いつモノコト

シンク下で完結する浄水器、東レ「トレビーノ ブランチ」を付けてみた

東レ「トレビーノ ブランチ」を取り付けたシンクまわりの様子(見やすいように引き出しは外してあります)。水栓がそのまま使えるアンダーシンク型の浄水器です

東レのアンダーシンク型の浄水器の新製品「トレビーノ ブランチ」が発表されたのを見て、「ウチにも欲しい!」と思いました。今より大きな浄水器を使いたいと考えるようになっていたのと、発表を見て、我が家のシンクに自分で取り付けられそう、とDIY精神を刺激されたからです。

5月末に発売され、ヨドバシ・ドット・コムにもすぐに掲載されたものの、店頭のみの取り扱いで取り寄せ商品という形が続き、ためらっていました。ところが7月末になってヨドバシ・ドット・コムでも普通に注文できるようになったのを見て、意を決して注文してみました。やはり取り寄せ商品でしたが、通常より2日程度多くかかっただけで、比較的すぐに届きました。

本体「SK88X-BR」の価格は55,000円です。10%ポイント還元分を反映すると49,500円になります。製品にはカートリッジ「SKC88.X」が1本付属します。カートリッジを単体で購入する場合は1本9,130円です(10%ポイント還元で8,217円)。カートリッジを交換するタイミングは総ろ過流量4,000リットルです。1日10リットルを想定すると1年と案内されています。

取付工事を業者に依頼した場合は別途料金が必要になると思いますが、私は今回、自分で取り付けてみました。

水栓は変更不要で、給水管を分岐させるパーツを取り付ける工事だけ。シンクの下で完結する浄水システムです
製品構成
浄水のカートリッジ「SKC88.X」は500mlのペットボトルより一回り大きいサイズです

ちなみに東レでは、専用の複合水栓に交換する従来のアンダーシンク型浄水器をすでにラインナップしています。代表的なモデルの価格は96,800円なので、トレビーノ ブランチは専用水栓がない分、比較的リーズナブルといえそうです。使用するカートリッジは、これら既存のアンダーシンク型浄水器で使っているものと同じです。

水栓のレバーで切り替え操作、一長一短

取り付けが終わった後の使用感ですが、シンクの水栓はそのままということで、特徴的な浄水への切り替え操作は、水栓を「開けて、閉じて、(3秒または1.5秒以内に)すぐまた開ける」という動作で行ないます。この特定の操作による水流を、給水配管の途中に取り付けた「分岐式電磁弁」が検知、流路を切り替え、浄水モードとしてカートリッジを通った浄水が、原水と同じ蛇口から出てきます。

東レは動画を公開しているので、動作イメージは事前によく分かりました。浄水モードに切り替わった時には「ピピッ」と1回、浄水が出ている時は「ピ、ピ、ピ……」と継続して、シンク下に取り付けたコントローラー部分から音が出て、動作しているかどうかが音で分かるようになっています。このほかカートリッジの交換のタイミングや、コントローラーの電池交換のタイミングなども、音で知らせてくれます。

この電子音は、コントローラーから出ている音を直接聞くと大きく感じますが、シンク下に取り付けた後、引き出しを閉めてしまうと音は小さくなるので、ちょうどよい塩梅だと思いました。調理中のキッチンは何かと大きな音が出ますし、換気扇を強で回すと聞こえづらいぐらいですので、我が家ではひとまず音量を下げる必要はなさそうです。

ちなみに、浄水モードに切り替わった際、(レバーは開いていても)一瞬だけ吐水が止まりますので、音をオフにしても、この挙動で切り替わったことが分かります。

一般的な、専用レバーで浄水・原水を切り替えるタイプの浄水器と比較すると、水栓のレバーを開け閉めするだけなので、操作の種類は単純になります。

一方、やや不向きなのは、短い間に何度も浄水(あるいは原水)を出す、という使い方です。また、水をまったく出していない状態から、いきなり浄水を出すことはできません。

浄水を出すには上記のような手順が必要なので、一度浄水を止めると、次に浄水を使えるまで、時間にして5~6秒は必要になります。切り替え動作自体は2~3秒で終わりますが、切り替え後も時間にして2~3秒は、分岐式電磁弁より上のホースに残っている原水が出るため、完全な浄水が出るまでは、合計して5~6秒はかかるという形です。

例えば計量カップに500mlの浄水を入れようとして、ちょっと足りなかった場合。浄水を継ぎ足そうとしても、上記のような操作や待ち時間を挟むため、ササッと終わりません。こういう場合は、そもそも計量カップにはやや多めに入れて、減らしながら計量するといった方法が、結局は近道になります。

またこれは、原水側にも言えます。原水だけを短い間に何度も出す場合、レバーを3秒以内に操作すると浄水モードに切り替わってしまいます。この設定は、コントローラーのスイッチで1.5秒に変更することもできますので、原水を短い間隔で頻繁に出すことが多いなら、1.5秒の設定のほうがいいかもしれません。

既存の水栓が使えて、専用の切り替えレバーもなく非常にスッキリとしていますが、水栓のレバー操作による独自の作法が必要で、それによってワンテンポ待つという独特な使い心地です。コップに水を汲む程度ならなんら問題になりませんが、料理中などに頻繁に浄水と原水を切り替えて使うという人は、こうした仕様は煩わしく感じるかもしれません。

もっとも、浄水器は一般的に、出し始めの水は使わないということが推奨されていますので、トレビーノ ブランチの浄水が出るまで数秒かかるという工程が、著しく劣っているわけではないと思います。操作に慣れてしまうと、そういうものとして扱うので、今の所、あまり心理的な負担は感じていません。

業者向けの製品、取り付けは可能

設置についてですが、トレビーノ ブランチの特徴は、シンクの下に本体を設置するアンダーシンク型の浄水器で、シンクの上の水栓は交換不要、元のままでOK、という点です。すべてシンクの下で完結するので、設置が完了してもシンクやキッチンの見た目はまったく変わりません。

シンク下の給水配管に接続するだけなので、頑張れば自分でもできそう、という目論見もあって、業者による工事は依頼しませんでした。

とはいえ、製品は業者による取付工事が前提になっているようで、同梱の「施工説明書」などは一般ユーザーに向けたものではありません。本体も一部は配線がむき出しで、一般的な浄水器と比較して、かなり毛色の違う製品です。家電量販店で買えたという事実とは裏腹に、基本的には住宅設備として業者向けの販売が想定されているようで、小売ができる販売店もかなり限られているようです。実際に近所のホームセンターで聞いてみたところ、「それ、うちでは扱えないんですよ」と、ちょっと残念そうでした。

分岐式電磁弁。配線むき出しですが、このままです
コントローラー。カバーを外すと設定スイッチやリセットボタンがあります
ダミーカートリッジには「入居されたお客様へ」という紙が付いていました

施工は“説明書通り”を徹底

取付工事は、今回は素人である自分自身で行なうので、施工説明書に書いてあることをとにかく徹底的に守りました。手順もそうですし、締め付けトルクに指定があればそれをしっかりと守ります。給水配管の止水弁を開閉するタイミングや、接続部から水漏れしていないかチェックするための試運転やその時間も、説明書の通りに行ないました。

シンクの下、なにも取り付けていない状態
改めて見ると、上側にはけっこう余裕がありました
施工説明書の取り付け例

施工説明書に書かれていなかったことで注意点を挙げるとするなら、元の給水配管の接続部に入っているパッキンは、固着していてもちゃんと外してしまうという点です。分岐式電磁弁の2カ所の配管接続部は、それぞれ必要なパッキンが付属していますので、それを使用します。水道のパッキンは一度外すと新品に交換するのが普通のようですし、二重パッキンにならないよう、既存のパッキンは取り除きました。

ちなみに給水配管の接続部を外す際、上のホースの中の水がダラーっと出てきて水浸しになるのでは、と警戒していましたが、ポタっと1滴落ちただけで、杞憂に終わりました。ストローの端を押さえて中身を落ちなくするのと同じ理屈だったようです。

水栓側に固着していたノンアスベストパッキンは外して、製品付属のゴムパッキンを使いました

工具の面では、配管の接続部のナットは幅23mmと26mmの2種類があるため、これらに対応するスパナやモンキーレンチが必要になります。このサイズは説明書に書かれていません。水道の配管として当たり前なのかもしれませんが、私は知らなかったので、シンク下の配管と製品本体の双方を実際に測って、必要なサイズの工具を用意しました。

分岐式電磁弁と接続する23mm、26mmのナットには、それぞれ10N・m、15N・mという締め付けトルク値(目安)も指定されているので、締め付けにはトルクレンチを使用しました。また、接続部は配管の途中なので、締め付けの際に下側が回転してしまわないよう固定するスパナなどがもう1本必要になります。

このほかカートリッジを固定するホルダーは、木ねじで壁に固定します。シンク下はあまり作業のしやすい場所ではないため、電動ドライバーもほぼ必須といえそうです。

これらを徹底した結果でしょうか、まず原水を数分間流す試運転で水漏れなどはありませんでした。浄水システム側の設置後もとくにトラブルなく通水でき、無事に施工が完了、説明書通りに動作することに成功しました。

トルクレンチとモンキーレンチを用意しました。トルクレンチはアダプター(モンキーヘッド)で有効長が長くなっているので、減算したトルク値を設定します
ナットの幅は23mmと26mmの2種類です
ホルダーは木ねじで固定します
ダミーカートリッジを浄水カートリッジに交換するとほぼ完成
カートリッジをホルダーに固定して、すべて完了しました。カートリッジはホルダーから外すと、コントローラー部分と一緒に手前に引き出せます
今の所、引き出しを閉めても余裕があります。見えている必要はないので、もっと上に取り付けてもOKです

取付直後は、浄水システムのホースなど内部に空気が残っているため、浄水モードに切り替えると「ブパッ」と勢いよく水が出てちょっと焦りましたが(断水後のアレです)、内部の空気が抜けてしまうと、そうした挙動はなくなりました。

製品のキモになっている分岐式電磁弁は、細い配線もむき出しなので、シンク下での配置は少し気を使う必要がありそうです。私は、細い配線が外に出ている部分が壁に当たりそうだったので、別途用意したショック吸収スポンジを貼り付けました。また、分岐式電磁弁のユニットが手前に傾いてしまってシンクの引き出しにぶつからないよう、結束バンドを使ってゆるく位置を固定しました。

ランニングコストが優秀

私がトレビーノ ブランチを導入した主な理由は、元の水栓そのままで使えるので見た目がスッキリしていることと、カートリッジの浄水能力が高く、たっぷり使えて、コストパフォーマンスもそれまでのシステムより優れているからです。

私は2020年の夏にリノベーション済みの住戸に引っ越したので、キッチンまわりやシンクも新品のリクシルのものなのですが、水栓は、よくある蛇口直結型の浄水器が取り付けられない形状でした。浄水器を使う場合は、専用の浄水スパウト(蛇口)を購入し交換した上で、内部に浄水フィルターカートリッジを装着するという仕組みです。スパウトの交換自体は簡単です。浄水スパウトはすこし太いものの、見た目はスッキリしていますし、シンプルにスパウトの先端にあるレバーで浄水・シャワー・原水と切り替える方式で、概ね問題なく使えていました。

これまでの浄水スパウト。先端のレバーで浄水・シャワー・原水を切り替えます
浄水のカートリッジはスパウトに内蔵するタイプ。3カ月で交換が推奨されています
リクシルのシンクに最初からついてたスパウト(左)と、浄水スパウト(右)
トレビーノ ブランチを装着した後は元のスパウトに戻しました

ただ、1年ほど使って気になってきたのは、恐らくカートリッジのサイズからくる交換頻度の高さと、その価格です。

カートリッジは1日10リットルの使用を想定することが多いのですが、これを基準にすると、私が使っていたリクシルの高性能なカートリッジ(ろ過は17種類)「JF-22」は、総ろ過流量が900リットルとなっています。1日10リットルだと交換目安は3カ月ですが、実は、内部に残留するろ過物質を考慮し、流量に関係なく3カ月で交換を推奨している、と定期購入の解約時に説明がありました。カートリッジ単体で4,510円なので、推奨通り3カ月毎に交換すると、1年で18,040円かかります。

一方のトレビーノ ブランチのカートリッジは、シンクの下に設置できる大きなサイズということもあってか、浄水能力は18種類、総ろ過流量は4,000リットル、1日10リットル想定で1年使えると案内されています。カートリッジ単体の価格は9,130円です(量販店の10%ポイント還元を反映すると8,217円)。

こうしたことから、カートリッジのランニングコストは、リクシルのそれと比べて半分以下にまで下がることが分かります。年間のコストに9,000円近い差があるなら、トレビーノ ブランチの45,870円相当の本体(55,000円-9,130円)も5年程度で差が埋まることになります。

逆に5年以内ならたいして差がないとも言えますが、東レだけあってカートリッジの浄水能力は18種類と、家庭用ではこれ以上は望めないレベルです。実際の水も嫌な匂いは皆無で、マイルドな飲み心地です。浄水の勢いも、我が家では毎分3リットルという仕様以上(実測で10秒あたり500ml強)で、以前のリクシルの浄水スパウトよりも勢いが良くなりました。

ちなみに浄水を1日10リットル使うというのは複数人世帯の想定で、東レの調査によれば5人世帯で9リットル、1人世帯は3リットルとしています。一人暮らしの我が家も、概算ですが浄水の利用は1日3リットル前後だと思います。これは製品の想定の1/3程度なので、システムが流量だけで判定していた場合、交換時期は1年より伸びる可能性もあります(限度はあると思いますが)。

それまでのリクシルのシステムと比較してコスト的な答えは5年後以降ですが、浄水能力や勢いなどの仕様はそれまでより向上しましたし、交換のタイミングが最低でも1年に1回でよくなったので、より気軽になりました。

在宅ワークや自炊の機会の増加で、毎朝コーヒーメーカーで淹れるコーヒー用、飲水用、料理用と、浄水器の利用は以前より増えました。シンク下の空いたスペースに大きなカートリッジを装着でき、少なくとも1年は交換不要でたっぷり使えるので、最終的には今回の浄水システムにかなり満足しています。

太田 亮三