いつモノコト
カメラ・マイク保管の決定版、防湿庫を導入
2020年12月5日 09:15
20年ほど趣味でカメラ・写真を楽しみ、仕事でも活用してきたが、これまで叶わなかったのが「防湿庫」の導入だった。安価な代替策があるのと、単純に設置スペースがなかったからだ。設置スペースに関しては、足の踏み場もないほどの汚部屋だったことが原因だが……引っ越しによりこうした場所の問題が解決したので、手持ちの機材をまるごと収納できるサイズの防湿庫の導入に踏み切った。
購入したの東洋リビングの「ED-55CAT(BW)」で、ボディや庫内が白いメーカー出荷限定の「Black&White」モデルだ。ヨドバシカメラでもメーカー出荷品として注文でき、価格は37,380円(税込)だった。
ここで言う防湿庫とは、カメラやレンズなどの機材を湿気から守るための「除湿機能を備えた保管庫」。
東洋リビングは、1974年に除湿機能の中心部である電子ドライユニットを世界で初めて開発したメーカーで、1982年には全自動の防湿庫「オートドライ」を自社で展開。現在は、LED光と光触媒機構により消臭・抗菌・防カビというクリーン機能を備えた除湿ユニット「オートクリーンドライ」搭載モデルをカメラ向けとして展開している。クリーン機能を省いた「オートドライ」モデルや、カメラ以外にも食品や工業向け、楽器や美術品向けなどのシリーズもある。
「ED-55CAT(BW)」は「オートクリーンドライ」対応モデルの中では小型の部類で、庫内容量は53リットルだ。庫内湿度は30~50%RHの間で任意に設定できる。棚は引き出しになっており、奥に置いた物も取り出しやすいほか、棚の高さは比較的自由に変更できる。
筆者が購入した「Black&White」モデルはボディが白く内部の壁も白いため、庫内が無灯でもある程度は見やすい。強化ガラスの扉はアルミのハンドルが一体になっており、余分な突起がなくスッキリとしている。パッキンもしっかりとしており、マグネットで「パタン」としっかり閉じる。
防湿庫の屋根部分はトップテーブルとして使用でき、バッテリーの充電器などに使えるコンセントケーブルも用意されている。残念なのは、小型モデルだからか、庫内を照らすLEDが用意されていない点。大型モデルでは搭載されているが、モデルの大小を問わず搭載してほしい機能だ。
実際の運用はシンプルで、初めて電源を入れた後は1日ほど空運転するよう案内されており、それが終われば、後はカメラを入れておくだけだ。電子ドライユニットのメンテナンスは、防湿庫の背面で外に露出している部分のホコリをたまに払うといった程度で、全自動と謳われる通り日常的なメンテナンスは不要だ。
扉を開けると庫内の湿度は上がるが、赤いLEDが点灯して除湿運転が始まると、数時間で設定した湿度に戻る。湿度の維持は、6時間をひとつのサイクルとしてユニット内で湿気の吸着や乾燥能力の再生が行なわれる。全自動なので、ユーザーが操作するのは湿度のコントロールダイヤルだけだ。筆者は、湿度は30%RHぐらいになるようコントロールダイヤルは「低」側に設定し、最初は念の為にテストーの温湿度計「testo 608-H2」でも湿度をチェックした。ガラス扉の内側に搭載される湿度計はバイメタル式で追従性には劣るが、精度は高く庫内の湿度計としては十分だ。
少し余裕のあるサイズが吉
防湿庫を選ぶ際に一番難しいのは、サイズ選びだろう。利便性の面では大きいに越したことはないのだが、安い買い物ではないのと、部屋の中で無駄に存在感が出るサイズは避けたい。メーカーは「ED-55CAT」の収納目安を「一眼レフ本体が12台」と案内しているが、本体の台数だけではピンとこない。実際には本体1台に対してレンズを複数本収納する予定だし、どうせなら(除湿はそれほど必要ない)フラッシュ(ストロボ)などの関連機器もまとめて入れておきたい。庫内の棚のサイズを入念にチェックしたり、店頭のデモ機に触れたりして検討を重ね、53リットルのモデルなら手持ちの機材をすべて入れて、少し余裕があるだろうということになった。
一昔前は大型のデジタル一眼レフのボディや大型のズームレンズ、コンパクトなデジタル一眼カメラのシステムを所有していたが、デジタルカメラの本体をニコンの「Z6」1台に絞ってからは、対応レンズも2本にまで絞っている。
一方、あまりサイズは大きくないものの、フィルムカメラのボディや、それに合わせるマニュアルの単焦点レンズが最近になって増えている。また、湿気にあまり強くないコンデンサーマイクもいくつか所有しているため、こちらも防湿庫で保管することにした。
防湿庫が来てみると「そういえばアレも防湿庫で保管しようか」といろいろと増えてくるので、手持ちの機材ギリギリの容量ではなく、少し余裕のあるサイズを選ぶのがいいのではないかと思う。
乾燥はドライボックスでもOK。しかし使い勝手は段違いで防湿庫
防湿庫を導入して感じる、筆者にとって見逃せないメリットは、取り出しやすさと中身の見やすさだ。見るからに当たり前のことのようだが、防湿庫以外ではなかなか実現が難しいのだ。
カメラ用品店では「ドライボックス」という、フタにパッキンが付いたプラスチックケースが販売されており、こうしたケースに乾燥剤と一緒にカメラを入れておけば、乾燥剤の使用期限には注意する必要があるものの、ひとまず乾燥した環境でカメラを保管する事が可能だ。筆者もこれまではドライボックスを利用してきた。安価だし、機材が増えればドライボックスを追加すればいい。
しかしドライボックスの隠れたデメリットは、サッと取り出せないことと、中身が分かりにくいことだと思う。ドライボックスは比較的小型の製品が多いので、機材が多かったり増えたりすると複数のドライボックスを使うことになり、ドライボックスを移動させたり中身を確認したりといったことを毎回行なうことになる。
仕事でカメラを使う場合はそれでも問題ないが、「今日は天気もいいし、カメラを持ってどこか行こうかな……」と曖昧に思いついた程度だと、機材が詰まって重いドライボックスを移動させて、フタを開けてあれこれ中身を確認するといった心理的ハードルがモチベーションを上回ってしまい、「また次の機会でいいか……」と後回し・先送りになってしまう場合もある。
防湿庫はコンセントが必要で、クローゼットの中ではなく部屋の中で一定の場所を専有する代わりに、扉を開けるだけでカメラを取り出せる。まるで冷蔵庫からミルクを取り出すように簡単で、使った後も扉を開け棚にカメラを置くだけだ。至極当たり前のことなのだが、ドライボックスの中でパズルのようにカメラやレンズの場所を調整して収納し、そのドライボックスを運んだり重ねたりといったことを繰り返していた環境と比べれば、「扉を開けて置くだけ」というのは劇的な変化なのだ。
また、収納しているカメラやレンズが常に見えるというのも、地味に大きいポイントだと感じている。
筆者にとって「Z6」やそのレンズは仕事用という意味合いが強いが、フィルムカメラは完全に趣味用であり、モチベーションが利用頻度に直結している。長年の思い入れ、あるいはこだわりを持って選んだものばかりだし、そうしたカメラやレンズ、フィルムのパッケージが目に入る度に「あの場所に写真を撮りに行こうか」と、ふと考えるきっかけになる。
キャンプや旅行は準備の時から楽しいように、趣味の道具はいつでも見られて手に取れて、出かける前から楽しくなるというのも大切な要素だと思う。防湿庫はショーケースというほど華々しくはないが、自分の持っている機材がいつも目に入ることで、構想を練ったりモチベーションを維持したりしやすくなると感じている。
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で外出の機会は減っているが、こうしたタイミングこそ、カメラの保管環境の見直しにはもってこいではないだろうか。最適な環境で保管しつつ、カメラを持って出かける日を想像し構想を練るのに、防湿庫の全自動の機能、出し入れの簡単さ、ガラス扉による一覧性の高さは一助になってくれている。