西田宗千佳のイマトミライ
第79回
ノートPC 2020秋、Windows機の進化にも注目
2020年11月30日 08:15
ここ最近のPC(Mac)に関する話題といえば、アップルのM1プロセッサー採用Macに集中している。だが、この秋にはWindowsの新製品も多数発表ずみだ。先週も、ASUSが複数のノートPCを発表している。
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今回は、この年末に向けたWindowsノートPCの状況をまとめてみよう。
AMDとインテルの競争加速。第11世代を軸にノートPCのモダン化が進む
PCの新製品発表時期は、時期と技術の両方に依存する。その昔はプロセッサーの発表時期に合わせて一斉に各社のPCが発表されたものだが、今はそれよりも、PCに注目が集まりやすい商戦期などに合わせる場合が多くなっている。
今年の場合、ポイントになるのはやはり、インテルとAMDの競争の影響が大きいことだ。
ゲーミングPCやマス向けのPCの場合、インテルではなくAMDのプロセッサーを採用する製品が増えている。パフォーマンス向上などにより魅力が増した、というのがもっとも大きいのだが、PCの販売量が増えていくのに合わせ、プロセッサー調達上のリスクヘッジとしてAMDも選ぶ、という部分があるのは間違いない。
過去にはインテルブランドが圧倒的に強く、「インテルでない」というだけで売れ行きに影響することもあったが、今はそんなことはない。むしろハイエンド製品では、コストパフォーマンスの面からAMDを指名買いする例も増えている。
インテルももちろん、対抗策を考えている。特に彼らが重視しているのが、CPU性能だけでなく「システム全体としてモダンなPC」のアピールだ。特に、最新の第11世代Coreシリーズを使った「Evoプラットフォーム」の存在が大きい。広告展開なども広く行なっているので、名前を目にする機会も増えているのではないだろうか。
Evoプラットフォームは第11世代Coreシリーズを使い、高速起動・高速充電・長時間駆動など、スマホやタブレットに慣れた人々にも受け入れやすい、今求められる要素をもった薄型ノートPCを作ることが目的である。
また、第11世代CoreではGPUが「Intel Iris Xe」になって大幅に強化されている。ゲームニーズの高まりに対処するためだ。主流のゲーミングPCほどではないが、ローエンドなディスクリート型GPUになら負けない性能になっている。
そんなこともあり、Evo準拠のPCは主要なメーカーから続々と登場している。低価格な製品だと第11世代にこだわったものは少ない印象もあるが、Core i7を使うような高付加価値型の製品の場合、第11世代を使ったEvoプラットフォーム製品が多くなっている。そうしたものの場合、明確に昨年までの第10世代を使った製品よりも性能向上が行なわれている。
残念なのは、それよりもさらに高い性能向上と省電力性能を実現した「M1搭載Mac」が同時期に出てしまい、少々影が薄くなってしまったことだろうか。
Apple M1の実力を最新世代のIntel/AMD CPUと比較
特にWindowsに関しては、2021年のアップデートが今年のものよりも大規模なものになると予想されており、二つ折りなどの変わり種は、そちらの時期に合わせて延期されているものもある。
典型的なクラムシェル型PCの場合、今秋の「Evo」に合わせて選ぶのは悪くない選択だと思うが、2021年の動きをみてから考えてもいいかもしれない……というのが個人的な予測である。
ノイズキャンセルの波がPCにも
とはいうものの、Evoプラットフォーム採用PCの中には、色々と興味深い動きがある。
筆者が注目しているのは、これまであまり着目されてこなかった「マイク」の改善をアピールする製品が増えていることだ。
コロナ禍でビデオ会議が増えた結果、PCでのマイク性能が非常に重要になったからだ。ここに従来から着目していた企業は意外と少ない。富士通クライアントコンピューティング(FCCL)やマイクロソフトくらいだろうか。
音にこだわったパソコンでテレワークを支援。ニューノーマルへのFCCLの取り組み
冒頭で紹介したASUSのPCにも、マイクにこだわった製品がある。
「ZenBook S」はAIを活用したノイズキャンセル機能を搭載している。特徴的なノイズをAIが学習、声以外の部分をキャンセルして聞きやすくするアプリケーションはすでにいくつもあるが、それらを導入しなくても、最初からPC側にノイズキャンセル機能が搭載されているわけだ。
マイクの品質向上は重要だが、それだけでなく、ノイズキャンセルのような「今のテクノロジーを使うと快適になる」機能を搭載していくことは、演算能力に余裕があり、ソフト面での柔軟性もあるPCというプラットフォームに向いたものであり、重要なことと言えるだろう。