いつモノコト

フィルムカメラの電池事情 入手難の電池はアダプターや充電式で代用

「4LR44なんて、持ってないなぁ」

ヨドバシ.comやビックカメラ.comで探しても売っていません。4SR44であればありましたが、1個1,910円もします。本来であれば、それがいいのでしょうが、Amazonで見つけた10個で699円の4LR44を買ってみました。

デジタルカメラは当然のこと、フィルムカメラでも電池が必要になります。機械式シャッターで露出計を内蔵していなかったり、電池がなくても動いたりするカメラもありますが、自動化された多くのカメラは電池が必要です。

ただし、中にはすでに入手が難しくなった電池を採用しているカメラも少なくありません。

最近は、一部でフィルムカメラが流行っているようですが、これから始めようと思う方は、購入の際は電池についてもお店の人に聞くようにした方がいいかと思います。

手放すカメラのためにちょっと変わった電池を購入

4LR44や4SR44とは電池の種類です。

この電池を購入したのは、タムロンのブロニカETR Siという120フィルムを使う645判の一眼レフカメラを動かすためです。ほとんど使っておらず手放すことにしたのですが、電池切れで露出計やシャッター速度の変化など、動作確認ができませんでした。

冒頭の一言は、電池を交換しようと電池ブタを外したときに思わず漏れた一言でした。ETR Siを入れていたカメラバックには予備の電池があったのですが、放電しきっていたようで使えませんでした。そこで、Amazonで安い4LR44を購入したという次第です。値段からして期待できませんが、動作のテストだけですし、10個もあればどれか使えるだろうと注文しました。

ブロニカETR Siでは4SR44もしくは4LR44を1個使います。動作確認程度ですし、1個あればよかったのですが、1個の4SR44よりも安い4LR44の10個セットを購入しました

4LR44なんて電池は知らないという人もいるでしょう。ただ、名前からなんとなく想像できると思います。LR44のボタン電池を4つつなげたものです。そのため電圧は6V(4SR44は6.2V)あります。ただし、単純に重ねただけでなく、筒に収められているので、LR44を4個よりも、4LR44のほうが若干長く太いため、単純にLR44を4個で代用するわけにもいきません。

今回は、安く購入できたこともあり、カメラが4LR44でも4SR44でもよかったのは、助かりました。LとSの違いは、電池に使われている素材の違いです。Sとつくのは酸化銀電池で、Lはアルカリ電池です。酸化銀電池は電圧1.55Vで最後まで電圧が低くなりづらい特徴があります。アルカリ電池のほうはその廉価版ともいえ、電圧は1.5Vで使っているうちに下がっていきます。ちなみに、Rの文字は円筒形をしているという意味で、数字は大きさを表しています。41(Φ7.9×3.6mm)、43(φ11.6×4.2mm)、44(Φ11.6×5.4mm)です。つまり、4LR44であれば、L=アルカリ電池で、R=円筒形で、44=Φ11.6×5.4mmの電池が4個くっついたものということになります。

SR44でもLR44でも形は一緒ですし、電圧も似たようなものですが、電気製品によっては両方使えるものもあれば、SR44でなければいけないものもあります。これは、その製品の回路設計や必要な電気特性次第です。形が同じだからといって、常にアルカリ電池が使えるとは限りません。基本的には製品ごとに指定されたものを選ぶ必要があります。

ちなみに今回は、10個699円の4LR44の電池でも無事動作しました。もし使えなかったら、電池の不良を疑うことになり、1,910円の4SR44を購入して試すことになったかもしれません。

古いフィルムカメラでよく使われるMR-9はアダプターで使う

ヨドバシ.comやビックカメラ.comで4LR44を探した時に気づいたのが、電池アダプターの存在です。SR44やLR44電池を4個入れて、4LR44もしくは4SR44相当として使えるようです。メーカーをみると、関東カメラでした。

同社の電池アダプターは持っています。MR-9(H-D)という電池を使うカメラ用のアダプターです。

MR-9電池は、M=水銀を使う、R=円筒形で、9というサイズの電池ということになります。電圧は1.35V。円形ではあるものの、完全に筒状というわけではなく、段差のあるちょっと変な形をしている電池です。この電池を使う古いフィルムカメラは少なくないのですが、現在国内で水銀を使う電池を作っているメーカーはありません。アルカリを使った互換品もあったのですが、現在は入手できないようです。アダプターで使うのが現実的です。

デュラセラの625Aはすでに販売終了してしまいましたが、水銀ではなくアルカリを使用したMR-9の互換電池でした。ただし電圧は1.5Vなので、カメラによっては正常に動作しないものものもあります

既存のボタン電池で、MR-9電池の代わりに使えるようになる、この関東カメラのアダプターはいわば定番商品です。普通に売られているボタン電池が利用できます。古いフィルムカメラを使っている人であれば、何個か持っているのではないでしょうか。

関東カメラのMR-9用のアダプターは2種類。SR43(1.55V)の電池を使い電圧(1.35V)と形状の両方をあわせるものと、SR44/LR44の電池を使って電圧はそのままに形状だけ変えるものがあります。

MR-9を使用するカメラでは、アダプターを使うのが定番です。左はデュラセラの互換電池、中央はSR43を使い電圧を変換するもの。右は、LR44もしくはSR44を使い、形状のみを変更するものです

どちらを使うかはカメラによって異なります。一見すると電圧を変換した方が良さそうに思えますが、電流に制限が出てしまいます。多少の電圧の違いがあっても動作し、多くの電流を必要とするのであれば、無変換型のほうが適しています。この辺りは、同社のWebサイトに適合表があるので助かります。

そのほかH-B、H-C、HM-N、HM-4N、V27PX(電圧変換あり・なし)、MR-50、H-2Dといった水銀電池用のアダプターもあるようです。

なお、最近UN(ユーエヌ)からも、電圧無変換型のUNX-8636が発売されました。こういった製品が、新発売されるということは、やはりフィルムカメラもちょっと流行ってきているということなのでしょうか。

ライツミノルタCLでは、MR-9の特異な電池の形状を生かして、ちょうどハマるようにしています。また、複数のMR-9を使う電池では、当然複数のアダプターが必要になります。AGFA Optima1535では、MR-9を3つも使います

ストックしてあるカメラ用の電池を紹介

MR-9のアダプターを探すため電池をストックしている箱を見ていたら、ほかにもカメラ用の電池が出てきました。パッケージにカメラ用と書かれていたり、フィルムっぽいデザインが施されていたりするものもあります。すでに、使うカメラが手元になかったり、なぜこの電池があるのか分からなかったりするものもありますが、少し紹介していきます。

「CR1/3N」は、あたまにCとつくのでリチウム電池です。電圧は3Vで、ちょうどLR44やSR44を2個重ねた大きさです。以前、借りて使っていたライカM7用に購入したのですが、返却してしまったので電池だけ残っています。こちらも国内メーカーで作っているところはなく、カメラ専門店以外での入手性はよくありません。

CR1/3N。LR44を2つ重ねたような電池です。もちろん、LR44を2個重ねて使ってもいいのですが、カメラによっては取り付けにくかったり、電池を外しづらかったりするので、やはりCR1/3Nを使うのが無難です

「CR123A」も、あたまにCとつくので、リチウム電池です。電圧は3Vになります。私が持っているカメラとしては、ニコン28Tiで使います。

そのほかにも使っていた気がするのですが、思い出せたのは、このニコンのフィルムコンパクトカメラだけでした。最近はコンビニエンスストアなどでは見かけなくなりましたが、電気店などでは売っており、それほど入手性は悪くありません。

CR123A。筒状の電池です。フィルム一眼レフカメラに2本入れて6Vとして使われることが多かったようです。フィルムのパーフォレーションを模したデザインがちょっと可愛いです

「CR-P2」もありました。CR123Aを横に2つくっつけたようなものです。そのため電圧は6Vになります。こちらも、まだ入手できるようです。ただ、なぜこの電池を持っているのか、どのカメラで使っていたのか、まったく思い出せません。使用期限は10-2012とあるので、かなり昔に購入したのだと思います。

同様に円筒形の電池を2つ並べたようなものとしては、「2CR5」も使っていたと思うのですが残っていませんでした。こちらも、さっぱり思い出せません。調べてみるとキヤノンの一眼レフカメラでの採用が多かったようです。

やはりどこでも売っているというわけではありませんが、電気店などで購入できます。

CR-P2。調べてみると、ニコンF-601や全自動のコンパクトカメラなどで使われていたようです

頻繁に使うCR2は怪しいけど充電池を使用

「CR2」は、私にとってMR-9と並んで使用頻度の高い電池です。あたまにCとつくのでリチウム電池です。電圧は3Vになります。インスタントカメラのチェキにも使われている電池なのでご存知の方も多いのではないでしょうか。

CR2は、現行品で入手性も悪くありません。ただ、使うカメラが多いので、私は充電式のものを使っています。容量は普通のCR2と比べて少ないのですが、電池を頻繁に買うよりは便利に使えています。先日、追加で購入したくらいです。

充電式のCR2です。リチウムイオンで3Vで、280mAhと300mAhのものになります。普通のCR2の半分以下の容量なので「あれ?もう電池切れか」ということが多いのですが、買いに行かなくていいというのはやはり楽です

Amazonや楽天などで買えますが、大手量販店などでは扱っていないようです。エネルギー密度が低くPSEマークは不要のものの、それを考慮しても怪しさはぬぐえません。電圧も3Vと書いてあるものの、テスターを当ててみるとちょっと高めの数値が出てきます。

今のところ、この電池を使ってもカメラはちゃんと動作していますし、壊れたことはないのですが、いわゆる自己責任での利用になると思います。使っていてこう書くのもなんですが、積極的に利用は勧めづらいものがあります。

手持ちの円筒形の電池を並べてみました。おそらくカメラの大きさや必要な電圧によって使用する電池が選ばれてきたのだと思います。手前の列、左からSR43、LR44。後列左から、MR-9互換のデュラセラ625A(1.5V。MR-9は1.35V)、CR-1/3N(3V)、4LR44(6V)、充電タイプのCR2(3V)、CR123A(3V)です

乾電池を使用する製品自体が減ってきているので、今後生産終了するかもしれないという不安はありますが、上記のように古いフィルムカメラでも大抵はなんとかなります。ただ、ある程度共通化されていれば、もう少し楽だったのではないかと思えます。

問題になるのがデジタルカメラです。古い製品をあえて使うのか? というのはさておき、ほとんどのデジタルカメラで専用のリチウムイオン充電池を使います。現行製品でも同じ形状/電圧の充電池が使われ続けていればいいのですが、中には入手が難しいものもあります。充電池は繰り返し使えますが、それでも使用回数に限界はあり、いつかは使えなくなってしまいます。

大きさや、必要な最大電流の違いなどもあり難しいとも聞きますが、そろそろメーカーの壁を越えて共通規格の電池が出てきてくれないかとも思えます。

猪狩友則

フリーの編集者、ライター。アサヒパソコン編集部を経て、2006年から休刊までアサヒカメラ編集部で編集者。その他ムック等の編集、ソフトウェアの使い方や各種仕組み解説、スマートフォン関連の執筆もおこなう。趣味はマイル修行。