いつモノコト
コーヒー好きも満足 タイガーのSIAA抗菌ステンレスボトル
2022年5月7日 10:30
家で淹れたドリップコーヒーを気軽に持ち出したいと思い、タイガー魔法瓶の真空断熱ボトル「MMZ-K035」を買ってみました。カラーはチタンのような色合いの「マットステンレス(XM)」です。家電量販店での販売価格は2,980円でした。
筆者はこの10年ほど、自宅でのハンドドリップ・コーヒーに傾倒し、納得のいくコーヒーを自宅で淹れられるようになっていたのですが、そうすると次の欲求として高まってくるのは、外出先でもこの美味しいコーヒーを楽しめたら……ということでした。
もっとも、この1年ほどは在宅勤務の影響で自宅のコーヒーメーカーがフル稼働しており、こだわってハンドドリップで淹れる機会は減っていました。一方で、平日・週末に関わらず毎朝決まった量のコーヒーをコーヒーメーカーで作るようになったので、外出するときもこれを持ち出したい、と思うようになりました。そうすれば、外出先で「食後のコーヒー」を探したり買ったりする必要がなく、(その日の予定を深く考えずに)毎朝作り置きするコーヒーが無駄になりません。
今回買ったタイガーの「MMZ-K」シリーズは、しっかりとした抗菌加工が特徴の製品で、具体的には中栓とパッキンに銀系(Ag)の抗菌加工が施されています。特に中栓のプラスチックパーツはSIAA(抗菌製品技術協議会)認証を取得した抗菌加工せんとなり、抗菌の具体的な仕組みや性能などの情報が公開され、それまでより一歩踏み込んだ透明性と性能の高さを謳っています。中栓はやや洗いにくい形でもあるので、性能の高い抗菌加工が施されているのは安心できます。タイガーは2021年8月にこのシリーズを発売、以降もSIAA抗菌加工の中栓を備えたシリーズが増えています。
汚れに強いという意味では、中栓だけでなく、ボトル内部にタイガー独自の電解研磨技術による「スーパークリーンPlus」加工が施されています。表面をなめらかにして、汚れや臭いを付きにくくするものです。見た目も明るく光沢があり、昔のガラス製魔法瓶の中を覗いているようです。表面がなめらかで光沢があるというのは、それだけ微細な凹凸が少ないということになり、汚れのつきにくさが見た目でも感じられるようになっています。
タイガーは現在、環境負荷が高いとしてテフロン加工などのフッ素コートを採用しない方針を表明しており、その取り組みの一環として、こうした加工技術を進化させているようです。
ボトルを手に持って最初に感じたのは「軽い」ということです。「MMZ-K035」は350mlタイプですが、本体のみでは実測で163gと、かなり軽量でした。
容量は350mlで満水になります。取扱説明書には1cm程度少なめに入れるよう書かれているため、実際には330~340mlぐらいが推奨されると思います。
大きさは、太さが直径66mm、飲み口の口径が44mmで、シリーズで共通です。高さは350mlタイプだと164mmです。500mlのペットボトルと比較して、太さ、長さともに一回りこぶりという印象です。
パーツ数は3種類で、本体、フタ(中栓と一体)、中栓に付くパッキン、という構成です。フタを外すと、本体側は飲み口パーツのないステンレス部分だけになります。フタとパッキンは消耗品として別売りもされています。フタは990円、パッキンは385円です。
保温・保冷能力については、この製品で大きく進化しているわけではありませんが、350mlタイプの本製品の場合、95℃の熱湯が6時間後に69℃以上、という能力です。これは同じサイズの他社製品と比較しても同等か上回るレベルの仕様です。
臭い移り対策、口あたりの良さに満足
ドリップコーヒー/ホットコーヒーをステンレスボトルで持ち運んで飲む場合に注目したい……というより、決定的な選択基準としたいのが“臭い移り対策”です。
美味しいコーヒーは香りが高いとよく言われますが、これは口に含んだ後に、温かい香りの蒸気が塊となって鼻を抜けていくことで感じられます。意外と繊細な部分で、ボトル内部やプラスチックパーツに以前使った飲料の臭いが残っていると、とたんに台無しになってしまいます。
ステンレスボトル自体は以前から存在している製品ですから、外出先で飲むというスタイルは、改めて言うまでもなく昔から可能でした。一方で、ホットコーヒー・ドリップコーヒーを楽しむことを想定したような、“臭い移り対策”を施した製品は、“サードウェーブコーヒー”などが流行り始めて以降に注目されるようになったという印象です。例えば2015年には、ボトル内部にテフロン加工(フッ素加工)を施し、臭いを移りにくくした「コーヒー専用ボトル」を謳う製品がシービージャパンから発売され、コーヒー好きに対して各所で紹介されていました。
本製品のスーパークリーンPlusは汚れにくく、臭いがつきにくいという加工で、少なくともドリップコーヒーで数回使った程度では、ボトル内部に臭いは残っていませんでした。ホットコーヒーを香り高く楽しみたいという意味でも大いに期待できそうです。
飲み口にパーツをなくした仕様は、お手入れだけでなく臭い移り対策の点でも有利です。従来の製品では、飲み口に付けられたプラスチックパーツやパッキン、ストレーナー(氷などが出てこないようにするこし器パーツ)にコーヒーの臭いが残り、日常的な洗浄では臭いがなかなか取れないというケースも少なくありませんでした。ホット飲料の場合は特に、熱や蒸気で些細な臭いも強調されてしまうため、対策としてはなかなかハードルが高かったのですが、昨今の一部の製品はパーツそのものがなくなることで大きく進展した印象です。
加えて本製品は飲み口の形状も優秀です。口があたる縁の部分はマグカップのように丸く加工されており、口をつけても固さ・痛さを感じません。同様の仕様は他社製品を含めて増えていますが、特にタイガーのこの製品は縁が厚い印象です。
さらに、飲み口の外側で唇があたる部分はフラットで、十分な高さもあります。これはフタを固定するネジ山を筒の内側に設けている構造だからで、口あたりの良さにつながっています。縁の丸み・厚み、表面がフラット、といった特徴が合わさることで、陶製マグカップのような優しい口あたりを実現しています。ステンレスボトルで飲んでいるということを一瞬忘れるほどです。
使ってみてちょっと驚いたのは、本体を振ると「シャンシャン」「シャカシャカ」と中から音がすることです。これは保温力をさらに高める目的で銅箔またはアルミ箔が巻かれているためで、それがこすれる音だとか。保温性能に問題が出ていなければ特に気にする必要はないとのことですが、最初はそれが分からず、「不良品を引き当ててしまった?」と勘違いしそうになりました。付属の取扱説明書などで、この仕様に触れてあってもいいのではないかと思いました。
MMZ-Kシリーズは、コーヒー好きならこだわりたい臭い移り対策に加えて、高い抗菌性能やお手入れのしやすいシンプルな構造、飲み口パーツがなくても口あたりの良い形状といった、誰もが嬉しいポイントが融合した製品です。コーヒー好きにも問題なくおすすめできると思います。