いつモノコト
折りたたみ・パーソナルチェア再び。万能ポジションのニーチェアエックス80
2022年10月15日 09:30
2021年の2月に、「ニーチェアエックス」(Nychair X)を買ったという記事が掲載されていますが、最近になって、着座位置が高く、背もたれが起きたデザインの「ニーチェアエックス80」という製品が発売されたことを知りました。今使っているニーチェアエックスはとても気に入っていて、毎日使っているだけに、そしてあのニーチェアに新製品が出るなんて思ってもいなかったので、とても気になります。そこで思い切って、新しいニーチェアエックス80も買ってみました。
価格については、原材料や流通など各所の値上がりの影響は避けられず、値上げが続いているのは残念ですが、仕方がない部分でしょう。私がニーチェアエックスを購入した時(注文は2020年7月)は36,300円でしたが、今は公式サイトの価格が49,500円となっています。また、2022年11月1日にも価格を改訂、51,700円になることが案内されています。今回買った「ニーチェアエックス80」は3月15日発売で55,000円ですが、同じく11月からは57,200円に値上げされます。欲しくなった時が買い時ということでしょうか。
床から椅子中心になった時代に誕生
さて、非常に長いロングセラーであるニーチェアエックスと、復刻されたニーチェアエックス80の違いですが、デザインを見ても分かりやすいように、ニーチェアエックス80は座面が高くなり、背もたれは小さくなって、その角度が起きています。
ニーチェアエックスは1970年に誕生した製品で、畳が一般的だった住環境を想定してデザインされています。そう考えると、かなり低いポジションの座面も納得ですね。座椅子やこたつなどがある部屋で違和感なく使えるデザインになっているのです。また背もたれが比較的寝ていて、リクライニングチェアの背もたれを後ろにグイッと傾けたようなポジションになっているので、かなりリラックスした姿勢を志向しています。背もたれの角度を変えられないのは好みが分かれるところかもしれませんが、シートの張り替えを比較的簡単に行なえるとか、折りたためる機構などを考えると、これでいいのでは、と感じています。
新製品のニーチェアエックス80は、ニーチェアエックスの10年後となる1980年に誕生した製品を、現代に復刻したものです。1980年代当時の、畳に座るスタイルから椅子が中心になる、生活様式の変化に対応するためにデザインされた、と紹介されています。これは要するに、現代の生活の中に取り入れやすい――ある意味では普通の――座面の高さになっているということです。製品の座面の高さは34.5cm、座面の前縁の高さは約40cmで、座ると足の裏が無理なく床につき、とても快適なポジションだと感じます。
背もたれは短くなっていますが、背中や頭を預けたくなるほど後ろに傾いているわけではないので、問題ありません。おおまかに他の製品で例えるなら、ディレクターズチェアやちょっと豪華なキャンピングチェアといったものと同じ類の製品・サイズ感です。
座り心地はやはり一級品です。座面や背もたれの考え抜かれた角度が絶妙で、実に快適。座るだけで、身体の各所から無駄な力が抜けて「ホッ」とリラックスできます。シートが適度に沈んで体にフィットするのもニーチェアエックスから継承された点。お尻や背中が蒸れないのもソファとは違うポイントです。
肘掛けが前に向かって下がっているのもいい塩梅で、肘の向きに自然に沿うようなデザインです。木製なので硬いわけですが、異物感がなく、棒状で握りやすいこともあってか、不思議な一体感があります。
座面の幅が十分にあるのも良いですね。これはニーチェアエックスでも同様ですが、ちょっと姿勢を変えたりお尻の位置をずらしたり、あぐらをかいてみたりと、なにげないポジションチェンジをしても窮屈な感じはありません。
ニーチェアエックスを1年半ほど使ってみて、あまり向かない用途だなと感じたのは、テレビゲームでした。映画やアニメ、スポーツ観戦といった“観るだけ”の利用にニーチェアエックスは最適ですが、テレビゲームのように能動的で、体が活性化したり緊張状態になるような場合、気がついたら背もたれから体を起こして前のめりになっている、ということが起こります。
ニーチェアエックス80は足が床につき、体のポジションも起きていますから、ゲームも違和感なくプレイできます。ゲーム、読書、人との会話など、違和感なく使える場面はかなり多いと思います。もちろん映画やスポーツ中継の観戦も問題ありません。
個人的な環境の話をすれば、耳のポジションがよりスピーカーの高さに合うので、音楽をじっくりと聴き込む場合にも、ニーチェアエックス80を重宝するようになりました。30分や1時間など比較的短い時間に、集中して気に入ったアルバムや新譜をじっくりと聴く、という場合に活躍しています。
ニーチェアエックス80を買った、隠れたもう一つの目的は、ワークチェアの負担を分散させたかったからです。ニーチェアエックス80の座面の高さが40cm前後というのは、ワークチェアの座面を一番下げた状態とほぼ同じです。ワークチェアはテレビの近くにあるわけで、状況だけを見れば「ワークチェアがあればいらないじゃん」となるわけですが、いかんせん、このワークチェアを“使いすぎている”と感じていました。今のところ何も不具合は出ていないのですが、ニーチェアエックスを使う時以外のほぼすべての時間、このワークチェアに座っているため、同じような座面のポジションであっても、ほかの椅子を使って、椅子への負担を分散したほうがいいのではと思い始めたのです。
現在では、とにかくリラックスしたい、場合によっては居眠りしてもいい、などという場合はニーチェアエックス、集中して観るコンテンツやゲームはニーチェアエックス80、仕事・PC作業はワークチェアというように、使い分けができるようになりました。
また、このような使い分けが可能なのは、ニーチェアエックスのどちらもが折りたたみ機構を搭載しているからですね。普通のパーソナルチェアやシングルソファなら設置場所を確保する必要がありますから、簡単に追加購入はできないと思います。使わない時は部屋の隅にしまっておくだけで、その椅子専用の設置場所を用意しなくてもいいのは「ニーチェアエックス」シリーズの利点です。これ、地味なようですが、狭い家に住むユーザーとしては特大に重要なポイントです。「折りたためなかったらかなり邪魔だけど、折りたためるから最高に便利」と、最初のニーチェアエックスを使い始めてから痛感しました。
ニーチェアエックス80の折りたたみ機構は、ニーチェアエックスと少し異なり、シート両サイドのフレームをそれぞれ180度回転させて、よりコンパクトにできる仕組みです。慣れると簡単にでき、面倒に感じるほどでももありませんでした。
椅子中心になる生活様式の変化を見てデザインされたということもあり、ニーチェアエックス80は現代の部屋で万能さが光ります。座り心地と収納性という難しい要素が高次元で達成されているのも、高い価値を感じます。リラックスできる椅子ですが、ゲームなどアクティブな利用にも対応できます。周りの家具が椅子の高さ中心で揃っているなら、とてもフィットすると思います。ぜひ一度、販売店やショールームなどで座ってみてほしいですね。