中小店舗のキャッシュレス対応

第5回

ついにQRコード決済を導入。キャッシュレス比率は20%を超える

筆者の家族が経営する店「紀の善」では、AirレジとAirペイを利用してキャッシュレス決済の対応を進めてきました。その過程は前回まで紹介した通りですが、今回は最終段階となる、AirペイQRを利用したコード決済への対応について紹介したいと思います。

いつから導入するかは決めずに「AirペイQR」申し込み

今回のAirレジシステム導入の最終プロセスとなるのが、コード決済への対応です。連載2回目で紹介しているように、店のレジとしてAirレジの導入を決定した段階で、将来のコード決済への対応も想定して、Airレジへの申し込みとほぼ同時に、コード決済サービス「AirペイQR」の申し込みを行なっていました。

LINE Pay、d払い、PayPay、Alipay、WeChatPayに対応する「AirペイQR」。店では1月中旬にAirペイと同時に申し込みを行なった

AirペイQRでは、「LINE Pay」と、NTTドコモの「d払い」の国内2ブランドに加えて、中国アリババグループの「Alipay」と、中国テンセントの「WeChatPay」の中国2ブランドに対応しています。また、5月には、「PayPay」への対応も発表されましたが、この原稿を執筆している8月末時点では申し込みが開始されていないため、利用できる状況とはなっていません。

もともと、Airレジの導入は消費増税や軽減税率制度への対応とともに、Airペイによる各種キャッシュレス決済への対応を目的としていました。しかし、実はQRコード決済への対応は、どちらかというと消極的でした。

確かに、昨年末以降のPayPayの大型キャンペーン実施以降、コード決済への注目度は高まっています。しかし、コンビニや飲食店などでの利用状況を見る限り、コード決済の利用率はまだまだ低いのが現状です。Airペイが対応しているクレジットカードや電子マネーが利用できれば、ほぼお客様の需要をカバーできると想定していました。

それでもAirペイQRを申し込んだのは、対応できるキャッシュレス手段は最大限押さえておきたいと考えたからです。今はまだ利用率が低くても、今後大きく伸びる可能性もありますし、それから導入しようとなると時間がかかって対応が遅れてしまいます。また、AirペイQRは契約が完了して利用できるようになっても、毎月の利用料などは発生しません。使わなくてもコストが発生しないなら、いつ導入するかは後から決めるとして、とりあえず契約だけ終わらせておくことにしたわけです。

AirペイQRへの申し込みは、Airペイと同時に1月中旬に行ないました。その後、2週間ほど経過した2月上旬にはAlipayとWeChatPayの認証が下りました。しかし、LINE Payとd払いは1カ月を経過しても認証が下りません。最終的には、LINE Payが3月末、d払いは4月上旬と、2カ月以上も要してしまいました。どうやらその時期は、申し込みが殺到していて審査に時間がかかっていたようです。これだけ時間がかかるのなら、やはり先に申し込みして正解でした。

ちなみに、AirペイQR経由でのコード決済の加盟店手数料は、全ブランドとも3.24%となります。LINE Payでは、直接契約して店頭にQRコードを提示するか店舗用アプリを利用して決済すれば加盟店手数料が2021年7月31日まで0%となりますが、手数料よりもAirレジで一括して会計処理が行なえる利便性を優先した形です。

AirペイQRでは、全てのブランドで加盟店手数料が3.24%かかるが、Airレジでの一括処理を優先

6月下旬よりコード決済を導入すると、さっそく利用者が!

1月中旬にAirペイQRに申し込み、4月上旬にAirペイQRがサポートする4ブランドのコード決済が利用できるようになりましたが、当初の計画通り、店での対応はその時点では見送りました。

AirペイQRは、全ブランドの認証が下りてもすぐには導入しなかったが、将来の導入を見越して必要な機器を導入しておいた

3月末から5月のゴールデンウィーク開けぐらいまでは比較的お店が混雑するために、新しい決済方法を導入してレジ担当の従業員を混乱させたくなかったのと、まずはAirペイを利用したキャッシュレス決済への習熟度向上を優先させたかったためです。その間、過去の連載で紹介したように、Airペイの決済端末に関するトラブルや、iOSアップデートを起因とするレシートプリンターのトラブルが発生して混乱したことも、コード決済導入を遅らせる要因となりました。

ただ、比較的店が混雑しない6月に入ると、これらトラブルもほぼ解消するとともに、従業員のAirペイを利用したキャッシュレス決済への習熟度も高まりました。そのため、「そろそろ導入してもいいか」と考え、最終的に6月下旬から対応を開始することにしました。

ただ、導入するとはいっても、店ではコード決済への対応を大々的にアピールしませんでした。やったことと言えば、店頭に対応するブランドのアクセプタンスマークを提示しただけです。まずは緩やかにスタートさせたかったので、そのマークを見つけた人だけ使ってもらおうと考えたわけです。また、最も多くのユーザーに利用されているPayPayに対応していないこともあって、使う人はほとんどいないであろうという考えもありました。

6月下旬にAirペイQRの導入を決断し、対応するコード決済のアクセプタンスマークを張り出した

しかし、実際にアクセプタンスマークを提示したところ、その直後にいきなり利用するお客様が現れました。時間は閉店間際だったのですが、早々にLINE Payを利用するお客様が現れてびっくりしました。そして、その後も当初の予想を覆して、連日利用するお客様がいらっしゃいました。これは想定外でしたが、思っていた以上に利用するお客様が多いということは、それだけ認知度が高まっているということなのでしょう。

レジ前のアクセプタンスマークカードにもコード決済のマークを追加。すると、設置直後に利用客が現れた

それに対して、AlipayやWeChatPayの利用者は、想定ほど多くありませんでした。当初の予想では、コード決済を利用する大半がAlipayかWeChatPayになると考えていました。もちろん、利用するお客様はいらっしゃいますが、それでも中国人のお客様は現在でも現金払いの方が圧倒的に多い印象です。

コード決済の使い勝手は良好も改善を希望する部分もあり

AirペイQRでのコード決済の方式は、お客様が自身のスマートフォンに表示したコードを店舗側が読み取る、いわゆるCPM方式となっています。店舗側でのコードの読み取りは、Airレジで利用しているiPadに備わっているカメラを利用するか、AirペイQRが対応するバーコードリーダーを利用します。店では、コード読み取り時の利便性を考えて、バーコードリーダーを選択しています。

利便性を考慮して、コード決済用にバーコードリーダーを用意。客のスマートフォンに表示されるバーコードをバーコードリーダーで読み取って決済

ところで、利用しているバーコードリーダーは、バーコードを読み取るときにバーコードから10cmほど離れた距離から読み取るようになっています。ただ、コンビニエンスストアやスーパーなどのレジで利用されているバーコードリーダーは、バーコードに接触するように近づけて読み取ります。

そういった違いからか、導入直後はレジ担当の従業員がバーコードの読み取りにやや手間取る場面も見られました。しかし、バーコードから離れた場所から読み取るという仕様にもすぐに慣れたようで、短期間でスムーズにバーコードを読み取って決済できるようになりました。

ただ、たまにバーコードリーダーのBluetooth接続が切れたままなかなか復活しないといったトラブルがあるようです。その影響で、数回コード決済をお断りしなければならないことがありました。やはり、Bluetooth接続では接続トラブルが発生しやすいのでしょう。利用しているレシートプリンターには、オプションで有線のバーコードリーダーを接続して利用できるのですが、残念ながらAirペイQRはそのバーコードリーダーに対応していません。できれば、今後の機能改善でレシートプリンターに接続して利用するバーコードリーダーに対応してもらいたいと思います。

また、もう1点気になる部分があります。それは、Airレジとの連携に関する部分です。AirペイQRは、Airペイ同様にAirレジと連携して利用できるようになっています。具体的には、Airレジで商品を選択し、決済方法から「QR決済(AirペイQR)」を選択すると、自動的にAirペイQRアプリへと遷移します。その後、コード決済のブランドを選択してお客様のバーコードを読み取ると決済が行なわれるという流れです。

ただ、AirペイQRアプリに遷移した後に、コード決済のブランドを改めて選択するのが面倒という声が従業員から聞こえてきました。コード決済に利用するコードにはブランドを特定する情報が含まれていますので、ブランドを指定せずにコードを読み取ったとしても、そのコードがどのブランドのものか自動判別し、決済することも不可能ではないはずです。

実際に、その機能を実現しているサービスも存在しますので、AirペイQRでもぜひ実現してもらいたいと思います。

AirペイQRアプリに遷移したら、決済するブランドを選択
この画面になったら、バーコードリーダーでバーコードを読み取る

合わせて、コード決済での決済が終了しても自動的にAirレジに戻らず、画面右下に表示される「Airレジに会計金額を連携する」ボタンを押さなければAirレジに戻らない点も気になる部分です。Airペイでは、クレジットカードや電子マネーでの決済が完了して控えが印刷されると、自動的にAirレジに戻るのですが、なぜAirペイQRでは決済が完了して控えが印刷された後に、確認ボタンを押さないとAirレジに戻らないのか疑問です。わずかな操作とはいえ、このひと手間が面倒に感じるのは事実ですし、この点の改善もお願いしたいと思います。

ただ、右下の「Airレジに会計金額を連携する」ボタンを押さない限り、Airレジに戻らない

キャッシュレス決済の割合は毎月少しずつ増え、8月は20%超えに

店でキャッシュレス決済を開始したのが2月ですので、8月いっぱいでちょうど6カ月が経過したことになります。そこで、その間のキャッシュレス決済の推移を簡単にチェックしたいと思います。

まず、売上に対するキャッシュレス決済の割合をまとめたのが下の表になります。これを見るとわかるように、開始当初こそ2月は14.9%でしたが、毎月のようにキャッシュレス決済の比率が伸びています。もともと店は長年現金決済のみで運営していましたので、キャッシュレス決済対応後も、現金しか使えないと思っているお客様が多かったと思いますが、時間が経つにつれて使えるようになったことが伝わって、利用率が高まっていったのでしょう。

そして8月にはついに20%を超えました。8月は夏休みで、国内や海外の観光客が多く訪れたことが、キャッシュレス比率の高まりを後押ししたものと考えています。とはいえ、キャッシュレス比率が20%前後というのは、国内での平均的なキャッシュレス比率とほぼ同等ですし、20%越えは比較的早く実現すると考えていましたので、ここまでは十分想定内と言えるでしょう。

売上に対するキャッシュレス決済の比率

では、キャッシュレス決済手段ごとの割合はどうでしょうか。実際の動きを見ると、クレジットカードを利用する人が圧倒的に多く、その次が交通系電子マネーで、その他はほぼ同じぐらいの比率といった印象でしたが、数字を見てもほぼその通りとなっていました。

まず、コード決済を開始する6月以前を見てみると、クレジットカードはキャッシュレス決済のうち75%前後を占めています。その次が交通系電子マネーで、15~18%ほどとなっています。店は東京にありますので、SuicaやPASMOでの決済がそのほとんどを占めています。それ以外の手段はぐっと比率が下がって、iDが5%前後、QUICPayが4%弱でした。

コード決済を開始した6月以降も、全体的な傾向にはそれほど大きな変化は見られません。やはり圧倒的に多いのはクレジットカードですが、6月以前と比べて減少傾向が見られます。それに対して、交通系電子マネー、iD、QUICPayはほぼ横ばいです。そして、大きく伸びたのがコード決済です。コード決済は6月は稼働日が10日ほどと短かったので1.7%とかなり低かったですが、7月は5.5%、8月は4.6%と大きく伸びました。

ところで、このグラフを見るとわかるかも知れませんが、クレジットカードの落ち込みとコード決済の伸びは率がほぼ同等となっています。このことから、クレジットカードを使っていたお客様の一部がコード決済に流れたものと考えられます。

この結果を見ると、コード決済は結構多いという印象を受けるかもしれません。ただ、売上全体から見ると1%ほどで、やはりコード決済はまだまだという印象が強いです。とはいえ、今後は増えていく傾向にあるでしょうから、動向には継続して注視していこうと思います。

キャッシュレス決済手段ごとの比率

キャッシュレス決済への対応は完了。次は消費増税や軽減税率への対応

今回紹介したように、6月下旬にAirペイQRを利用したコード決済に対応したことで、店でのキャッシュレス決済対応は一応完了となりました。あとは、10月1日より開始となる消費増税と軽減税率への対応を行なうことになります。

また、同じく10月1日より実施される、キャッシュレス・ポイント還元事業への申し込みですが、それについては5月中旬にAirペイを通して申し込み済みとなっています。8月末時点では、まだ登録申請の可否についての連絡はありませんが、9月以降に順次連絡があるとのことで、おそらく10月1日の開始時点から対応できることになると思います。

次回は、これら消費増税や軽減税率の対応や、キャッシュレス・ポイント還元事業への対応などについて紹介できればと思います。

平澤 寿康