手間がかかってしまうことになりますから、3面待ちの実現はかなりありがたいと感じる部分です。
決済手順にクレジットカードを選択して決済に進むと、Airレジアプリがクレジットカード決済でAirペイアプリを呼び出します。その後、決済端末でクレジットカードを読み取って決済を行なうことになりますが、決済端末は3面待ちの状態となっていますので、NFCタッチ決済対応のクレジットカードであれば、決済端末にカードをタッチするだけで決済が完了することになります。
もちろん、NFCタッチ決済対応クレジットカードを登録しているiPhoneやAndroidスマートフォンも利用可能です。実際に手持ちのスマートフォンで試してみましたが、問題なく決済が行なえました。
加えて、NFCタッチ決済の場合には、決済金額が1万円以下の場合には、暗証番号やサインの入力が不要となります。これまでクレジットカード決済の場合に必要だったは暗証番号やサインの入力がなくなることで、店側はもちろんお客様にも手間がかかりませんし、何より決済にかかる時間も短縮できることになります。紀の善の場合、1万円を超える決済を行なうお客様は少ないため、クレジットカードを利用するほとんどのお客様にとって大きなメリットになるはずです。
このように、NFCタッチ決済に対応したからといって、レジ操作についてはこれまでと全くといっていいほど変わりませんし、ほとんどの場合、暗証番号やサインの入力が不要になることで手間も軽減されることになります。
ちなみに、決済金額が1万1円以上の場合には、NFCタッチ決済を利用する場合でもサインの入力が必要となります。これは、NFCタッチ決済での不正利用を防ぐための措置ですが、なぜここで暗証番号の入力ではなくサインにしているのかについては少々疑問です。できれば、サインではなく暗証番号にしてもらいたかったように思います。
やはりタッチ決済は便利で早い!
というわけで、紀の善でも9月29日より実際の営業でクレジットカードのNFCタッチ決済が利用可能となりました。レジ担当の店員には、クレジットカードにタッチ決済のマークが付いているものについては基本的にタッチで処理するようにお願いして営業を開始しています。そこで、短期間ではありますが、クレジットカード決済の状況がどう変化したか紹介しましょう。
まず、決済にかかる時間ですが、これは明らかに短くなっています。暗証番号を入力する場合とNFCタッチ決済とで実際の決済にかかった時間(お客様からカードを受け取って決済を行ないレシート印刷が完了するまで、それぞれ10回分の平均)を比較してみると、暗証番号入力時には約30秒かかったのに対してNFCタッチ決済時は約20秒と、10秒も対応時間が短くなりました。これは、交通系ICカードやiD、QUICPayなどの電子マネーとほぼ同等の短さです。
これまでクレジットカードは、決済にやや時間がかかるという印象でしたが、NFCタッチ決済ではその印象が大きく変わりました。そして、お客様が並んでいてレジ待ちが発生するような場面で大きく効いてくると思いますので、お客様をお待たせしないという意味でかなり有効と感じます。
また、対応時間が短くなるのに加えて、NFCタッチ決済では、ほとんどの場合、暗証番号やサインの入力が不要となりますので、お客様の手間が減るという点も大きな利点と感じます。そしてこれは、店員にとっても手間軽減につながります。
Airペイで利用されている決済端末が小型のワイヤレスタイプということもあって、紀の善では、クレジットカード決済の場合、レジ担当の店員がお客様からカードを受け取り、店員が決済端末を取り出してカードを読み取らせ、その後お客様に決済端末を渡して暗証番号を入力してもらう、またはiPadの画面にサインを入力してもらう、という手順で決済処理を行なってきました。しかしNFCタッチ決済対応クレジットカードであれば、カードを決済端末にタッチするだけでよくなりますので、カードを読み取らせたり決済端末をお客様に渡すといった作業が不要となりますから、かなりの手間軽減になるわけです。
実際に営業後にレジ担当の店員に話を聞いてみても、「手間がかからないし短時間で処理が終わるのでとても便利」という感想でした。当初の予想通りではありますが、やはりNFCタッチ決済対応はお客様はもちろん、店側にも大きなメリットがあると言えます。
NFCタッチ決済対応の周知が今後の課題か
お店での使われ方をチェックしてみましたが、クレジットカード決済の中でNFCタッチ決済を行なった割合は約16%でした。つまり、6回に1回がNFCタッチ決済だった計算です。対応初日はまだ店員が慣れていないため、NFCタッチ決済対応マークを見落としてICで決済を行った場合が存在する可能性もありますが、それほど大きな誤差はないものと考えます。
また、タッチ決済のブランドごとの割合ですが、Visaが86.8%、Mastercardが5.3%、American Expressが7.9%でした。残念ながらJCBの利用例はありませんでした。Visa以外の割合がかなり低い点は気になりますが、国内では、Visaが最も積極的にタッチ決済への対応を進めていますので、この結果も順当なものなのかもしれません。
現時点での、日本でのNFCタッチ決済対応クレジットカード普及率を示す明確なデータはありません。鈴木淳也氏のこちらの記事にあるように、Visaのタッチ決済対応カードはここ数年で発行枚数が大きく伸びていますし、三井住友カードのように全てのVisaブランドの発行カードにNFCを搭載するというように、積極的にNFCタッチ決済対応を進めてるクレジットカード発行会社も登場していますから、NFCタッチ決済対応カードの普及率は日に日に伸びているでしょう。
ただ、国内のクレジットカード発行枚数は2019年3月末時点で2億8千万枚超(日本クレジット協会発表の数字/PDF)ですし、多くのクレジットカードは有効期限が3~5年となっていますので、NFCタッチ決済に対応しないクレジットカードを持っている人がまだ多数派でしょう。ですので、6回に1回という回数も、まあそんなものだろう、という印象です。
とはいえ、現時点でNFCタッチ決済に対応しないカードも、有効期限切れによるカード切り替えによってNFCタッチ決済対応カードへと切り替わっていくでしょうから、今後数年で普及率はかなり高まるものと考えられます。ですので、店でのNFCタッチ決済の割合も今後はどんどん増えていくことになるでしょう。
また、これまでの間に、お客様から「クレジットカードのタッチで」と言われて決済を行なった回数はごくわずか(回数にしてまだ2回)しかありませんでした。そう言われた場合には、他の電子マネー同様にお客様に決済端末を差し出してタッチしてもらうことにしていますが、それ以外の場合は、NFCタッチ決済非対応カード同様にお客様からカードを受け取って、店員が決済端末にタッチして決済を行なっています。つまり、ほとんどのお客様が、自分がNFCタッチ決済対応のクレジットカードを持っているのに、それについて全く認識していない、ということになります。
そういったお客様の中には、タッチで決済が完了することにびっくりしたり、首をかしげる方がいらっしゃいました。そういったお客様には、クレジットカードにはタッチで決済できるものがあることを説明していますが、やはりまだまだ認知度が低いことを如実に示していると言えます。
コロナ渦では、他人との接触を極力避ける人が増えていますが、クレジットカードのNFCタッチ決済は、他の電子マネー同様に接触機会を減らせる有効な手段となります。そればかりか、これまでのクレジットカード決済よりも素早く、便利に決済が行なえますので、今後は利用例が増えていくと考えています。
しかし、その普及や利便性についての周知は全く進んでいないように思います。そのため、クレジットカード会社のみなさんには、NFCタッチ決済やそのメリットについて、もっと積極的に周知していただきたいと思います。