小寺信良のくらしDX

第5回

「スマートロック」でセキュリティレベルが上がった話

およそ1カ月、SESANE5を運用

ドアの外からワイヤレスでサムターンを回すという「スマートロック」がIoTの寵児として登場してから、およそ8年が経過した。当初は家庭用と言われていたが、鍵のシェアや無効化が簡単なことから、会社や事務所でも多く利用されている。確かに社員が増えるたびに合鍵を作っていたら大変だし、退職するときに回収したとしても合鍵を作られている可能性は否定できない。それなら物理鍵を渡さず、スマートロックのキーだけを渡すという方が理に適っている。

とはいえフリーランスの筆者はほとんど自宅で仕事しているので、大抵は家に居る。そうなると何が起こるかと言えば、どうせ家にとうちゃんがいると信じ切って、家族が誰も鍵を持って出ないという現象が起こるわけである。

とはいえ筆者とて絶対に外出しないというわけでもなく、撮影で海に行ったり山に行ったりしていると、2〜3時間は帰ってこない。そんなときに子供が学校から帰ってくると鍵がないので、誰かが帰ってくるまで1時間も2時間家の前でぼんやり待っているという事態になっていた。特に中学校までは学校にスマートフォンを持って行けないので、誰かに連絡のしようもないのである。

そんな子供たちも高校生になり、スマートフォンは持ち歩くようになった。ただ、鍵を持たず家に入れない事態は相変わらず起こっており、そのたびに電話で筆者が呼び出される事になる。それはそれでめんどくさいので、筆者宅でもようやくスマートロック「SESAME 5」を導入したのが、今年6月の事である。

SESAME 5はシンプルなスマートロックで、スマートフォンとBluetoothで繋がり、アプリを使って鍵を開ける。子供たちもスマートフォンを忘れて出かけることはまずないので、誰もいなくて鍵が開かないという事態は回避できるようになった。

ただ人間一度楽になると、さらに欲が出るものだ。

鍵を開けるためにスマホを取りだしてアプリを起動し、Bluetoothが繋がるまでちょっと待っておもむろに鍵を開けるというのも、スピード感に欠ける。買い物袋で両手塞がっている時に、一端荷物を降ろしてカバンからスマホを探すのなら、物理鍵を探すのと大して変わらない。さらに鍵が開くまでの反応時間まで含めると、なんなら物理鍵で開けた方が早い。これはDXの敗北ではなかろうか。

もっと簡単に開けられないか

そこでSESAME 5と組み合わせて使用する、「SESAMEタッチ」を追加注文した。これはドアの外側に貼り付けるデバイスで、スマートフォンのタッチや指紋認証で鍵が開けられるというアクセサリである。公式サイトでは2,980円で販売されている。

ドア外に取り付けるアクセサリ、SESAMEタッチ

同梱の説明書がシンプルすぎてどう使うのかさっぱりわからなかったが、セサミアプリからデバイスを追加するとだんだん仕組みがわかってきた。

セサミアプリでSESAME5とペアリングする

まず鍵を開閉するデバイスであるSESAME 5と、SESAMEタッチをペアリングする。次にタッチで開ける手段を登録する。非接触式のFeliCaかMIFARE搭載のICカードが登録できるほか、スマホであればモバイルSuicaが対応する。スマホをタッチすると自動的にモバイルSuicaが立ちあがるが、それをセサミアプリで登録すると、モバイルSuicaで鍵が開けられるようになる。モバイルSuicaは単に鍵として使用されるだけで、毎回課金されることはない。

家族のスマホのモバイルSuicaを登録

指紋は、表面にあるセンサーに指をくっつけて読み取りを行ない、それを登録する。スマートフォンの指紋認証は、何度も指をくっつけて精度高く読み取りを行なうが、SESAMEタッチの場合は1回である。とりあえず家族全員分の指紋とモバイルSuicaを登録し、実際に運用してみた。

指紋は100個まで登録可能

SESAMEタッチは鍵を閉める際にも利用できるわけだが、閉める方は特に指紋認証していないようだ。認証していない指でも、あるいは手のひらを当てても閉まる。下手なことをしようとすると閉まるというのは、安心できる。

一方開けるときは、指タッチですぐ開くわけではない。センサーに2秒ぐらい押し当て、認証されるとピピッと音がなる。押し当てる時間が短いとピーッと長く鳴りエラーとなる。実際に指を当てて鍵が開くまで、およそ3秒ぐらいである。

スマホのタッチによる解錠は、iPhoneでは反応が良くないという話は聴いていたが、実際に試してみたかぎりでは問題なく解錠できるようである。指紋で開けられるので利用頻度は少ないが、手が汚れているなど指紋で上手く反応しないときに他の手段があるのは心強い。

こうして家族全員、簡単に鍵が開けられるようになったので、セサミアプリの設定で「タイマー式オートロック」を使用することにした。解錠後、設定した分数が経過すると自動的に施錠される機能である。これまでは、ちょこっとゴミ捨てに行ったぐらいで鍵が閉まると閉め出される可能性があるので使用していなかったのだが、手ぶらで外に出ても指紋で開くのであれば問題ない。

SESAME5ではタイマーでオートロックできる

筆者宅マンションはオートロックもない、昔ながらの開けっぴろげマンションなので、玄関ドアが最初で最後のセキュリティである。SESAMEタッチとオートロックの併用で、ドアの鍵が開いている時間が激減し、セキュリティ的にもかなり向上した。

IoTとして多くの人はスマートウォッチやスマートスピーカーを使うようになったが、スマートロックも登場から8年、かなりこなれたデバイスになってきている。珍しい・新しいだけでなく、きちんと新しい利便性をもたらしてくれるところが、長く生き残っているゆえんだろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。