いつモノコト

ケーブルを補修したい。弾力を保ったまま硬化する粘土状補修材「Sugru」

「Sugru」。今回購入したのはブラック/ホワイト/グレー 3色パック(型番:SBWG3)

デジタルデバイスを長く使い続けていると、ケーブルの外皮が破れることがあります。普通ならば買い替えることになりますが、ケーブルがデバイス本体に直付けだったり、コネクタが専用品だった場合、補修して使い続けざるを得ないこともよくあります。

こうした場合のために、自力で外皮を補修するためのグッズはいくつか存在しています。今回紹介する「Sugru」はそのひとつで、粘土状の生地が硬化してシリコンゴムへと変わることで、ケーブルの破れた部分を覆ってしまうという製品です。

海外ではかなりよく知られており歴史も長いこの製品、日本からも入手可能ですので、実際に購入して試してみました。

製品パッケージ。色や詰め合わせ数によっても異なる

本製品は粘土状になっており、小分け(5gずつ)のパッケージになっています。練ってケーブルに巻きつけ、そのまま24時間待つと固まり、外皮として機能するようになります。180℃から-50℃までの耐熱性、防水性、および絶縁性を備えるほか、ガラス、セラミック、木材、金属、プラスチックなどとの接着力を有しています。

使ってみるまでは、エポキシパテのようにA剤とB剤を混ぜ合わせると硬化する仕組みだと思っていたのですが、実際には袋から出して空気に触れると化学反応が起こり、硬化が始まるようです。効果開始までの時間はおよそ30分とされているので、それまでに形を整える必要があります。

パッケージが小分けになっているのは、いったん袋から出したあと保存はできず、すべて使い切る必要があるためです。余る量が多くなりそうであれば、あらかじめ別の用途に使う計画を立てておいたほうが、無駄にならずに済みそうです。同じ理由で、長期間の買い置きができない点は、気をつけたほうがよいでしょう。

本体(3色パック)のほか取説などが封入されている。日本語の説明はない
1パックあたり5gが封入されいてる。本体は粘土のような質感

そんな本製品の最大の特徴は、プラスチックやセメントのようにカチカチに固まるのではなく、弾力を保ったまま硬化することです。メーカーは「シリコンゴムになる」と説明しており、自由に曲げられることに加え、絶縁性もあるので、ケーブルの外皮としての利用には適しています。

今回は手持ちのウェブカメラのケーブルに使用してみました。根元のケーブルが抜けかけて隙間ができており、放っておくと症状が悪化する可能性があったからです。内部の結線が一切傷んでおらず、単に外皮に隙間ができている場合には、本製品はまさにぴったりです。

今回はこのウェブカメラのケーブルの補修に使用する
物理的にキズが入ったわけではなく、結合部がズレて隙間ができているような場合は、本製品は補修に最適だ
Sugru本体をよく練った上で隙間に巻き付け、指先で整形する
このまま24時間待つと弾力を保ったまま硬化する

もっとも筆者が最初に試した時は、24時間経過しないうちに曲げてしまったせいで、亀裂が入り、やり直しとなってしまいました。最低でも丸一日は触れずに放置するよう、せっかちな性格の人は気をつけたいところです。

なお今回の筆者のように、ミスをしてやり直しとなった場合、同じ色のスペアがないと困ることになります(今回は白がなく、やむを得ずグレーを使いました)。必要な色が決まっているならば、その色のみ入ったパッケージを買ったほうがよさそうです。

硬化状況を確認しようと焦って途中で曲げるとこのようなことになる
完全硬化する前であれば指先ではがすのも容易だ。気を取り直していちからやり直す

気をつけたいのは、前述のエポキシパテと違って、硬化後にヤスリがけなどの表面加工が難しいことです。カッターで表面を削ぎ落とすことはできますが、表面を滑らかにするためには盛る段階で形を整えるほうが無難です。硬化が始まるまでの30分を有効に使って、どれだけ理想とする形状に近づけられるかが、ひとつのコツと言えそうです。

また強度はケーブルの外皮に似ていると言っても、それほど強靭ではなく、ケーブルの外皮と同じくらいまで薄く引き伸ばすと、破れやすくなってしまいます。「覆う」のではなく「盛る」感覚で使ったほうがよさそうです。

このほか、小物を引っ掛けるためのフックを自作したり、紛失したキーボードの脚部パーツを自作したり、指が食い込むのを防ぐためにハサミのグリップに巻きつけたりと、本製品についてネットで検索すると、さまざまなアイデアで用いられていることが分かります。汎用性は折り紙付きと言ってよさそうです。

白を使い切ってしまったので、今回はグレーを使って再チャレンジ。24時間触れずに待つことでしっかりと硬化した
弾力を保っており、曲げてもポッキリ折れることはない
カッターなどを使って表面を削ぐように整形することはできる
ただしこのようにカッターで削いだ面が残ってしまうので、盛る段階で形を整えるほうが無難だろう

以上のように、使い方には多少クセがありますが、時間に余裕を持って焦らず作業すれば、工作が苦手な人であっても、そうそう失敗することはないでしょう。指先で練ったあと手には若干のべたつきが残りますが、石鹸で洗えば簡単に落ちますので、わざわざビニール製の手袋などを着用する必要もありません。

価格は、3パック入って約1,000円。日本での流通ルートが少ないせいか、並行輸入品ないしは転売とみられる高額な品が流通しているのが玉に瑕ですが、1パックあたり実質300円程度として計算すれば、適切な価格で購入できるでしょう。

ちなみに3パックと言わず、さらに多く入ったパッケージもありますが、消費期限が13カ月と限られているため(筆者が今回買った品は残り半年ほどでした)、使い切るまでのペースを考えると、最初はなるべく数量が控えめなパッケージを選ぶことをおすすめします。

ケーブル外皮の破損は、地震によって棚の上からデバイスが落下し、ケーブルで宙吊りになった時などに起こりがちです。破損の程度によってはデバイスごと買い替えなければ危険なので、それらの判断は正しく行なう必要がありますが、そうした場合にダメージを受けたのがケーブルの外皮のみと判断できた場合は、本製品を試してみてはいかがでしょうか。

    山口真弘