いつモノコト
都内に住んで25年、初めて「はとバス」に乗った話
2023年3月11日 09:30
両親が金婚の記念で上京し、空いた時間の観光を、都内に住んでいる私が案内することになりました。母が「はとバスに乗ってみたい」と言っていたので、帰りの新幹線に乗る前の比較的短い時間を使って「はとバス」に乗ることにしました。私を含めて3人で、初めてのはとバスです。
都内に住んでいると黄色いはとバスを見かけることは多いですが、在住者が実際に乗る機会は少ないかもしれません。この「はとバスツアー」にはたくさんのコースが用意されており、ホテルや名所で降車して食事や観光を楽しめるガッツリしたコースから、バスで都内を走り、降車せずに1時間程度で帰ってくるだけのものまで、規模も内容もさまざまです。
旅行会社のツアーなどとは異なり、ユーザーがはとバスに直接申し込んで、任意のコースだけに参加できるので、特に短時間のコースは、旅行目的以外で東京に来た人も空いた時間の予定に組み込みやすい自由度の高さが魅力だと思います。
今回の私の両親のケースでは、東京駅から帰路につく前の11時~13時ぐらいが空いている時間とのことだったので、バスに乗って1時間程度で帰ってくるお手軽なコースを利用することにしました。東京駅の南にある乗り場から出発するので、東京駅から新幹線で帰郷する両親にも利用しやすかったです。
申し込んだコースは「TOKYOパノラマドライブ(レインボーブリッジ&銀座)」で、料金は1人当たり2,000円でした(料金は土日祝日や季節で変動します)。このコースは30分に1本のペースで出ていて、Webサイトで日付と出発時間を指定して予約、クレジットカードで決済しました。座席の指定はできず当日決定されます。前日にEメールで送られてくるQRコードを乗り場にいるスタッフに見せると、端末で読み取って座席指定番号が付いた乗車券が発行されるので、後は指定の座席に座るだけです。
空きがあれば予約なしで当日受付も可能なようですが、予約の状況をみていると前日には満席の時間帯も多かったので、確実に乗るなら予約したほうがいいと思います。
今回利用したコース、TOKYOパノラマドライブ(レインボーブリッジ&銀座)は、2階建てオープンバスで都内を走り、霞が関や国会議事堂、東京タワーの近くを通り、レインボーブリッジでお台場に渡り、築地や銀座を経由して東京駅に帰ってくるというコースです。こうしたコースは何種類もあり、3月末には桜の見どころを巡っていくお花見専用コースもあるようです。また夜景を楽しむ夜出発するコースもあるので、こちらも綺麗な景色が楽しめそうです。
2階建てオープンバスで乗車するのは2階席だけで、1階席があてがわれて残念、ということはありません(1階は荷物などを収納します)。蛇腹式のソフトトップが開けられた状態で、本当にオープンカーの状態です。
2月末のよく晴れた日で、雨の心配はありませんでしたが、雨天時は雨具が無料配布されるとのことで、運行を中止する荒天時以外はオープンカーとして運行するようです。気温、風、日光(紫外線)、時期によっては花粉にさらされることになるので、対策が必要な人は準備しておくのがいいと思います。私たちが利用した日は最高気温が11度程度と低く、風が非常に冷たく感じられました。風も強くあたるので帽子などが飛ばされないように注意する必要があります。
いよいよ実際にバスが走り出すと、屋根がフルオープンな状態で走るバスと都市部の観光名所との相性の良さを実感しました。コースの前半にある霞が関や虎ノ門ヒルズ、東京タワーといった高層建築の脇を抜けていくコースは、見上げてその全貌を見られるので、迫力があります。窓越しではない、ダイレクトに見ている空気感も良いと思いました。
レインボーブリッジを渡る前には首都高に入るのですが、それまでとは一転、速度を出すので風がビュービューと吹き込んできます。2階席の高い視点や、天井が開けた雰囲気も合わさって、ちょっとしたジェットコースターに乗っている気分でした。車道の大きな看板がすぐ近くに見られたり、有楽町の古いガードをスレスレで通過したりと、2階席の高さならではの景色も面白い体験でした。
降車なし、信号以外の一時停止もなしで、1時間程度で終わる弾丸ツアーですが、都内在住の私でも楽しめたので、たまに上京する程度の人は一層楽しめるのではないかと思います。国会議事堂などは修学旅行で見ただけという人も多そうですが、改めて見ると威厳が感じられますし、レインボーブリッジからの景色には東京のスケールの大きさが感じられました。
コースを終えてみて、1時間弱で終わるこのコースは、家族や友人が上京した際の、空いた時間の手軽な観光にもピッタリだと思いました。短い時間で東京の“オイシイ景色”をサッと見られるのは魅力ですし、都内在住の人が一緒に参加しても、普段はあえて行かない場所などは興味深く見られると思います。
父は大学時代を東京で過ごしていたのですが、今から60年も前で、当時は「とにかくいつも空が霞んでいた」といいます。夏休みに田舎に帰ると、澄んだ空や日差しの眩しさに毎回驚いていたとか。2階建てオープンバスで都内を走りながら「東京の空がこんなに綺麗になったなんてなぁ」と感心していたのが印象的でした。それもこれもオープンバスならではの体験ですし、“今の東京”をコンパクトに楽しめるコースだと思いました。