いつモノコト
シンプルと軽さを追求したテキストエディタ「Simplenote」
2019年5月28日 08:15
筆者のようなライター業にとって、テキストエディタというアプリケーションは必要不可欠な存在だ。ただひたすらテキストを作成することに特化しているため、余計なことを考えずに文章を書くことに集中できる。
一方でテキストファイルは管理に若干の手間がかかる。最近ではファイルをクラウドストレージに保存するため、どのPCからでもアクセスできるのだが、文字コードの違いからスマートフォンではうまく表示できない、同期がうまくいかずにファイルが更新されない、という手間も多い。筆者のように外出先や作業場で異なるPCを使っていると、こうしたファイルの取り回しはさらに面倒だ。
機能としてはテキストエディタだが、データはクラウドで保存されていつでもどこでも続きを書くことができる。そんないいとこ取りのサービスが今回紹介する「Simplenote」だ。元々はSimperiumという会社が開発したサービスだったが、ブログサービス「WordPress.com」を運営するAutomatticが2013年に買収。現在はAutomatticのサービスとして開発と運営が続いている。
シンプルで軽いことに特化したテキストエディタ
特徴は名前の通りシンプルであること、そしてさまざまなプラットフォームに対応していること。Simplenoteで扱えるのはテキストデータのみで、画像などには対応しない。検索は該当のテキストが含まれているノートを絞り込むだけのシンプルなもので、置換機能などは搭載しない。
その代わり動作は非常に軽く、起動してすぐにテキストを書き始めることができる。クラウドで文章を保存できるサービスは他にもいくつかあるが、起動までに時間がかかったり、スペックの低いPCだと文章の入力がもたつく、なんてことも多い。Simplenoteは起動も速く、文字入力もオフラインのアプリケーションとほぼ差が無いくらい快適だ。
スマートフォンはAndroidとiOS、PCはWindowsとMac OS向けにアプリが提供されているほか、Linux向けにもアプリが提供されている。とはいえSimplenoteはブラウザで動作するサービスのため、ブラウザ経由で利用するのであればOSを問わず利用できる。
テキストをリアルタイムに保存、どの環境でも共有できる
利用方法も非常にシンプル。ユーザー登録を済ませてログインすればあとはテキストを書くだけだ。PCの場合は画面左のサイドバーにテキストのリストが、右側にテキスト入力エリアが表示され、スマートフォンの場合はリストと入力エリアを切り替えるシンプルな画面構成になっている。
入力したテキストはリアルタイムに保存され、他の端末で利用するときも続きからテキストを書き始めることができる。出先でちょっとしたメモをスマートフォンで書いておいてPCで確認する、という作業にも便利だ。
筆者の場合、複数のPCを場所によって使い分けており、端末はもちろんOSも異なる場合があるため、どんなOSでもブラウザさえ動作すれば使えるSimplenoteの存在は非常にありがたい。また、外出先の取材でPCを取り出せないような場面でも、Simplenoteで簡単にメモを取っておき、PCで確認するという使い分けに重宝している。
「テキストを書く」ことに特化した必要最低限の機能
作成したテキストは更新順に表示されるが、よく使うテキストは画面上にピン留めできる。テキストはすべてバージョン管理されているので、万が一端末間の同期に失敗し、古いデータで上書きされた場合も、復旧はたやすい。
検索機能も搭載しているので、過去のメモ書きを掘り起こすのも簡単だ。タグ機能も備えているので、特定のテーマごとタグをつけて管理することもできる。
文字の強調や装飾などが行なえる「MarkDown」にも対応。画面上部の「i」マークからMarkDownにチェックを入れるとMarkDownでテキストを記述できる。MarkDownをオンにした場合は画面上部に「Edit」「Preview」の切り替えボタンが表示され、Markdownで記述した内容を確認可能だ。
テキストを書いた本人だけでなく、特定の人のみに見せる共有URLの発行も可能だ。URLはテキストごとに発行でき、一度共有したURLを再度非公開に戻すこともできる。
simpleの名を冠するだけのことはあり、機能は少ないが「テキストを書く」ために必要な機能は充実。何より動作が軽く、どんな環境でも同じテキストをリアルタイムに共有できるという点が、筆者に取って最大の魅力だ。
リスト非表示やダークカラー対応の新UI
Simplenoteの基本的な機能はこのくらい、なのだが、現在テスト公開されている新UIについても紹介しておこう。新UIはログイン時に表示される説明からアクセスできるが、https://app.simplenote.com/new と最後に「/new」を付けるだけで画面が切り替わる。
最大の違いは左側に表示される「リスト」の非表示機能。自分だけが画面を見ている場合ならいいのだが、他人にテキストの内容を見せながら説明したいとき、他のテキスト件名すべて見えてしまうのが非常に不便だったのだが、新UIではリストを非表示できる機能が新たに搭載された。画面上部のアイコンまたはアプリの場合はCtrl+Shift+Fで切り替えられる。
このほか新UIでは、テキストの表示位置を画面中央か端から端までかに切り替えられる機能、最近のトレンドとも言えるダークカラー表示にも対応している。
「機能的には文句なし」の新UIなのだが、課題は動作スピードで、通常のUIに比べるとややもたつきを感じる。通信速度が速い、またはPCスペックが十分なときにはほとんど気にならないが、モバイル回線やスペックが低めのPCだと如実にもたつきを感じる。おそらくこのあたりの処理を解決してから正式に公開されるのだろう、とリリースを楽しみにしている。
なお、現UIのリスト非表示機能については筆者が自分のブログで非表示にできないことを嘆いていたところ、Chromeの拡張機能を使って表示・非表示を切り替えられるというアドバイスをいただいた。JavaScriptとCSSを利用して自分の好きなようにサイトデザインを切り替えられるようにする、というものなのだが、リスト非表示にしたいが新UIはまだ使いにくい、という人は興味があれば試してみて欲しい。なお、このURLもSimplenoteを利用して公開されている。
「いつでもどこでも続きを書ける」自由度の高さが魅力
テキストエディタというアプリケーションはニッチな存在だ。筆者のような文章を書く仕事をしていると必要不可欠といっていいのだが、一般の人には存在の意味すら伝わらないかもしれない。しかし、ただのテキストエディタではなくクラウドで「いつでもどこでも書いた文章を保存できる」となると、利便性はさらに広がる。
ちょっとした思いつきをすぐにメモしたり、PCのキーボードで作成した長文をスマートフォンに送って使うなど、アイディア次第でいろいろと使い方が広がる。筆者の場合、今回のような原稿をまずはPCで書き、移動中にスマートフォンで確認して細かいところを直したり、というチェックに使ったりもしている。
日常から文章を書く、複数の端末で使いたいという人には、シンプルで軽く、いつでもどこでも同じテキストを共有できるといった点でお勧めしたいサービスだ。