石野純也のモバイル通信SE
第39回
折りたたみスマホの民主化 10万円を切るモトローラ「razr 40」の可能性
2023年11月21日 08:20
モトローラ・モビリティ・ジャパンは、価格を抑えた折りたたみスマホの「razr 40」「razr 40s」を発表した。前者は、モトローラ自身が販売するオープンマーケット版で、MVNOではIIJが独占的に取り扱う。後者はソフトバンク版という位置づけ。型番は異なるが、ハードウェアに差異はなく、後者のみ、ソフトバンク用のソフトウェアに対応している。2モデルとも、おサイフケータイや防水・防じん仕様も備える。
フォルダブルスマホ、10万円を切る
フォルダブル(折りたたみ)スマホと言えば、ハイエンド中心で比較的高額になりがちだが、razr 40/40sは、その価格の安さに特徴がある。
モトローラの公式オンラインストアでの価格は125,800円だが、IIJは期間限定のセール価格として95,800円でこれを提供。MNPの場合はさらに割引があり、79,800円まで価格が下がる。ソフトバンクの販売するrazr 40sは121,680円。MNPや5歳から22歳の新規契約などでつく22,000円の割引を適用すると、一括価格は99,680円になる。いずれも、10万円を下回る価格をつけた。
さらに、ソフトバンクのrazr 40sは、48回払いの「新トクするサポート」を使うと、2年間、破格の値段で利用できるようになる。新トクするサポートは、48回の支払いの内、端末の下取りで最大24回分を免除する仕組みのこと。ただし、ここ最近は均等に48分割するのではなく、端末によっては前24回と後24回の支払い額を大きく変えていることがある。後24回の支払いが大きいというのは、すなわち事前に約束する下取り額が高いことを意味する。
裏返すと、最初の24回は格安になるということだ。razr 40sの場合、MNPなどの22,000円割引が適用された状態で新トクするサポートを利用すると、前24回の支払い額が410円まで下がる。後24回の支払いは3,744円。後24回は高額だが、この支払いが始まる前に下取りに出してしまえば、総額は9,840円で済む。あくまで2年限定のリースに近い形だが、フォルダブルスマホが1万円以下の支払いで持ててしまうのは驚きだ。
ちなみに、機種変更や23歳以上の新規契約、さらには端末のみの購入でも、新トクするサポートは適用される。22,000円の割引はなくなり、毎月916円ほど高くはなるが、それでも月額料金は1,326円ほど。2年以内に下取りに出せば、3万円強の価格でrazr 40sを利用することが可能だ。「フォルダブルスマホ=高い」というイメージをくつがえすインパクトのある価格設定と言えるだろう。
「世界ではそれなりに出荷台数が伸びてきていて、数年後には数倍の勢いで伸びていくというフォーキャスト(予測)もある」(モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長 松原丈太氏)という折りたたみ型スマホだが、日本では、まだメインストリームにはなっていない。
サムスン電子が「Galaxy Z Flip」シリーズを毎年投入しているものの、いずれもハイエンドモデルで価格は10万円を大きく超えている。モトローラ自身も、「プレミアム価格帯の製品しかなかった」のが現状だ。
サムスンと一騎打ち? フォルダブル競争激化
実際、ソフトバンクの調査でも、折りたたみスマホの不安要素として、「48%は端末代が高い」(モバイル事業推進本部 本部長 郷司雅道氏)と回答している。フォルダブルというホームファクターには魅力を感じているものの、その価格になかなか手が出せなかったのが実情だ。これに対し、razr 40sの価格設定は、その不安を払しょくして余りある安さと言えるだろう。
また、ソフトバンクは、フォルダブルスマホの不安点として挙がりやすい「壊れやすさ」に対応するため、保証サービスも手厚くしている。同社は、スマホ修理業者のiCrackedとタッグを組み、グーグルのPixelやシャープのAQUOSの即日修理を提供しているが、これをrazr 40sにも拡大。月額990円の「あんしん保証パックネクスト」に加入すると、いざというときの修理代金が年2回まで0円になる。
こうした価格が実現できたのは、純増数を重視するソフトバンクの戦略が大きいが、razr 40/40sは、その本体価格も一般的なフォルダブルスマホと比べ、リーズナブルだ。モトローラは、8月にプレミアムモデルの「razr 40 ultra」を投入しているが、こちらの価格は公式ストアで155,800円。IIJの割引価格でも、139,800円だ。
これに対し、razr 40は冒頭で挙げたように、公式ストア価格でも125,800円と3万円ほど安く販売される。
これは、razr 40/40sが、いわゆるミッドレンジモデルのためだ。チップセットに「Snapdragon 8+ Gen 1」を採用し、外側ディスプレイも3.6インチまで拡大したrazr 40 ultraに対し、razr 40/40sは「Snapdragon 7 Gen 1」を採用。外側に搭載されるアウトディスプレイも、1.5インチと小さめだ。ベースとなる処理能力が異なるうえに、前者は閉じたままでもほとんどのアプリを動かせる一方で、後者はできる操作が限定される。
とは言え、折りたたみ型スマホの基本である、本体の開閉は可能。しずく型のヒンジを採用しているため、折り曲げたときのすき間がほぼなく、折り目も最小限にしかつかない。無段階で角度を調整できる「フリクションヒンジ」を採用し、机やテーブルの上に置いたまま撮影などができるのも魅力だ。プレミアムレンジのモデル並みの高機能さはないものの、折りたたみスマホならではのメリットは十分生かせる。入門機として、うってつけの1台というわけだ。
折りたたみ型スマホというと、サムスン電子のイメージが強い一方で、モトローラも早くから取り組んでいた1社。特に縦折り型の端末は、サムスンのGalaxy Z Flipより先に「razr」を商品化した。razr 40/40sのように価格帯を広げる取り組みも、モトローラが一歩リードしている。
日本ではサムスン電子が大々的にGalaxy Z Flip5をアピールしており、認知度も高まっているが、低価格を武器にしたrazr 40/40sはいわばダークホース的な存在。折りたたみスマホ市場で、番狂わせが起こることを予感させる。