いつモノコト
カーボンで作った東レの傘が面白い
2024年7月14日 09:00
東レが得意のカーボンとナイロンで傘を作ったと聞いて、興味津々で買ってみました。東レインターナショナルが開発した「TSUTSU The Umbrella 621」という製品です。
クラウドファンディングでプロジェクトが展開され、私は「Super Early Bird」に間に合ったため、通常価格15,400円の43%オフに相当する8,800円で1口支援して、製品1本を入手できました。このプロジェクトは7月31日まで開催されており、36%オフ相当になる9,800円の支援「Value Plus」が、7月13日時点でまだ選択できるようです。
アップサイクル・ナイロン生地を採用
製品の特徴は、アップサイクルの進展を目的として、アパレル製品の生産や生地の流通段階で生じるナイロン(ナイロン6)の余った生地を、傘地として再活用(アップサイクル)している点です。東レは1941年に世界初のナイロン6の開発に成功したとのことで、80年以上の歴史に裏打ちされた生地ということになります。
よくある傘の生地と比較して、密度が高くしやなかで、軽やかな触り心地になっています。生地は自分で張り替えられる設計にもなっており、長く使えるようになっています。
長く使う上で気になるのは生地表面の撥水性ですが、「高度な微細コーティング技術により、撥水材を傘生地表面で構造化させることができた」とのことで、撥水性と耐久性アップを実現しているとのこと。基本的な部分もなかなか期待できそうです。
東レのカーボンファイバーを採用
次に気になる点……というより、個人的に一番興味をそそられたポイントは、「東レのカーボンファイバー」が、メインシャフトをはじめ各所に使われている点です。
東レのカーボンファイバーといえば、近年では大型ジェット機に全面的に使われるなど、老舗でありながら最先端を行く優等生という印象です。厳密にはそれらとは異なる素性の素材だと思いますが、傘のシャフトが東レのカーボンファイバー製で、さらに東レ自身が傘の設計・開発したいうのですから、俄然興味が湧くというものです。
実際に届いた傘を開くと、メインのシャフトは直径14mmとそこそこ太く、カーボンファイバーのあの繊維模様がはっきりと確認でき、主観ですが“只者ではない雰囲気”を感じてしまいます。また予想通り軽量(約230g)で、開いた状態での剛性感が高いのもカーボンファイバーを各所に使用している効果でしょう。
ボタンひとつで開くジャンプ傘ではありませんが、ボタンなどは無く開く時も閉じる時もスライドパーツを動かすだけで、最後にスッと吸い込まれるような動きとともに固定されて、上質感があります。
ただ、取っ手の長さが切り詰められていて、閉じた状態だとスライドパーツは傘地の中に埋もれています。傘を開く際には「閉じた傘の中に手を突っ込んでスライドパーツを手先で探す」という所作が必要になり、最初はすこし戸惑いました。
全体的には、傘としての手触りは好印象です。折りたたみではない分、構造はシンプルで、剛性感があり、耐久性の高さにも期待できそうです。
雨の街中でも使いましたが、その軽さや、簡単には歪まない高い剛性感により「一体感」が高く感じられ、これだけでもかなり満足度の高い傘という印象です。
ユニークな長さ
「TSUTSU The Umbrella 621」で一番ユニークな点は、長さかもしれません。東レが新しいサイズとして提案するのは、たたんだ状態で621mmという長さで、折りたたみ傘以上、長傘未満のサイズです。これは取っ手部分の飛び出しが抑えられている(取っ手が傘の内側にある)こともポイントでしょう。一般的なビニール傘と比較しても2/3ぐらいの長さです。
開いた状態の傘下直径が960mmで、これも一般的な折りたたみ傘と同じか小さいぐらいです。筆者はかねてから、狭い歩道が多い都心の生活では、伝統的な長傘のサイズは大きくて取り回しがしづらいと考えているので、これはお気に入りのサイズ感です。
取っ手は長傘の「J」のような形ではなく、折りたたみ傘のように長さが切り詰められていますが、グリップエンドが四角いループ形状で、別途カラビナなどを用意すればベルトループなどに吊り下げられる、という提案にもなっています。また先端キャップも長傘で一般的な棒状ではなく四角い形状で、こちらは壁などに立てかける際にコケにくい、というアイデアです。
使ってみると、アップサイクル・ナイロンやカーボンファイバーといった東レの独自性が光る素材に加えて、狙いすました程よい長さ・大きさ、折りたたみ傘と変わらない軽さ、使い勝手を高める四角いループ形状パーツなど、隅々までこだわった設計が施されていることが分かりました。普通の傘では何か満足できないとか、カーボンファイバー製シャフトに目を輝かせてしまう私のような人は、チェックしてみる価値があるのではないでしょうか。