中小店舗のキャッシュレス対応
第12回
キャッシュレス還元事業は偉大だった。7月はキャッシュレス減少
2020年8月12日 08:45
2020年6月末をもって、'19年10月より実施されていたキャッシュレス・消費者還元事業が終了しました。その間、筆者の家族が経営する店「紀の善」でもキャッシュレス決済比率が大きく伸びていて、消費者のみなさんが制度を有効に活用していたように思います。そこで気になるのが、2020年7月以降の動向です。そこで今回は、キャッシュレス・消費者還元事業終了後のキャッシュレス動向を紹介したいと思います。
7月は6月に比べてキャッシュレス比率が大幅減
紀の善では今年に入ってキャッシュレス比率が順調に伸びていました。そして、前回紹介したように、2020年6月は売上に占めるキャッシュレス決済の比率が40.1%と40%を超えるまでになっていました。
この要因は、キャッシュレス・消費者還元事業による5%のポイント還元が行なわれたことと合わせて、コロナウイルスの感染拡大による影響で接触の少ないキャッシュレス決済を選択するお客様が増えたから、と考えられます。コロナ渦での外出自粛の中でキャッシュレス比率が伸びるということは、店舗側にとっては決済手数料の負担が大きくなり、つらいのは事実ですが、キャッシュレス比率が伸びること自体は悪いことではないと考えています。
そして、このキャッシュレス比率の伸びを牽引していたキャッシュレス・消費者還元事業が、2020年6月末で終了。7月からはポイント還元がなくなったことで、消費者のみなさんがキャッシュレス決済を行なうモチベーションが下がると考えられました。ただ、キャッシュレス決済の利便性を体験したことや、コロナウイルスの影響を考慮して接触を減らそうと考える人が多いことから、「キャッシュレス比率はそれほど下がらないはず」と想像していました。しかし現実は少々異なりました。
以下のグラフは、2019年7月からの店でのキャッシュレス比率の推移を示したものです。これを見るとわかるように、2019年10月のキャッシュレス・消費者還元事業開始後に一気に高まり、その後も順調に伸びてきたキャッシュレス比率ですが、2020年7月には前月比で2.8ポイントも減りました。
大きく落ち込んだとはいっても、37.3%という比率は国内のキャッシュレス比率と比べるとかなり高い水準です。しかし、ここまで大きく落ち込むとは思っていませんでしたので、この結果にはかなり驚きました。
おそらく、キャッシュレス・消費者還元事業の間はポイント還元を目的にキャッシュレス決済を利用していたものの、ポイント還元がないなら現金決済の方がいいと考える人が少なからず存在するのでしょう。もちろん、現金決済が悪いというわけではありませんが、個人的には、一度キャッシュレス決済の便利さを体験すると現金決済には戻れない人がほとんどだと思っていました。とはいえ、実際にはまだまだ現金主義の人が多いということなのでしょう。
クレジットカード決済の落ち込みが特に大きい
では、キャッシュレス決済の内訳を細かく見ていくことにしましょう。
下に示したグラフは、キャッシュレス決済の内訳です。これを見るとわかるように、7月はクレジットカードとPayPayの比率がやや大きく減っていることがわかります。他の決済手段については横ばいまたは微増となっています。
次に売上に対する現金とキャッシュレス決済ブランドごとの比率もチェックしてみました。以下に掲載しているグラフがその結果です。これを見ると一目瞭然ですが、2019年10月以降順調に減っていた現金決済が、7月は大きく跳ね上がっています。また、キャッシュレス決済の内訳同様に、クレジットカードとPayPayの低下が他のキャッシュレス決済ブランドよりも低下の割合が大きくなっています。このことから、クレジットカードとPayPayを使っていた人のうち一定数が現金決済に戻った、と考えられます。
PayPayについては、キャンペーンの有無で利用割合が大きく変化することが多いので、今回のデータだけで判断するのは難しいでしょう。それに対し、クレジットカードを使う人はポイント還元あるなしに関わらずほぼ日常的に使っていると思っていたので、クレジットカードの利用率が大きく減ったのは意外でした。
ただ、7月はあまり天気が良くなかったので、遠方からのお客様が少なかったこともキャッシュレス比率の低下に影響しているかもしれません。8月は梅雨明けで天気のいい日が続きそうですし、キャッシュレス・消費者還元事業終了のインパクトも薄れてくるはずですので、今後の推移もしっかりチェックしていきたいと思います。