いつモノコト
取材にも趣味にもちょうどいいカメラ。LUMIX TX2を使う理由
2020年8月21日 09:41
メインで使っているデジタルカメラは? と問われれば、LUMIX TX2になります。1.0型センサーで24~360mm相当F3.3~6.4の手ブレ補正付きレンズのコンパクトデジタルカメラです。別に我慢して使っているわけでもありません。カメラ誌で長年新製品の担当をしていた筆者が考えたうえで選びました。小型なレンズ一体型カメラは、なにもレンズ交換式のステップアップのためにあるわけではありませんし、下に見る理由などないのです。
やっぱり小さい方が楽だよね
イベント取材から、プレス向け説明会のスライドの撮影、現地でのちょっとした物撮りなど、仕事で写真を撮らなければいけないシーンは少なくありません。急に入る取材なども考えると、常に鞄の中にカメラを忍ばせている必要があります。
もちろん、大きなレンズ交換式カメラをいつも持っている同業者もいますが、カメラ誌の編集者だと、カメラマンや写真家が同行するなど、必ずしも写真を撮る必要のない仕事も多いものでした。使いもしない大きなデジタルカメラを持ち歩くのは、いつ再発するか分からない四十肩/五十肩を考えると、ちょっと躊躇します。以前、大柄なレンズ交換式デジタルカメラを作っているメーカーの人と雑談をしていて、「鞄の形状どうこうではなく、荷物を軽くするのが重要」と言われたことがあります。小さな鞄で荷物を減らしてみると、それが効いたのか驚くほど肩や腰が痛くなることが減りました。
荷物を減らすのは、仕事をするうえでも重要です。一人で仕事をしているならいいのですが、複数人で仕事をしていると、身軽な人間は必要です。自分の荷物が少なければ、ほかの人の荷物を持ってあげることもできます。
などと、言い訳を書いてみましたが、常に持ち歩くのなら、やはり小さいことは正義です。楽なのです。カメラは持っていなければ写真は撮れませんし、なにより小型化はカメラの歴史そのものでもあります。もちろん今では、スマートフォンで済ませてもいいし、実際に取材でスマートフォンのカメラを使ったこともありますが、まだ少し対応できるシーンが限られているように思えます。
もちろん、大きなセンサーを搭載したレンズ交換式にはメリットがあります。シーンに対して多彩なレンズを交換して対応できますし、画質面でも有利です。望遠レンズで大きなボケを得たり、超広角レンズで広い範囲を収めるということは、コンパクトデジタルカメラでは難しいものです。しかし、それが必要ないならどうでしょう。24~360mmの画角があれば大抵の被写体は納められます。大きなボケや24mmよりも広い画角は、私の仕事ではそれほど必要ではなかったのです。
仕事で携帯するカメラに要求されるのは、その仕事で対応できるカメラです。360mmもあれば、会見に遅れて行ったとしても、後ろのほうの席からでも登壇者をそれなりの大きさで納められます。前モデルのLUMIX TX1と比べて、テレ側が伸びたにも拘わらず画質が向上しているというのもうれしい話じゃないですか。ワイド端ではレンズ先端の3センチまで寄れますから、ちょっとしたマクロ撮影もできます。そのまま誌面に掲載しないまでも、メモ代わりに使うことも多かったので、この対応力は魅力です。
やっぱりちょっと言い訳がましいですね……。
老眼のためにはファインダーは不可欠
使い勝手という部分ではパナソニックのデジタルカメラはいい感じです。多機能なのにメニューが複雑ではなく、どこで設定するんだったっけな? となっても、メニューを一周すれば見つけられます。階層はそれほど深くないけれど、整理されている感じといえばいいでしょうか。正直、この辺りはもっと評価されていいのでは? と思わなくもありません。
操作部材もコンパクトデジタルカメラでは、その大きさから制限が多いのですが、レンズ周りと上面右手側にダイヤルがあるので、絞りやシャッター速度、露出補正にも手間取りません。Q.メニューを呼び出せば、よく使う設定の変更も容易ですし、AFモードやホワイトバランスは一発で設定できるボタンも用意されています。
また、LUMIX TX2には小さいながらもファインダーがあることも魅力でした。その前に使っていたのは、やぱりパナソニックのLUMIX LF1(1/1.7型センサー、28~200mm相当F2~5.9レンズ)でしたが、これにもファインダーがついており、このときにコンパクト機のファインダーの必然性を感じました。別にファインダーを覗いて撮ってこそ写真だ!なんていうつもりはありません。晴天の太陽光下では背面液晶は見づらいものですし、暗所でもファインダーを覗いて撮った方がしっかり構えられブレを抑えられます。
そしてもう一つ、老眼にも効きます。人の目も、レンズの絞りと一緒です。絞り込めば被写界深度は深く(ピント合って見える範囲が広く)なりますし、乱視などのレンズでいうところの収差の改善もされます。暗いところでは、人の瞳も開くため老眼の影響をモロに受けます。記者会見でもプレゼンテーション中は、部屋を暗くすることは少なくありません。プレゼンの画面を撮ろうとしても、カメラの背面液晶は遠ざけてもボヤけてしか見えないのです。きっと大丈夫!とシャッターを切れば、AFでキッチリ合っていることが多いのですが、たとえ見え方がそれほどでなくても、仕事であればあると安心感が違います。
便利なLUMIX TX2+αで写真を楽しく
カメラ誌で仕事をはじめたころ、もう14年くらい前になりますが、屋外でコンパクトデジタルカメラのテスト撮影をしていたところ、カメラを首から下げた見知らぬ人達から、「そんなカメラで撮っていちゃダメだ。アサヒカメラや日本カメラを読みなさい」などと言われたことがあります。もちろん「俺がアサヒカメラだ」などとは言わなかったのですが、やはりいい気分はしませんでした。
いまでは、そう思う人がいるのは分からなくもありません。常に写真のために重いカメラを持てる情熱があるというのは悪い話ではないからです。
ただし、カメラに貴賎なし。そして、小さいカメラだからこそ撮れる写真もあります。センサーサイズが小さく、実焦点距離の短いレンズは自然と被写界深度が深くなります。大きくボケた写真を否定しませんが、パンフォーカス気味の写真もいいものです。さっと取り出せることで撮れるものもあります。
画質面で考えれば1.0型は個人的にはいいサイズです。1/1.7型のカメラとの間には一つの壁があるように思います。もちろん、1.0型とマイクロフォーサーズでも壁はあるのですが、ダメというほどではありません。高感度はやはり大型センサーの方が有利ですし、交換レンズと組み合わせた画質や質感に差はあります。当然、大きさと画質はトレードオフという部分が過分にありますが、どのバランスを良しとするかは人によるのではないでしょうか。
趣味のカメラとして考えたとき、このLUMIX TX2を軸に考えるのも面白いものです。普通の撮影は、オールマイティーに対応できるLUMIX TX2に任せ、趣味な撮影はたとえば単焦点レンズのカメラと組み合わせるといった具合です。それはデジタルでもフィルムでも、レンズ交換式でも一体型でも構いません。
個人的にも、このLUMIX TX2+αという組み合わせは少なくありません。日常であれば、仕事用のLUMIX TX2と、単焦点レンズのフィルムカメラという具合です。フィルムは35mm判のこともあれば、中判カメラということもあります。仕事で、ある程度写真が重視されると分かっているときは、LUMIX TX2とレンズ交換式のデジタルカメラを組み合わせたこともありました。それぞれ違った表現が得られ楽しいものです。もちろん、スマートフォンとLUMIX TX2という組み合わせでも、あっちこっち歩きまわるような旅行では荷物が減らせて気軽です。
1.0型センサーで、ファインダーがあり、このズーム倍率で、フラットボディーというカメラは、意外に他社にはありません。LUMIX TX2の発売は2018年3月。約2年が過ぎました。前モデルのLUMIX TX1(2016年3月発売)からは、撮像素子はそのままにズーム域を広角にも望遠にも広げました。2年経った今年の3月はそろそろか? と思っていたのですが、現時点ではアナウンスはありません。LUMIX TX2でも大きな不満はないものの、次のモデル(TX3?)にはつい期待してしまいます。もっと高感度に強く、できれば広角側がもう少し広く撮れればと思わなくありません。
また、趣味に走った派生モデルがあってもいいのでは、と考えたこともあります。たとえば、モノクロ撮影専用モデルなんてあったら、仕事に使うには厳しいですが、面白そうです。LUMIX TX2のモノクロモードもいい感じですが、カラーフィルターがない分、高感度性能がよくなるのも大歓迎なのです。