いつモノコト

入出金明細表示が無期限。紙の通帳がない、りそな銀行「スマート口座」

りそな銀行の「スマート口座」。スマホからはこのりそなグループアプリで利用する

近年、銀行では通帳のデジタル化が進んでいる。明細はすべて電子で管理し、スマホやPCで参照できるようにする代わりに、紙の通帳は原則廃止、どうしても必要な場合は手数料を徴収するというのが、多くに共通するパターンだ。

もっとも中には、以前から継続している口座であっても、デジタルに切り替えた瞬間、それ以前のものが見えなくなってしまう「みずほe-口座」のように、メリットよりもデメリットのほうが大きいと感じさせる場合もある。よく読めば書いてあると言っても、思ってもみなかった落とし穴まで回避するのは難しいだろう。

みずほ銀行でe-口座にしたら記帳できなくなった話

その一方で、デジタルならではの利便性を前面に打ち出したサービスもある。今回筆者が新しく口座を作成した、りそな銀行の「スマート口座」がそれだ。開設に至ったきっかけと、口座開設のプロセス、さらに実際のアプリの使い勝手について紹介する。

きっかけは「PayPay銀行」と「入出金明細の表示期間無期限」

筆者自身、すでに業務用とプライベート用、それぞれの銀行口座を保有しており、これまで特に不自由を感じていなかったのだが、今回新規に銀行口座を作ろうと思ったきっかけは、プライベートのサブ口座として使っている、ジャパンネット銀行(現PayPay銀行)の銀行名の変更だ。

銀行の名前が変わったからといって、急にサービスが悪化するとは思わないが、名義の変更をきっかけに利用者の層が変わり、その影響で提供される商品やサービスの性質がじわじわと変化していくのは、どの業界にもある話。用心しておくに越したことはない。

PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)。「PayPayを1番おトクに使える」が売り文句だが、筆者にはあまり響かない

そのようなことを1月頃にぼんやりと考えていたところ、たまたま目に留まったのが、アプリの入出金明細の表示期間を13カ月から無期限に延長するという、りそな銀行のリリースだ。その内容を詳しくチェックしているうちに、同銀行のアプリ「りそなグループアプリ」を利用できる、同銀行のスマート口座を開設してみようと、思い立ったというわけだ。

りそな銀行の1月22日付のリリース。「りそなグループアプリ」の入出金明細の表示期間が13カ月から無制限になることが記載されている

15分で口座開設完了、当日中に口座番号がメールで通知

りそな銀行の「スマート口座」は、スマホを使って口座を開設できることが特徴だ。店舗や郵送での開設も可能だが、スマホであればなによりも来店不要で、自宅にいながらにして口座の開設が行なえる。捺印も必要なければ、何らかの確認書類を郵送する手間もかからない。

最近は多くの銀行で同様のサービスを提供しているが、スマホでの口座開設はその銀行での初めての口座に限られるなど、銀行によっては条件がつくことも多い。なによりりそな銀行の場合、いったん口座を作ってしまえば無期限に取引明細が参照できるのが、筆者から見た大きなメリットだ。

りそなスマート口座」。紙の通帳が発行されないイマドキの銀行口座だ

銀行に口座を開くにあたり、過去取引の明細がいつまで見られるかは、個人的には重要なファクターだ。

確定申告で必要な前年分すら振り返れないのは論外だが、それらの期間が過ぎたからといって消えてよいわけではない。理想はその口座を保有している間ずっと参照できることで、今回のりそな銀行は、その条件にぴったり当てはまる。

実際の申し込みは、通常取引に使うアプリとは異なる「りそな 口座開設アプリ」なる専用アプリを用い、手元に免許証などの身分証明証を用意した上で行なう。ステップとしては、メール認証を行なったのち、免許証を読み取って名前や住所を自動入力し、その後写真を撮影して申込を完了させる流れだ。

この申込アプリは、免許証は表裏に加えて厚みを撮影しなくてはいけない面倒さはあるが、住所氏名などを手入力する必要がなかったりと、手間を最大限少なくする工夫が見て取れる。少なくとも、入力すべき項目が分からずに手元の書類を探し回ったり、自動入力だけでは完了せずに手動での補完を迫られたりすることなく、極めてスムーズでストレスはない。

スマート口座の開設には専用アプリを使用する(左)。本人確認書類は免許証のほかにマイナンバーカードも利用できる(中)。本人確認書類の撮影、および本人の顔写真の撮影はシャッターを押すことなく自動的に行われる(右)

以上の作業を経て口座開設は完了。当日届いたメールの控えを見ると、最初の認証メールが17時49分、受付完了のメールが18時02分に来ているので、口座開設に要した作業時間は約15分程度。あっという間だ。そのあと支店名・口座番号の連絡が19時01分に来ているので、最初に口座開設アプリをダウンロードしてから1時間半ほどで、口座番号が手に入ったことになる。

このあと、キャッシュカードが届くまでは2週間程度を要したが、どれも事務処理に必要な最小限の日数という印象で、ストレスはまったくなかった。一部銀行では、キャッシュカードが届くまで口座番号がわからない場合も多いが、それらを待たずに先に使えるようになるのは、急ぎの場合には便利だろう。

アプリは生体認証でログイン可能で使い勝手も良好。注意点は?

りそなグループアプリの使い勝手も触れておこう。筆者はiPhoneにインストールして使用しているが、アプリの操作性は極めて軽快。起動のみ少々時間がかかるが、Face IDによるログインが可能なので、手間のかからなさも込みで考えると、ストレスになるレベルではない。

銀行系アプリは、セキュリティを過度に重視するあまりとんでもなく動きが重かったり、画面がキャンペーンで埋め尽くされていて辟易することも少なくないが、りそなのアプリはこうした点にも十分配慮されている印象だ。

正直なところ、既存の銀行でこれだけユーザビリティまわりが優れたアプリが出てくるとは思っておらず、いい意味で裏切られたというのが率直な感想だ。強いて挙げれば、ホーム画面左上の「アドバイス」を一気に既読にできないのが気になるくらいだ。

りそなグループアプリのホーム画面。キャンペーンやお知らせだらけの他行よりすっきりしていて見やすい(左)。普通預金明細。過去分を無制限に見られるのが売りだ。明細ごとにメモを入力する機能もある(中)。iPhoneであればFace IDでログインできる(右)

筆者の場合、現時点ではあくまでも予備の銀行口座という位置づけなので、まだ取引実績はほとんどないのだが、アプリを少し使えばわかるストレスフリーの操作性は、メインで使ってみたいと思わせるものはある。今後しばらくかけて、仕事用のメイン口座をこちらに移し替えることも視野にいれつつ、機能をチェックしていきたいと思っている。

ひとつだけ注意点としては、りそな銀行の実店舗を持たないインターネット支店(アルファ支店・ベータ支店)に口座を開設しようと思っていたところ、インターネット支店は機能に制限があることがわかり、自宅から少し離れた場所にある実店舗にぶら下がる形での、口座開設とならざるを得なかったことだ。

ネット上での取引に使う口座であれば、支店名から居住地が大雑把に類推できてしまう実店舗ではなく、支店名に地名を含まないインターネット支店であることが必須条件という場合も多いはず。筆者の場合は「まあ別にいいか」というレベルで済んだが、なかには困る人もいるだろう。将来的にはこうした点もシームレスに選択できるようになってほしいところだ。

インターネット支店(アルファ支店・ベータ支店)は機能にいくつか制約がある
山口真弘