いつモノコト

「エコタンク」プリンターがスゴイ。4年はインク購入不要かも

エプソン エコタンク搭載プリンター「PX-S160T」

一般家庭で使われているプリンターはインクジェット方式が主流だが、インクカートリッジの交換が手間なこと、そしてインクの値段を割高に感じている人は多いようだ。筆者もそうした1人であり、なんとか手間なく低コストでプリントしたいと考えていた。

ちょうど昨年フリーランスになり事務所兼自宅で仕事をするようになった。そこで10年以上使ってきたプリンター(カラーインクジェット)を買い換えることにした。

プリントしたいものは、請求書や領収書などの帳票類、撮影現場でスタッフに配るスケジュール表や絵コンテなど、いわゆる“書類”が主だ。そのため今回初めて、ビジネス向けのモノクロ専用機を購入してみることにした。筆者は写真も仕事にしているが、作品のプリントが必要な場合は業者に頼んでいるので、モノクロ専用機で問題ないと判断したのだ。

さて前置きが長くなったが、購入したのはエプソンの「PX-S160T」というA4対応の製品だ。エプソンダイレクトショップ価格で19,980円。最大の特徴は「エコタンク」(大容量インクタンク)搭載モデルということ。

エコタンクとは、本体に備えた大容量のタンクにインクを貯めておく方式のことで、一般的な家庭用プリンターに比べて、長期間インク補充の手間がなく、またランニングコストが大幅に低いのがメリットだ。

本体の側面にインクタンクがある。ボトルからインクを注入するのは新鮮な感覚だ

エコタンク搭載プリンターの存在は以前から知っていたが、購入のために改めて調べてみると色々スゴイことになっていた。

まず、1回のインク交換で1年間はインク交換の必要がないとのことだ。さらにランニングコストも驚くほど安く、メーカーでは1枚が約0.3円(税別、用紙別)だとしている。それもそのはずで、140mlとたっぷり入ったインクボトルが1,400円ほどなのだ。

まさに大容量の交換用インクボトル。これは購入時に付属していたもの

そうすると本体が高いんじゃ? と思うのだが、1万円台後半で買えてしまう。さらに驚いたことに、箱を開けるとインクボトルがなんと2本も入っていたのである。つまり2年間はインクを買わなくて良いということになる。

エプソンによると、同梱インク2本で約11,000枚プリントできるという(24カ月で割ると、458枚/月だ)。現状ではそこまでハイペースでプリントしていないので、筆者の場合おそらく3年から4年間、インクを買わずに済みそうだ。従来では考えられないことである。

カートリッジ式と違って、プリントヘッドに繋がったチューブでインクをタンクから供給する仕組み

ところで、これだけランニングコストが安いとプリンターの使い方も変わってくる。

例えば、ちょっと長めのPDFドキュメントなど画面で見るのは大変だと思ったら、じゃんじゃんプリントして楽な姿勢で読んでいる。

また最近では、取扱説明書が紙ではなく電子的に提供されるれるものも少なくないが、よく参照する説明書はページが多くてもプリントしている。タブレット端末などで見る手もある一方、紙ならではの閲覧性の高さというのも健在なのである。

例に挙げたようなことは、従来インク代を気にしてなかなかできなかったことで、ちょっとしたパラダイムシフトだろう。

本機はエコタンク搭載モデルでは最も安いモデルだが、プリント速度も十分速くて問題ない。パソコンやスマホからはWi-Fiでプリントできるので、ケーブルは電源だけというのも助かる。注意点としては、単機能機なのでイメージスキャナやFAX機能は付いていないということだ。

低価格モデルだがWi-Fi接続が可能。他にUSBと有線LAN端子も付いている

エコタンク搭載モデルの国内販売は2016年に始まったが、気がつけば12機種ものラインアップが揃うまでになった。ビジネスモデルの他にも、家庭向けのカラーモデルや複合機モデル、A3対応モデルなどもある。

これまで、こうした大容量インクタンクモデルではエプソンが独走していた感があるが、キヤノンもラインアップを増やしつつあり、先月には本機のライバルになるであろう「GM2030」を投入するなど、盛り上がりを見せている。

未来のことは分からないが、大容量インクタンクモデルがプリンターのトレンドになる時代はそう遠くないのかも知れない。これからプリンターを検討するなら、こうしたカテゴリーにも注目してみると良いと思う。

武石修

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。