いつモノコト

持ち運べる図書館。生活に欠かせない「Kindle Paperwhite」

断然「紙の本」、と考えていた筆者が電子書籍リーダー「Kindle Paperwhite」(Paperwhite)を手に入れてから早2年弱。Paperwhiteのレビューは様々なところに掲載されていますが、筆者にとっての「Paperwhiteのある生活」という観点から、改めてデバイスの魅力を考えていきたいと思います。

文庫本をひとまわり大きくしたサイズで、200g弱と軽い

寝る前に読む

筆者がPaperwhiteをもっともよく使うのは寝る前です。Paperwhiteにはフロントライトが搭載されているので真っ暗な部屋でも読書を楽しめます。フロントライトというのは、ディスプレイの横側から光を当てて画面全体を明るくする技術です。

スマートフォンなどのディスプレイと違い、ディスプレイ自体が発光したり、あるいはディスプレイの奥側から手前方向に光を放つバックライトではないため、目に直接入り込んでこない優しい光で入眠を妨げにくいと感じています。

暗所で「明るさ」を0にした場合
暗所で「明るさ」を上げた場合。十分な光量がある

軽く、本体そのものが光るので読書灯と紙の本の組み合わせより柔軟な姿勢で読めるのも長所です。

お風呂で読む

湯船につかりながらスマートフォンやタブレットで動画などを楽しんでいる人も多いのではないでしょうか。防水のPaperwhiteならその時間に読書もできます。

IPX8の防水性能で、深さ2mの真水に60分沈めても問題ない

紙の本では、なかなかお風呂で読書を楽しむというわけにはいきません。ジップロックに入れたり、あるいはお風呂のふたを利用して読むということも可能ではありますが、手間もかかりますし湿気で紙が波打つかもしれません。

旅行・移動中に読む

電子書籍の最大のメリットであろう、持ち運び。Paperwhiteには容量が8GB・32GBの2モデルがありますが、どちらでもテキストベースの書籍であれば数千冊を保存できます。

通勤・通学の満員電車でも、たとえば紙で買えばハードカバーの判型が大きな本であっても場所を取らずに読書が楽しめますが、何より重宝しているのが旅行のタイミングです。

筆者は、旅行のたびに文庫本を5冊とか持って行ってしまうタイプの人間でした。旅行先や移動中の気分によって読む本を選びたいので、できるだけ多くの気分に対応できるよう、軽めのエッセイから古典の純文学、重厚なルポルタージュまで取りそろえます。

5冊の本を持って行く人はあまり多くないかもしれませんが、通信が安定しない飛行機などで暇つぶしに本を読む人は多そうだと、空港や駅の書店の繁盛から推測しています。そういった移動中の読書にPaperwhiteはおすすめです。

搭乗前にWi-Fi(4Gモデルの場合は4G回線も利用できます)に接続すれば、Paperwhite単体でAmazonにて本を買ってダウンロードできます。いにしえのデバイスのようにPCに接続してデータをドラッグ・アンド・ドロップなんて手間はありません。そして、一度ダウンロードしてしまえばインターネット回線がなくとも本を読めます。

このご時世ではなかなか旅行や出張など移動の機会も少なくなってしまいましたが、またそのような機会が多くなってきたら活躍すること間違いありません。

洋書を読む

言語学習の一環として、あるいは邦訳されていない本を読みたいと、洋書に手を出す人もいるかと思います。筆者もそういう目的で紙の洋書を求めたことがありますが、多少その言語に覚えがある、くらいのスキルではなかなか読めません。

どうしても辞書を引かざるを得ないし、いちいちわからない単語が出るたびに辞書を引いて、読み進めていくというのは非常におっくうで何冊も途中で投げ出してしまいました。しかし、Paperwhiteなら手間はだいぶ軽減されます。以下の画像をご覧ください。

Word Wise

日本語の「ルビ」のような感じで、単語の上に英英辞典の要領で簡潔な語釈が載っているのがわかるかと思います。英語と中国語の書籍に限られますが、「Word Wise」という機能で難しい単語の意味を表示できます。

ひとくちに「難しい」と言っても、人によってどの単語が難しいと感じるかは当然差があります。Word Wiseはその違いにも対応しており、どれくらいのレベルから単語の意味を表示するか調節できます。

Word Wiseを最も多く表示した場合。
Word Wiseを最も少なく表示した場合。

まったく同じ部分でWord Wiseの設定を最も多く表示(=比較的簡単な語の意味も表示)したときと、最も少なく表示(=難解な語だけ意味を表示する)したときを比較してみました。表示範囲では、前者の場合10語の意味が表示されているのに対し、後者の場合は2語にとどまっています。もちろん、Word Wiseをまったく利用しないこともできます。

また、これは洋書に限らず、日本語の本にも言えることですが、辞書を引くのも簡単です。

わからない単語をドラッグして選択するだけで辞書を引けます。キーボードで入力したり、紙の辞書を引くよりはるかに容易です。日本語関連の辞書は、国語辞書・和英辞書・英和辞書の3種類ですが、「独英辞典」「英仏辞典」など、合計で47種類の辞書が無料で利用できます。

集中して読む

ここまで紹介した機能は基本的に、スマートフォンやタブレットのKindleアプリでも利用できるものです。唯一の例外といえそうなのは防水ですが、防水のスマートフォンなどいくらでもあります。ではなぜ、わざわざ専用のKindle端末を購入するのか。

読みやすい電子ペーパーやフロントライト、軽量などの特色もありますが、筆者がもっともスマートフォンなどに対して優位だと思うのは「読書しかできない」ことです。厳密にはブラウザが搭載されているのでネットサーフィンもしようと思えばできますが、とてもレスポンスが悪く到底使い物になるものではありません。

わからない単語を調べようとしたら、いつの間にか全然別のWebサイトを読んでいたとか、あるいはSNSの通知が来てそちらに注意が惹かれてしまう、というような危険がありません。Kindle端末を起動するときは、本を読むときです。何も邪魔するものはありません。時計だってオフにできます。

気に入らない点

さて、Paperwhiteを絶賛してきましたが、気に入らない点もあります。

ひとつは、レスポンスが悪いこと。Kindleには文章を選択してハイライトする機能がありますが、スマートフォンと違ってなめらかにはできません。筆者はハイライトはスマートフォンで引くようにしています。

もうひとつは、充電端子がいまどきMicro USBであること。これは手痛いですが、充電がかなりもつのが救いです。体感では、毎日1~2時間程度の読書ならば、フロントライトをつけていても1週間以上はバッテリーがもちます。

最後は、Paperwhiteに限りませんが、Kindle本を購入してもコンテンツを“所有”できるわけではないということ。あくまでKindle本の利用権であって、紙の本と違って完全に所有できるわけではありません。考えにくいことですが、Amazonが倒産したらどうするのか、そうでなくても何らかの都合で書籍が利用停止になったらどうするのか、という問題はあります。

実際に、ジョージ・オーウェルの『1984』などの作品が、Amazonによって勝手に端末から削除されてしまう、という事件がかつてありました。これは、そのKindle本の販売元が正当な販売権を持っていなかったためとAmazonは説明しており、払い戻しもされていますが、そのような事態が実際に起こりうる、ということを示しています。

筆者は、本当に気に入った本は紙とKindleの両方で購入しています。そうすればKindleでいつでも気軽に読めますし、紙の本は装丁も楽しめる上に所有権は完全に自分にあります。

以上のような短所を踏まえてもなお、Paperwhiteが読書の手段としてかなり優れていることを実感しており、もはや生活に欠かせないものになっています。

Kindle端末のかんたんな比較

最後に、Kindle端末を簡単に比較したいと思います。筆者が所持しているPaperwhiteは、Kindle端末の中位モデルで、下位モデルとして「Kindle」(8,980円~)、上位モデルとして「Kindle Oasis」(29,980円~)があります。ほかにKindleベースの「キッズモデル」もありますが、本稿では割愛します。

端末の比較。製品画像はAmazon.co.jpより引用。

大まかに言ってしまえば、KindleとPaperwhiteを比較すると、後者は電子ペーパーの画質がよく、防水性能を持ち、ベゼルとディスプレイとの間の段差がなく、4G接続ができるモデルがあります。また、PaperwhiteとOasisを比較すると、後者は画面サイズが大きく、ページめくりボタンがあり、動作が軽快です。

Oasisは当然素晴らしいのですが、価格もゴージャスでPaperwhiteの倍以上。逆に下位モデルのKindleは防水がない、というのが筆者には痛いポイントです。Paperwhiteが値段と機能のバランスがもっとも良いと思います。

また、それぞれに「広告つき」と「広告なし」モデルが、PaperwhiteとOasisには「Wi-Fi」モデルと「Wi-Fi+4G」モデル、「8GB」モデルと「32GB」モデルがあります。筆者は、広告なし・Wi-Fi・8GBモデルを使用しています。

まず広告についてですが、広告つきモデルではスクリーンセーバーにシンプルな広告画面が、そして起動時にポップアップの広告が出ます。筆者は以前Paperwhiteの広告つきモデルを利用していたのですが、当初はスクリーンセーバーだけでした。昨年頃からポップアップ広告が出るようになり、それが煩わしく広告なしモデルを購入しなおしました。

4G接続については、これがあれば4G回線を無料で利用でき、どこでも本を購入できるわけですが、そこまでWi-Fiのない環境で買うわけでもないし、いざとなればスマートフォンなどでテザリングすればいいと考えてWi-Fiのみのモデルを選択しました。今のところ困っていません。

容量は悩ましいところですが、筆者はデータ量の大きい漫画をKindle端末であまり読まない上、不要なときは端末から削除しておいて、必要になったら再度クラウドからダウンロードできるので、8GBモデルでも十分だと感じていますが、漫画を数百冊と保存しておきたいという人は32GBモデルが良いかもしれません。

なお、Paperwhiteのみカラーバリエーションが用意されています。

Kindle Paperwhiteは持ち運べる図書館

Kindle Paperwhiteは、何冊もの本を自由に読めて、そして読書だけに集中できる環境を用意してくれる、という意味で図書館に似ています。生活のなかに持ち運べる図書館を取り入れてみてはいかがでしょうか。プライムデーなどやタイムセールでセールでよく割引されているので、そういったタイミングを狙うのもおすすめです。

なお、8月19日23時59分までAmazonタイムセール中で、Kindleシリーズは4,000円引き。Kindle Paperwhite 8GB(広告付き)は9,980円となっています。

松本海月