いつモノコト

帰ってきたセブンペイ(お金が)

日本のキャッシュレスに大きな影響を与えた「7pay」

7pay(7月のサービス中のもの)

大規模なキャンペーンや政府によるポイント還元事業とともに2019年の話題となった「キャッシュレス」。その中でも大きなトピックだったのがセブン&アイグループの7pay(セブンペイ)だ。

最強コンビニ「セブン-イレブン」が推進するスマートフォン決済サービスの登場に加え、サービス開始の7月1日にはファミリーマートも「ファミペイ」を導入。「コンビニペイ一騎打ち」と話題を集めた。しかし、そのわずか2日後に7payで不正アクセスが発覚。7月4日にはサービスの「一時休止」に追い込まれ、その後9月30日にはサービス終了となった。サービスとしてはわずか3カ月、しかも開始3日目には新規チャージなどが停止されているのため、フル稼働は2日程度であった。


    【7payサービス開始から終了まで】
  • 7月1日:サービス開始(セブン‐イレブンアプリ上に搭載)
  • 7月2日:利用者から「身に覚えのない取引があった」旨の連絡
  • 7月3日:各社ホームページへ「重要なお知らせ」を掲載。海外IPからのアクセスを遮断、クレジット/デビットカードからのチャージ停止
  • 7月4日:店舗レジ/セブン銀行ATMからの現金チャージ停止、新規会員登録を停止
  • 7月5日:「セキュリティ対策プロジェクト」の設置
  • 7月6日:モニタリング体制の強化
  • 7月11日:外部IDによるログイン停止
  • 7月30日:7iDのパスワードリセットの実施
  • 8月1日:サービス廃止を決定
  • 9月30日:サービス廃止(予定)
8月のサービス終了発表時会見

セブン&アイは、不正アクセス問題によりシステムの見直しを続けたものの「サービス提供の継続は困難」と判断。早期の収束となった。被害者は808人、被害額は約3,860万円(8月1日発表の数値)。サービス終了により7payにおける新たな被害の拡大は防げたとはいえ、決済サービスとして最優先されるべき「セキュリティ」がおざなりになっていたことは残念。そして、キャッシュレスやスマホ/アプリ決済が“怖い”といったネガティブなイメージを生み出してしまったのも残念だ。

ともあれ、9月をもってサービスは終了。「払戻」の申込が10月1日からスタートした。申込は、2020年1月10日までなので、7payにまだ残金がある人は、急いで処理をしてほしい

ユーザー登録完了まで14ステップ。とうとう返金!

筆者も7payに残金1,046円が入っていたため、10月に払戻を申請。先日払い戻しを受けることができた。10月8日に払戻の申請を行ない、11月6日に金額の確認案内が届き、12月5日に払い戻しが完了した。

この払い戻しプロセスがなかなか複雑だ。払い戻しは基本的に「セブン-イレブン」アプリから行なう。アプリのパスワード再設定などができない場合は、本人確認が必要なため、フォーム経由で申し込み、2020年1月以降に払戻を行なうとのこと。

まずは、払い戻し情報を入力、アプリの左メニュー[7pay残高・履歴確認]から[7pay]を開いて、上部のお知らせから払い戻しの申請ページに進む。

申込みはこのフォームから行なうのだが、このプロセスが複雑だ。

払い戻しを依頼

メールアドレスと、電話番号・ログインパスワードを入力し、「確認」ボタンをタップして送信。するとメールアドレス宛に、「確認番号」が届く。再び払い戻し申出フォームに戻り、確認番号を入力して「認証」をタップ、すると今度は電話番号にSMSでショートメッセージで「SMS用確認番号」というものが届く。いわゆる二段階認証(多段階認証)だ。そして、SMS用確認番号を番号を入力し「認証」を押すと、登録完了画面が表示され、登録完了メールが送られてくる。申込フォームの開始からここまでで13ステップかかっているが、なにが行なわれたかというと、IDとパスワードが登録されただけである……

払戻フォームで完了までの17ステップ(出典:「7pay残高の払戻しについて」)

あまりの工程の多さに途中で何をやっているのかよくわからなってしまうので、申込フォームに進む前に、専用サイトの「7pay残高の払戻しについて」を一読しておく、もしくは他のスマホやパソコンでサイトを見ながら作業することをおすすめしたい。

この後は、払戻し口座の登録だ。フォームにログインするとSMS認証が入る。フォームではIDやnanacoの利用状況や番号、払い戻し口座などを登録し、申請を行なう。払い戻し方法は、口座振込と、ゆうちょ銀行・郵便局での受け取りの2種類が用意される。

合計で17ステップとなるが、これでとりあえず申し込みは完了だ。

するとしばらく経って(筆者の場合は約1カ月後の11月8日)に払戻金額の案内が届く。これは払戻金額をユーザーに確認させるだけのもので、まだ振込は実行されていない。再度申込フォームにログインし、SMS認証後に払戻し金額が表示される。ここで金額が問題なければ、「確定」ボタンを押すと、ようやく払戻「手続き」が完了となる。なお筆者はこの時点で再びパスワードを失念しており、再度パスワードの再設定を行なった。

そして、さらに1カ月後の12月5日、ようやく払い戻し完了のメールが届いた。銀行口座を見てみると実は11月26日に入金されていたようだ。単に1,046円が戻ってきただけではあるが、なぜか少し達成感を覚える。

安心&安全なキャッシュレスのために

7payの払い戻しは、上記のように非常に複雑ではあったが、セキュリティに配慮されたフローだとは感じた。払戻申請をしながら、「少しでも7payのサービス導入時にやっておけば……」と思わずにはいられない面倒さではあったが、不正アクセス後の対応ということで、慎重を期すに越したことはない。

10月の返金処理開始にあわせて、セブン-イレブン アプリのデザインも一新。7payの幻を拭い去るかのようにリニューアルされた。しかし、7payの躓き、特にセキュリティ対策の軽視が、日本における決済やキャッシュレス推進に与えた影響は小さくはない。〇〇Payの乱立も一段落した中、改めて決済サービス各社には、安心・安全を最優先に取り組んでほしい。

そして、7payに残金が残っている人は、申出期限が迫っている(2020年1月10日)。返金対象の人は、はやめに確認&申請しよう。

臼田勤哉