鈴木淳也のPay Attention
第36回
2020年はクレカでタッチが当たり前になる?
2020年3月6日 08:15
セブン‐イレブン・ジャパンが2月18日、今年6月以降に全国2万以上のセブン-イレブン店舗でVisa、Mastercard、JCB、アメックス、ダイナースクラブの5社のクレジットカードなどでの非接触決済(NFC Pay)対応と発表した。この動きは、今後日本国内で加速する可能性が高い。
現状ではファーストフードはマクドナルド、コンビニはローソン、レストラン系ではすき家をはじめとするゼンショーグループ各店舗、家具販売のIKEAといったチェーン店のみで見られるNFC Payだが、今後は今回のセブンを皮切りに一気に導入へと傾くことになる。
背後にVisaの動き
筆者の情報源によれば、今回の動きの背景には東京五輪の公式スポンサーでもあるVisaの意向があるという。同社は過去のロンドン五輪をはじめ、一昨年に韓国の平昌で開催された冬季五輪を通じてVisaのタッチ決済を広くアピールしてきた。
一方で、多くが知るように日本の現状はタッチ決済対応以前の状況で、2020年3月末の「IC対応」デッドラインに各社が間に合わせるのがやっとというのが現状だ。
いわゆるNFC PayはIC対応の延長線上にあるため、対応ステップとしては2段階目となりどうしても後手にまわる。そのため、現状を放置していては東京五輪のタイミングでタッチ決済をアピールするタイミングを逸してしまうため、“半強制”といわれるイシュアへの新規発行クレジットカード/デビットカードのタッチ決済対応に加え、加盟店側への呼びかけを強化しているという流れだ。
その第1弾として選ばれたのがセブン‐イレブンだ。コンビニチェーンとしては日本最大の店舗数を構え、知名度も大きい。ここがタッチ決済対応を打ち出すことで、周囲への波及効果を狙った形だ。
導入にあたっては日本でVisaカード発行の中心となった三井住友カードなどが動いており、手数料優遇などの条件とのバーターでセブン‐イレブン側のタッチ決済導入で合意したという。同様に「波及効果の大きい大手」(関係者)を対象に複数の加盟店に営業をかけているということで、早ければ東京五輪前のタイミングで滑り込みで発表を行なうところが出てくるだろう。
実際、Visaをバックにしたイシュア側のプロモーションが活発化しており、陰になり日向になり、さまざまな形でタッチ決済のメリットをアピールする活動が続いているという。
タッチ決済普及の分岐点
日本郵便のように数年先を見据えて「対応できる決済手段はすべて揃えたい」ということでNFC Payに当初から対応するところもあれば、前述のように磁気カードからIC対応に切り替えるだけで手一杯というところまでさまざまだ。
ひとつ言えるのは、過去1-2年ほどのタイミングでPOSや決済端末の切り替えタイミングがやってきたところは、比較的前向きにNFC Pay対応を検討しているという点だ。日本の場合は1万円程度の買い物であればPIN入力もない点で手軽さがあり、順次対応を表明しているイオングループと合わせ、使える場面は増えてくるだろう。
一方で、中小の選択肢は少ない。日本向けサービスでは「Square」が新型リーダーでNFC Payに対応する以外は、いまだIC対応止まりになっている。例えばリクルートの「Airペイ」なども現状では磁気カードまたはICカードのみの対応で、本稿執筆時点でNFC Pay対応の意思を示していない。
大手チェーンが続々と対応することでNFC Payによるタッチ決済が身近になりつつあるように、個人商店でも利用できるようになると非常にありがたいものだ。
北欧での事例をいろいろと見てきて、小規模店舗においてクレカ利用推進の柱になっていたのはiZettleというスマートフォンやタブレット連動型の小型で安価な決済端末だ。これでタッチ決済も可能なので、スタンドでの食べ物の受け渡しにカードを挿してPIN入力のような手順は手間になるだけといえる。
こうした100ユーロ程度で導入できるクレカ決済の仕組みは、日本ではAirペイや楽天ペイ(実店舗決済)、Coineyなどが、決済端末を無償提供することで成り立っているが、これら事業者のNFC Pay対応が日本国内におけるタッチ決済普及ののろしとなるだろう。