いつモノコト

「本当の定規」を試す。見た目は個性的、でも実は合理的

コクヨ「本当の定規」の30cm版と15cm版

コクヨの「本当の定規」という製品がある。Amazon.co.jpなどで15cm版が1,100円、コクヨ直営店では30cm版が2,178円で販売されている。モノとしてはシンプルなステンレス直定規なのだが、「目盛り」に特徴があり、一般販売が開始されて以来、Amazonなどではプレミア価格の付く品薄状態となっている。

普通の定規の目盛りは1mmごとに線が引いてあるが、「本当の定規」には2mmごとに1mm幅の線、反対側には1mmごとに0.5mm幅の線が引いてある。ちょっと変わったデザインだが、これは非常に合理的というか、文字通り「本当の定規はこうあるべき」とも言えるデザインなのだ。

普通の定規と「本当の定規」(上)

普通の定規の目盛りの線、これはミクロ視点で見ると、目盛り自体に太さがある「面」となっている。太さのない線は視認できないからだ。この線の太さ、実際にはかなり細いので正確に測定できないが、だいたい0.1mmくらいだと思われる。

定規で長さを測るときはこの目盛り線を見るわけだが、線の太さが精度の限界となる。目盛り線のどの位置を見るかにより、始点と終点を合わせて、最大で線の太さの2倍の誤差が生じてしまう。

「本当の定規」の目盛り

一方の「本当の定規」で目盛りとなるのは、面と面の「境界線」だ。「境界線」には太さはないので、原理的には精度の限界はない。

といっても実際のところ、視力や器用さ、定規自体の厚みによる視差などがあるので、誤差は生じる。日常的な利用シーンで普通の定規と精度の差を感じることは少ないだろう。

しかし精度以外の面でのメリットもある。細かい目盛りが読みやすいのだ。

たとえばコレだと9.5mmと10mmのあいだで10mm寄りだから9.8mmくらいかなー、と読める。左側が合ってないケド

まず標準の側は2mmおきに1mm幅の線が引いてあり、線のどちらかで偶数ミリ・奇数ミリ、と慣れると、何ミリかがわかりやすい。また、そもそも線が太いので、どの線に長さが一致するかも見やすい。

44歳の筆者は例のオジサンローガンズの一員だが、それでも0.5mm単位はもちろん、0.2mm単位くらいで読むことが可能だ。筆者は小型製品のレビュー仕事が多いので、製品サイズ測定時などでノギスが使えないときは、コレを使うことになりそうだ。

一般ルートで市販が開始されているのは15cm版だ。「大は小を兼ねる」の精神で30cm版の方が欲しいという人も少なくないと思うが、製品自体の厚みは30cm版が1mm、15cm版が0.5mmと、30cm版は厚みがある。厚みがあると、視差で誤差が出やすいので、15cmで済む用事ならば15cm版を選ぶべきだろう。

直営店専売の30cm版は厚みが1mm。15cm版は0.5mm

ちなみにこの「本当の定規」と同じ目盛りを採用したノギスもコクヨの直営店「THINK OF THINGS」で売られている。ノギスは正確かつ読みやすい目盛りが生命線なので、この本当の定規タイプの目盛りとの相性が良い。むしろすべてのノギスもこうあるべきだとすら思う。

ただし本当の定規版のノギスは価格が9,800円(税別)とそこそこの価格だ。電子ノギスが2,000円程度で買えてしまうご時世なので、値を目で読まないといけないノギスに1万円を出せるか、という話でもあるが、電池に頼らないノギスが欲しい人は、そちらも検討してはいかがだろうか。

ミツトヨとコクヨのコラボ製品「バーニヤノギス“本当の定規”バージョン N-15K」
白根 雅彦