石野純也のモバイル通信SE

第12回

折れないスマホには戻れない 25万円の「Galaxy Z Fold4」を購入した

9月29日に発売されたGalaxy Z Fold4を購入した

9月29日に発売された折りたたみ(フォルダブル)スマホ「Galaxy Z Fold4」を入手した。昨年モデルの「Galaxy Z Fold3 5G」からの機種変更だ。正直なところ、8月の発表時に機能やスペックを見た段階では、3と4の差分がわずかに感じられたこともあり、購入は見送ろうかとも考えていた。約25万円の端末を毎年買い替えるのは、さすがにちょっとどうかしてると思ったのも事実だ。一方で、“日本版”同士の比較だと、買い替える意味もある。

25万円のフォルダブルスマホを買う理由「デュアルSIM」

デュアルSIMやeSIM対応がその1つだ。日本では、キャリアモデルのGalaxyにデュアルSIMやeSIMが搭載されたのはこれが初めて。先代のGalaxy Z Fold3 5Gは、シングルSIM仕様だった。日本にいる限り、SIMカードが1枚しか入らなくても致命的に困るようなシーンは少ないが、海外に出ると話は別だ。普段のSIMカードを入れつつ、コストの安い現地SIMやローミングSIMを使うことができるのは、やはり便利だ。

国内でも、バックアップ回線を使えるのがメリットになる。普段はドコモ回線を使用しているが、ドコモとは言え、やはり電波が届かなかったり、微弱になってしまう場所はある。“電波は水物”と言われることもあるように、状況は日々刻々と変化するが、最近、筆者の行動範囲でドコモの電波が入りづらい場所が増えたような印象がある。特に屋内は、その傾向が強い。このようなときに、別のキャリアの回線に切り替えられるのは心強い。

キャリアモデルのGalaxyとして、初めてデュアルSIMやeSIMに対応した

そんな理由もあり、購入に至ったGalaxy Z Fold4だが、デュアルSIMにした際にどちらのSIMを使うかを、クイック設定パネルの上に表示されるボタンで選択できるのは便利だ。一部のAndroid端末では割と一般的ではあるが、未実装の端末と比べると、SIMカードを素早く切り替えることができる。一方で、あくまで物理SIM+eSIMであり、デュアルeSIMではない点には注意が必要だ。SIMの組み合わせが、限定されてしまうからだ。

通話やモバイルデータ通信の切り替えを行う際に、設定アプリを開く必要がないのは便利だ

例えば筆者の場合、メインのドコモ回線をこの端末に合わせてeSIM化し、サブにソフトバンクの「データ通信専用3GBプラン」の物理SIMを入れた。最強の冗長化を目指すにはやはり3キャリアぐらいは必要だと思い、ここにpovo2.0のeSIMも追加している。ただし、この場合、ドコモとソフトバンク、povo2.0とソフトバンクという組み合わせでは使えるが、ドコモとpovo2.0は両立させることができない。あくまで物理SIMとeSIM、1回線ずつのデュアルSIMだからだ。

利用するeSIMを切り替えようとすると、端末に再起動がかかってしまう。つまり、このスクショを取って元のドコモ回線に戻すために、2回も再起動したということだ

これに対し、iPhone 13シリーズ以降のデュアルeSIMは、物理SIMだろうがeSIMだろうが、とりあえず端末に放り込んでおけば、好きな回線を2つまで有効化できる。物理SIMカードのスロットは1回線までという制約はあるものの、組み合わせを悩むことは減る。さらに、Galaxy Z Fold4の場合、eSIMを切り替えると、その都度再起動がかかってしまう。いわゆるホットスワップに未対応なためだが、これも地味にストレスになる点は指摘しておきたい。

折れないスマホには戻れない

デュアルSIMやeSIMを目当てに購入したGalaxy Z Fold4だが、その他の使い勝手は前モデルを引き継ぎつつ、さらに進化している。ポケットに収まるサイズ感と小さなタブレットのような使い勝手を両立しているのが、Galaxy Z Foldシリーズならではだ。電子書籍も読みやすいし、動画は大迫力だし、何ならリモートでPCに接続してもある程度普通に操作できる。このサイズ感に慣れてしまうと、なかなか“折れないスマホ”には戻りづらい。

電子雑誌を読んだり、PCにリモート接続したりと、大画面を生かせるサービスやアプリは意外と多い。スマホのようにサッと取り出せる一方で、タブレットのように画面を広々と使えるのが、フォルダブルスマホのメリットだ

購入前は大した違いがないのでは……と思っていたが、ヒンジがコンパクトになったことで、閉じたときの操作性も向上していた。一見同じように見えるGalaxy Z Fold3 5GとGalaxy Z Fold4だが、実はヒンジの構造が大きく変わっており、この部分が小型化している。それに伴い、閉じたときと開いたとき、両方のアスペクト比がGalaxy Z Fold3 5Gとの比較で、やや横長になっている。この結果、開いたときに、PC用のWebサイトや見開きの電子書籍といったコンテンツが、縦位置のままでも使いやすくなっている。

右がGalaxy Z Fold3 5G、左がGalaxy Z Fold4。斜めから撮っているため、見た目以上に差が強調されているが、画面のアスペクト比が変わったことで、使い勝手にも違いが出た

閉じたときのサイズ感が“普通のスマホ”

それ以上に大きいのが、閉じたときのサイズ感だ。Galaxy Z Fold3 5Gでも閉じたときにはそれなりに普通のスマホとして使えたが、縦長すぎるきらいがあった。言い方を変えると、横幅がなさすぎた。結果として、1つ1のキーが小さいQWERTYキーは、入力のハードルがかなり高くなっていた。筆者は、仕方がなく、英文入力も10キーに設定していたほどだ。

閉じたときのサイズ感が、より普通のスマホに近づいた

これに対し、Galaxy Z Fold4は、ヒンジが小さくなったぶん、画面の表示領域を拡大しており、横幅が増している。ギリギリではあるが、QWERTYキーでもなんとか入力ができるようになった。筆者は、日本語を10キー、欧文をQWERTYキーで打つことが多いため、このアップデートはかなりうれしい。横のピクセルサイズは2,268から2,316へと拡大した。数字にすると差分はわずか48ピクセルと小さなことのように見えるが、利用頻度が高いだけに、大きな進化と言えるかもしれない。

Galaxy Z Fold3では断念してしまったQWERTYキーでの入力も、Galaxy Z Fold4ではなんとか使えている

Galaxy Z Fold3 5Gにもそのうちアップデートがかかりそうだが、Android 12Lを搭載しているのも、Galaxy Z Fold4のメリットだ。画面を開いたときに、下部にタスクバーが表示され、アプリの切り替えがスムーズになった。自分で設定したアプリだけでなく、直近で開いたアプリが表示されるのも便利だ。アプリによっては、大画面を生かせるよう、レイアウトが変わったものもあり、使い勝手は増している。

画面下部に表示されるタスクバーで、アプリをスムーズに切り替えられる。Android 12Lの特徴だ

カメラもちゃんと“フラッグシップ”

また、Galaxy Z Fold3 5Gは、カメラ機能が他のフラッグシップモデルと比べると少々見劣りしていた。対するGalaxy Z Fold4は、メインカメラがピクセルピッチ2.0μmの5,000万画素センサーになったほか、望遠カメラも2倍から3倍に伸びている。チップセットがSnapdragon 888からSnapdragon 8 Gen1に変わったことで、画像処理の性能も上がっている。

先代との比較では、カメラも大きく変わった機能の1つ。暗所での性能が向上し、望遠もより遠くまで狙えるようになった

カメラに関してはまだ使い込めていないので、あまりはっきりしたことは言えないが、暗所の表現力が上がっている印象は受けた。スペック的には、4月に発売された「Galaxy S22」と同じ。1億800万画素のセンサーを搭載した「Galaxy S22 Ultra」には及ばないものの、Foldだけカメラが1年前のスペックという状況ではなくなり、購入を躊躇する要因が1つ減った格好だ。

まだ料理と子どもの写真しか撮っていないが、暗所での表現力は向上している

カメラについては、引き続きフレックスモードでの撮影に対応する。これは、半開きのまま操作する状態のこと。カメラの場合、下半分が操作パネルになる。使いどころはある程度限られるが、例えば発表会のようなシーンでGalaxy Z Fold4を机に置きっぱなしにして、シャッターを切っていくといったことが可能。S PenをBluetoothでつなぐと、リモートシャッターになるのでお勧めだ。

Galaxy Z Fold3 5Gのときに購入したS Pen Pro。手書きができるだけでなく、リモートシャッターとしても使えて便利だ

背中を押した“アップグレードプログラム”

スペックの向上以上に使い勝手がよくなっていたGalaxy Z Fold4だが、約25万円と高額なこともあり、約24万円だったGalaxy Z Fold3 5Gから買い替えるべきかはかなり悩ましかった。背中を押したのは、キャリアのアップグレードプログラムだ。先代のGalaxy Z Fold3 5Gは「いつでもカエドキプログラム」で購入していたため、9月に機種変更したあと返却すれば、24回目の残価である95,040円に加え、月1,200円の早期利用特典が適用される。

早期利用特典が適用され、結果として13万円弱で前モデルを使えた計算になる

今回のケースでは、12回目から23回目までの支払いが早期利用特典の対象になり、1,200円×12回で14,400円の割引が受けられる。免除される残価と合わせると、その額は109,440円。237,600円で購入していたため、差し引きすると128,160円だ。すでに11回ぶんは支払っているため、分割の残金は59,976円になる。あと6万円弱で完済かと思うと、このタイミングで機種変更してしまってもいいような気持ちになってきた。

また、他のフラッグシップモデルが値上がりしているなか、価格をほぼ維持できたGalaxy Z Fold4は、相対的にお得感が高くなっている。さすがにGalaxy Z Fold3 5Gからの買い替えは万人向きではないが、それより前の世代からの機種変更であれば、機能面での進化が大きく、使い勝手も向上しているため、満足できる可能性は非常に高い。完成度が上がっていることもあり、フォルダブルスマホデビューを飾るにもお勧めできる1台と言えそうだ。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya